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*これは「存在しないドキュメンタリー番組の採録」およびレポート、という体裁の読み物です。

*実在の人物・団体とは何の関係もありません。


*NA=ナレーション




スタジオにて


―親権が劇団長の安部さんになりましたよね


半田つかさ「はい」


―それについては


「感謝してもしきれないです」


―具体的にここはってあります?


「バイトの申し込みとか、あとオーディションの申し込みとかですね。保護者としての許可のハンコをすぐにもらえたんで助かりました」


―実利的ですね


「必死に稼いだバイト代を巻き上げられなくなったのも大きいかな(笑)。一応自活してたんで生活費のお世話には余りなってないです。作ったおかず分けて貰ったりしたから、そういうお金に換算しにくい援助は一杯もらったけど」


―借金については


「団長も親権獲得してから知ったみたいで…迷惑かけられないからそれだけは全部返すって言ってました」


―団長のご自宅にはお住まいに?


「ほんの少しの間ですね。すぐに今の奥さんの部屋に同棲し始めたから」


―寂しいですね


「当時の部屋は劇団のすぐそばで歩いて行ける距離だからしょっちゅう行ってたんでそれは無いと思います。今は忙しくなっちゃったけど、アイドルやってた頃も行ければ毎日行ってたくらいだから」



自宅にて

キップ「前代未聞、空前絶後の女装美少女アイドル・半田つかさですが、この特殊すぎる出自と家庭環境も大きな要因の一つだったでしょうね」


―といいますと?


「余り意識されませんが、未成年のアイドルはみんな『保護者の許可』で働いてます」


―それはそうですね


「愛宕坂にも13歳で入った様な子も大勢います。当然親の許可があってのことです」


―はい


「ごく普通の家庭環境で育った「男の子」の「良識ある両親」が「女装して女の子に混ざってアイドル活動をする」ことを許可したとは思えないんですよ」


―…でも、児童劇団の子とかもいますよね?


「男女が入れ替わるドラマへの出演許可とか、お芝居や企画で一回きりの女装をするとかくらいならそりゃ芸能界にいるんだから出演許可くらい出すでしょうけど、それとも次元が違います」


―確かに


「最初に「カラオケ・デュエル」に出演した当時は若干17歳です。15歳の頃から奥さんになる雅羅がらさんと同棲してますから根っからの男の子であることは明白ではあるんですが、どう考えても誤解されかねないシチュエーションですよ。女装して女の子の声で歌うなんて」


―そういう例ってあるんですか?


「カラオケ・デュエルは何故か女性が男性ボーカル曲を歌ったり、男性が女性ボーカル曲を歌ったりする例が多いんですけど、声質を変えたりはしません。普通にそれぞれ男声・女声で歌います。半田くんみたいに女性ボーカル曲を歌うのに女の子の声と…そしてパフォーマンスで歌う例はありません」


―でしょうね


「言ってみれば『芸能一家』に引き取られた形です。それがよかった」



劇団控室にて


―カラオケ・デュエルの出演についてなんですが


阿部奈爪「あーあれね」


―出場の経緯を教えてくださいますか?


「あれって確かあいつが17の頃だったと思うんだけど、前の年からアニメのオーディション受けまくっててガヤとか名前の無い端役とかやってて…そうだ、ウチの劇団からあいつ含めて3人が出演したアニメがあったんだ」


―はい


「それの打ち上げで初めて大勢の前で女の歌歌ったんだよ」


―どうでした?


「ウケたね」


―そりゃ受けますよね


「一瞬「間」があったけどね」


―間?


「あいつに言ったんだよ。お前みたいなヒョロガリは普通にしてると男だか女だか分からんから、自己紹介する時にはしっかり低い声で言ってから歌い始めろって」


―それで間ですか


「歌ってる間も静まり返ってたね(笑)」


―それは…場が冷えていたってことですか?


「どうなんかね」




楽屋にて

声優 大野小介おおの・しょうすけ


―大野さんは声優としてアニメで半田くんと共演経験があるとか


大野「そうですね」


―その打ち上げに参加されていたとか


「してました」


―アニメ声優としての半田くんはその当時どうでした?


「セリフもほんのちょっとだったし、本番の時には余り意識出来ませんでした」


―そうですか


「でも、打ち上げの席でカラオケ歌ったのは覚えてます。あれは鮮明にね」


―どうでした?


「…(考え込んで)…いや、意味が分からなかったです」


―と、言いますと?


「こっちもガヤついてたから自己紹介なんてまともに聴いてないわけですよ。いい加減みんな飲んでたし」


―はい


「そしたらアイドルみたいに可愛らしい歌声が響いてきたから、『え?こんな感じの女の子って出演者にいたっけ?』って思って振り返ったら…」


―半田つかさくんが歌っていたと


「こちとら周囲は役者だらけだから、別人みたいに芝居する人間なんて嫌というほど見てますけど…驚きました」


―どういう風に


「いや、だから事態が把握出来ないんですよ。これはどうなってんのかって」


―それで静まり返ったんですね


「人間、本当に驚いた時は黙りますね(笑)。静まり返ったってことになってるけど周囲はヒソヒソだらけで。『え?男?何言ってんだ』みたいな」


―信じられなかったと


「声変わり前ってことかとも思ったんですけど、17歳だからそれは無いし…その日3曲歌ったんだけど、2曲目は男の声で歌ってたから」


―そうなんですか


「僕はある意味こっちの方が驚きました。それこそこっち(頬に手の甲を当てる「オカマ」の仕草をする)の子だと思ってたので。そしたらそうじゃないんだと」


―3曲歌ってたってのは新証言ですね


「3曲目でまたアイドルソングみたいなのに戻って、ここでやっと周囲も大盛り上がりになったわけです」





劇団控室にて


―そこで「カラオケ・デュエル」のプロデューサーから声が掛かったと


阿部奈爪「あずまだったかな。最初はつかさに声掛けたらしいんだけど」


―名刺持って


「タレントは名刺は受け取らないもんだけど、俺らマネージャーとかいないからさ(笑)」


―未成年の半田くんが阿部さんに話を回した訳ですね


「義理堅いところがあるからな」


―いや、純粋に保護者に相談したんでしょ


「かもな」


―恐らくそこで「男の子なのに女の子の声で歌える」のを売りに女装で出演して欲しいって話を打診されたんだと思うんですけど


「だったかな?余り覚えてねえや」


―少なくとも2回目からはスカートで出場してますよね?


「そのスカートの下は短パンだけどな」


―いや、そこは大きな問題じゃないでしょ


「ハハハ!そうだな」


―ここはタレント・半田つかさのキーポイントになるところなので是非ともお伺いしたいんです。保護者としていたいけな17歳の男の子が公衆の面前で女装して、女の子みたいに歌うことを許可したのはどうしてです?


「(かなり長い沈黙。記者の顔をじっと見て)…あいつは年こそ17だがもう独立した人格だよ。保護者ったって俺があーしろこーしろなんて言えるもんか」


―…記者として立ち入った質問をすることをお許し下さい


「もう十分失礼だけどな(笑)」


―一説にはあなたが実の親ではないから許可した…なんてことも言われています。その辺りどうです?


「(じいっと記者の目を見る)…もしあいつが本当のセガレだったら許さねえけど、もらい子だからオカマになろうとどうでもいいから許したって言いてえのか?」


―…はい


「ふん、記者ってのはクソだな」


―…そう思います


「(考え込む。数分はあっただろうか)…もしもあいつが雅羅と一緒じゃなかったら許可しなかったかもしれねえな」


―奥さんの


「あいつが正真正銘の男で、単に女の芝居が上手いだけってのは確信が持ててたからよ」


―じゃあ、性的マイノリティには抵抗があると


「本当にクソだなテメエは」


―はい


「ねえよ。俺らが何人のニューハーフやらゲイの知り合いがいると思ってんだ」


―でも、女性との同棲が無かったら許可しなかったかもとおっしゃいました


「バカかテメエは!相手なんかどっちでもいいんだよ!芸能界みてえなところに行くのにお手付きになってた方が安全だから言ってんだ!」


―じゃあ、仮に半田くんが同性愛者で「彼」がいたとしたら?


「それなら安心だろうが。勝手にすりゃあいい」


―そういうことでしたか


「言葉選べ。俺はいつまでも大人しくしてねえぞ(タバコに火をつける)」


―怒られついでに雅羅さんとの同棲についてですが


「気に入らねえか?」


―いや、気に入るとか入らないとかではなくて…15歳の男の子が18歳の女子大生と同棲というのは問題ありませんか?


「(すぱー…とタバコを吹かす)…何の問題があるって?」


―法律的にです。或いは都の青少年健全育成条例とか


「その法律決めた奴に言っとけ。牛のクソに頭突っ込んで死ねってな」


―問題無いと


「ねえよ。…お前、あいつにもその調子でインタビューしたのか」


―はい


「そろそろ二十歳はたちになろうっての男なのに、女子高生どころか女子中学生みたいな見た目だがよ。ありゃあ強情だぞ?一度言い出したら絶対に諦めん。怒らせたら大変だぞ」


―…そうなんですか?


「一旦ブチ切れた日にゃあ俺みてえな紳士じゃねえとだけ言っとく」


―はあ


「俺は確かに法律上は『親』ってことになってるが、それはクソみてえな法律がそうしろと言ってるからだ。俺はあいつの自主性を尊重する。ハンコが必要なら押してやる。それだけだ」


―毒食わば皿までの精神でお伺いしますが、結婚も許可されたんですよね?


「(明らかに怒りをこらえながらドスの利いた低い声で)…だから何だ」


―…有難うございます。以上とさせていただきます




  テロップ「愛宕坂47メンバー 君田美紀きみだ・みき

廊下にて


―君田さんは「アイドルファン」でいらっしゃるんですよね?


「はい。メジャーどころだけじゃなくて地下アイドルとかも好きです(笑)」


―その「アイドルファン」から見て半田つかさくんはいかがです?


「ムチャクチャ面白いですね!大ファンです」


NA「ブログ及びモバイルメールを在籍中に持てなかった半田つかさは、他のメンバーのブログやモバイルメールに登場することが多いが、中でも君田のものに多く登場している」


―面白いというのはどのあたりが


「今って、アイドルの個性を出すのが大変なんですよ。だからアイドルなのに覆面だったり良く分かんない趣味を持ってたりしてるんですけど…まさか『男の子』なんて方法があるなんて思いませんでした」


―普通に考えればそうですよね


「あたしたちアイドルファンが集まった時よく話題にするんですけど、『もうこうなったら「実は男」くらいしか残ってないよね』って」


―じゃあ、話そのものはあったんですか


「ありましたけど…ダイヤリーズ事務所の男の子たちもたまにアイドル女装とかしてムチャクチャ可愛いんだけど…やっぱりなんか違うんですよ」


―違いますか


「あたしも人の事いえないけど(笑)、どうしても顔の形が角ばっちゃうとか色々です。あるとしたら、完全に女の子になっちゃった人が『実は…』って言いだすとかそんな感じしかないかなって」


―そのパターンならありなんですか?


「無いですね(即答)」


―無いんですか


「やっぱり抵抗ありますし、無理が出ますもん」


―ちなみに地下アイドルには女装アイドルとかいらっしゃらないんですか?


「あたしが知る限りだと「正統派」路線ではいないです。お笑い系もいないかな。ビジュアルバンドっぽいのはいるけど女装とは違うし」


―お化粧ビジュアルバンドですか


「あのナルシスティックぶりというか、お化粧して真っ黒なドレスにメイクもキメキメでギター弾いたりしてる人はいますね」


―ドレスってことは女装ですよね


「まあ、女装っちゃ女装なんだけど…本人には悪いけどドラァグクイーンよりかなあ。声とかも普通に男で野太いし。…なんていうか『女装も綺麗なこのオレを見ろ!どうだ!』って感じで、「アイドル」じゃないですね」


―じゃあ、「女装の美少女アイドル」っていないんですか


「…実は数だけだったら結構います」


―いるんですか!


「でもあたしたちが好きな地下アイドルたちとも別の世界なんですよ。『女装アイドル界』みたいなのがあってそっちで盛り上がってるというか」


―そっちに興味は無いんですか?


「あたしは女の子で女の子アイドルが好きな方だからそこまで食指伸ばさなくても事足りてるっていうか…」


―見たこと自体はありますよね?


「客席からなら」


―どうでした?


「ん~、それほど数を見られた訳じゃないんで何とも言えませんけど…写真とは違うなって印象ですね」


―といいますと?


「やっぱ声がね…修正も出来る写真とかの自撮りでキメの一枚とかだとあたしより可愛い男の子なんてゴロゴロいるんだけど、喋ったり歌いだしたりしちゃうと…普通に男の子が無理して裏声で高い声出してる風にしか聞こえないというか…。だからオカマっぽい感じをわざと全面に出して笑いを取りに行くしか無い感じなんですよ」


―駄目ですか


「まあ…あたしの好みではないですね。そういうのが好きな人がいるのは分かりますとしか」


―そういう人たちと半田つかさくんとは何が違うんでしょう?


「女装アイドルったって、それこそ自前でライブハウス借りてライブやってるってだけだし、中にはブログとツイッターの活動オンリーの方も多いし…言ってみれば「言ったもの勝ち」ですからね。アイドルなんて「自称」しちゃえばそれでアイドルだから」


―職業といっても資格がある訳でもないですしね


「つかさくんはカラオケ・デュエルで認められた訳だし、愛宕坂入る時だってちゃんと技能テストも受けてます」


―それ、堀井さんもおっしゃってました


「技能があるってのが一応は第一だけど…あとはメジャーな舞台に躍り出るチャンスに恵まれたってことでしょうか」


―チャンス…運ということですか


「運の要素は無視できないですよ。でもまあ、そのパフォーマンスが圧巻だったのは間違いないです」


―じゃあ、仮に半田つかさがその「女装アイドル界」にいたとして、見出されて愛宕坂みたいな普通のアイドルに成り上がって行くといったことはありえたと思います?


「(腕組みをして考え込む)…ない…と思います」


―それはどうして?


「う~ん、いいのかなあこれ言って…」


―どうしても駄目ならカットします


「女装アイドル界って、「趣味」というか「仕事」で割り切ってやれてる方って余りいないんですよ。生活というか人生がそういう方なので」


―ニューハーフとかゲイってことですか?


「ゲイの方は必ずしも女装しませんよ。勉強不足ですね」


―すいません


「まあ、そういうことです。仕事としてじゃなくて人生がもう女の子というか」


―でも、オネエタレントの方とかも多いですよね


「別にそういった方々を否定はしませんよ。お仕事もよくするし。ただ、「正統派」アイドルではないですね」


―正統派ではない。邪道ってことですか?


「あたしはこれ以上無理です。オタクのキップさんって方が詳しいんでその方に聞いてください」




自宅にて


―愛宕坂のメンバーである君田さんからキップさんの名前が出た時はどうしようかと思いましたよ


キップ「いやあ、とあるWeb番組で電話で共演させてもらったんですよ。その時に地下アイドルについて話が盛り上がったので覚えていて下さったんですね」


―地下「女装アイドル」と半田つかさくんの差についてキップさんなら説明できるって話だったんですが


「そうですね。所謂いわゆる男のムスメと書いて「男のおとこのこ」はご存じですね?」


―ええまあ。存在と言うか概念だけは


「個人的には二次元の創作物だけの呼称にして欲しいんですけど、この頃は「女装趣味のある男性」を指してマスコミに便利に使われちゃってます」


―違うんですか?


「色々言いたいことはありますが、ともあれ通販サイトの「ガンジス」で「男のムスメと書いて男のおとこのこ」の「男の娘」で検索してみてください」


―今ですか?


「スマホあるでしょ?ログインしなくても検索は出来ます」


―(検索してみる)…これは…


「星の数ほどアダルトビデオ…今はアダルトDVDか…が引っ掛かります」


―つまりどういうことです?


「これらは単なる「女性が裸を披露する」アダルトビデオではなくて、『女装した男性』を凌辱したりする…ものです。ちと特殊です」


―…


「地下女装アイドル界ってのは、この世界と境界があやふやなところがありましてね」


―そうなんですか?


「というか、美少女アイドル界だって魑魅魍魎ですよ」


―はあ


「このジャンルのスターということになると」


―佐山かのとか椿山彩乃とかですか


「いや、小島馨こじま・かおるでしょう」


―すいません。不勉強で良く知らないのですが


「彼…この場合は彼でいいか…は一般的な知名度はほとんど無いんで仕方がないですね。所謂いわゆる「ノンホル・ノンオペ」の女装タレントです。アイドルではないかな。タレントですね」


―用語の解説をお願いしていいですか


「ノンホルは「ホルモン投与をやってない」と言う意味で、「ノンオペ」はオペ…つまり手術をやってないと言う意味です」


―?半田つかさ君と同じですか


「一応ね」


―外見はどんな感じです?


「ご覧になります?」


―…かなりの美形ですね。男性時も格好いいというか


「半田くんとの違いは露出度の高い恰好を厭わないことですね。というか普通に上半身なら裸になります」


―え?


「それがこれです」


―これは…


「ごく普通の女性の頭部にぺったんこのおっぱいというか骨ばった乳首だけの男性の身体です」


―この写真の趣旨ってなんなんでしょう?


「というと?」


―いや、意味が分からないから


「海外の『女装モデル』はよくこういう格好しますよ。といってもまあ控え目にいっても「キメラ(合成獣)」状態ですよね」


―…はい


「気持ちは分かります。露出度が可能な限り低めで常に服を着ていてふんわり柔らかくキュートな雰囲気のつかさくんとは大分違いますからね」


―この方はなんなんです?タレントということですが


「タレントとしか言い様が無いです」


―性的には


「男性が性的対象だそうです。タチもネコも出来る」


―なんです?


「タチは男性的立場、ネコが女性的立場です。腐女子用語でいう「攻め」と「受け」です」


―…はあ…。メジャーになり切れないのはその辺でしょうか


「いえ、ほとんど関係ないでしょう」


―そうなんですか?


「あなたが先ほどおっしゃった佐山かのは性的対象は女性という説もありましたけどこの頃は彼氏の話が多いですし、「男を落とすテク」の話もよくするので、男性と考えていいでしょう。ということはつまり、肉体的な条件だけ見れば同性愛者ということになる」


―…まあ


「オネエタレントの大半がそうですし、この頃売出し中の「バター板金」の「ゴンメーサー」というマッチョ金髪男はバイセクシャルであることを公言してます。つまり、性的に…この表現は問題だと思いますが…「ストレート」でないということはタレント活動で致命的な障害とはなりません」


―では何故?


「やはり彼がAV…アダルトビデオ…出演歴があるってことでしょう」


―えっと…ちょっと待ってください。AV男優ってことですか??


