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夢想世界の少女  作者: ☆私星☆
第2章 ~夢と記憶~
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第19話 ~定期試験~

更新ペースはともかく、この話はまだまだ続きますのでご安心を。

 次の日、とても明日に試験を控えているとは思えないほど遅い日の放課後に、3人は部室で試験対策を開始した。


 「あ、空人さん、ここ間違ってますよ?」


 「え? あ、ホントだ・・・・・・」


 「かのんちゃん化学得意なんだね~!」


 「は、はい! そのかわりに世界史が絶望的ですが・・・・・・」


 「世界史なら私が教えてあげるよ~」


 見事に3人の得意分野と苦手分野がバラついていたので、逆にお互いに教えあうことが可能になっていた。


 「俺は入院してたから知らなかったけど、かのんは学校に行っていたよな・・・・・・。何で試験があることを忘れていたんだ・・・・・・」


 「え、えぇ~? な、何のことですかねぇ?」


 「おい・・・・・・」


 あからさまにセリフが棒読みになっているかのん。


 「まあまあ、きっと空人くんのことが心配でそれどころじゃなかったんだよ~」


 「そう言うユムも昨日気づいただろ・・・・・・」


 「え~? 何のことカナ~・・・・・・?」


 何だかんだでこの2人は似た者同士だという事実に今さらながら気づく空人であった。

 しかし前日に気づくよりは、はるかにマシだった上に試験期間中に部室が使えているのは、顧問の寺本先生の配慮があったからである。何とも幸いと言えよう。


 「空人くーん、数学分かんないよ助けてよ~」

 

 ユムは完全に文系だな・・・・・・。俺は理系とも文系とも似つかない微妙なラインだけど・・・・・・。逆にかのんは完全な理系だからな・・・・・・。


 「どこが分からないんだ?」


 「この記号何・・・・・・?」


 「いや、教科書に書いてあるだろ! まず教科書読もうな!」


 ユムの場合、分からないんじゃなくて単に数学を毛嫌ってるだけだな・・・・・・。

 

 「そ、空人さん・・・・・・」


 「ん? どうした?」


 「英和辞書ってどうやって使うんですか・・・・・・?」


 「そこからかよ! 国語辞典と一緒だよ・・・・・・」


 「アイキャントユーズディスブック!」


 ダメだこりゃ・・・・・・、完全にキャラ崩壊してる・・・・・・。


 2人の苦手意識が深刻なものだと気づいた空人はとりあえず自分の勉強に取り掛かることにした。


 今日帰って寝て、明日のテストの夢とか見れれば答えわかるんだけどな・・・・・・。そんなに上手くはいかないか・・・・・・。そう言えば入院してから一切夢を見ていないな。カレンダーを毎日見てたから日付のずれも無かったしな。まあ、異変が起こらないことに越したことはないけど・・・・・・。



 ――そして数時間後、完全下校の時間が訪れた。


 「ふう・・・・・・、まあ何とかなるだろ。あとは家帰ってやるとするか。」


 「集合ってナニ~・・・・・・?」


 「ワッツイズディス? オーゥイエスイエス・・・・・・」


 明日が思いやられるな・・・・・・。



 ――試験当日、教室に入るとまるで屍のような姿でユムが机に寝そべっていた。


 「あ、空人くんオハヨ~・・・・・・」


 「おはよう・・・・・・。大丈夫か?」


 「どうしよう、何もワカラナイ・・・・・・」


 もはや正気が感じられないほど目が虚ろなユムに、空人は提案した。


 「数学の試験までまだ時間あるから、こうなったら最終手段だ」


 「ん~・・・・・・?」


 「この数学のテキストの問題と答えを丸暗記するんだ」


 そう言われたユムはしぶしぶと教科書を寝そべったままパラパラめくり始めた。


 「うぇ~ん、ヤダよ~」


 そうぼやきながらも手だけは止めないユム。もはや嫌なことだが、やらないとマズいという本能だけで辛うじて動いていた。

 中学の時にも数学がどうしても苦手なやつがいたっけか・・・・・・。誰だったかは覚えてないが・・・・・・。


 空人も1日しか勉強していないが、最後の足掻あがきをすべく、教科書をひたすら目視していた。



 ――2日後、2日間に渡り全ての教科試験が終了し、テストが返却された。


 おー、1日でこんなにとれるもんなんだなー。

 決して高得点ではないが、それでもすべての教科で平均点近く点数を取ることができた空人。

 入院中にかのんが授業のプリントを持ってきてくれなかったらもう少しヤバかったかもしれないな、感謝感謝・・・・・・。

 ユムの方を見ると、どうやら赤点では無かったらしく、プリントを見ながら笑みを溢していた。


 「見て、空人くんっ! 数学赤点じゃなかったよっ!」


 「おー、良かったな!」


 「空人くんが当日に丸暗記するように言ってくれなかったら絶対0点だったよ~」


 そう言ってユムがこちらへプリントを向けてくると、確かに教科書に載っていた問題だけは丸がついているのが確認できた。


 「ありがとうっ!」


 「お、おう・・・・・・」


 昨日までの試験対策に追われていた姿から一変、満面の笑顔でお礼を言ってきたユムに照れを隠せない空人であった。



 ――その後、部室でもかのんが顔を輝かせていた。


 「ど、どうですか! ギリギリ赤点まぬがれましたよ!」


 かのんがドヤ顔で英語の解答用紙を見せてきたが、決して自慢できるような点数ではなかったので空人は苦笑していた。


 「良かったね~、かのんちゃん!」


 「赤点取ったらしばらく部活動停止になるんで少しヒヤヒヤしましたよ・・・・・・」


 「英和辞書の使い方を試験前日に聞いてきた時の方がヒヤヒヤしたけどな・・・・・・」


 何はともあれ、これで3人は無事に試験を終えたことになる。


 「遂に来週は臨海学校だよ~!」


 「そ、そうですね! 楽しみです!」


 「そう言う行事はしっかりと覚えてるんだな・・・・・・」


 この快星高校では、7月中旬に2泊3日で臨海学校が設けられている。3年になるとそれは修学旅行に置き換わる。1年間で最も人気のある行事と言えよう。


 「かのんちゃんだけ別のクラスで残念だね~・・・・・・」


 「そ、それを言わないでください! 別に、自由行動の時間だってあるんですから!」


 勿論かのんが一番気にしているのは、この臨海学校中にどれだけ空人と一緒にいられるか、であった。


 臨海学校か・・・・・・。


 空人は来週の3日間、どれだけ楽しい日になるのかと期待に胸を膨らませるのであった。

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