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夢想世界の少女  作者: ☆私星☆
第2章 ~夢と記憶~
24/25

第22話 ~臨海学校前日の出来事~

奇跡の2日連続投稿です。

 ――次の日、いよいよ臨海学校が明日となり、教室内の温度も上がってきている。

 この日も昨日に引き続き、臨海学校中のレクリエーションの内容や当日の移動の説明などがあった。


 「いよいよ明日だね~、空人くんっ」


 「そうだな、案外早いな」


 ユムもかなり楽しみにしているようで、顔はいつも通りにこにこしていたが、体の方はそわそわと落ち着かないようだった。


 ――そして放課後、朝からテンションが上がりっぱなしのクラスメイト達が帰宅していく。


 空人も、そろそろ帰ろうかと席を立とうとしたその瞬間――、


 ・・・・・・!?

 昨日と同じ現象が空人を襲った。


 「空人君」


 「ユム・・・・・・。また夢か・・・・・・」


 またこの現象か・・・・・・、一体何が起こっているんだ・・・・・・?


 「昨日と同じことが起きたようね。少し、訊かせてくれる?」


 「ああ、わかった・・・・・・」


 空人は、昨日今日と急に視界がブラックアウトし、いつの間にか夢に入り込んでしまう現象が起こったことをユムに説明した。


 「・・・・・・一体どういうことかしら・・・・・・? 間違いなく空人君が眠ったということは無いのね?」


 「ああ、そうだ。まるで瞬きをした瞬間にもう夢の中に入ったみたいに・・・・・・」


 ユムも、どうやらこの現象には理解が追い付かないようだ。

 これはどうしたものかと考えを巡らせる空人だったが、ふと昨日のことを思い出した。


 「・・・・・・そうだ、昨日行きそびれてしまった部室へ行ってみないか?」


 「ええ、そうね。取り敢えずそうしましょうか」


 そして2人は、存在ごと消えた部室のあった3階へと足を運ぶ。すると・・・・・・、


 「・・・・・・! 元に戻ってる・・・・・・」


 「どうやらこの現象については解決したみたいね・・・・・・」


 ホッと、胸を撫で下ろす空人。しかし、まだかのんのことが気がかりだった。


 「・・・・・・入るぞ」


 「ええ」


 空人が扉を開けると・・・・・・、


 「あっ、お二人とも来ましたか」


 「・・・・・・おう、来たぞ」


 どうやらかのんも元に戻っていたようだ。

 3人は、昨日の帰りに現実世界で部室へ集まる約束をしていたのだった。思わぬ現象のせいで、先に夢世界で部室へ向かうことになってしまったが。


 「遂に明日からですね! あ~もう待ちきれません!」


 「柏木さん、ずっと前から楽しみにしていたものね」


 「はい! あ、そうですそうです。今日集まったのは、臨海学校での自由行動時間の話をしようと思ったんです」


 「一緒に行こうってか?」


 「は、はい・・・・・・。お二人がよろしければですけど・・・・・・」


 「勿論いいわよ、一緒に行きましょうか」


 「俺もOKだ」


 「や、やったー! ますます楽しみです!」


 大はしゃぎのかのんに苦笑する空人。

 いくら何でも喜び過ぎじゃないか? まあ、嬉しそうで何よりだけどな。


 「では、明日の自由時間はこの3人でまわりましょう! オー!」


 「お、おー!」


 「あ・・・・・・」


 夢世界のユムはかのんのテンションにはついていけないようで、右手だけ上に向けて上げた。

 ――と、その瞬間。


 ・・・・・・。


 「・・・・・・どうかしました? 空人さん?」


 戻った・・・・・・か。


 「空人くんっ、何かぼーっとしてるけど大丈夫?」


 「え? あ、いや、そんなことないぞ、オー!」


 「ふふふっ、何でもう一度やってるんですかー?」


 「あははっ! 空人くんおもしろ~いっ」