「生物学的には「男優」なんでしょうけど、役割ロールの上では「AV女優」役ってことです」


―え…じゃあつまり…


「男性にあんなことやこんなことをされる役ですね」


―サッパリ分かりません


「ファンが怒るかもしれませんけど、AV版の半田つかさくんです」


―いや、その表現駄目でしょ


「つかさくんは性的にストレートだそうなのでそこは一番違いますが。あと、やっぱり声がね…」


―駄目ですか


「申し訳ないですけど、私は『オカマの谷』を感じました」


―…男性が裏声出している様に聞こえると


「彼は女装指南の本なども出してますし、『女声』講座の連載もありましたけど…申し訳ないけど辛いです。あの外見でのあの声は辛い」


―はあ


「…あと、割と冗談抜きで、古今東西…というか主にマンガの世界では『女装アイドルもの』は数多く描かれてきました」


―そうなんですか


「はい。ただ、仮に実際に存在したならばこういう生臭い問題が噴出するのは間違いないでしょうね」


―でも、「女装アイドル」たちが全員アダルト作品への出演経験がある訳じゃないでしょ?


「ないでしょうね。自称・女装アイドルたちの大半は自宅でシコシコ写真を上げてるだけですし」


―じゃあ何故「女装アイドル」たちはメジャーにならないんでしょう?


「今はアイドル全盛期で戦国時代なんて呼ばれてますけど、ほんの10年前は「アイドル冬の時代」だったんです。所詮は嗜好品です。あってもなくてもいい」


―はあ


「正真正銘の女の子であるアイドルですら需要があやしいのに、なんで女装アイドルを求める必要があるんですか。しかもテレビ業界が一番嫌う「アダルト」と境界が限りなくあやふやな」


―ちょっと待ってください。話を戻しますけど、ということは半田つかさくんが受け入れられたのは「アダルト出演歴が無い」からですか?


「それも要素の一つってことです」


―「性的にストレート」でかつ「アダルト出演歴が無い」ことがパフォーマンス云々の前の最低条件だった訳ですね


「そういうことです。君田さんが言いたかったのは、「女装アイドル界出身」だとそっちの疑惑を払しょくしきれないからメジャーになりえないってことでしょ。あくまで別の文脈…カラオケ番組とか…から出てこないといけなかった」


―なるほどそういうことですか


「彼が基本的にはとても若かったことも幸いしましたね。『実はAVにそっくりな出演者がいたのを発見!』なんてゴシップ誌はやってましたけど、検証の結果全員別人だと判明しています」


―やれやれですね


「もっとも、「そっくりAV」みたいなのは出ましたけど、これはまあ人気アイドルなら全員出てると思って間違いないので特に問題にはなりませんね」


―…はあ…



  テロップ「愛宕坂47メンバー 君田美紀きみだ・みき

廊下にて


―君田さんは「寝顔スナイパー」と呼ばれてるんですよね


「よくご存じですね(笑)」


―メンバーの移動中の仮眠とかを撮影してるとか


「まあ、半田ちゃんのインタビューなんでそういうの期待してるんでしょうけど、あたしたち移動も別なんです」


―そうなんですか


「10月を境にそういうのかなり解除はされたんだけど、半田ちゃんって個人の仕事も多くてあたしたちアンダーと一緒のバスで何時間もとかそういうのほとんど無かったんです」


―なるほど


「といっても実はあることはあるんですけどね」


―確か公表されてないですよね


「これは楽屋が一緒になって…半田ちゃんが卒業する寸前だったかな…で倒れるみたいに眠りこけてたんで、そこを頂きました」


―メンバーに寝姿を見られるなんてレアですよね


「野中さんに言わせると「体力オバケ」らしいんですけど…この頃って本当にアホみたいに仕事が詰まってて3日合わせて10時間くらいしか寝てないとかそんな状態の時ですわ。あーこれだこれ」


―…スリーピング・ビューティ(眠れる森の美女)ですか?


「でしょ?この後歌撮りあったから、普段はこんな状態で寝たらメイク乱れて大変なのにねぇ」


―流石は寝顔スナイパーですね


「ちゃんと衣装着て、メイクした状態っていうアドバンテージがあるっつったって男の子にこんな綺麗な寝顔見せつけられちゃ女あがったりなんですけど(怒笑)。動画もあります」


―動画って…(すやすや寝息を立てている動画)


「この時ってメンバー3人くらいと一緒になって観察してたんですけど…スカートめくろうかどうしようかでヒソヒソ揉めました」


―え…


「流石に最後は自制心が働いてこらえましたけど…アブなかったです」


―ファンが楽屋も一緒になるにあたって心配してたのが他の女の子メンバーだったはずですが、その話だと半田くんが一番貞操の危機があった感じですね…


「上手いッスね!みんな結構半田ちゃんいじってましたよ。後ろから羽交い絞めにしてくすぐったりとかしてたし」


―はぁ!?


「半田ちゃん抵抗しちゃいけない建前だったからされるがままだったし(笑)。まあ、いいじゃないですか。時効ですよ時効」


―えっと…最後に半田くんに何か一言あれば


「半田ちゃん背がちっちゃいんで難しいと思うけど、あたしアイドルも好きだけどモデルさんも好きなんで、出来たらモデルに進出して欲しい!です!頑張って!」




自宅にて


―「キャラクター」って何です?


キップ「人気アイドルの宿命で、冠番組でコントみたいなのをやらされるんですよ」


―お笑いのですか?


「『欲望リクエスト』といって、ファンがそのアイドルとこんなシチュエーションになりたい…というのを送ってきてそれを演じて見せるってコーナーです」


―イメクラですか


「そういうことを言うんじゃないですって。あくまでもそこは二人っきりになってカメラに向かって『好きだよ』という…とかの可愛らしいのです」


―…アイドル番組なんでそういうのありなんでしょうけど、それって女子中学生くらいが喜ぶ趣向ではあっても、おっさんの男ファンは喜ばないでしょ


「おっぱい見せてくれたりする方がファンは嬉しいと思ってるでしょ?」


―まあ


「そこはまあ、アイドルファンってことで」


―それにしても、これを男が演じるのは辛いですね


「そう思うでしょ?」


―思います


「ATABING!から生まれてライブでも登場した名キャラクター「ADつかさちゃん」ですよ。これは映像見てもらった方がいいですね」



『欲望リクエスト』

   髪をポニーテールにしてキャップをかぶり、無地のTシャツにジーンズを履き、インカムを付けた地味な女性スタッフに扮した半田つかさ。


「あ、ここにいらしたんですか。もうすぐ出番なのでスタンバイお願いします」


   スタジオの「かわいー!」の声がひっきりなしに響き、画面下のワイプでそれぞれのメンバーの笑顔が映る。


「今日のゲストは…愛宕坂47の皆さんですね。ほんっっとに可愛いですよね!さっきそばを通らせてもらったんですけど、うっとりしちゃいました(笑顔)」


   ドアの外でドカン!と言う音。半田つかさが小さく「きゃっ!」と飛びのく(悲鳴の様な「かわいー!」の声)。


「あ…」


   ドアをガチャガチャするつかさ。


「ドアの外に何かある…閉じ込められちゃいました」


   ドアに耳を押し付けて外からの声を聞き、何度も頷いている。


「障害物を取り除くのに何分か掛かるみたいです。それまで待ちましょう」


   カメラが足元から顔までなめる様にパンアップする。


「…そんなにじろじろ見ないでください…こんなカッコで…」


   恥ずかしそうに顔を赤らめて視線を逸らすADつかさ。


「そうそう!愛宕坂の中で推しメンとかいたりします?」


   首を振る様にカメラが左右に振れる。


「そうなんですか…確かに選ぶったって難しいですよね。あんなに綺麗な人とか可愛い人とか一杯いて…ボクなんかこんなカッコでホコリまみれで…一度でいいからあんな可愛い衣装とか着てステージで歌ったり踊ったりしてみたいなって…。あ、すいませんヘンなこと言って…ボク、アイドル志望だったんです。結局諦めてスタッフとして働いてますけど」


   カメラがADつかさの顔に少し近づく。


「え?どうして諦めたかって?そりゃ色々ですよ…可愛くもないし…華もないし」


   カメラが左右に振れる。


「そんなことない…有難うございます(にっこり笑顔)。お世辞でも嬉しいです」


   しばし沈黙。


「さっきの答え聞いてないですね。推しメンは誰です?やっぱり黒石真紀さん?東野彩萌ちゃん?それとも意外なところで…春元真冬たんとか?」(爆笑の声)


   カメラもう少し近づく。


「え…どういうことです?…推しメンはキミだよって…」(スタジオできゃー!と言う悲鳴)


   カメラ近づくのに合わせて立ちあがって背後にドアを背負うADつかさ。


「ちょっと…え…ええっ!?」


   軽く押されたのかよろけて背中がドアにぶつかる。「きゃっ!」


   ほとんど密着するみたいな距離。


「そんな…困ります…」(絞め殺されそうなスタジオの悲鳴)


   次の瞬間、ドアが開いて背後に転がり出るADつかさ。


「きゃあああああっ!」


   よろけるカメラ。


「あ!ドア開きました!開きましたよ!さあ本番行きましょう!さっ!」


   走り寄ってきて手を取って走り始める仕草をするADつかさ。


   次の瞬間、密着するほど近づいて、ささやき声で言う。


『さっきのは…ナイショにしといてあげます』(きゃあああああああーーーーーっ!!というスタジオの悲鳴)


   にこっと微笑んで走り去っていくADつかさ。



   カメラがスタジオに戻る。

   ひっくり返り、抱き合って悶えている美女・美少女メンバーたち。


   ADスタイルで再登場する半田つかさ。


セガーレ岡山「さあどうでしたか半田さん」

つかさ「(顔を真っ赤にしつつ笑顔で)いやー、ボクなんかが主役になるのおこがましいんで、スタッフにしてもらったんですけど…」




自宅にて


キップ「まあ、こんな感じです」


―なるほどねえ


「あくまでも自分は引き立て役ってスタンスですね。在籍期間が短くてこのATABING!が2回しかシーズンを経験出来なかったんですけど、異例の2回演じることになりました」


―人気キャラってのはこれですか


「はい。いつもは色気の無い恰好をしてるADつかさちゃんが可愛い恰好でデートする回なんかもファンは妄想して二次創作の漫画までツイッターに投稿されたりしました」


―…あの、胸がある様に見えるんですが


「あの後、番組中にも言及するんですが、『こういうスタッフは巨乳なものだ!』というスタイリストさんの強硬な意見で珍しく詰め物でバスト作ったみたいです。ちなみにそのスタイリストさん女性なんですが」


―え…下世話で恐縮なんですがじゃあブラジャーとかも?


「…一番合理的なアイテムですからね。Tシャツなんで下に何も着られませんし恐らく素肌にしてるでしょう。半田つかさくんが下着女装をしてることがほぼ確実に確認出来る貴重なシチュエーションの一つです」


―先ほどライブでも登場すると言うお話でしたが


「そうなんです。愛宕坂のライブは「愛宕坂愛」という携帯アプリ、ソーシャルゲームとコラボしたイベントが差し挟まれるんですが、そのMC役として「ADつかさちゃん」が舞台に登場するんです」



真夏の全国ツアー・映像


   ADつかさがステージ上に登場。スポットライトが当たっている。怒号の様な拍手と歓声。


「皆さん盛り上がってますねー。有難うございまーす」


   ボードを抱く様に抱えてぺこりとお辞儀をするADつかさ。大歓声。女の子の黄色い声援も多い。


「さあ、これから皆さんお待ちかね!「愛宕坂愛リアル」のコーナーでーす!」


   拍手。


「ボクみたいなスタッフじゃなくて、本物のアイドルが登場しますからね!皆さんの推しメンはだーれでーすかー」


   耳に手を当てて聞くポーズをする。


   「あんただよー!」「つかさちゃーん!」という声が予想以上に大きくて戸惑った表情のADつかさ。


「えっと…(困惑)と、とにかく!これから本物のアイドルの皆さんが登場しますんで、ボクみたいな下っ端のスタッフはさっさとはけますね!それじゃ!」


   「女の子走り」で走り去るADつかさ。物凄い声援が鳴り止まない。


   スポットライトを浴びながらデートルックの春元真冬が入ってくる。何故か大歓声と共にブーイングも。


春元真冬「…ちょっとあの子どうなのよ。スタッフなのにあたしより人気あるってどういうことなの?(会場大爆笑)」




自宅にて


キップ「この後、一応「愛宕坂愛リアル」のステージコントが始まるんですけど…やりにくそうでしたね」


―前座があんなに歓声持っていくんじゃね。どうしてこうなったんです?ある程度予想できますよね


「半田つかさくんは「愛宕坂愛」にキャラクターとして登場してないんです」


―え?そうなんですか?


「はい。何しろ急遽決まった臨時メンバーなので色んなことに対応してないんです。前座にしたのも本編に絶対登場できないからなんです」




  テロップ「愛宕坂47メンバー 能礼亜衣のうれい・あい

廊下にて


能礼「あたしADつかさちゃん超好きっす!」


―「欲望リクエスト」に登場するキャラでしたっけ


「そーそー!あれ、駄目っすよね?ちょっとぶりっ子じゃないっすか?いつもより高い声出しちゃって」


―それはそういう役なんじゃ…というか、女の子の役だからいいでしょ


「ずるいっすよ!男なんだったらもっと女の子に対して遠慮してほしい」


―それは可愛らしさをですか?


「そーそー!ま、可愛いからいいけど」


―(迫力に押されている)えっと…これ、一応全員にお聞きしてるんでお伺いしますけど、清純派アイドルグループの「愛宕坂47」に男の子が入るということになった訳ですが、どう思われました?


「覚えてないっす」


―覚えてない…


「あったっし!つかさちゃんのお天気おねえさん超スキでぇ!!マジやばいんですってあれ!」



自宅にて


―キャラというのは他にもあるんですか?


キップ「1回きりのキャラということでいうと『お天気おねえさん』がありますね」


―それはキャラなんですか?


「メンバーの伊東まりんが同番組で実際にお天気キャスター体験をしてますし、先輩グループのBKA49の柏田雪絵を始めとした数人のメンバーは昼の帯ニュース番組で実際にお天気キャスターをしてました。気象予報士の資格は持っていなかったはずなので、純粋に読み上げるだけの役割です」


―はあ


「それとは全く違う趣旨のものなんです」


―どう違うんです?


「他メンバーのそれは、要するに「お天気キャスター役がやりたい」ってことなんですけど、半田つかさ君の場合はテレビで観たMHKのお天気おねえさんのあるあるコピーがしたいってことなんです」


―ああ、MHKお天気おねえさんのモノマネというか「そういう役」がやりたいと


「そうです。本人は中井沙里さんと岡本真理さんあたりをイメージしてると言ってるみたいです」


―お天気おねえさんマニアなんですか?


「マニアって訳じゃないけど、常々『姉萌え』というか、年上の女性に憧れる発言をしてましたからね。実際姉さん女房だし」


―普通の男は憧れてる存在に同化はしませんがね


「仕事で女装してて、10月に吹っ切れて少年キャラになるまでは嫌々とまでは言いませんが自分で望んで女装するなんてまずしないんですけど、何故かこればっかりは自分で手を挙げたみたいです。ま、とりあえず観てみてくださいよ。…驚きますよ」



愛宕坂工事中

 長い髪に楚々とした清楚な美女が分厚いセーターと長いスカート姿で指し棒と共に天気図の前で笑顔を作っている。


「はい、お天気のコーナーです」


 ささやく様な小さく爽やかな声。普段の制服姿のアイドル「半田つかさ」はどこにもいない。

 その声のトーンで淡々とお天気コーナーを再現し続ける。



自宅にて


―これは…


「ちょっともう、娯楽性すら考えずにひたすら「似せる」ことだけに特化したサービス精神旺盛な半田つかさにしては珍しいパフォーマンスです」


―ヤバいですね


「お天気おねえさんマニアにはお馴染み『では札幌から東京です』と『名古屋から那覇です』もしっかり押さえてます。異常なくらいの記憶力を持ってる半田くんのことですからある日のお天気コーナー丸暗記してきたのかもしれませんね」


―最後にお辞儀をした後、首をきゅっとして科を作って笑顔になるアイドルパフォーマンスがあるんですけど


「これ、中井さんのキメポーズです」


―本物のお天気おねえさんもこれやってたんですか?


「はい。メイクも二十代半ばから後半の女性っぽくしてますし、何と言っても雰囲気がね!ザ・お天気おねえさんというか…」


―はあ…何も信じられなくなってきました


「ちなみにこの時もバスト作ってます」


―…


「30なのに童顔だった岡本さんも巨乳で有名でしたからその再現ってところでしょう。指し棒と夜空を現す星マークが一致して魔法のステッキみたいに見えたことがあるので「魔法少女」の異名を取った岡村さんですが、その後ド変態ダブル不倫で一気に失脚してMHKから存在を抹消されるんですが、それは別の話です」


―何の話ですか一体


「未だにとても人気のあるパフォーマンスで、ここだけ切り取られて動画サイトにしょっちゅう上げられてますけど、外人はもう完全に女性だと信じてますね。コメント欄見ると」


―…そりゃ信じるでしょ


「『Oh!彼女はとても可愛いね!これだから日本女性は好きさ。名前は何ていうのかな?』とか書いてある訳ですよ。勿論英語ですが。そこに日本人が『名前はTsukasa Hantaだけど、この子は男だよ』とか書き込むわけです」


―たちが悪いですな


「ちなみに外人は全く信じて無くてとある動画のコメント欄は投稿から今までその事実を巡って大ゲンカしてます」


―何をやってんだか


「自分から立候補しただけあってつかさ君自信もお気に入りだったらしく、撮影終わった直後にカメラに向かって満面の笑みとピースサインしてるところが映像に残ってます。これは『推しここ』というDVDの半田つかさ君の巻の2巻目に映像特典として収録されてますね」


―はあ


「これが一発ネタの内の1つです」


―もしかしてまだあるんですか?


「一発ネタは流石にあと一つです」


―それは何よりで


「昭和女優さんっぽい映像がやりたい…ってことで」


―随分ざっくりしてますね


「どうやら幼少期に彼の両親はMHKばかり見ていたみたいです」


―そういえばお天気おねえさんも民放ではなくてMHKの7時のニュースのそれですね


「予算も無いのでこれは、BS番組の企画として、現在放送中のMHKドラマのセットをホンの数時間だけ間借りすることで実現しました」


―ドラマ撮ったんですか?


「そういう感じの映像に出演したいってだけなんで5分だけですよ。でも、赤いほっぺにすすで汚してモンペ履いて…寸詰まりの小さな身体が幸いしてか、まるでMHKの朝のドラマのヒロインみたいに見えます」


―…ホントだ…っていうかこれは可愛いですね


「MHKのスタッフも居ぬきで手伝わされたらしいんですけど、何故かみんな異様に協力的でたった5分の映像撮るのに5時間も掛けてます」


―5時間…


「ちなみにこちらが撮影終了時の集合写真。輝く様な笑顔とはこのことか」


―…半年続いたドラマの打ち上げとかではないんですよね?


