第4話 ~既視感と相違点~
どういうことだ・・・・・・!?
空人はかなり困惑していた。
一体亜衣歌はどこへ行ったんだ・・・・・・? 部屋にも何も無いし・・・・・・。引っ越した・・・・・・? いや、まさかそんな、俺に何も言わずにこんなことはしないはずだ。じゃあ一体どこへ・・・・・・――
――その時、空人の意識は途切れた。
「――ちゃん、お兄ちゃんってばっ!」
・・・・・・!!
空人は、誰かの声で目が覚めた。
俺、いつの間に寝てたんだ・・・・・・? 記憶がないな・・・・・・。
・・・・・・!?
空人は、自分を起こす声が誰なのか、気づくのに少し時間がかかった。
「お兄ちゃん、もう学校行く時間!」
「亜衣歌・・・・・・!? 昨日の夜は一体どこに行ってたんだ!?」
「えっ? 昨日の夜? 私、ずっと家にいたじゃない。何を寝ぼけてるのかな~?」
亜衣歌はどこにも出かけていないと言う。しかし、空人はまだ納得がいかない。
「でも、亜衣歌の部屋だって何もなかったぞ!? 何も置かれていない新築みたいに!」
「・・・・・・もしかしてホントに寝ぼけてるの? 変な夢でも見たんでしょー。って、それよりも早く学校行かないとやばいってば!!」
そう言われて時計を見ると、もう学校へ向かっていなければならない時間だった。
「マジか!」
俺、また寝坊かよ!
「私はお兄ちゃんより学校近いからこんな時間まで起こしてあげられるんだからねっ? 私ももう行くけどもー」
そう言って亜衣歌は家を出た。
腑に落ちない点だらけだったが、空人は大急ぎで支度をして学校へ走って向かった。
そして空人は丁度予鈴が鳴った頃、学校へ到着した。
はぁ・・・・・・、はぁ・・・・・・。一体昨日のは何だったんだ・・・・・・? やっぱ俺、変な夢でも見てたのかな・・・・・・。
空人がそんなことを考えながら右の席を見ると、ユムはまた居なかった。
今日も遅刻か・・・・・・? って俺もだけど。
でも、昨日のユムの雰囲気も気になるんだよな・・・・・・。やっぱり眠かったせい?
空人がユムのことについてもそう解釈していると――、
ガラッ!と前の方の扉が開く音がして、担任の教師が入ってきた。
「おはようございまーす」
みんなもそれに返して挨拶する。
「ではまず、出席を取るので呼ばれた人は返事をしてくださいね」
今日も出席の点呼からスタートした。空人は自分の番が来るまで右の方をチラチラと窺いながら、ユムが来るか来ないかを見ていた。
「八条空人ー」
「はいっ!」
空人が返事をして次はユムの番。
今日は点呼にも間に合わなさそうか・・・・・・?
「花崎結夢ー」
もちろん返事は無い。
「花崎さんー。花崎さんー? いませんか?」
と、先生が再度確認をしていたその時――
ガラッ!
空人が右を向くと、そこには――
「花崎さん、遅刻ですよ? 早く席に着いてくださいねー」
「は~いっ! ごめんなさ~いっ」
ユムだ。俺の知ってる元気で可愛い女の子。
空人はユムを見て少し顔を明るくした。
やっぱり昨日のは眠いか疲れてたんだよ。きっと。
ユムは扉をゆっくり閉めると、こちらの席の方に向かってくる。
そして、ユムと目が合った。
「おはようっ。あ~、もうっ。いきなり寝坊しちゃったよ~。ちゃんと目覚ましかけたのにな~」
ユムはちょっと悔しそうに、それでもにっこりした顔でそう言った。
「おはよう。俺も起きたら学校に行く時間で焦ったよ」
「そうだったのっ?間に合って良かったね~」
可愛い。やっぱりこの笑顔には癒される。今後どこかで席替えとかあるだろうしなー。このままがいいなー・・・・・・。
担任による点呼が終わり、授業が始まった。昨日と同じく、1時限目は数学だった。
――しかし空人はその授業に違和感を覚える。
あれ? ここのページ、昨日やらなかったっけ。復習か?
そう思ってしばらく授業を聞いてみるが、その内容は昨日と全く同じ場所だった。
「なあ、ユム。ここ昨日やったよな? 先生、やるページ間違えてないか?」
空人がそう聞くと――、
「えっ? 昨日入学式で授業やってないでしょ~? 空人君、きっと予習して授業と混ざっちゃったんでしょ?」
――えっ?
”昨日が入学式”・・・・・・?
空人はそんなはずはない、とユムに言い返す。
「ユムこそ何言ってるんだ? 昨日は授業があって、ユムも遅刻してきたよな・・・・・・?」
「空人君、冗談がキツイよ~。昨日は入学式だし、私、遅刻なんてしてないよ~?」
そんな馬鹿な、とカバンの中で先生に見つからないよう、携帯のカレンダーを確認する。
――・・・・・・!? どういうことだ・・・・・・!?
空人は急に寒気がしてきた。
戸惑いを抑えきれずに携帯を持つ手は震え、瞳孔も開いている。
それもそのはず、
そのカレンダーの今日の日付は、入学式の次の日を示していたのだった。