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夢想世界の少女  作者: ☆私星☆
第1章 ~夢の始まり~
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第6話  ~亜衣歌の行方~

 亜衣歌が再び居なくなり、空人は学校の自席で絶望していた。


 空人は、亜衣歌を知っているであろう空人の中学時代の友達に連絡した。亜衣歌がどこへ行ったのか聞いてみたのだ。他の友達にも連絡した。アメリカへ在留している親にも連絡した。

 いろんな人に連絡して、全ての人から共通した答えが返ってきた。


 ――”八条亜衣歌は、存在しない。”


 空人はそれを聞いて目眩がした。居なくなっていると思っていた亜衣歌は、他の人からは存在しないことになっているのだ。自分だけが、亜衣歌の存在を知っているのだ。


 「空人君、大丈夫・・・・・・?」


 隣からはこの前遭遇した、空人の知らない雰囲気と口調のユムが心配して話しかけてきている。

 しかし、空人は俯いたまま死んだような顔で一点を見つめていた。

 ああ、やっぱりこの前見たのは幻覚では無かったのか・・・・・・。


 「顔色悪いわ。保健室行きましょうか?」


 「いや・・・・・・、気にしないでくれ・・・・・・」

 

 空人は辛うじてそう反応した。

 

 「妹さんと喧嘩でもしたの?」


 「いや・・・・・・、違うよ・・・・・・!? 妹を知っているのか!?」


 空人は急に立ち上がり、ユムの両肩を掴んで大声でそう聞いた。周りのクラスメイトも急に大声を出した空人を見て少し驚いている。


 「え、ええ・・・・・・、空人君が昨日いるって言ってたじゃない・・・・・・。あら? 私、今何て・・・・・・?」


 目を見開きながらもそう言えば自分で言っていた、と思いだす空人。しかし、昔から知っている友人は空人に妹がいることさえ覚えていなかった。ユムはなぜ覚えているのだろうか?


 一方のユムも、少し様子が変だった。口からは言葉が出てきたが、本当は知らなかったようなぶりだった。


 「かく、そろそろ先生来ちゃうから、後で話を聞かせてちょうだい。私は他人の悩みを放って置けない人なの」


 空人はそう言われて少し冷静になったのか、一旦ユムの肩に置いていた手を離す。

 雰囲気や口調は違っても、その優しさはユムそのものだった。


 「ああ・・・・・・、分かった」


 そう言って自席に座りなおすと、さっきよりかは感情が落ち着いたようだった。

 ユムはそんな空人を少しばかりか見つめていた。



 ――昼休みになり、ユムは空人に妹のことを尋ねた。空人は今まで遭ったことを全て話した。

 ユムが空人の知らないユムだということに関して以外は――

 ユムは話を聞いたが、空人と同じで理解できる現象ではないということが分かった。


 「とりあえず、空人君の家へ行くことにしましょう。妹さんの部屋だった場所に何か手がかりがある可能性は否定できないわ。私が妹さんの存在を覚えているのが何よりの証拠よ。会ったことは無いけれどもね」


 空人は既に何も無い部屋を見ていたわけだったが、ユムの提案に乗ることにした。


 「なあ、ユム・・・・・・、」


 「何かしら?」


 「ありがとうな」


 「お礼なんていいのよ。私がしたいことをしてるだけなんだから」


 空人はユムに感謝の気持ちでいっぱいだった。何も起こったことは解決はしていないが、ユムは空人にとって唯一の心の支えになっていた。



 ――そして放課後、2人は空人の家に到着した。


 「おじゃまするわ」


 「ただいま・・・・・・って、居ないか・・・・・・」


 返事の無い空間に空人は少し悲しくなった。


 「気になるのは、最初にいなくなった次の日に、妹さんは存在していたということね。」


 「そうなんだよな・・・・・・」


 疑問はいくつかあったが、とりあえず2階の亜衣歌の部屋へ向かうことにした。


 「ここがそうだ・・・・・・」


 「じゃあ開けるわね」


 ガチャッっとドアを開ける。しかし、亜衣歌の部屋には何も無いままだった。


 「やっぱり変わってないよな・・・・・・」


 「そう・・・・・・ね・・・・・・!?」


 「ユム・・・・・・? どうかしたのか!?」


 突然ユムの目が大きく開かれた、と思った次の瞬間・・・・・・!


 ヴォンッ!!


 「部屋が・・・・・・戻った・・・・・・!?」


 一瞬にして亜衣歌の部屋が、空間を切り裂くようなノイズと共に元通りになった。

 一体何が起こったんだ・・・・・・!?

 空人は驚きながらも後ろを振り返ると、ユムは一旦目を閉じ、何かを悟ったようにもう一度ゆっくりと目を開いた。そしてユムは口を開く。


 「・・・・・・空人君」


 「ど、どうしたんだユム・・・・・・?」


 「私、思い出したわ」


 ――すると一拍おいてユムは言った。


 ――「空人君、これは”夢の中の世界”よ」

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