「5分だけですよ。この後ほぼ全員のスマートフォンに2ショットで収まったそうです」


―モテモテですね


「半田つかさくんに実際に会った人はほぼ例外なく『オチる』そうです。可愛いってのも勿論ありますけど…なんというかカリスマ性…と言ってしまうと言い過ぎなのかな」


―まあ、何となく分かりますが


「この時まだ19歳か…なんで、『是非このまま次の次あたりの朝ドラのヒロインに!』なんて雰囲気になったそうですよ」


―いや、そりゃ無理でしょ


「男の子ですからね」


―なるほど、メンバーや関係者のインタビューを順に撮ってるんですけど、結構な割合の人が「本当に女の子だったらなあ」と言ってました


「ねえ。この次も半田くんのポテンシャルを最大限に引き出した名キャラクターです」


―今度は何です?お天気おねえさんもやったし、女子アナかなんかですか?


「弟です」


―え?


「弟。男の子です」


―…男の子?男の子って男の子ですか?


「はい。これはメンバーの『男装企画』の中で披露されたキャラです」


―いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ。半田つかさくんって男の子じゃないですか


「いかにも」


―『男装企画』ってそれはないでしょ


「これがあるんですわ。何も年相応の18歳の男の子そのまんまやる訳が無いでしょ。業界用語でいう「ショタっ子」に化けた訳です」


―あーすいません。何ですそれ?


「ロリコンが女児を示すならば、「ショタコン」というのは男児を示す隠語です。主に成人女性が半ズボンの年端もいかない男の子を愛でる際に使われるとされています」


―ちょっとアブない雰囲気ですね


「まあ、いずれにせよファンタジーですからね。何しろ現役バリバリの声優なんで、半ズボン…は流石にいやらしすぎるのでハーフパンツのちょっと短いくらいのスタイル…あくまで可愛らしい感じは崩さず…で臨みました」


―一周回ってますね。女の子がする男の子の扮装を男の子がしているという


「他のメンバーは毎度お馴染みのホストみたいなちゃらい感じの「男」に扮して場を盛り上げるんですが、半田くんは声優スキルを使いまくって『小さな男の子』を演じて『お姉ちゃん!お姉ちゃん!』と迫りまくります」



ATABING!

つかさ「理科おねえちゃん!」

生馬「…じたろう…」


  つかさ、照れたようにもじもじして言う。


「おねえちゃんはお隣の幾夫いくおお兄ちゃんが好きなんだもんね…ボクは…いいや。うん。お姉ちゃんが幸せになってくれれば…」


「じたろう!」


  半田つかさの演じる「司太郎じたろう」の余りの可愛さに泣きだしてしまう生馬理科。



自宅にて


―なるほどこういうことですか


「現役の声優恐るべしですな。これはもう完全にアニメの演技で培ったそれです」


―彼ってそんなに「幼少の男の子」演じた経験があるんですか?


「それほどはありませんけど、「正義戦士ジャスティスマン・アライブ」で主人公の子供の頃を女性声優さんに交代せずにそのまま演じてます。その時に経験のある女性声優さんにかなりアドバイスをもらったみたいです」


―なんか胸の奥がムズムズしますね


「皮肉なことにいつもの制服のスカートよりも脚の露出度合が高いんですよ」


―キャラクターってのはそういうことですか…


「残念ながらこの司太郎じたろうくんは二度目の披露をする前に卒業してしまいました。が、今も再登場を望む声が上がり続ける人気キャラです」


―なるほどねえ


「司太郎くんそのままって訳じゃありませんけど、その後テレビアニメで男の子の声を一度演じてますし、舞台でも主人公の幼少時代を演じました。全く無駄になっている訳ではないみたいですね」


―アイドルであっても役の幅って広げられるんですね


「役を演じたという訳ではないんですけど、半田くんはこの後卒業までしょっちゅうアニメ好きの生馬理科とか松山百合とかを『おねえちゃん』(物凄くクオリティの低いものまね)とかショタっ子の声を出してひやかしてます。その都度いちいちメロメロになって腰砕けになるのでバラエティ的には美味しい場面が作れるというか」




会議室にて

昔田吉朗こんだ・よしろう


―昔田さんはファンからは「愛宕坂の黒幕」とか「仕掛け人」とか呼ばれてるんですよね


「(苦笑)そうみたいだね」


―BKAグループで言うところの「劇場支配人」みたいな立ち位置とお伺いしましたが


「夏元先生の意向を可能な限りグループに反映するのが仕事なんで、それに近いかもね」


―「熱情台地」にはご出演なさっていませんね


「愛宕坂に関して言うと、BKAグループと違って夏元先生もあまり表に出ない方針だからあたしなんてね」


―半田つかさくんの加入にはチーフマネージャーの野中さん、半田くん専属マネージャーの荒井さんと並んで昔田さんの意向が反映しているんでしょうか?


「…これに関してだけはまあ、半々かな」


―半々とおっしゃいますと?


「普通に考えたら無いんですよ。男が加入なんて。それこそ動物やロボットが加入したとしても男は入れないでしょ」


―そうですね


「今は愛宕坂も押しも押されもせぬ人気だけど、半田がメジャーデビューしたころってまだ『知る人ぞ知る』存在でね」


―そうですか?


「うん。元々特番でのジョイントの企画だったんだよ。「愛宕坂BKA」とか「あゆ坂」とかあったじゃない」


―資料によるとその様です


「だから「愛宕坂47+半田つかさ」ってな企画だったわけ。この話調べてんでしょ?」


―はい。一応


「今じゃ美少女みたいな扱いの半田もこの頃は素材のままというか、イモ姉ちゃん気味というか…だったんで、女の子の声で歌うんだったら一時でもお揃いの制服着せちまえ!みたいなね」


―凄い話ですよね


「言葉は悪いけど一種の罰ゲームのノリでさ。戸惑って嫌がったりするのを眺める企画だったわけ」


―問題ありそうですよね


「それこそナヨっとした男だったら絶対に無いね。でもいかつい…というか粋がった男はもっとない。まるで10歳の少年みたいなぽやんとした感じだったから」


―「10歳の男の子みたい」という表現はよく使われるみたいですね


「見た目があんな感じなんで(笑)、みんな女の子みたいっていうけど、オレは逆にあいつが女の子に見えたことは無いね。あくまでも精神は男の子だよ。苦労人なのに何故か逆にスレてないのが不思議だけど」


―18歳の男の子にはみえました?


「…それは見えなかったな。10歳くらいの男の子に見えた」


―そうですか


「当たり前だけど、加入当初の頃はまだ女装にも慣れて無くておっかなびっくりだったから。いや、違うな。逆に無造作過ぎるというか」


―無造作ですか


「舞台役者で女装経験も女の子としてのお芝居の経験も豊富だったせいなんだろうね。あの年代の男の子ならそれこそ同年代の女の子の女子高生の制服みたいなアイドルの衣装を『着ろ』って言われて目の前にしたらもっと違ったリアクションがありそうなもんだけど」


―それこそ男性的なリアクションというか


「うん、そうね(笑)。衣装を前にして物凄く困って焦ったりするリアクションは撮影してるけど、それはあくまでも追い込まれた立場ってことだから。着ることそのものに対しては特に屈託がないというか、仕事と割り切ってる」


―でも、初めて制服姿でメンバーの前に登場する場面では物凄く照れてましたよ


「う~ん、難しいんだけど別に女装でなくてもあれくらいのリアクションになったんじゃないかなあ。その辺はどうリアクションすればテレビ的に面白く見えるかの嗅覚があるから」


―愛宕坂の皆さんの反発は予想されませんでした?


「彼女たちのバラエティご覧になっていればお分かりと思いますけど、パンツ一丁の変態男が追い掛けて来ても義務できゃーきゃー言ってるけどもう演技だから。本気で怖がってる子なんていないよ(笑)。何年も身体張ったバラエティやってきてるからそのくらいは平気だろと」


―免疫はあると


「カミングアウト後なんか特にそうだけど、その前からあの子たちは半田のことを『可愛い可愛い』っていじってるよ(笑)。むしろ可哀想なのは半田の方っていうか」


―例えばですけど、愛宕坂に憧れる女の子とかでこの企画が成立したと思います?


「…不思議なことに思わないんだこれが」


―そうですか


「歌手でタレントだったりしたらそっちのブランドが愛宕坂よりも矮小化されちゃうのを認めることになるし、同業者ってことで気分は複雑でしょ?お互いに」


―そうかもしれません


「かといって素人の子じゃねえ。ステージ上で煽りやらせてあげるくらいならともかく、一緒の制服ってことになると一線越える感じでさ」


―でも、男の子ならいいと…


「ちゃんと罰ゲームになってるしね(笑)。あんなに可愛いならありかなって」


―確かに可愛らしくはあります


「半田の加入に関してはこれはもう完全にファンの声に後押しされてたね。こういうのって仕掛けて上手く行くのもあるけど、やっぱり求められての方が成功しますよ」


―しかし、一週間くらいならともかく一年間というのは驚きました


「ああ、あれホントは一週間か長くても一か月くらいの予定だったんだ」


―っ!!そうなんですか?


「うん。愛宕中1~2回くらいで「もう勘弁してあげます」ってことで終わるイメージだった」


―衝撃の新事実ですね


「あ、言うの初めてだったか。多分荒井も野中も知らないよこれ」


―ファンも誰も知らないでしょ


「笑ってもらえる内にいい感じでフェードアウトしようと思ってたんだけど…思いのほかファンの反発も少なくてそれどころか好評でさ」


―そうですね


「それでずるずる伸びたんだ」


―…孤児だったことのカミングアウトについてですが


「あれは…(しばしの間)決断だったね。基本的には明るく楽しいバラエティだったんだけど、半田個人の人気がうなぎのぼりで、週刊誌にすっぱ抜かれるのは時間の問題だったから」


―レギュラー放送ではありませんでしたよね


「元々深夜だったんだけど、曜日も変えて更に深夜にひっそりやることにした」


―かなり議論を呼ぶ内容だったと思いますが


「まあね(苦笑)。実はあそこで半田は脱退する予定だった」


―えっ!?


「何か髪型も変えてたし(笑)。夏の全国ツアーも経験しちゃったし、やり残したことはまあないだろうし。唐突だけど卒業スペシャルみたいな意味合いでの特番だったんだ」


―それも初耳です


「言ったことないからね(笑)。結局やるんならレギュラー放送で卒業宣言しないと、レギュラーだけ観てる視聴者には意味不明になっちゃうからあの特番では言わせなかったんだ」


―そして


「トンでも無い大反響でさ。元々人気があったのにグループ巻き込んで大変なことになって…辞めろとか言い出せなくなっちまった(苦笑)」


―そうですね


「あそこで辞めさせたら鬼畜だよ」


―色々と運の巡り会わせがいいですね


「スターってのはそういうもんなのかもしれないね(笑)」



ネットカフェにて

女装アイドル 山拓郎やま・たくろう


―山さんは半田くんよりも前から女装アイドルとして活動されてますよね


「アイドルというか…バンドのボーカルですけどね」(引用者注:声は普通に男性のもの)


―半田くんについてどう思われました?


「可愛いですね(笑顔)。憧れます」


―言ってみれば同業者というか「キャラ被り」の後発とも言えるのでは?


「ん~まあ、そうではありますけど私は見た目はこんな感じだけど聞いての通り声は男のまんまだし、あっちは大手レコード会社所属でしょ?こっちは一応レコード会社に先日所属はさせていただきましたけど、ずーっとライブハウスで手売りで自作CD売ってた地下バンドです。全然違いますよ」


―同じ女装する男性という立場から見てどうですか?


「…お蔭さまで一部のメディアの方からよくそういう質問を受ける様にならせていただいたんですけど…半田ちゃんって厳密な意味で女装はしてない気がします」


―?というと


「私がこうやってこのスタイルで歌手活動をしてるのって、まず最初に女の子に憧れて女の子になりたかったからなんです。その延長として芸能活動になったというだけで」


―立ち入ったことをお伺いしますけど


「ホルモン投与してますよ。ヒゲも永久脱毛してるし」


―外科手術は


「まだですね」


―『まだ』ということは


「考えてはいますけど…まあそのくらいのレベルです。でももう二十代も半ばだし…どうしましょう(笑)」


―立ち入ったことをありがとうございます


「でも、どっかで読んだけど半田ちゃんって女の子になりたいと思ったことは一度も無いんでしょ?」


―そうみたいですね


「あんなに可愛く生まれてるのに…神様って仕事がいい加減ですよね(笑)」




テレビ局の楽屋にて


―改めてお伺いしますけど、女性になりたいという願望は無いんですね


半田つかさ「無いです」


―生まれてから一度もですか?


「(考える表情)…無い…と思います。というかボク、女性と結婚してるんですけど」


―いや、実は男女の意識の違いは少なくとも三種の判別法がありまして


「はあ」


―まず「性的対象」ですが、これは半田さんは女性に向いていると


「(苦笑)」


―次に「異性に…この場合は女性になりたいか」ですが、これは非ですね


「?それって違うものなんですか」


―はい。異性になりたいかどうかと、性的対象が同性か異性かは別の次元の話です


「?女性が好きだけど、女性になりたい人もいるってことですか?」


―そういうことです


「???良く分からないです。女性として女性と恋愛したいってこと?」


―世の中にはそういう人もいます


「…はあ」


―もう一つ、服装の嗜好です


「この質問なんなんです?」


―アイドルにはこんな質問出来ませんけど、もう卒業なさっているので


「…はあ」


―半田さんは異性…この場合は女性の服を着たいという願望はありましたか?


「…?着たいというのはどういう意味でです?」


―そのままの意味です


「仕事で必要なら着ますけど」


―そうではなくて、プライベートで


「プライベートで女装したいかってことですか?」


―プライベートというか、純粋に欲望というか願望として着たいかどうかです


「???(腕組みをして考える)…意味ないですよね?着ませんよ。持ってないし」


―有難うございます。良く分かりました


「最後の質問の意味が良く分からないんですけど」


―世の中には「女性の服を着る」ことで満足する男性がいるんですよ


「はあ」


―「女装趣味の男性」とかって言葉は聞いたことあるでしょ


「…まあ、ありますけど」


―そういうことです


「何が楽しいのか分からないですね。別に着心地がいい訳でもないし」


―敢えて言えば着ること自体が快感なんですよ


「はぁ…」


―着た状態で鏡を見てうっとりしたり写真撮ったり


「ああ、それで「趣味」ってことですか」


―そうです。半田さんはアイドルとして頻繁に女装してらしたし、今もタレントとして歌手として、女優として毎日のように女装されてますね


「まあ」


―それをプライベートでもなさっているのかという点と、自らの可愛らしい、或いは美しい姿を自分で観てどう思うか?という質問です


「プライベートではしないですね。意味ないし」


―意味が無い…


「消防士さんが自宅で耐火服着て過ごさないでしょ?お巡りさんが制服着たりもしないし…ボクにとってアイドルの衣装はあくまで仕事着だから、仕事が終わったら脱ぐだけです」


―そこは割り切っていると


「割り切るっていうか…(苦笑)、当然そうとしか思ったことないです」


―でも、男なのにスカートの涼しい感じとか複雑な気持ちになりません?


「着心地の話ですか?」


―まあ、そうです


「…確かどっかでそんな感じのことを聞かれた覚えが何となくあるんですけど、ボクって厳密な意味で『ちゃんと女装した』ことって多分無いんですよ」


―いや、してますよね?


「スカートの話出ましたけど、まずボクは体毛が物凄く薄くて髪の毛と眉毛くらいしか生えないんです。だから脚は特に何もしてません」


―ヒゲは?


「…あんまり…っていうか実は生まれてから今まで生えたことないんです。何カ月かに一回くらいは剃りますけど」


―それは産毛うぶげですね。女性でも剃ります


「それから、下着ですけどご存じの通り愛宕坂ってどんなミニスカートに見えても下はスパッツなんですよ。だから下の方は履いたことないし、上の方もおっぱいないからブラジャーしたことないし」


―ADつかさちゃんやお天気おねえさんはバストありますよね?


「ああ、あの時一回だけしたか…何回かしたかも」


―ブラジャーされたと


「ブラジャーっていうか、テレビ局の小道具部屋にあった『女装用豊胸ブラ』ですよ。言ってみれば男性用です」


―…それから番組でドレスお召しになった時に補正下着をされてますよね?


「コルセットね。しました」


―それ以外は?


「てゆーか下着なんて外から見えないじゃないですか。外見上女の子に見えれば見えないところはどうでもいいです」


―内側は気を遣ってないと


「ボク、舞台上でもドレスとか着ましたけど、スカートの下ジーンズにスニーカーでしたよ」


―え…


「てゆーか女優さんでも案外そんなもんですって。ウチの奥さんもそんなんだったし」


―そうなんですか?


「早変わり当たり前の舞台で下着まできっちりドレス着てる人なんていませんよ」


―これだけは聞かせて欲しいことがあるんですが


「何でしょう?」


―スカートが長いとはいえ、男の服に比べればずっと「薄着」であることは間違いないですよね?


「薄着…まあそうかも」


―その…下腹部の対策とかはされたんですか?


「(考え込んで)…ああ、アレの話」


―はい。スカートの下から盛り上がっちゃったりしたら大変でしょ?


「あはははは!確かに」


―半田さんは健全な男性なんだから周囲の魅力的なメンバーたちに囲まれてその…動物的な反応が出ることだってあるでしょ


「超・強力サポーターしてました」


―サポーターですか


「愛宕坂は露出度低いんでそれほど心配いらないけど、万が一のことがあっても絶対外からは分からない強力な奴です」


―そうだったんですか。…気持ち悪くなったりしませんでした?


「慣れですね。それにみんなと一緒にいる時は何だかんだで仕事モードだからそんな気にならないし」


―そうだったんですね



ネットカフェにて

女装アイドル 山拓郎やま・たくろう


―改めて立ち入ったことをお伺いしますけど、山さんは所謂いわゆる「女装趣味」がおありになった…という理解でいいですね?


「(苦笑)まあ、この格好の人間に改めて訊くってのもアレですけど」


   山は所謂いわゆる「ゴシックロリータ」風のゴージャスな衣装を着てバッチリメイクをしている。

   声を発さずにじっとしている写真ならば美少女に見えたかもしれない。


―そうでした。で、それはいつごろからです?


「物心ついた時にはそうでしたね」


―その頃には女装してました?


「母の部屋に忍び込んでスカート履いたりしてました」


―小学生の頃とかですか?


「もっと小さい時からです」


―サイズ合わなかったでしょ?


