第21話 ~異変の兆候~
4か月も更新して無い・・・? いえいえ、頭の中ではちゃんと1週間ごとに更新してましたよ。
一体どういうことだ・・・・・・?
「どうしたの、空人君? 私の顔に何かついてる・・・・・・?」
「い、いや、別に何でもないぞ」
ユムにそう言いつつも戸惑いを隠せない空人。
俺は今の瞬間絶対に寝ていなかったはずだ・・・・・・! 急に視界が一瞬暗くなったかと思ったら・・・・・・!
空人に寝ていないという確信はあった。間違いなく授業――もとい臨海学校の取り決めの最中だったはずだ。
疑問が脳内から消えない空人は一応ユムに問いかけてみる。
「なあユム・・・・・・、今これは勿論、”夢の中”にいるってことだよな・・・・・・?」
「ええ、そうね。間違いなく空人君は夢の中にいるわ」
尋ねてみてもやはり、空人は夢の中にいるのは間違いないようだった。
ユムが言うなら間違いないよな・・・・・・。じゃあ、俺はいつ夢を見始めたんだ・・・・・・? まさか、あの瞬間本当に眠ってしまったのか・・・・・・?
今回、夢への切り替わりが何かおかしいと感じる空人。後にその真実が判明するのだが、今の彼には知る由もない・・・・・・。
「・・・・・・何か不可解な点があるようね」
前と同じく、まるで見透かしたようにユムがそう言った。
「・・・・・・ああ、実はそうなんだが・・・・・・」
ふと、ここでずっと気になっていたことをユムに訊く。
「そう言えばユム! 研究部とかのんは元に戻ったのか!?」
「分からないわ、私もあれから部室に行っていないし、柏木さんにも会っていないのよ」
「そうか・・・・・・。なら、放課後行ってみようか・・・・・・」
「そうね、そうしましょ――」
――その刹那、再び視界がブラックアウトした。
・・・・・・!? また・・・・・・!!
そしてまた一瞬で視界が元に戻る。
「――くんっ? 空人くーん?」
「ユ・・・・・・ム・・・・・・?」
「大丈夫? 少し顔色悪いよ・・・・・・?」
「あ、ああ。大丈夫だ・・・・・・」
戻った・・・・・・のか・・・・・・?
ユムの状態を見てそう判断した空人。しかし、明らかに目を覚ましたような感覚は無かった。
前の方へ顔を向けると、いつの間にかバスの席決めは終わって班決めの話に入っているようだった。どうやら本当に意識が飛んでいたらしい。
「えー、では、再びクジを引いてもらい班を決めていきたいと思います。前列の人から順に引いていってくださいね。あ、皆さん、”1”はこっちで”7”はこっちですよ! 間違えないでくださいね!」
紙を皆に見えるように提示しながら、チラチラと寺本先生の方へ目をやる帆夏。先生はちょっと悲しそうな顔をする。
・・・・・・。取り敢えず今は考え過ぎずに保留にしておくか・・・・・・。
そしてみんなクジを引き終わり、全ての班の構成が決まった。
こ、これは・・・・・・! 奇跡か・・・・・・!?
何と、空人はユムと同じ班になったのだ。
「すごい偶然~!!」
「いや、ホントだよ! 確率ヤバいな!」
「またまたよろしくね~!」
「おう、よろしくな!」
今日の俺、運良すぎない・・・・・・? 死なないよな・・・・・・?
考えとは裏腹に自然とこぼれる笑みが収まらない空人。ユムもにこにこと片手を上げ、ハイタッチを促してくるのでそれに応じる。
そう言えば班って男女2人ずつの4人構成だったな。他の2人は誰だ・・・・・・?
空人が黒板に書かれている名前を見ると、空人の所属するB班には、”八条”、”花崎”、そして”前橋”、”栗山”という名字が書かれていた。
前橋と栗山って人か。誰か分からんな・・・・・・。
そもそもクラス内ではほぼユムとしか会話したことないため、誰が班に来ても初めまして状態だ。
「では決まったようなので皆さん、席を移動してこの班のまとまりで座ってください」
そう帆夏に促され、全員席を立ち移動を開始する。
普段の席から変わることでテンションが上がったのか、教室内が騒がしくなってきた。
B班はここだな、っと。・・・・・・ん?
空人が前の方の席へ移動して座ると、後ろから肩を軽くポンポンッと叩かれたのでそちらへ顔を向ける。
「よお! 八条、同じ班だってな。俺は前橋修斗、よろしくな!」
振り返ると、バリバリスポーツをやっていそうな感じの雰囲気を醸し出すややチャラそうな男――前橋修斗が手を軽く挙げて空人に話しかけてきた。
「ああ、俺は八条空人。よろしく」
髪を少し立てていて、背も空人と同じ175前後ぐらいはある。チャラそうだとは思わないでもなかったが、その陽気な話し方に空人は割と好感を持った。
「じゃあ、空人って呼んでいいか?」
「ああ、いいよ。俺も修斗と呼ばせてもらおうか」
空人はこの学校へ来て初めて男子と話すのもあったのか、すぐに修斗とは意気投合した。
「修斗くんって言うんだねっ。 よろしくね~」
「よろしくな! 君は花崎結夢さんだったかな? 空人といつも一緒にいた」
「え~!? いつも一緒にいるって何で知ってるの~!?」
「そりゃ知ってるさ、花崎さんと空人は付き合ってるんじゃないかって噂だぜ?」
「「えっ!?」」
2人は同時に驚いた。
マ・・・・・・マジ? そんな噂になってんの? 全然知らなかったんですが・・・・・・。
「あのな、俺たちは別に付き合ってないぞ・・・・・・?」
「あははっ、照れちゃうな~」
だから何でそうなるユム! 誤解されるだろ!
「え”っ!? 違うの!? 俺はてっきりそうだと・・・・・・」
「周りからはそんな風に見えてたのか・・・・・・。完全な誤解だな・・・・・・、あっ」
と、話しているうちに空人の方をじーっと見てくるもう1人の班員の存在を忘れていた。
「・・・・・・」
「す、すまん。き、君は栗山さんだね?」
「・・・・・・別に気にしてない。私は、栗山静夜」
そう自己紹介したのは、どこか眠そうにも見える寡黙な少女――栗山静夜だ。名前通りの栗色の髪を短めのレイヤーカットにしていて、手には読書用の本を常に持っている。図書館が絶対に似合いそうな女の子だ。
「そうか、よろしくな。聞いていたかと思うが、俺は八条空人だ」
「前橋修斗だ!」
「花崎結夢ですっ! 静夜ちゃんっていうんだ~、よろしくねっ!」
「うん、みんな、よろしく」
そう言えばユムも俺意外とあまり話したことなさそうだったな。かのんはさておき。
中々会話する人が増えなかった空人とユムはどちらも少し嬉しそうだった。
これから臨海学校中の多くはこのメンバーでの行動となる。空人は不安だったユム以外のクラスメイトとすんなり打ち解けることができて少し安心すると同時に、明後日に迫る臨海学校がより待ち遠しくなるのであった。