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夢想世界の少女  作者: ☆私星☆
第1章 ~夢の始まり~
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第16話 ~悲愴と憎悪の果てに~

 また・・・・・・夢・・・・・・?

 空人が目を覚ますとそこはいつもの教室だった。丁度昼休みを終えるチャイムが鳴っている。

 隣の席には誰もおらず、ユムは欠席したままのようだ。

 なんで・・・・・・またかのんが・・・・・・! これからさっきの出来事が起こるってのか・・・・・・!?

 アイツが・・・・・・アイツが殺した・・・・・・! アイツがいなければこんな事起こらなないはずだ・・・・・・!

 空人はかのんが死んだ悲しみを超える憎しみを胸に秘めていた。汗ばんだ拳が強く握られる。

 このとき空人は、ユムとかのんがいつも通りの雰囲気だったという点について考えることを忘れていた。もはやその心に宿るのは悲しみではなく、憎しみと怒りしかない。事が起こる前に厄介をどうにかする、そのことしか頭になかった。



 ――放課後、彩花が通う学校前の公園。校舎から彩花とその友達が出てきた。少しの間会話が続いた後、その2人は別々の方向に歩き出す。

 そして、しばらくしてあの男が校舎から姿を現した。

 アイツ・・・・・・!!

 空人の顔が憎しみに染まる。空人は今すぐにでもあの男の元に向かおうとしたかったが、今は彩花をつけているという事実がない以上、手を出すことが躊躇われた。仕方なく彩花の後を追う。


 そして、あの曲がり角が見えてきた。空人はその場所を睨むように凝視する。すると、例の男が左から曲ってきた。空人はそれを確認するとすぐに走り出す。


 「おい、テメェーーー!!!」


 男はいきなり発せられたその声に驚いて後ろを振り返る。


 「な、なんですか!?」


 「おらっ!!」


 空人はその男が持っていたバックを思いっきり肩から引き下ろし奪い取る。


 「な、なにをするんですか!!」


 そして中を開き入っていたナイフを探し出すと、それを右手に構えた。


 「おい、テメェ・・・・・・、何だこれは・・・・・・?」


 「そ、それは・・・・・・護身用です・・・・・・」


 「違うだろ!! 護身用・・・・・・? ふざけてんじゃねえよ!!」


 男は青ざめた顔を

 そして空人はそのナイフを構えたまま男に一歩一歩近づいてゆく。男もそれに合わせて後ずさりする。


 「お前はこのナイフでなぁ・・・・・・」


 「ああ・・・・・、あ・・・・・・!」


 男は顔が青ざめ、震えた声を発していた。


 「俺の大切な人に向かって・・・・・・」


 「やめ・・・・・・ろ・・・・・・!」


 空人が右手を振り上げる。


 「こうしたんだぁぁぁぁああああ!!!」


 男は目を瞑って覚悟したが、いつまで経ってもその右手が振り下ろされないことに気付く。


 「空人さん、やめてください・・・・・・!!」


 「か・・・・・・のん・・・・・・?」


 空人の右手首を掴み振り下ろすのを止めたかのんが、そこにいた。

 俺は今・・・・・・こいつを・・・・・・、何をやっていたんだ俺は・・・・・・。


 「空人さんが心配で来てみたら、様子がおかしかったので・・・・・・」


 「そ・・・・・・うか・・・・・・」


 空人はかのんを見てようやく冷静さを取り戻す。あの夢を見てから溢れ出る憎しみに歯止めが利かなくなっていたのだ。


 「この野郎!!!」


 「がっ!!!」


 「空人さん!!」


 空人が自我を取り戻した瞬間に男が急に空人の顔を殴りつける。その勢いで空人は持っていたナイフを落とし、地面に倒される。


 「ビビらせやがって・・・・・・、俺はただアンタを――」


 そう言いながら男は空人が落としたナイフを手に取り地面に倒れこんだ空人に向ける。


 「殺したかっただけなのになぁ!!」


 「やめてください!!」


 間にかのんが両手を広げて割り込む。


 「あん? 邪魔するのか?」


 「かのん・・・・・・!」


 「どかねえならお前も殺っちまうぞ!!」


 「どきません!!」


 「やめろ・・・・・・!」


 このままだと夢通り、かのんは・・・・・・!!


 「そうか・・・・・・、なら死ねぇ!!!」


 「・・・・・・!!」


 男がナイフを振り下ろす。


 「やめろぉぉぉおおおおお!!!」


 空人が叫びながらかのんの手を引っ張って間に割り込んだ。


 「あがっ!!!」


 「空人さん!!!」


 男の振り下ろしたナイフは空人の左肩のやや下に刺さった。空人は痛みで顔を歪める。


 「はははっ!! ざまあねえ!! そのまま死ねぇぇぇえええ!!」


 男がナイフを引き抜きもう一度振りかざしたその時――


 「がっ!!」


 男は急に声を上げ、ドサッとその場に倒れた。その後ろには大きな石を持った彩花が立っていた。


 「正当防衛・・・・・・ですよね・・・・・・?」


 「彩花!!!」


 彩花・・・・・・! 助かっ・・・・・・た・・・・・・。

 空人は意識が遠のいてゆく。


 「お姉ちゃ―― 早く救急車呼――」


 「うん―― 分か――」


 ――そして空人はそのまま気を失った。

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