「そうですね。子供の頃は本当に可愛くて、行く先々で「女の子でしょ?」って言われてました(笑顔)」


―気持ち良かったですか?


「…控え目に言って最高でした」


―それからどうしました?


「二つ上の姉がいたんですけど、子供の頃はしょっちゅうオモチャにされて女装させられてましたね」


―お姉さんは理解があったと


「理解というか…まあ、典型的な弟いじめだったとは思いますけどね。ある程度までは女の子の方が成長が早いんで身体が大きくて、同じ年頃の男の子より背が高かったりするんでサイズ的に丁度いいんです」


―なるほど


「でも、お互いに中学生・高校生あたりになって思春期になってもボクの方が、姉のいないスキを突いてこっそり「姉の制服」とか着てたら大喧嘩になりました」


―そりゃなるでしょ


「苦心惨憺して母の下着を盗んで自室でこっそり着たりしてました」


―ご両親は何と?


「子供の頃は母も多少は面白がってたんですけど、高校の時に母の下着に姉の制服着て鏡を見たりしてたらそのまま寝ちゃって…」


―ありゃあ


「てゆーか『ミニスカートでベッドに座る』ってやってみたくて仕方が無かったんです(笑)。そしたらこの世のものとは思えないほど気持ち良くて…そのままっていう」


―それで見つかったと


「家族会議になりました(笑)」


―大変でしたね


「大学進学で家を出るんですけど、それまで物凄く抑圧された生活してましたね」


―大学から一人暮らしをされたと


「はい。もう朝から晩まで女装してました」


―具体的にはどんな?


「別に。普段着ですよ。でもスカートは必須(笑)。どんなに寒くてもスカート」


―それは「着ること自体が気持ちいい」ってことですか?


「まあ、そうです」


―ちなみに性的嗜好は女性の意識なんですよね?


「分かんないです。人と付き合ったことないから。性的対象が女性じゃないのは確実だけど、男性かと言われると…それも良く分からないというか」


―大学には女装して通われたりとかは


「最初の内は男の格好してました。下着は女物でしたけど」


―下着…ってことは内側は女性で外側は男性と


「はい」


―それって偶然ですけど半田つかさくんと逆ですね


「あ、確かにそうですね」


―最初の内ということですけど、大学にも女装で通われる様になったんですか?


「そうですね。もう我慢できなくなって」


―驚かれたでしょ


「バンド活動ももうしてたから「バンドの衣装」「コスプレ」だってことで通してましたけど…やっぱり問題にされましたね」


―そりゃそうでしょ


「親には勘当されて、大学も除籍になりました。女装だけが原因じゃないですけど」


―それは何とも…


「多分、私は精神が女性なんじゃないかと思うんです。だから例え外見はどんなんでも「下着」の方が大事で、「自分が今、女性的な存在になってること」が一番大事なんです」


―はあ


「半田くんはきっとどこまでも精神は男の子ですよ。お芝居で見事に女の子の仕草というか言葉遣いになれたりもしますけど、それこそお芝居ですからね。スイッチオンの時にそうなれるってことであって、スイッチオフの時は男の子ですよ。私に言わせればあそこまで女の子の外見になってるのに下着を女物にしないなんて全く理解不能ですけど…」


―なるほど


「そこが最大の違いです。半田くんからは…上手く言えないけど、『同類の香り』がしないんです」


―それは…精神が女性で肉体が男性の方のってことですか?


「そうですね。こっちがどんなに羨ましいと思ってるかなんて思いもよらないでしょうね…」



テレビ局の楽屋にて


半田つかさ「さっきの『自分見てどう思うか』って質問ですけど」


―はい


「人に見られる仕事ですから、見たうえで総合的な判断はします」


―可愛いなとか


「(首を傾げて)可愛い…かどうかは自分の価値観だけで判断は出来ないんで…まあ、色々と。そこはまだ勉強中です」


―要するに自分の姿も「素材」として見ているに過ぎないと


「そうですね」


―自分好みの女性に寄せたりはします?


「まあ、ボクも男なんで女性の好みはありますよ(笑)」


―差支えなければ


「奥さん(笑顔)」


―半田雅羅さんですね。年上の目鼻立ちのクッキリした美人というかお姉さんタイプがお好みと


「…う~ん、こう言うこと言うと『格好つけんな』って言われるかもしれないけど余り外見的なことにこだわってないっていうか、雅羅さんは雅羅さんだから…敢えて言うなら雰囲気というか…全部が好きだし」


―ごちそうさまです


「分かんないけど料理人のシェフの方って、自分好みの味付けがあったとしてもちゃんとお客さんに合わせて商品として味を作るでしょ?ボクも女装していろんな役やりますけど、そのお仕事で求められてる姿にするってだけで好みがどうこうって余り関係ないです」


―じゃあ、自分を見てうっとりしたりはしないと


「うっとりの意味がイマイチ分からないんですけど」


―嗚呼、なんて自分は綺麗なんだろう…みたいな


「ないですね」


―無いんですか?


「はい」


―重ねて質問しますけど、ということは自分の姿をその…おかずにするってこともない


「…(一瞬考えて吹き出す)!!…面白いこと考えますね」


―すいません


「無いです。間に合ってるんで」


―それは奥さんがいるから?


「はい。態々(わざわざ)別の女の人…っていうかボク男なんで」


―いや、それは分かってるんですが…まあいいです。質問を変えます


「どうぞ」


―自意識が混濁することは無いってのは分かりました


「はい」


―そうは言っても、自分が外見上可愛らしい女性に見える…少なくともしっかり女装してメイクした状態においては…ということに関しては自覚ありますよね?


「…まあ一応。今となっては…他の人にこれだけ言われれば多分そうなんだろうなって」


―余り認めたくなかったと


「自分のことなんで良く分からないです。ゴリマッチョじゃないことくらいは分かりますけど」


―別の男性から性的対象として見られることについてどう思います?


「?どう思いますって言われても…」


―イヤではないですか?


「見られる仕事なんで、そういうこともあるのかな…くらいです」


―赤の他人の男に「おかず」にされるのに嫌悪感はありませんか?


「別に。ボクはボク自身が自分の好みかどうかは分からないですけど、そういう風に使ってもらえるんならその水準には達してたってこと…なんでしょうね。そういう意味でいうなら、プロとして嬉しいですね」


―達観してますね


「職人さんはみんなそうだと思いますけど」


―男性に告白されたりしたことはあります?


「…ありますね。この業界入ってからですけど」


―やっぱりあるんだ


「どこまで本気なのか分かんないですけど…。荒井さんには芸能界にはそういう人多いから気を付ける様にとは言われました」


―その方って…名前は出せないでしょうけど、半田さんを純粋に女性としてみて告白してきたんですかね?それとも女装した男性が好きで告白して来たのか


「知りませんし分かりません」


―もしも芸能界入りしてなくて、女性ボーカルとして歌わず、愛宕坂にも加入していなくてごく普通の仕事をしていたとしたら一生女装していなかったと思います?


「してないと思います」


―したいとも思わない?


「記者さんってゴルフとかやります?」


―いや、一回もないです


「そんな感じです」


―必要ないからしないだけだと


「ですね」


―これも畳み掛ける予定で持ってきた質問なんですがここでしますね。もしも明日から今の外観が失われて、ごく普通の男性の容姿になって女装なんて全く似合わなくなったとしたらどうします?


「まあ、困りますね」


―やっぱり困りますよね


「それって、ライブとかの予定が困るって話ですよ。お蔭さまで映画の仕事も控えてるし。不本意ですけどこの身体とか顔も商売道具だから」


―仕事として困ると


「はい。関係者にどう説明しようかとか」


―ならば、仮に半田さんが芸能界を引退して一生食べて行くには困らない財産があるか、或いは外観がそれほど関係の無い仕事に就いていたとします


「はあ」


―それで明日から「ごく普通の男性の容姿」になってしまったとしたら…どうです?


「…はあ、そうなんだなとしか」


―悲嘆に暮れたりしないんですか?


「なんで?」


―だって、可愛くなくなるんですよ?


「?それこそ趣味として『女の子の姿』楽しんでオシャレしたりできなくなるからってことですか?」


―はい


「…もともとそういうことしてないんで…こう言う風に生まれついたのもたまたまだし…そんだけですね」


―未練はないと


「さっさと次の食い扶持探すと思います(笑)」



喫茶店にて

自称・女装ネットアイドル D子(仮称)


―D子さんは普段どんな活動をなさってるんです?


D子「ブログとツイッターと、あとランキングサイトですね」


―ランキング


「色んな部門があるんですよ。それの順位を上げるための自撮りの練習とかですかね」


―半田つかさくんのことについてお伺いしたいんですが


「夢…ですよ」


―夢ですか


「あんな風になれたらなあ…って仰ぎ見る存在です」


―顔とか、声とか


「全部です!身体もほっそいし、背も低いし。あたしなんて見ての通りゴツいし、声も練習したけど裏声にしかならないし…ヒゲも濃いし…」


―…でも、Web上の写真は綺麗ですよ


「加工が上手いってだけです」


―半田くんのファンなんですか?


「握手会にも行きました!ていうか大学時代の同級生に、半田くんと同じクラスだったって子がいたんですよ!女の子ですけど」


―…もしかしてA子さん?


「ご存じなんですか!?」


―話の流れの中でインタビューしました。元・同級生ってことで


「何てこと…元気でした?」


―あなたと同じで半田つかさの熱心なファンでしたよ


「そう…あたしなんてこんなになっちゃって…」


―女装する男性が半田つかさをどういう風に見ているのかってことを調査してるんですけど、何かご意見というか分析などあればお伺いしたいんですが


「悔しいです」


―くやしい?


只管ひたすら悔しいです」


―くやしいというと?


「あたしはこんなに努力してるのに、何の努力もしてないし、女になりたい訳でも無くて、女装に愛着も執着も持ってない彼がなんであんなに可愛いの?!」


―なるほど


「あんなに可愛くなって、可愛い制服みたいな衣装着て、可愛いアイドルたちに混ざって踊って…歌手として何万人を熱狂させて…一日でいいからあんな体験させてくれるなら死んでもいいです」


―羨ましいと


「…はい」



自宅にて


―半田つかさくんに憧れる人の憧憬って、「承認欲求」ってことなんでしょうかね


キップ「それはあるかもしれません。所謂いわゆるマズローの欲望五段階説ですね」


―なんでしたっけ


「簡単に言うと、人間は最初は安全とか生存みたいに必要最低限のものを求めるんですけど、そこが満たされると次は名声とかそういうものを求める様になる…って学説です」


―分かりやすいですね


「ええ。要するに『富と名声』って奴で、人はそれこそ『お金持ちになりたい』のと同じかもしかしたらそれ以上に『有名人になりたい』と思ってます。それも出来たら単に有名なだけじゃなくてちやほやされる存在にね」


―…どうなんでしょう。全員がそうだとも思えませんけど


「有名人と言っても色々ですよ。歌手やタレント、俳優みたいに顔出しパフォーマンスのスターもいれば映画監督とか小説家の有名人も大勢いるでしょ」


―なるほど


「とはいえ、私なんかは『富』があれば『名声』はいらないかなあ。お気楽にオタク生活を満喫できる方が気が楽です」


―私はある程度は世間に認めてもらいたいですけどね


「半田つかさくんのキャラクターで人気なのはその辺もあるかもしれませんね。愛宕坂に入ったのも運命なんじゃないかってくらいに自分の成功に対して淡泊というか、ガツガツしてないんですよ」


―そうですね。暖簾のれんに腕押しと言う感じでした


「何か今の日本って『努力至上主義』みたいな風潮がありますよね。死にもの狂いで頑張ることが最上みたいな」


―ありますね


「本当の才能って、飛び抜けた人が淡々とやるパフォーマンスを見せてもらうものなんじゃないかという気がします。有象無象の凡人が死ぬほど努力して身に着けたパフォーマンスはそれはそれで尊いものではありますけど、ありがたみに欠けると言うか」


―耳が痛い話です


「元々見世物小屋で奇人変人を見るのの延長だったわけです。テレビなんてのは」


―いや、受像機の意義は他にもあるでしょ。ニュースとか報道とか


所謂いわゆるテレビジョンの発明はエジソンあたりだと思いますが、面白いのは彼は遠隔地同士で映像を送受信できるシステムを発明はしたものの、どう使うかについては余り明確なビジョンがありませんでした」


―そうなんですか


「どうも『テレビ電話』みたいな「連絡を取るための通信機」の様なイメージであったみたいですね」


―はあ


「やがてアメリカにおいて世界初のテレビ局CBAが開局します。ぶっちゃけ言えばこれも「テレビを売るため」です。映るものが無ければただの箱ですからね」


―え?


「映像そのものを流してその合間にスポンサーのCMを流して広告料を取り、商品の代金に転嫁させることで実質無料で番組を流す…というこの仕組みを発明した人物は謎とされています」


―はあ


「テレビの存在意義なんて後付けです。まあともかく、半田くんのパフォーマンス越えてその特異な存在を観察させてもらう状態になっていたのは間違いないですね」


―存在ですか


「昭和のプロレスなんて、オンドレ・ザ・ギガンテスみたいな超巨漢レスラーとか、ブードゥー・ザ・カーペンターとか、ハイスタック・オモホーンみたいな超肥満レスラーとかを観察するもんだったじゃないですか。日本人だってマウンテン鳥羽みたいな2メートル越えの大男とかいたし。アマゾンの野人みたいなのやら、全身の毛が一本もない異様な人間とかザ・デストラクタ―みたいな大男とか」


―まあ、そういう面もあります


「それがどんどん『普通の若者』たちが戦うスポーツになっていった訳です。洗練はされてもプリミティブな驚きからはどんどん遠くなる」


―半田くんにはプリミティブな驚きがあると


「誰の目にも明らかですが、他の愛宕坂のメンバーが年を経るごとにどんどんと別人のように垢抜けて綺麗になっていくのと同じように、若干野暮ったさを残していた半田くんもまるで幼児退行を起こしたかの様に若々しく…もっと言えば「幼く」見える様になっていきます」


―そうなんですよ


「個人的には当の女性であってもアイドルなんて10代が限界だと思います。18歳とまでは言わないけど」


―えっと…当の愛宕坂は一期生は一人残して全員が二十歳越えましたし、最年長は二十五歳ですが


「個人的にはと言ったでしょ。それに年長組は何年も前にモデル路線にシフトしてますから純然たるアイドルとちょっと趣を異にします」


―はい


「18歳ともなれば男女の成長スピードは逆転して、男性の方が大人っぽく見えるでしょう。仮に愛宕坂みたいに清純派アイドルの女の子を男の子が演じようと思ったならばそれこそ10歳から13歳くらいの子を連れてきてやっとどうにか恰好が付くかってところです」


―でしょうね


「それを18歳の男の子が演じるってのは全くあり得ません。お互いの高校時代を思い出してもらえば分かるでしょうけど、下手すりゃ17歳でおっさんみたいなのとか、18歳で子供二人くらいいそうな奴とか普通にいたでしょ?」


―(何度も深くうなずく)いましたいました。ハゲ始めてる奴とかゴリラみたいに毛むくじゃらの奴とかもね


「半田つかさくんのことを調べるにあたって、避けて通れないのでかなりの自称『女装アイドル』とか、ネット上の素人で女装好きの方々を調べましたけど、ほぼ全員が物凄くお化粧が上手い方なんですよ」


―まあ…そうでしょうね


「元の造形も相当綺麗だということは容易に推測が付く『美女』ばかりではありましたが、どうしたって「作り込んだ美」になっていくんです」


―歌舞伎とか


「私なんかは『京劇』みたいに見えましたけどね」


―中国の?それほど厚塗りだってことですか


「そうですね。物凄い美貌なのは間違いないんですが、反面あそこまで塗りたくれば多少は整うわなあ…と思い始めましたよ」


―キップさんでも?


「静止画というか写真の一枚くらいならね。冗談でもゴメンですけど」


―同感です


「カミングアウトの10月頃を境に、舞台上で歌ったり踊ったりの『アイドル・歌手モード』の時でない状態において「少年っぽさ」が全面に押し出される様になってきた…と申し上げました」


―はい


「それと反比例するかのように、外見…肉体的容姿はどんどん女性らしさ…というか「思春期の少女」らしさ…を増して行ってしまった訳です」


―どうしてでしょう?


「本当にホルモン異常だったのかもしれません。とはいえ「見られる」ことで洗練されたという面もあるでしょうね。どもあれこのバランス感覚は大事で、少々の少年らしさでは美少女アイドル性を打ち消されないほど可愛くなって行って、それだからこそ少年的な挙動が可能になった…という面もあります」


―ニワトリが先か卵が先かですね


「先ほど『女性らしさ』と言いましたけど、それはセクシーさという意味ではなくて『少女らしさ』と言う意味です」


―またややこしい話ですね


「本人は盛んにメイクのことを言いますけど、元々ナチュラルもいいところのメイクっぷりで恐らく10月以降は限りなくノーメイクに近いくらいでしょう」


―ですね


「これ、『女装アイドルたち』と真逆です」


―というと?


「女装アイドルたちは「肉体は男」で「装い(メイクなど)は女」の状態なわけです」


―そうですね


「半田つかさくんは「肉体が少女」で「何もしない」状態なんです」


―…普通に性転換じゃないですか


「いや、実は所謂いわゆるニューハーフの方々とかも『女性の作り込んだ美』の状態を目指します。というより目指さざるを得ない」


―あ…


「元々が男性なのでその要素を覆い隠すと言う意味もありますが、当の女性にしたところでどんどん容姿は衰えるのでそれを糊塗していく訳です。男性の方がより強く作り込む必要がある」


―それでメイクの濃い女性とニューハーフの人は似て来るのか…


「半田つかさくんも基本的には人間である以上その運命からは逃れられないはずでした。ところがドンドン若返って行き…少なくともそう見えて…「作り込まない美」に近寄って行きます。これは大げさに言えば余り人類が体験したことが無い存在です」


―なるほど


「加えて言うと…というかこれがキモなんですが」


―なんです?


「彼は自分の容姿に関して非常に無自覚でした…より正確に言うと『無自覚キャラ』でした」


―無自覚


「外見はどう見ても美少女アイドルにもかかわらず、男の子のつもりだから全く意識していない」


―う~ん、それは無理がありますよね


「案外そうでもないんです」


―といいますと?