 急に3人とも笑いが込み上げてきて、部室は賑やかな笑い声で染まるのであった。



 ――30分後、空人は家へと帰宅した。


 「ただいまー」


 「あ、お帰りお兄ちゃん。今日は部活だったの?」


 いつも通り、亜衣歌が玄関に出迎える。


 「ああ、そうだ。今日は出かけないのか?」


 「今日は特に予定は無しかなー」


 「そうか」


 いつも遊びに行って部室へ行くと帰った時には居ない亜衣歌だったが、今日はたまたま家にいるようだった。


 「なら、たまには一緒にゲームでもするか?」


 「んー、じゃあしょうがないから相手してあげるー」


 そう言いながら意地悪そうにニッコリ笑う亜衣歌を見て、空人は苦笑しながらも待ってろと言いつつ、着替えに階段を上がる。

 戻ってくると、リビングでTVゲームの準備を終えた亜衣歌がソファーに座って待っていた。


 「こうして2人でゲームするの何か久々だねー」


 「そうかもな」


 確かに、言われてみれば最近は夢に振り回されて中々心が落ち着かないことが多かった。部室でかのんとユムと一緒に居るのも落ち着くが、亜衣歌と家に2人でいるのも別の”家族”という暖かさが空人を落ち着かせていた。


 「はい、私の勝ちー!」


 「あ"-! ちくしょー!」


 「ふふーん♪」


 空人の操作している生き物を30秒とかからずに爆弾で撃破した亜衣歌がニッコリとブイサインをこちらに決めてくる。そこらの妹とは次元の違うハイスペックさだが、こうしてみるとやっぱり可愛い妹だ。


 何年経っても俺の得意なゲームですら勝てねえ・・・・・・。やっぱりこいつ、凄いやつだな・・・・・・。だが! 俺にも兄としてのプライドがある!


 「つ、次はこれで勝負だ!」


 「いいよー♪ 絶対に負けないけどね~♪」


 そう宣言しながらも楽しそうに鼻歌を歌いながらゲームのコントローラーを握る亜衣歌。

 亜衣歌も、きっと何でもできる代わりに疲れることだってあるだろうな。たまにはこういった娯楽も大切だよな。

 空人がゲームをしようと持ち掛けたのは亜衣歌への心遣いでもある。普段中々一緒に遊ばないからこそ、たまには兄妹で一緒の時間を過ごすのも悪くないだろう、と。


 「って、また負けたー!!」


 「いえーい♪ レースゲームは得意中の得意じゃなかったの? お・に・い・ちゃ・ん?」


 「くそー・・・・・・」


 亀の甲羅をドカドカと空人の走らせる車に無慈悲にぶつけてきてこの言いようである。

 何てやつだ・・・・・・。まるで歯が立たねえ・・・・・・。


 「次はこれだ!」


 「何度やっても同じ同じ、私に勝つなんて100兆年早いってばー」


 一体何回転生したらこいつに勝てるんだよ・・・・・・。俺の残機がゼロになっちまうぞ・・・・・・。

 残機がもう無いはずのリアル人生ゲームをしている空人にはそもそも無理な話だった。


 ――しばらく亜衣歌と2人でゲームをして遊んだ後、亜衣歌は夕食の準備をしにキッチンへ移動したので、空人も片づけてTVを見ながら待っていた。

 明日は晴れか、2日目と3日目は曇りで怪しいな・・・・・・。雨、降らなきゃいいけど・・・・・・。


 「はーい、できたよー」


 「おおー!」


 亜衣歌が作っていたのは、空人の大好きなカレーに大きいハンバーグが乗った、ハンバーグカレーだ。


 「「いただきまーす」」


 うめえ、なんだこれ! 最強か!

 やはり亜衣歌の料理は物凄く美味い。臨海学校の食事も亜衣歌の料理でいいな、などと考えていると、亜衣歌がふと口を開いた。


 「そうだ、お兄ちゃん。昨日お母さんから電話があったんだけど、9月頃から結衣歌がこっちに戻ってくるってさ」


 「えっ!? ・・・・・・マジで?」


 ――八条はちじょう結衣歌ゆいか。亜衣歌の、”双子の妹”だった。


 

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