「我々はテレビ画面なんかで他人を見ます。言ってみれば離れた所から客観的に全体を見られる訳です」


―まあ、そうですね


「ところが当の本人は鏡でもない限りは自分の姿を視認できません」


―…まあ…一応そうではありますが…


「身体はギリギリ見下ろせば分かりますが、主観視点と客観視点ではかなり違います。ましてや「顔」なんて鏡やテレビ放送を視聴するなどしないとまずわかりません」


―顔はそうですね


「だから意識や言動、挙動と外見がどんどん乖離していくんです」


―ちょっと待って下さい


「何でしょう」


おおむね分かるんですけど、それにしても男の服と女の服は相当違うはずです。幾ら愛宕坂の衣装が長いスカート丈を基調にしていて、その中はスパッツだったりするにしても「女装してる」意識が全くなくなるなんてことが起こるとは思えない

 少なくとも男がスカート履いてることを忘れるなんてことがあるとは思えないんですが


「全く無くなっているとは言ってません。少なくともそういう風に見える様に『結果として』演出していると言ってるんです」


―しかし…


「私もそんなに長時間女装した経験なんかありませんけど、少なくとも例えば温泉宿に泊まって浴衣ゆかたを羽織ったとしますね」


―浴衣ね


「浴衣ってのは構造的にはワンピーススカートと同じです」


―また随分突飛なことを


「でもそうでしょ?全身巻きスカートというあたりがちょっと違うくらいで」


―まあ…無理やりそう言って言えないことも無いことにします


「長時間着っ放しだったとして、ずっと浴衣を着ていることを意識し続けていられるかといえば…どうです?」


―それにしても男が女の格好する訳だから…


「それこそ固定概念による思い込みですよ。男の服女の服なんてのはその文化が勝手に決めてるだけで動物的本能には何の関係も無い」


―しかし…


「厚手のストッキングなんて着心地はズボンと変わりませんよ。ズボンが大げさならステテコとか股旅とかと似たようなもんです。その上からスカート履こうがズボンと着心地なんて似たようなもんでしょ」


―無茶な


「何もかも素材のまま転がしてある訳じゃありませんって。もしも「外見は少女、中身は少年」がやりたいんだったら等の美少女アイドルたちにガサツに振る舞わせればいいことになってしまいます」


―そうですね


「一件乱暴で少年ぽく見えても、下品にならないギリギリの塩梅あんばいで振る舞ってる訳です。こればかりは口でいくらグダグダ説明しても分かりにくいでしょう」


―まあ…


「今その瞬間の自らの外見に全く無自覚な男の子…という特異なキャラは、無垢なものを求める大衆心理にも合致したんです」


―無垢なものですか


「それこそ自らの美しさにうっとりして「どう!見て!」というパーソナリティもありえたんでしょうけど、大衆はそういうものは望んでいない。少なくとも現代日本においては」


―む~ん


「制服を思わせる清楚な衣装でありながら、少年…それこそ小学校低学年くらい…にも見える様なやんちゃっぽい雰囲気を漂わせたかと思えばじっとニコニコしていれば癒し系の美女にも見えるし、いざ歌いだせば立派なアーティストです」


2016年12月 19歳 2箇月 紅白歌合戦に出場

2017年 1月 19歳 3箇月 握手会に初参加

2017年 2月 19歳 4箇月 グループ17枚目シングル発売(唯一にして最後のセンター曲)

2017年 5月 19歳 7箇月 卒業


―順番に見て行きたいんですが


「一応紅白歌合戦と言う風にこの略年表だとなってますけど、新曲発表の度に歌番組に出演しています。朝のニュースバラエティやワイドショーのワンコーナーなんかの出演は数えきれません。公式サイトもフォローしきれてないくらいだから。むしろこういうのは熱心なファンによるまとめブログとかを追っていた方が分かるくらいです」


―なるほど


「10月のカミングアウトの放送翌日から1週間くらいはスポーツ新聞やワイドショーなどで取り上げられる機会が増えました」


―キャッチーな話題ですからね


「自分以外の家族全員を殺されてる形なのでショッキングすぎるんですけど、まあ“それにもめげずに夢を掴んだ”みたいな『いい話』路線に持って行けたのが良かったです」


―夢を掴むって…18歳の男の子が女装してアイドルグループに混ざって活躍するのが「成功」の姿なのかという話はありますけどね


「彼は声優でもあるので、『成功』と言ってあげてもいいんじゃないかと」


―確かにこの段階になっていると愛宕坂47の知名度もじわじわ上がっていましたし、連動して半田つかさくんの知名度も上がって行きましたね


「何しろ、普通に考えれば『変態』ってことになりますからね。ポリティカリー・コレクトネスで表立っては差別発言が使えないことになってますけど、その実『オネエ系』タレントさんをいじり倒したり、女性のお笑い芸人を「ブサイク」ってことで笑いものにしたりといった世界的に観るとありえない論理がまだまだまかり通ってる日本の放送業界ではありますが、LGBTの人を嘲笑することは流石にやってません」


―そりゃね


「結局、この時点に至っても半田つかさくんは「どっちなのか?」の共通認識が、世間的…言ってみればその辺のおばちゃんレベルで…は無かったということではないかと」


―う~ん


「恐らく世界的に見てもレアな存在だったと思いますよ。普通は『男の子なのに女の子アイドルグループに所属』ってことになれば、間違いなく「あっちの人」です」


―えーと…性同一性障害とかそういうことですよね?


「ええ。それが「たまたま物凄く可愛く生まれついただけの単なる男の子」で、純粋に仕事としてやってます…というのは「見立て」導入などによってアイドルファン…愛宕坂ファン…には受け入れられて来たんですが、『世間一般』に浸透するのに、6月の加入から10月までの5か月を要したってことだと思います」


―5か月ですか


「ええ。二重三重にひねくれた『設定』ですからね。世間的に見れば『アイドル』なんて最も浮世離れした存在ですよ。歌手、タレント、お笑い芸人、役者、女子アナ、スポーツ選手、ニュースキャスター、政治家…マスコミに登場する「有名人」なんて大勢いますけど、その中でも最もお気楽かつ馬鹿馬鹿しく見えるのが「アイドル」といってまあ間違いないでしょ。男女問わずにね」


―…そうですね


「それこそ歌舞伎の女形おやまなら「社会的意義」も見いだせるんでしょうけど、「アイドル」ってことになるとそこから半笑いですからね。ましてや男の子が女装してるなんて…ですよ」


―はい


「ここでまた「実はあの半田つかさには壮絶な生い立ちがあった!」みたいな報道がされたことで、初めて半田くんの存在そのものを認識した人もかなりいた訳です」


―そうなんですか?私はアイドルにはかなりうとい方だったと思いますけど、「男の子アイドル」の話題は小耳にはさんではいましたよ


「記者さんは何だかんだ言ってもアンテナは高い方ですって。世間には信じられないほど流行というか世の中のことに感心の無い方も多いんです。テレビなんて見なくなったなんて人も多いし」


―はあ


「半田くんって引きずるタイプじゃないし、人間みんな自分の生い立ちを反芻しながら生きてる訳じゃありません。プロフェッショナルである半田くんは目の前の仕事を一生懸命やるだけだから、『事情を初めて知った』世間とは温度差があったのは否めないでしょうね」


―とはいえ、以前と同じ目では見られないですよ


「そうですね。自叙伝の執筆依頼も複数あったみたいですし、実際『聞き書き』の形で公式に伝記が出版されました」


―これでしか知らない人も多かったでしょうね


「これは一応公式のお墨付きがありますけど、勝手に『謎本』めいた出版物が私が確認しているだけで2冊出版されています」


―すいません『謎本』って何です?


「80年代後半から登場するサブカルの一ジャンルで、国民的アニメなどの「裏事情」を勝手に詮索して楽しむ…という体裁の本です。公式のお墨付きをもらう場合もありますが、多くの場合は勝手な推測と妄想ばかりを書き連ねてあるだけです。著作権もクリアしていないので、図版も全く無い事が多くておどろおどろしい扇情的な見出しが特徴的な…それでいて結局は地味な書籍です。多くはソフトカバーですね」


―それの半田つかさ版が出たと


「はい」



階段にて


―カミングアウト後しばらくのことについてお伺いしたいんですが


「う~ん…あの頃は正直つらかったですね」


―つらかったというのはどういう風に?


「ある日から急に孤児になった訳じゃないんで、ボクとしては一応自分の中では折り合いがついてるし、日々の仕事も忙しいんだけど、テレビ局のスタッフさんとか妙にやさしくなるし」


―…同情してくれたと


「なんでしょうかね…。ボクあんまりファンの方と触れあえる機会とか無かったけど、たまに会う人みんなその話降って来るし、ワイドショーの一言コメントでも何かそっちで言わせようとするし…別に今までと同じ調子で構わないんですけどねえ。そんなことよりもっと面白くしてほしいというか」


―それこそ「おい!オカマ!」とか言って欲しいみたいな


「別にオカマでなくてもいいですけど…気楽にいじって欲しいというか」


―でも、10月を境にアイドル活動以外にも活動の幅が広がったんですよね?


「結果的に良かったってことになるんでしょうね…。知名度に貢献出来たってところはあるかもです」


―知名度ですか


「どうしてもボクみたいなのって、「あああっちの子ね」で終わっちゃうんだけど、「純粋に仕事でアイドルやってる普通の男の子だ」ってところまで認識してくれる人の数は増えました」


―いや、「普通」ではないと思いますが


「…意味は分かるでしょ?」


―はい


「亡き妹の為に…みたいな見出しとかって、分かりやすいんでしょうけどちょっと違うんですけどね」


―そうなんですか?


「もう死んでから3年は経ってるし、毎日位牌と会話してるからもうちょっと身近なんですけど…やっぱマスコミの方は悲しみを乗り越えて…みたいなトーンにしたがるんですよ」




会議室にて


―カミングアウトを経た後の一番の違いはなんでしょう?


荒井「ファンレターの質というか傾向が違ってきましたね」


―というと?


「私のところで選り分けるんですけど、どうしても「オカマ野郎」とか「変態」とか「羨ましすぎる!殺すぞ」とかが一定数混ざってたんですけど「勇気づけられました」とか「今まで偏見の目で見ててすいません」「感動しました」とかが増えましたね」


―…現金ですね


「この件について本人とも話しましたけど、半田自身は余り望んだことじゃなかったみたいですけど、結果オーライだったってことにしようよって言いました」


―どうして不満だったんでしょう?同情はいらないってことなんでしょうか?


「多分そんなところじゃないかと思いますけど、…こう言っちゃ何だけど、人気が出てそれなりに多くの人に認知されるようになる人間だって一握りなんだから、使えるものは何だって使えばいい…って感じのことを遠まわしに伝えましたよ」


―確かに


「同情も増えたんですけど、…上手く言えないんですけど、半田が多くの人に「人格」として共用されるきっかけになったんじゃないかって」


―どういう意味でしょう?


「テレビで見かける美人とかアイドルとか…何でもいいんですけど、大抵は「どんな人か」なんて知らない訳です」


―そうですね


「洪水みたいな報道のお陰で“こう言う人生を歩んできた”ことが認知されましたからね。「男なのに女の子みたいに可愛い」とか「歌がムチャクチャ上手い」とかって実はどうでもよくて、「その人について知る」ための『きっかけ』が提供された形になったことが大きかったんじゃないかと」



自宅にて


―荒井さんはそういう風におっしゃってます


キップ「正にそうだったと思います。別に彼が女装アイドルじゃなくても同じだったと思います」


―そうなんですか?


「ここまで壮絶なのは珍しいですけど、人間誰しもそれなりに山あり谷ありで来てますって。ポイントは『機会』です。チャンス」


―チャンス


「愛宕坂47に加入して5か月、カラオケ番組の初出場から数えると一年強の活動期間があります。この時期に発売された週刊誌などは大きく紙面を割いて特集しています。一応ここに手に入る限りは集めてありますが」


―これまた凄いですね


「半分くらいは本人にもインタビューしてます。芸能人をやっている人のメンタルの強さって我々一般人には想像もつかないことが多いんですが、これだけ延々過去をほじくられることを繰り返してそれに引きずられないってのは凄いと思います」


―そうですね


「テレビやインターネットなどのリアルタイム速報メディア及び週刊誌が約2週間、怒涛どとうの報道を繰り返し、遅れて月刊誌なども後追いし、その後単行本などの出版物が続きます」


―一色ですね


「ちなみにアニメ・ゲームなどでは明らかに半田つかさくんを思わせるキャラクターなどがちらほら登場しつつありますけど、ここに来て設定にも反映したりしてます」


―…これはこれで節操が無いですね。もしかしてそういう研究書なんかも出版されたりしてるんですか?


「研究書というと大げさですけど、コンビニに置いてある都市伝説とかゴシップ漫画解説みたいなザラ紙の分厚い本なんかで特集されたりはしてますね「こんなにいる!半田つかさインスパイアキャラたち!」って」


―あ、ホントだ


「ちなみにライターとして参加してます。というかこの項殆ほとんど私の書きおろしです。他の方の記事が薄くて話にならなかったので」


―え?プロだったんですか?


「これっきりですよ。原稿料は一応もらいましたけど…高校生のお小遣いくらいですね。プロのライターになんかなるもんじゃないですね」


―耳が痛いです


「何だかんだでこの怒涛どとうの報道合戦が一段落して、『普通のイロモノアイドル』の位置に戻って来るのに2か月くらいは要したと思います」


―「普通のイロモノアイドル」って…


「あのまま消えるか、扱いにくい位置に収まって線香花火みたいに消えるか、全く方針転換して各地を『講演』しながらドサ周りする「文化人」になるか…という危うい時期だったと思います」


―そうなんですか?


「恐らく意図してテレビに出れば「お気楽ノー天気バカ娘」っぽい男の子路線ではしゃいで、シリアスな空気を打ち消そうと躍起になってましたね」


―そういえばそんな覚えがあります


「ただ、どうしても視聴者の疑問としてあった『幾ら可愛く生まれついたといっても、どうしてよりによって女装してアイドル活動なんかしてるの?』という疑問には、必然的に答えた形になりました」


―あ…


「“生活のため”ですよ。そうとしか言えない。若干18歳で天涯孤独の孤児ともなれば使えるのは身ひとつです。芸能活動くらいしか出来なかったんです」


―む~ん、でもそれだと益々同情が集まってしまいそうですね


「食べるためにしたくもない女装をしてる…だと生活の為に身を売っている…というのと余り変わらないですからね」


―…そういう風に見えますよね


「実際、地下劇団の舞台俳優なんて無収入みたいなもんです」


―でしょうね


「テレビに出演してるみたいなそれなりに顔も名前も売れてる俳優さんでも『収入がわずか』なんてレベルを越えて『手出し』ということもあるみたいです。赤字ですね」


―赤字


「「舞台でお金をもらう」じゃなくて「お金を払って舞台をやらせてもらう」レベルです。これじゃあ食えない」


―ヒドいですね


「ましてや当時15歳ですからね。実績も何も無い。だからお芝居の稽古と共に朝から晩までバイトで働き続けました」


―はい


「劇団の紹介…バイトのね…もあって頑張り続けます。この頃にお昼ごはんはコンビニのカップそばを130円で買ってお湯を多めに注いで食べてた…という話に繋がる訳です」


―お昼代が130円ですか


「自炊してお弁当と言う手もあったみたいですけど、工事現場みたいに作業が押したりすることもあった場合もあってこれに落ち着いたみたいですね」


―育ちざかりの子がそれじゃ足らないでしょ


「足らないでしょうね。とはいえ「愛宕中」なんかのエピソードが本当なら彼は大食いが多いこのグループにあってかなりの小食なんで、効率よくエネルギーに変えられる体質なのかもしれません」




愛宕坂工事中・特別編


つかさ「それでたまに…たま~に…二週間に一回くらい『贅沢』する日があるんですよ!」

設楽「…どんな?」

つかさ「いつもは130円のカップそばだけど、その日だけは170円にするんです!カップも大きいし、天ぷらも後のせでサクサクなんです!(満面の笑み)」



自宅にて

キップ「基本的には笑えるトーンのはずなんですけど、余りの極貧生活に両親とも揃っていて少なくとも食生活的には恵まれていたメンバーたちは静まり返って何人かは泣いてます」


―…こんな話聞かされたんじゃねえ


「まあ、本当の極貧はこんなもんじゃないんですけど、それでも辛いことには変わりない」


―いや、辛いでしょ


「とはいえ、この熱い「カップそば」トークがメーカーの目にとまってカップそばのCMをゲットするんだから世の中どう転ぶか分かりません」


―あ、それ見覚えがあります


「CMってのはギャラとして一番太い…と言われてますからね。少なめに見積もっても1~2千万というところでしょう」


―…カップそば沢山買えそうですね


「多分アイドルとしては月給制でしょうから彼個人に入る訳じゃありませんけどね。愛宕坂47に加入中に個人のCMを決めたメンバーは実はそれほどいないんですが、その内の一人になりました。ちなみに記者会見ではギャラに加えて「カップそば1年分」も送られました。これも朝のニュースバラエティで流れたんで一部では有名ですね」


―ちなみにどうしてカップラーメンではなくてカップそばだったんでしょう?


「値段が若干安かったということと、毎日食べるので健康面に配慮したと言うことかもしれません。比較問題ですけど糖質も少ないし」


―余り意識したことがありませんでした


「このCMをきっかけに、特に一人暮らしの若い女性に「ラーメンに比べてもヘルシー」であるという理由も相俟ってカップそばが非常に売り上げを伸ばしました。先ほど記者さんがおっしゃったようにカップラーメンは知っていてもカップそばの存在を知らなかった層にも受けてたことと、ある意味において最も安価にして汎用性のある「愛宕坂のキャラグッズ」と化したんです。数百円でクリアファイルだのなんのといったグッズを買っても旬が過ぎればただの痛い石油製品でしかないですけど、200円もあれば「食べられるグッズ」が買えるんだからね。それも相俟ってかキャンペーングッズ欲しさに大量に箱買いしたファンもいたみたいです」


―あ…


「売り上げは直後に2割増。各社が競う様に新製品を出したこともあって、最大2倍にまでなりました」


―そんなに…


「今は若干落ち着いていますけど、基本的には市場が拡大したといえます。このメーカーでは半田くんを「カップそばの女神」と呼んで今も足を向けて眠れないと言ってるそうです」


―女神…


「まあ、そんな風に美談にしてますけど基本的には安かったからです。おそば屋さんに行ったらどんなに安くても400円くらいはしますからね」


―まあ、そんなもんでしょ。高いと7~800円はしますよ



愛宕坂工事中・特別編


つかさ「あと、紅茶のティーバッグを箱で買ってきて最低4回くらいは使ってました」

相良「4回って…最後の方、何の味もしねえぞそれ(笑)」

つかさ「そうそう(笑)。だから一度に4つ使うんです。干からびてるからお湯を吸っちゃってお湯の量が半分くらいになるんですよ(笑)」

火山「大変だな」

つかさ「そこに風味付けのミルクを垂らして飲むんです」

相良「牛乳買う余裕はあるんだ」

つかさ「胃が荒れてて…お腹すいたところにミルク入れない紅茶飲むと吐いちゃうんですよ(笑)。出るものないのに(笑)」



―…(絶句)


「この状況でお芝居の稽古をし、朝から晩まで働いて、受けられるアニメのオーディションは全て受けまくっていたんですから…愛宕坂のレッスンで少々怒鳴られるくらいじゃ平気ってのも当然です。どんな過密スケジュールでも泣き言一つもらさないそうですけど、この頃に比べたらぬるま湯みたいなもんでしょうね」



愛宕坂工事中・特別編


相良「昼は分かったけど、夜は?ちゃんと食べてたのか?」

つかさ「牛丼屋のバイトって4時間で「並」を一杯食べられるんです。あと、コンビニバイトで廃棄のお弁当もらえたんで…店長とマネージャーがシフトに入ってない時ですけど」

火山「コンビニ弁当か」

つかさ「不定期なんでなるべく大事にして…食べきれない時は奥さんがもってた冷蔵庫の中の冷凍コーナーに入れて食べてました」

相良「…どうだった?」

つかさ「美味しかったです!っていうかこの世にマズいものなんて無いです!…量を食べられないからなるべくよく噛んでじっくり味わいながら一つの廃棄弁当をふたりで分け合って食べてました」

相良「いや、幾らなんでも金なさすぎだろ。そんだけ働いてるのに」

つかさ「高校入った時の奨学金も返済しなきゃいけないし…妹の治療費とか葬儀代とか…あともちろん家賃とかも」



「過去の振りかえりと同時に結婚したころのエピソードもほじくりかえされます」


愛宕坂工事中・特別編


メロンガイ相良「奥さんと結婚したのが幾つの時だっけ?」

半田つかさ「18になった日です」


   スタジオから「きゃー」と言う声。


メロンガイ火山「早いね(笑)。ガマンしきれなかったか」


   軽く笑いも起こるが、すぐに「ええー」と言う非難のトーンになる。


相良「え?でもまだ1年経ってないんだよな」

つかさ「去年の11月なんで」

相良「反対されたろ?」

つかさ「(笑)そりゃもうムチャクチャ」

火山「奥さん3つ上だっけ」

つかさ「はい。今21で、最初に会った時はボクが15であっちが18でした」


   「きゃー」と盛り上がる声。


相良「いつ結婚しようと思ったの?」

つかさ「会ってすぐです」

火山「運命だと思った」

つかさ「(こともなげに)はい」

相良「っても18歳の娘さんの親としては反対はするわなあ…」

つかさ「一応ごあいさつには行きました」

相良「奥さんのご両親に?」

つかさ「はい」

相良「幾つの時?」

つかさ「16の時です」

火山「…何て言ってた?」

つかさ「…全く話なんて聞いてもらえませんでした」

相良・火山「…」

つかさ「ボクって今もこんなんだけど(愛宕坂の制服衣装姿を自分で指す)…当時はもっとヒョロヒョロで「女子中学生みたい」ってよく言われてました。まともに職にもついてないし…」

相良「で?どうなった」

つかさ「勘当されました」


  ざわつくスタジオ


相良「勘当!?…奥さんが!?」

つかさ「はい」

火山「その場で?」

つかさ「同棲して1年位してたことがバレて…。大ゲンカになって売り言葉に買い言葉で」

相良「奥さんが」

つかさ「ええ。ウチの奥さんも言い出したら聞かないから(笑顔)」

火山「それでお金が無いんだ…奥さんの実家からの援助ないのかって聞こうと思ってたんだ」

つかさ「勘当はともかく、折角入った大学辞めさせる訳には行かないからその分ボクが働こうって」


  どよめくスタジオ


相良「そりゃ無茶だよ…」

つかさ「え?でも何とかなってましたよ。奥さんもバイトしてたから共働きだし。カップそば美味しかったし(笑)」



―なるほどこれは寄付が殺到するわけだ


「ただ、非常に危ない素材もあるんですよ」


―なんです?


「都内のある大学で行われたトークショーの模様です」


―映像があるんですか?


「はい。封印状態に近い扱いですけどね」


―何が問題なんでしょう?


「彼の人生観みたいなものですね」


―人生観ですか



  質問者1 女子高生くらいの女の子。

質問者1「あの…半田つかささんに質問です」

つかさ「はい」

「私…アイドルになりたいんですけど、どうしたらいいですか?」

「オーディションに応募してください」

  聴衆、軽く笑う。

司会者「あの…何かアドバイスとかありませんか?」

「アドバイスですか」

「はい」

「私…高校でも目立たない性格で…何も取り柄が無いんですけど、私でもアイドルになれますか?」

「オーディションに合格して、脱退しなければなれます」

  聴衆、また軽く笑う。

  半田つかさ、どうしてみんなが笑っているのか怪訝な表情。

「あの…ボクからも質問いいですか?」

「彼女にですか?」

「はい」

「どうぞ」

「アイドルってどんなアイドルのことです?」

「それはその…愛宕坂47みたいな…(真っ赤になって俯いてしまう)」

「じゃあ、愛宕坂のオーディション受けてください」

  聴衆、また笑う。

「お幾つですか?」

「18歳です」

司会「半田さんと同い年ですね」

「そうですね…頑張ってください」

「あの…歌のレッスンを受けた方がいいとかダンスレッスンを受けた方がいいとかそういう、もうちょっと具体的なアドバイスというか…」

「…?すいません。良く分かりません。えっと…さっきの質問者さん」

「…(消え入りそうな声で)はい」

「今までオーディションは何回くらい受けられました?」

「…まだ…一度も…」

「受けて無いの?」

「だって…あたしなんか受かるかどうか分かんないし…」

「でも、受けなきゃ絶対受からないよ」

「受ける前に練習とかしなきゃいけないかなって…」

「ボク、最初のアニメの役が決まるまで20回オーディション受けたよ。バイトしながら」

「それはだって…才能あるし…綺麗だし…」

「?…声の仕事だから見た目関係ないよ。才能も何もガヤとモブで受かったんだよ」

司会「あの…とりあえずこの方は以上ということで…」

質問者1「…すみませんでした(半泣きの声で)」

「はあ…」



―全然噛み合ってませんね


「アドバイスくれって言われてるのに「いいからオーディション受けろ」としか言ってませんからね」


―彼にとってはアニメの仕事は「自己実現のための手段」なんかじゃなくてとにかく「生活のため」ですから、そりゃ必死さが違いますよね


「ややこしいのは、それなら『必死ならいいのか』っていうと決してそんなことは無いんです。彼は間違いなく「お芝居」に天分がありました。生活の為に基本何でも出来ますけど、「演じる」ことがもう生まれつき好きだったんですね」


―練習はしてるんですか?


「彼にとっては「お芝居」は「お芝居そのものが上手くなるため」の練習をするようなもんじゃないみたいですね。個々のお芝居で練習はしますけど、それはその芝居のセリフを覚えたり、演出家にアジャスト(対応)するためのものであって、「お芝居そのものの練習」はしたことが無いんです」


―天才であると


「いや、恐らくムチャクチャ努力はしてるのに自覚してないんですよ」


―努力の天才だと


「確かホームラン王の選手だったと思いますが、『どんな練習をしているか』と聞かれて「特に何もしていない」と答えたんですけど、寝る前に200回の素振りをしていたことが分かります」


―してるじゃないですか


「いや、練習と言う意識すらないんです。寝る前に200回の素振りをしないと落ち着いて眠れないからしていただけで、練習をしようという意識もなかった。だから「何もしていない」と答えたんですね」


―…当たり前の生活の一部だと…そういえば幾田絵理さんもそんな感じのことを言ってました



  質問者2 二十代中盤くらいの年齢だが、若々しく年齢不詳気味のファッションの女性

質問者2「あの…私、声優になりたいんですけど…どうしたらいいですか?」

つかさ「はい」

司会者「半田さん?」

「えっと…オーディションに応募してください」

「学校とか…オススメのところとかあります?」

「?…ボク、声優さんの学校行ったことないんで分かりません。すいません」

「じゃあ、どんな練習をすれば…」

「?(不思議そうな顔)練習…何の?」

「その…声優さんの」

「練習もいいけど、本番の方がいいよ。良かったらこの後オーディション行こうか」

「ふぇえっ!?」

  物凄く驚いた顔。会場もざわつく。

司会「あの…それってアニメのですか?」

「はい。一応オファーがあったんですけど、行き違いがあるといけないんでオーディションやってもらうことになったんです」

質問者2「それって…プロの方もいらっしゃるんですよね?」

「プロって…アニメに出たことがある人ってことなら多分何人かいると思うけど」

「無理です!あたしド素人だし…」

「???(目を見開いて首を傾げる)…やってない内から何で無理なの?」

「だって…まだ卒業もしてないし」

「あ、生徒さんなんだ」

「はい。週一でバイトしながら通ってます」

「じゃあ問題無いですね。行きましょう」

「あたし、申し込みもしてないし」

「???何で申込みしてないと無理なの?」

「だってそりゃそうでしょ…?」

「オーディション受けられる事務所が指定されてるんならともかく、誰が来てもいいと思うけど」

「だって、あたしみたいな無名の誰も知らないのが来ても追い返されるだけです」

「追い返されればいいじゃん」

「…ぇ!?」

「受けたいんです!って言えばもしかしたら『じゃあどうぞ』って言ってくれるかもしれないし」

「でも…まだ上手くないし」

「?じゃいつ受けるの?経験者じゃないと受けられないんだったら永遠に無理だよ」

「今の段階じゃきっと受からないし」

「受かるまで受け続ければいつかうかるよ」

「でも、もっと練習しないと」

「練習もいいけど、本番の方が大事だよ。今の実力そのまま出せばいいじゃん」



―厳しいことを言ってるみたいですけど、彼の言い分は正論ではありますね


「いや、別に正論を言おうとして言ってるんじゃなくて純粋にそう思うから言ってるだけでしょう」


―天然ってことですか?もしかして、無名の新人時代にこんな感じの売り込みしてたんでしょうか


「きっとそうなんでしょうね。彼はいじめられていた過去から誤解されがちですが決して引っ込み思案だったり、所謂いわゆるネクラだったりはしません。それこそオタクの嫌う「リア充」の方にどちらかというとメンタルは近いんです。比較問題ですけども。ネガティブでもポジティブでもない。ただひたすら冷徹に目の前のことに対処し続けるだけです」



質問者3 中学生くらいの男の子


質問者3「僕には夢があります。半田さんは夢を実現するためにどんなことをしましたか?」

つかさ「…(かなり考え込む)…ごめん、質問の意味が良く分からない」

司会「えっと…キミの夢は何かな?」

質問者3「僕は…ライトノベル作家になるのが夢です!」

つかさ「(考えている表情で)ああ、そういうことね。…ボクは『夢』とか持ったことないから分かんない」


  会場、軽くざわめく。


つかさ「夢を持ったこともないし、実現したこともないし…」

司会「え、でも半田さんはソロアーティストとしてデビューもされましたし、愛宕坂の一員として全国ツアーもなさいましたよね?」

つかさ「はい」

司会「それは夢を実現したってことでは?」

つかさ「?…いや…仕事としてやってるだけだから…こういうのが『夢』ってことでいいんですか?」

司会「いやその…」

つかさ「分かんないけど…「夢」とか持たない方がいいと思うよ」


  会場のざわめきがひときわ大きくなる。


司会「といいますと…」

つかさ「「夢」って、実現したら嬉しいけど実現しなかったらしんどいじゃん」

司会「夢はどうせ適わないから諦めろと?」

つかさ「夢がかなうかどうかは夢次第でしょ」

司会「はあ…」

つかさ「ボクは夢とか持ったことないから、夢がかなわなくてガッカリしたことはないし。「夢に向かって頑張る」とかいっても、それは自分の実力以上に無理をするってことでしょ?マイペースが一番だと思うけど」

質問者「でも!夢に向かって頑張った方がいいと思います!」


   質問者の大きな声に会場に張りつめた空気が満ちる。


つかさ「?…頑張るのはいいと思うけど…普通に頑張ればいいじゃん。なんで「夢」とかからめる必要があるの?」

質問者「もういいです!(座り込む)」

つかさ「そんなに怒んないでよ…。少し分かって来たけど、「夢を持ってる」状態ってストレスになるじゃん」

司会者「すいません。ストレスってどういうことですか?」

つかさ「つまり『こうありたい』ってビジョンがあるけど、現状とギャップがある状態ってことでしょ?『夢を持ってる状態』って」

司会者「まあ…そうとも言えますけど」

つかさ「でもそれって『夢を実現した状態』とは違うでしょ?」

司会者「おっしゃってる意味が…」

つかさ「ボクはテレビの歌番組に出演するなんてこと一年前にはイメージしたことなかったけど、出演が決まったらすぐにイメージしたよ」

司会者「イメージですか」

つかさ「はい。ボクの経験したことのあるステージはウチの地下劇場くらいのサイズしかなかったんですけど、それを目一杯大きくしたものをイメージしてひたすらイメージしまくりました」

司会者「それは、所謂いわゆる「イメージトレーニング」みたいなものですね?」

つかさ「…多分そうです。だからテレビ番組で歌った時も大抵は出演は20回目くらいのイメージで、もう慣れてましたね」



―これはかなり貴重な証言ですね。


「はい。真夏の全国ツアーやろうが紅白歌合戦に出場し様が全く緊張しない半田くんの秘密はここにあったんですね」


―なるほど


つかさ「ごめん、さっきの質問してくれたキミ」

質問者3「はい…」

つかさ「ライトノベルの執筆は進んでるの?」

質問者3「今考えてます」

つかさ「考えるのは大事だけど、夢を引きずったら大変だからさ。完成したところをイメージしてみよう」

質問者3「?」

つかさ「出来上がって表紙も有名なイラストレイターさんとかアニメーターさんに目一杯可愛く描いてもらってさ、それが書店で平積みされてるところをイメージするんだよ…やってる?」

質問者3「え…でもまずは書かないと…」

つかさ「想像するのはタダだよ?普通に書いてもいいけど、まずはそうやって毎日夢を実現すればいいじゃん。書く時間無くても出来るよ。今言ったみたいになりたいんでしょ?」

質問者3「(困った表情)」

つかさ「毎日夢を実現すれば、夢が実現しなくてストレス感じなくて済むじゃん。気持ち良く忘れて眠れるよ」

質問者3「でも、それって現実じゃないですよね。現実にしないと意味が無いっていうか…」

つかさ「(失笑)そりゃ現実に何にもしないんじゃお話にならないよ。でも、イメージするのはタダじゃん」

質問者3「…」

つかさ「ライトノベルだったらアニメ化とかするよね。大ベストセラーの人気作なんだったら。その時はオーディションしてください(ぺこりと頭を下げる)。是非何かの役を演じさせていただきたいので」

質問者3「あ…」

つかさ「今から毎朝新聞のインタビューで何言うか考えとかないと。夢をかなえるってそういうことでしょ?」

質問者3「え…でも何も書いてもいないのに…」

つかさ「キミのイメージってそこまで直結して無いの?それじゃ夢なんか適わないよ。でもこの方法なら間の努力とかをすっ飛ばして『夢をかなえた』のと同じ気持ちになれるじゃん」

質問者3「それって単なる自己満足…」

つかさ「いいじゃん別に。自己満足の何が悪いの?一旦成功しちゃえば肩の力が抜けていいもの書けるかもしれないし、もし成功できなくても気分だけは味わえるんだから何も損しないじゃん」

質問者3「意味ないですよ」

つかさ「一回くらいなら意味ないかもね。毎晩やってみなよ。イメージの中で100冊くらいベストセラー書いてれば現実に一冊くらいは書けちゃうかもよ」



―…これは…相当変わった人生観ですね


「これを推し進めると“努力なんか一切しないでひたすらイメージだけしてれば幸せになれる”と言う風に聞こえます」


―野球の練習をせずにひたすらヒーローインタビューの練習してるみたいなもんですね


「流石にこれが初出の時には議論を呼んだんです。『夢を持つのに意味が無いとは何事だ』とか『天才成功者の立場から凡人をバカにしてる』とかね」


―む~ん、そういうのともちょっと違う感じですけどね


「ただ、私は案外合理的かもしれないと思う様になってきました」


―というと?


「確かに何だかんだ言っても人間は幸せになりたい訳です」


―そりゃそうでしょ


「しかし、半田くんは少なくとも奥さんと巡り会って愛宕坂に入るまでは到底「幸福」とは言い難い人生でした」


―そうですね


「大半の人間は自分が望むようにはなれない訳です」


―…はい


「だったら“幸せな気分”にだけなればいい…ってのは彼の到達した人生哲学…というか処世術だったのかもしれません」


―悲しい話ですね


「ポイントは現実の努力だったりに余り重きを置いていないってことで、イメージ…それもインスタントに結論を先取りしちゃうことになんの逡巡も無いってことです」


―そこが一番の違和感です


「上手く言えないんですが、どれほどのことであれ『所詮はこんなもんだ』とさっさと諦めるために結論を急いでるのかもしれません」


―どうなんでしょうね


「ともあれ、方法論としての『イメージトレーニング』が彼の卓越したパフォーマンスの基礎を支えているとすれば「方法論として」は大正解です。別の媒体ですけど、愛宕坂に加入してから「紅白歌合戦」には200回以上出場してる…って言ってましたからね」


―それって脳内でですよね?


「そりゃね(笑)。でもそうなると、現役どころか人類最多出場ですよ(笑)」


―それでいいんだったら私にだって出られますよ


「彼は正にそう言ってるんですって。みんな出たいんだったら出なよって。夢なんて抱え込まずに毎日実現した気になれば気が楽じゃんってね。紅白で言えば少なくともどんなひよっこでも200回も出場してればもう下手な緊張なんかしないでしょうね」


―それ自体は合理的ではありますね


「脳内でそれだけ出場しちゃってるとなると、現実に出場することへの執着も無いんですよ(笑)。別に現実に出られなくてももう満足してるっていうか…。彼って結局何事においても「執着」が薄いんですよ」


―どうしてそうなったんでしょう?


「…やはり妹さんを失ったのは大きかったのかもしれません。あれほど執着していたのに、「大学まで出して、立派にお嫁に行かせる」ことは結局適いませんでしたから」


―なんともはや


「彼が類まれなるパフォーマーであることは論を待ちませんけど、それこそ自称・男の娘アイドルたちが「女装」とか「綺麗な自分」に執着しているのに比べると、全く執着していないことがそれに貢献してるのかもしれませんね」


―それが言葉にすると「夢なんか持たない」になっちゃうのはちと口下手じゃないですかね


「まあそこはある種の天才というか…それを我々にも分かる言葉に翻訳するのがドキュメンタリー作家の社会的意義なんじゃないですか?」



  テロップ「愛宕坂47メンバー 斎賀ちあき(さいが・ちあき)」

廊下にて


―斎賀さんはカミングアウト放送の後の焼き肉パーティに参加なさってたんですよね?


「はい。…図々しいかとは思ったんですけど、あの後だから空気が重くなるかなあって思って」


―少しは人数がいた方がいいだろうと


「そうです。焼肉食べたかったのもありますけどね(笑)」


―斎賀さんはあのカミングアウトはどう受け止められました?


「…あたしは番組でもしょっちゅう家族の歌とか披露してきちゃった方なんで…余りにも想像が出来なさすぎて…」


―焼肉パーティはいかがでした?


「…ほんっとうにヤバかったです」


―ヤバかったというのは…?


「10月までの5か月間って、半田くんって言うほどあたしたちに会ってないんですよ」


―そうだったみたいですね


「テレビ番組の現場でメイクも何も終わって合流…とかそんな感じで、時間無いからその場で打ち合わせしてはい本番!みたいな感じで」


―そうなんですか


「レッスン場では一緒だったけど、覚えるのが早いから引きずらないし…あたしなんてずっとアンダーだからぶっちゃけほとんど接触無かったんです。それこそテレビで愛宕坂が出演してるの自宅で観て「はぁ~半田ちゃんて可愛いなぁ」とか言ってる方だったんです(笑)」


―なるほど


「折角なんで距離を詰めちゃおうと思って参加した訳です!焼肉に!」


―はい


「そしたら…知らない人が相良さんの隣にちょこん…といるんですよ」


―知らない人?




控室にて


―一説には相良さんと半田くんの仲を疑う噂もあったみたいですが


メロンガイ相良「まあ、普通は無いよね。5年もやってんのに愛宕坂の誰かと噂になったことないんだから」


―ですよね


「…正直、あの焼肉の時は参った。本当に」


―カミングアウト放送後ですよね


「番組中に『吐くまで食わせてやる!』って豪語しちゃったからさ。たまたまこの日あの後仕事無くて、何人かと行ったんですよ」


―高級焼き肉店に



愛宕坂工事中 収録後風景(カメラが回っていた)


 「お疲れ様でーす!」の声が響き、三々五々スタッフ・キャストが別れて行く。


つかさ(愛宕坂の制服姿で)「あの…本当にごちそうになってもいいんですか?」

相良「当たり前じゃんか!いいから来いよ」

火山「ちょっと今、マネージャーに会場押さえてもらうから(電話をする)」

つかさ「ボク…今のこの格好じゃないけどいいですか?」

相良「あ、私服ってこと?当たり前だよ。ロケじゃないんだから」

つかさ「いや…っていうか…」

相良「いいから早く着替えて来いって!(笑)」



控室にて

相良「火山さんが野暮用が入ったらしくて1時間くらい遅れて、バラバラに会場に向かったから俺が一番乗りだったんですよ。そしたら半田が二番手で来て…6~7人くらいの個室だったんだけど…荒井さんもこの時別の用が入ったらしくて、二人っきりになっちゃったんですよ」


―半田つかさくんと


「…最初分かんなくて…。何か舞台を観に行った人とか、アニメの出待ちした人は知ってるらしいけど、荒井さんが意図的に在籍中はアイドル姿以外は露出させないようにしたんですよね?」


―その様です


「だからかなり掛かったんですよ。席一杯開いてるのに隣に来るから『誰だこいつ』って思ったら…半田で」


―あ、私服ってのは「男の子の服装」って意味ですか


「そうそう。ホンッとにヤヴァかった。あれは」


―可愛かったんですか?


「(頷く)。何だかんだ言っても基本は本番しか会わないから「男の子状態」を知らないもんで、「お前、半田か?」って何度も何度も確認しちゃったんですよ」




  テロップ「愛宕坂47メンバー 斎賀ちあき(さいが・ちあき)」

廊下にて


「物凄くヘンな気分でした。見ちゃいけない物をみちゃったみたいな」


―でも、男の子なんだから男の子の服装してるのは別に普通でしょ


「逆のギャップかもしれません。男装企画で男の子に化けたメンバーが王子様みたいに凛々しくなったのを観た時のムズムズする感じというか…」



控室にて

相良「もうあいつも卒業したから笑い話で済むけど、…あんときは本当に理性が吹っ飛びそうだったもん。どうにかこらえたけど(笑)」


―それほど魅力的だったんですか?


「毎週愛宕坂の美少女たち見ててもそんなこと思ったことも無いのにね(笑)。距離が近すぎず遠すぎず、…直前までの格好と違い過ぎたせいかな…とにかく総合的に」



  テロップ「愛宕坂47メンバー 相原実里あいはら・みのり

廊下にて


相原「あの日の参加者全員ヤバかったと思います(笑)。一人だけ男の子になっちゃった感じだったから」


―元々男の子ですよね?


相原「もうみんなお肉食べながらチラチラチラチラ(笑)。しかも相良さんがなんかベタベタするんですよ!」


―え?そうなんですか?


相原「半田ちゃん怖いもう(笑)。『魔性の男』ですよ。お肉来るまでにみんなにお酌するし…来てたメンバーみんな顔真っ赤でドキドキしちゃうし」



自宅にて


―一部では「男装の時の方がやばい」とは言われていたみたいですね


「熱情台地では意図して照明とかも当ててませんでしたけどね。たくましい二枚目ではなくて…こういう表現が適当かどうか分かりませんけど「王子様」の幼少期みたいな」


―少女マンガに出て来る男の子みたいだと


「外見が美少女であることの裏返しなんですけどね。そりゃあの顔で「男装」というか、「男の子の普段着」着ればエキゾチックになりますよ」


―…正直、少し分かります


「素材よければすべてよしと」



控室にて

相良「愛宕中の本番前に軽くメンバーと話して空気をあっためてから始めるんだけど、半田がいなかった週…もう卒業してたかな…の時にも話したんですけどね。あいつって女装してるのは男装の魅力を無理やり押さえつけるためだったんじゃないかと思った…ってな話もしましたもん」


―「大胸筋マン」に出てくる「フッド・マスク」の鎧みたいな


「それです!実はあの鎧は装甲じゃなくて、フッドマスクが強すぎるから対戦相手を守るための拘束具だった…みたいな」


―はあ


「いつも女装してるのも、普通の男の子の姿だと男女どころか老若男女全員をとろとろにしちゃうからそれを防ぐためっていうね(笑)」




自宅にて


―もう一度略年表を


2016年12月 19歳 2箇月 紅白歌合戦に出場

2017年 2月 19歳 4箇月 グループ17枚目シングル発売(唯一にして最後のセンター曲)

            握手会に初参加

2017年 5月 19歳 7箇月 卒業


「握手会は極論すれば毎週のように開かれてます」


―アイドルも大変ですね


「ここまで半田つかさくんは握手会不参加でした」


―どうしてでしょう?


「基本的には女の子のアイドルですからね。一定数の殺害予告はまだゼロになってません」


―そうなんですか


「ファンとの直接の接触ともなれば不慮の事故…いや、事件ということもありえます。何だかんだ言ってもブログもモバメも持てませんでしたからね。今になって「あの時持たせてやっていても良かったのに」議論も出ていますが、この当時の空気じゃあ仕方が無かったかもしれません」


―大丈夫だったんですよね?


「結果として大丈夫でした。流石に男は抵抗があったみたいで男女比率半々だったそうです」


―男も結構いたんですね


「それこそ「見立て」の勝利でしょう。「女の子人格」っていうね。何しろあの「カミングアウト」すら基本的には制服衣装の女の子アイドルの格好のままやりましたから。実際来たのは握手会に並ぶくらいですから、ほぼ100%友好的な人だったそうです。それに男性アイドルや男性お笑い芸人の握手会にも一定数の男性ファンは結構並びますよ」


―そうなんですか


「この一回しか無かったことや、黒石・東野という人気者が欠席したこともあってこの日売り上げトップになってしまいました」


―凄い話ですね


「ミニライブもあったんですけど、カミングアウト後初の愛宕坂単独ライブだったこともあって(引用者注:カミングアウト後に「ハロウィンライブ」「クリスマスライブ」「紅白歌合戦」「ニューイヤーライブ」があったがどれも他のグループも参加するイベント)、会場では「つかさ」コールが巻き起こって応援ムード一色だったそうです」


―応援ですか


「どうやらファンの有志がやろうと声を掛けてSNS上で連絡を取り合っていたらしくて、余りにも過酷な半生に共感して応援コールを送ってせめてファンの気持ちを伝えようとしたそうです」


―ああ、「頑張れ!」みたいな意味合いですか


「ええ。実際半田つかさの姿をステージ上で確認したファンは「頑張れ―!」などと声を掛けることは他のイベントでもやってます。この日は「つ・か・さ!つ・か・さ!」状態になって、半田くんがお礼を言って静まってもらうまでずっとコールしてたそうです」


―なるほど


「愛宕坂ファンが優しくも礼儀正しいのは、あくまでも愛宕坂単独のイベントの時にこれをやったことですね。他のアーティストがいる会場では「失礼になるから」と控えてたんです」


―あ…


「彼は他のメンバーを差し置いて自分にだけコールが来ちゃうことを心配はしてたみたいですけど、他のメンバーも歓迎ムードで正にファンとの一体感のあるいいイベントだったそうです」




  テロップ「愛宕坂47メンバー 河前奈々(かわまえ・なな)」

廊下にて


―河前さんは10月発売の雑誌で半田つかさくんの私服をプロデュースしてるんですよね


「はい。毎月別のメンバー呼んで色々着せ替えたりする連載ページ持ってます」


―偶然なんですけど、発売日が「カミングアウト」の翌日だったんですよね


「そうなんですよ!凄い偶然ですよね!」


―翌日は深夜放送だったからごく一部のスポーツ・芸能新聞の一面を飾ったくらいで、コンビニでも買える雑誌で半田くんを取り上げてたのがその雑誌だけだったんですよね


「いつもの倍くらい売れたって編集者さんからお伺いしたんですけど…あんなんで良かったんですかね(笑)」


―言ってみれば男の子が女の子の服に着せ替え人形にされる特集ですからね。しかも普通に女の子向けのファッション雑誌で


「見て頂ければ分かりますけど、半田ちゃんの細かい解説って余り載ってないんですよ。よーく読むと分かりますけど…多分、何となく流して観てた読者さんだと女の子だと思うでしょうね(笑)」


―それにしても物凄く可愛いですね


「有難うございます」


―半田くんの「私服の女の子姿」ってほぼここでしか見られませんよね?


「ウチ(愛宕坂47)の制服脱げば男の子の私服ですからね。見たことないですけど(笑)。あ、一回あるか。部屋着の。でもあれも『女の子の私服』姿じゃないですからね。ヒット祈願企画もスタイリストさんによる衣装みたいなもんだし」


―一応デビュー前のカラオケ番組から加入までの時期は野暮ったいロングスカート姿はありましたけど


「あれもステージ衣装みたいなもんですよ。私に言わせれば男性の考える『これって私服でしょ』コーデです(笑)」




階段にて


―河前さんのファッションプロデュース企画ですけど…


半田つかさ「…あれね(赤くなる)…」


―あれは流石に照れますか


「お天気おねえさんとか、昭和の朝ドラヒロインとかは自分の中に映像が浮かんでたし、ステージ衣装とかも慣れて来てたし、コスプレ企画とかも…まあ予想の範囲内だったんですけど…普段着、私服ってのは全く分かりませんでした」


―そうですか


「死角からストライクになる玉が飛んできたみたいな」


―やっぱり野球に例えるんですね


「…とにかく18歳にもなってあんなカッコさせられるなんて思いませんでした(照)」


―こんなに動揺してる半田さん観たのって『音楽駅』以来かもしれません


「あれって女子中学生くらいのカッコですよね?それも幼い感じの」


―そんなことないと思いますが…でも、18歳ならまだいけるし、何より半田さん童顔でいらっしゃるので…


「もう河前さん怖いです…」


―あんな地味な服装のどこがそんなに刺さったんです?


「…やっぱり…服って可愛いのもあるんですね…初めて知りましたあの時」


―もしかして遂に自分で自分を可愛いと思ったと


「服がです!ボクみたいな男が着てもあんなに可愛く見える服が凄いって話ですよ」




  テロップ「愛宕坂47メンバー 河前奈々(かわまえ・なな)」

廊下にて


河前「可愛かった~(笑)。鉄人・半田でもあんなに縮こまるんだなって」


―鉄人ですか


「イメージでいうと堀井ちゃんの普段着みたいな感じかな。ピンク基調の。まあとにかく男性には分かりにくい可愛さですよ」


―確かに、可愛いとは思いますけど露出度が高い訳でもないし、記号性も無いし…地味と言えば地味ですね


「メンバーの中でもこの回は大人気で、半田ちゃん困らせようと思ったら見開きで見せつければいいんで(笑)。カミングアウト前の収録だから髪も長いんで三つ編みやらツインテールで遊んだりしてるから破壊力抜群ですよ」


―…普通にオフィスでおっさんがヌードグラビアを若いOLに見せつけてるみたいなんですが…


「悪いけど女の園に入って来てるんだから得物ですよ(笑)。肉食獣の檻に入ったうさぎみたいなもんです。また呼びたいですね」



ATABIBG!


  VTR中、ヘッドホンから流れてきた声に興奮している笹井奏子ささい・かなこ


笹井「わあーっ!さっきーだぁ!」


  人気声優の「佐々崎哲也」のメッセージボイスだった。

  人が変わった様にはしゃいでいる笹井。

  むっすーと不機嫌な顔をしている半田。


セガーレ岡山「あれ?どうしました半田さん?」  

半田つかさ「あの…笹井さん(愛宕坂47の制服衣装で自分を指さす)…一応ボクも声優なんだけど…」

笹井「えー…普通に格好いいひとがいい…」


  効果音つきで「どよ~ん」と落ち込む半田のリアクション。周囲に座っていたメンバーに肩をポンポンされて慰められる。



  テロップ「愛宕坂47メンバー 笹井奏子ささい・かなこ

廊下にて


―笹井さんといえばほぼ唯一メンバーで半田つかさに対してクールな態度を取っていたことで名高いんですが


「そんなこと…ないです」


―放送で「普通に格好いいひとがいい」とおっしゃいましたよね


「半田さん可愛いから…あたしは男の人は可愛いより格好いいひとがいいんで…」


―あ、そういうことですか。ちなみにグループに男の子が加わると決まった時はどう思いました?


「…?…(色んな表情を作ったり首を傾げたりいろいろして長い時間が経過する)…分かんない…です」


―えっと…半田さんはもう卒業なさいましたけど何かあれば


「…(数十秒経過)…頑張って…ください…」




  テロップ「愛宕坂47メンバー 海藤由卯衣かいとう・ゆうい

廊下にて


―海藤さんは比較的話す機会が多いんですよね?


「ラジオのゲストに来てもらったことが2回あるからでしょうね」


―いかがでした?


「あの子って何だかんだ言っても『声』が武器じゃないですか」


―そうですね


「ラジオはテレビと違って時間もたっぷり取れるし、言ってみれば『声の技』が使えるからゲストとして最高でした(笑)」


―歓迎されていたと


「てゆーかヒドくないですか?彼女…じゃなくて半田ちゃんがいる間ってあたしに話振りゃあ半田ちゃんについての質問ばっかりだったし…だから収拾付かないから来てくれってことになったんですよ」


―まあ、ホットな話題ですからね


「したら話は面白いわ、声は男の子から女の子にコロコロ変えるわ…ホント勘弁してほしいです(笑)」


―ラジオパーソナリティとして驚異だと


「顔もあんなに可愛いけど、やっぱり喋りの子なんだなって思いました。声優さんですもんね」


―グループに男の子が加入すると聞かされた時はどう思いました?


「あたしは逆の認識から入ったんですよ」


―逆?


「『音楽駅』にあたしは一緒に出て無かったんですけど、「男の娘歌手・半田つかさ」について知ってて、そこから「加入」のドタバタ企画だったから、「ああ、あの子が入るんだ」って感じで」


―なるほど


「まあ、お互いいい年だし…あんな細い手だから腕力も強くなさそうだし…大丈夫じゃない?って」


―割り切ってますね


「他の子が何て言ってたかは知らないですけど、あたしは興味津々組でしたね(笑)」



ラジオブース内にて

  お笑いコンビ「オクシデンタル・テレビ」の森藤と田中の二人


―お二人は愛宕坂47メンバーの中川姫子なかがわ・ひめこさんとラジオ放送で長いんですよね


森藤「そうですね。何だかんだで」

田中「ええ。最高のコンビネーションでね」

森藤「自分でいうなよ!あと、トリオネーションだよ!忘れるなオレをぉ」


―噂では半田つかさくんの出現を予言してたとか


田中「それ、リスナーに指摘されてスタッフさんに探してもらったら確かに言ってたんですよ」

森藤「俺は覚えてたよ」

田中「マジで!?ホントに?」


―放送ではこんな感じですね。「もしも三期生に超可愛い子が入ってさ。センターとかになっちゃったりするくらい超可愛くてさ、でも実は男の子だ!…なんてことになったらどうする?」…と、確かに言ってますね


田中「でもこれはさ、あくまで「女の子として入って、あとから明かされたら」って話なんで半田ちゃんとはちょっと違うよね」

森藤「あのときゃ何言いだしてんだ!?って思ったけど…ある意味当たりですよ」


―在籍中に1回ゲストに来てますよね?


田中「メチャメチャ可愛かった…いい匂いしたもん」

森藤「何言ってんだよ!…したけど」


―森藤さんは幾田さん推しを公言されてますが、魅力的なゲストが来るとコロコロ推し変されるので有名だとか


森藤「そんなことないです!何回かあるだけですよ」

田中「あるじゃねえか!」


―印象はいかがでした?


田中「う~ん…俺らってもう彼女…じゃなくて彼の生い立ちとか知っちゃってる訳なんで余りフラットな見方は出来ないんだけど…超面白いですよ」

森藤「そうだね。上手く言えないけど、男と女のいいとこ取りじゃなくて「悪いところ取らず」みたいな感じっていうか」

田中「上手い事言うね」


―魅力的であると


田中「半田ちゃん、基本アイドルモードでお願いしたんだけど途中から完全に忘れたもん。実は男だってこと」

森藤「きゅんきゅんしたね。アイドル一杯来るから若くて可愛い子なんて見慣れてるけど、お仕事だからやっぱり『可愛いなあ』と思うのは自制する訳ですよ。無意識に」

田中「そうそう」

森藤「でも、ある意味半田ちゃんは男の子だからそういうのを意識する必要はない…?とか考えてると、あれ?やっぱ駄目だよな…とか不思議な気持ちになってくるんですよ」

田中「人の心理的ガードをすり抜けてくるっていうか」


―メロンガイのお二人には話を聞きましたけど、お笑い芸人さんたちの間ではどう見られていたんでしょうか?


田中「佐山かのちゃんみたいなイメージですかね」

森藤「そうだね」


―妙齢の美人…というイメージということでしょうか?


田中「もっと幼いんでびっくりしました。てゆーか『男なのに』とかそういうエクスキューズ一切なしで普通に可愛かったんで『そう来たか』と」

森藤「誰と勝負してんだよ」

田中「ウチの業界にはグレーゾーンの人なんて沢山いるからね(笑)。それだけでどうこうってことは全く無いんですけど、やっぱり『美人系』以外の『可愛い系』越えて『幼い系』で来るって思ってなかったんで」

森藤「ああ、そういうことね」

田中「どんな名俳優さんでも自分より背の小さな人間とか、子供は演じられないっていうじゃない。だからあのちっちゃな体格とか幼い外見とかも最大の武器なんですよ」

森藤「どんなに化粧してもああはなれない」

田中「そうそう」


―それでいて仕事でアイドルですからね


田中「ボクはそこはどうでもいいですけどね」

森藤「いいのかよ!」

田中「だってそれは本人の自由ジャン?オレはどんな人でも受け入れるよ?」

森藤「格好いいのかよ!」



  テロップ「愛宕坂47メンバー 中川姫子なかがわ・ひめこ

廊下にて


―ブランドって確か中川さんたちの番組から誕生したんですよね?


中川「ああ、そういえばそうですね」


―オクシデンタル・テレビのお二人から提案があったんでしたっけ?


「以前に生馬ちゃんが出た時に私服が味気なさすぎるから、二人で何か買ってこいって話になったことがあったんですけど、このシリーズ結構好評で(笑)色んな子にやってたんですけど…半田ちゃんでハタと困ったんですよ(笑)」


―男の子ですもんね。そういえばラジオって姿が見えませんもんね


「毎週公式サイトに写真が載りますから全く見えない訳じゃないですけど…。メンバーの中にはラジオだとほとんどすっぴんなんて子もいるみたいですね」


―で、どうしたんです?


「その日たまたま半田ちゃんもウチのラジオゲスト以外に仕事が無い日だったみたいで…マネージャーの荒井さんと一緒に三人でお買い物に行ったんです」


―アイドルの私服を(笑)


「確か半田ちゃん結構ラジオ出てるけど、最初はウチの番組だったと思います。そしたら「着る服が無い」ってことになったんです」


―他の仕事があったら制服衣装で来たんでしょうか?


「…どうなんでしょうね(笑)。でもこれ以外に仕事無かったから…荒井さんと軽く口論してましたよ(笑)。『あんたもそろそろ観念して女の子の私服も何着か持っときなさい!』って」


―凄い話ですね


「でも確かに「私服チェック」とかでなくても割とありますからね、私服を披露する機会って。普通の男の子っぽいズボンにウィッグ外した状態の『男の子』だとマズいかも(笑)。外を出歩くくらいならともかく、「アイドルモードでラジオ出演」時の服装はあった方がいいと思いました」


―確かに


「半田ちゃんってあんなに細いのに結構お尻が大きいんですよ」


―番組でもそう言ってましたね


「身長が低いから…男物だとお尻パンパンでズボンが入らないんでレディースのジーンズとか履いてるんですけど…やっぱ体型がモロに出るんですよ」


―そうなんですね


「スカートってオシャレで可愛いってこともあるけど、体型を隠せるってところもあるんです。でも半田ちゃん『プライベートでスカートなんて絶対嫌だ!』って譲らないから…(笑)。他のメンバーにも見せたかったなああれ。結構強情なところあるんですよ」


―そんなことがあったんですね


「キュロットスカートも脚が大きく出ちゃうし…そこであたしがだっぼだぼのオーバーオールみたいなの見つけて結局それに決まったんです」


―これは…可愛いですよね


「ラジオって始まっちゃえば上半身しか見ないことが大半なんでこの日はこれで何とかなりました」



階段にて


―ブランドのことをお伺いしたいんですが


半田つかさ「あれ…名前貸してるだけでデザインとかしてないですよ」


―そうなんですか


「なんか…有難いことにそのブランドの新部門の立ち上げの際にボクにインスパイアされてくれたっていうか…」


―イメージキャラクターもなさってますよね


「仕事としてオファーされれば精一杯やりますよ」


―どういう経緯だったんです?


「ご存じの通りボクってお尻が大きいんで男物っていうか普通のズボン履くと体型がモロ見えになっちゃうんでイヤなんですよ」


―そう…ですね


「その話をデザイナーさんにしたら、『その悩みは多くの女性の悩みそのものです!』って話になって…ひいたん…中川さんと一緒に買ったオーバーオールみたいな「お尻と胴回りの体型が出にくい」服を中心に展開するブランドになったみたいです」


―正にジャストフィットですね


「何かデザイナーさんによると『女性でもスカート嫌いな人は沢山いるから』って話で…。全体的にユニセックスというかセックスレスな、男女どちらでも着られる服を目指してるとかで…まあそういうことなら確かにボクってことになるのかなって」


―確か半田さんはプライベートのオフショットでは100%このブランドの服着てますよね?


「だってそりゃ、正にそういう用途で作ってもらったから…。物凄く楽なんですよ(笑顔)。ボクはオシャレのセンス無いから良く分かんないけど多分オシャレなんだろうし」


―とても義理堅いと評判みたいですよ


「(笑)…一応このブランドが売れればボクにもいいことあるから…ってのは半分冗談ですけど、折角ならっていうか…」


―愛宕坂47制服をイメージした服もあるんですよね?


「ギリギリどうにかイメージ出来るかも?くらいの薄味でちりばめてもらいました。ちゃんとオフィシャルなんで安心してください(笑顔)」


―それは何故?


「どのアイドルでもそうなんですけど、公式で「制服」とか「ステージ衣装」とか売り出さないんですよ。レコード会社がアパレル企業と同一じゃないってこともあるけど…まあ、『悪用』されるじゃないですか」


―悪用ですか


「まあ、アイドルなんてどうしたって性的な目でも見られるし…それに男性のファンは大事にしたいけど、そのアイドルの女装コスプレで会場に来られても困るし。お前が言うなって言われそうだけど」


―あはは…確かに


「といっても、男女問わず「着る服から近づきたい」ってことはあるからどうにかならないかなって思ってたんで」


―半田さんが?


「ボクだってファンのこと考えますよ!(笑怒)何だと思ってんですか」


―失礼しました


「一応ウチのブランドにはスカート版もありますよ。ボクは着ないけど。…基本的には男女の区別が無いってのが売りなんで。確かに物凄く男性的でキリッと格好いい服って訳じゃないけど、サイズ問わないから少々太った人が着たくらいじゃあ『みっともなさ』よりは『オシャレさ』…女の子なら『可愛さ』が上回る自信はあります」



  テロップ「愛宕坂47メンバー 中川姫子なかがわ・ひめこ

廊下にて


―今、半田ブランド物凄く売れてるそうですね


中川「あたしも買いました(笑顔)。可愛いし。見ようによっては野暮ったいけど、ある種時代を越えて定番化するような気がします。派手さはないけど着実な需要があるというか」


―中川さんは成立にかなり深くかかわってるから幾らか貰った方がいいんじゃないですか?


「いえいえいえいえいえいえ!」


―皆さんにお伺いしているのでこの質問しますが、中川さんは愛宕坂47に男の子が加入することについてどう思われました?


「以前にラジオでそういう話題になったことはあるんですよ…あたしは問題無いと思います」


―やはり可愛いのが一番だと


「結局センターもやっちゃいましたしね(笑)。…半田ちゃんって結局総合的に『持ってた』人なんじゃないかって思います」


―総合的に


「ええ。『実は男の子』って部分も含めて魅力の一部っていうか。あたしは『音楽駅』の時に会ってたから抵抗の少ないメンバーだと思います」


―何か一言あれば


「またお買いもの行きましょう(笑)…って半田ちゃんは自分のブランドあるから着るものに困ってないのか…今度何か下さい(大笑)」



自宅にて


―独自ブランドまで持つとは驚きましたね


「確かに。これまでもアイドルというかタレントのブランドは幾つかありましたけど長続きしたものはそれほどありません」


―どうしてでしょう?


「そりゃただの栄枯盛衰です。偶然ではありますけど、ここに来て愈々「女の子っぽい男の子」から「両性具有」っぽくなってきてますね」


―む~ん


「何しろ見栄えがするから何でも広告価値が出るんですよ。まあ、基本的には日本だけの現象ではあります。アメリカでは…まあ80年代にはマイク・ジェイソンとか、プリン・スとか、イギリスだとハーレー・ガウルとかお化粧して歌うロッカーみたいなのもいましたけど、それともちょっと違いますからね。ロリっぽくなっちゃうのは日本的です」


―外国だったら夜に一人で道を歩いてたら補導されるでしょうね


「下手すりゃ日本でもね。見ようによっては猛烈にダサい、体型の出にくい独自ブランドの服を多用する様になってきます。5か月目に突入してアイドル状態以外にもカメラが入ってくるので女の子モードを解き切らなくても女装に見えないこのファッションは福音でしたね」


―80年代だったらダサくて流行らなかったとか言われてますね


「ロリータ系ファッションは俗に体型隠しとも言われていたんで常にそうした需要はありますよ。ともあれ彼は常に大きなヘッドホンで音楽を聞きながら移動してて、ニット帽に大きなヘッドホンを首から掛けるオフショットが若い女性に大きな影響を与えました」


―…本当にファッションリーダーになっちゃってますね


「本人はまるで意識してませんけどね。でかいヘッドホンをしてるのは顔が小さいから大きく見えるだけだし、ニット帽をしてるのは頭を冷やすと頭痛がする体質だからってだけだそうです」


―なんともはや…


「ちなみにソミー・ミュージック所属なんで音楽機器だけは最新鋭のものが提供されます。このヘッドホンは試作品流れで価格は実に50万円だそうです」


―…中古車なら買えますね


「私は経験したことはありませんけど、別世界に誘われるほど素晴らしい音らしいです」


―…そうでなきゃ困ります


「一部では“ファッション”として首に耳から外したヘッドホンを降ろして引っ掛ける行為が流行したなんてことまで言われました。これはちと眉唾ですが。ちなみに一時期レコードショップで必ず見かけたポスターはこのヘッドホンの商品宣伝ポスターです」


―ああ、あの軽く微笑んだ表情の半田くんがヘッドホンを両手で顔の両側から押さえて正面向いてるあれですね


「はい。愛宕坂の制服ではなくてごく普通のオシャレ着なもんでモデルさんか何かだと思われてます。ロングヘア時代の最後の遺産とも言われて…まあ大量に盗まれたそうです」


―…普通に可愛いですけどね


「ちなみに私は正規に入手してます。インターネットオークションですが」


―正規…なんですか?


「盗品じゃないことだけは間違いないので」





  テロップ「愛宕坂47メンバー 須々木彩すすき・あや

廊下にて


―須々木さんは「起動闘志バンダム」のファンなんですよね?


須々木「ファンというか…プラモデルでお仕事させてもらったくらいで…まだ沢山あるシリーズの観る順番が分かってないくらいなんです」


―半田つかさくんは声優でもあって、最新作にも重要な役で出演することが決まりましたけど如何です?


「はあ…すごいなって」


―何かその点でお話されたこととかあります?


「その役が決まったのって卒業した後ですよね?」


―そうですね


「半田さんとは余りアニメの話とかしたことないです。というかあんまりお話は…」


―していないと


「そうですね」


―どうしてです?


「あたしなんかがロボットアニメ好きとか…本職を前に恥ずかしくて…」


―とはいっても年齢もそれほど変わりませんし、むしろ子供の頃は余りテレビなんて見られなかったんだからあなたの方が詳しいと思いますけど


「そう…ですね…。誰かが『懐かし卒業生含め対談』とか企画してくれたらこっそり参加して色々聞きたいです」


―元メンバーなんだし、卒業もしたから制限もないんで直接電話しちゃえばいいんでは?


「そんな…恥ずかしいです…」


―皆さんにお伺いしてるんですが、男の子がメンバー加入することについてどう思われました?


「…気を…遣いました」


―というと?


「その…大変だろうし…。可愛いですねって言えば喜んでもらえるのか傷付けちゃうのか分からなくて…」


―あ、男の子だから


「はい」


―何か一言あれば…


「プラモ…欲しいです」



  テロップ「愛宕坂47メンバー 東野彩萌ひがしの・あやめ

廊下にて


―東野さんは半田つかさくんについてどう思われました?


東野「(考え込む)…(関西弁のイントネーションで。以下同じ)ただひたすら凄いなって」


―凄いというのはどのあたりが


「可愛いってこともありますけど、ライブではあれだけ沢山キャラを演じて、ソロも多くて…」


―でも、東野さんも何度もセンターを経験なさってますよね?


「あたしなんかどこがいいのかわからんし…。つかさちゃん自分に自信あんねんな…って思ったらうらやましくて」


―自信というか…気が弱かったら勤まらないでしょうね


「あんな風になれたら…とは思います。明るいんですよつかさちゃん。10月以降は楽屋も同じやってんですけど、いつもしょーもない話しして笑ってて。前からそうやったそうですけど、太陽みたいな子ですね」


―男の子なんですがその辺は


「別に女の子同士でも着替えで全部脱ぐわけでもないし…つかさちゃんプロやねんからどこが問題なのかわかれへんです」


―そうですか


「あんまり食べへんのに体力が凄いですね」


―最後に何かあれば


「…美味しいうどん紹介する約束がまだ果たせてへんから…機会があったらごはん食べに行きましょ」



自宅にて


キップ「年が明けてから2月の17枚目の選抜発表を挟んで5月までは、2月のバースデーライブ以外ですと大きな話題は無いですね」


―とはいえ凄いですよね?


「長年の蓄積が実った形になりましたね。朝のニュースバラエティ何かではアイドルの話題が出れば折に触れて「愛宕坂47」の話題に触れる状態でした。最初は「端元奈々緒の卒業」「男の子・半田つかさの加入」とかの「話題」きっかけだったのに、この頃には「普通に今人気のアイドル」って感じでした」


―にわかファンも激増しましたよね


「いかにも」


―本家BKA49の話題が霞んでます


「ただ、それも観方によります」


―というと?


「BKA49は人数が多いのでそもそもチーム分けをしてそれぞれのチームが別チームに負けまいとしのぎを削る方針です。これはいい悪いと言う問題では無くて、発足当初からそうなんです。今更変えられるものじゃない」


―はあ


「従来のチームに加えて「チーム9」なんてものまで別編成してより対立構造を煽ります」


―む~ん…普通にギスギスしていて暑苦しいですね


「暑苦しいついでにお教えしておきますと、メンバーを支えているのは『ハングリー精神』ですからね。だからプロレスの延長でアイドルを見立てて楽しんでるカギカッコ付きの「アイドルファン」にとっては、ドラマが分かりやすいBKAの方が人気があって、特に対立構造も持たない愛宕坂はどこを楽しんでいいのか分からない…存在だったんだそうです」


―なるほど…そういう見方もあるんですね。アンダーがハングリーっぽい雰囲気はありますけど、選抜とそこまで深刻な対立をしてる訳じゃありませんからね


「はい。いつ自分が選抜行くか分かりませんから対立なんてしません。別チームなら対立しますけどね。あと、他メディアの露出という点では確かに愛宕坂に軍配が上がるんですが、その実『出荷枚数』でやっと16枚目で「ミリオンを達成したことにした」愛宕坂に比べて、同時期に発売した4枚のシングル全てがミリオン(100万枚)売り切っているBKA49には全く足元にも及びません」


―ちょ、ちょっと待ってください!4枚連続ミリオン!?BKAがですか?


「ええ」


―全く話題になってませんよね?というか「グラビティ・シフト」とか「愛するディスティニープティング」とか「前日発売入手!」みたいな、誰でも聞いたことくらいはあるヒット曲も一曲も見当たらないんですが


「でも、売れてるのは事実です。しかも発売日前日にはね」


―…もしかして「握手権」付きのシングルだから予約だけでそれだけ売れると…


「全くその通りです」


―それは「ヒット曲」なんかじゃありませんよ!「単なる『売れてる曲』」です


「握手権や大量のバージョン違い商法は愛宕坂もやってますよ」


―…っ!?


「というかその辺でブーストしないとこんな枚数売れるわけがないんです」


―しかし…


「(にやりとして)まあ、おっしゃりたいことは分かります。明らかに『皮膚感覚として』でいうならば「愛宕坂がキテる」感じがして、「BKAは全盛期を過ぎた」と言う風にしか見えません」


―そうですよね


「この時期、メンバーの写真集の発売ラッシュになります。流石の半田くんもこの流れに乗ることは出来なかったのは先ほど説明した通りです」


2017年 2月 19歳 4箇月 グループ17枚目シングル発売(唯一にして最後のセンター曲)

2017年 5月 19歳 7箇月 卒業


「略年表では割愛してますけど、ちゃんと11月には『誕生祭』もやってますし、誕生日である11月22日当日にはツイッター上にはおめでとうイラストが溢れました」


―ファンの間での認知は相変わらずなんですね


「センター発表はほぼ関東ローカルの深夜番組だったにもかかわらず翌朝の芸能ニュースにもなりましたし、多くのスポーツ紙の一面を飾ります」


―これってリークあったってことですよね?


「生放送じゃないですし、ファンにはまあ…ほぼ確定だと言われてましたんで逆に驚きも無かったくらいみたいです」


―そうなんですか


「とはいえ、これ『センター張ったら卒業しちゃう』ジンクスが深山、端元、半田と3人になっちゃいました」


―記念センターみたいな


「卒業までここから3か月あります。遂にセンターとしてグループを率いる様な形で歌番組にも多く出演するんですが…遂に在籍中なのに一人仕事が増え始めます」


―彼女…じゃなくて半田くん個人のってことですか


「一応ソロアーティストではありますけど、制服も着ずにバラエティの雛壇の最前列に座ってたりするようになってますからね」


―普通に個人タレントですね


「皮肉なことに…というか特にラストの3か月に関してだけ言うと、ホーム番組である「愛宕坂工事中」だけを押さえていても活動の半分くらいしか追えなくなります」


―はあ


「面白いのはCMの仕事が多いことですね」


―CMですか


「何しろイメージを気にしますからね。企業って。だからグレーゾーンの人なんて使いたがらないと思うんですけど、担当者の琴線に触れるんだか何だか分かりませんがメンバーの中でも断トツで多かった。…もっとも、この点だけは何故かBKAの全盛期に中心メンバー数人が2桁のCMに出演するのが当たり前だったのに比べて、愛宕坂メンバーはCMには恵まれてませんけどね」


―それはどうしてでしょう?


「残念ですが、熱心なファン以外だとやはり顔と名前が一致するほど一般的なポピュラリティを得ていたメンバーがわずかだったためでしょうね。グループ数人単位でのCMは何件かあるんですが」


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