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夢想世界の少女  作者: ☆私星☆
第1章 ~夢の始まり~
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第15話 ~憂いの追跡者~

 ――次の日、空人は普段通り授業を受けていた。

 隣を見る限り、ユムはどうやら欠席のようだった。

 今日のことを考えすぎてあまり眠れなかったな・・・・・・。

 放課後までまだ時間があるが、昨日の夜に、後をつけるやつと鉢合わせしないか、そいつを捕まえることができたならその後どうすればいいのか、などといろいろなことを考えすぎたせいで眠気が襲ってきた。

 昼休みにでも一旦仮眠を取るかな・・・・・・。



 ――しばらくして、昼休みの終わりのチャイムで空人は目を覚ました。どうやら自分は授業中に寝てしまって、昼休みの終わりまでそのまま寝ていたらしい。

 昼飯食べる時間が消えたじゃねえか・・・・・・。

 そこで、右から声をかけられた。


 「あ、空人くんやっと起きた~」


 「あれ、ユム? 今日は欠席じゃなかったのか?」


 「ちょっと用事があってね、お昼から出席することになってたんだよね~」


 「ああ、そうだったのか」


 丁度先生が教室に入ってきたので2人は前に向き直った。

 

 「ところで空人くんっ、今日の放課後空いてる?」


 「あー・・・・・・、済まないが今日の放課後はちょっと用事があるんだ」


 せっかくユムからお誘いが来たのに惜しいな・・・・・・。だが、今日はしょうがないか・・・・・・。



 ――そう言いながら右を向くと、急に空人は背筋に寒気を覚えた。


 「へぇ~、なら仕方ないね~」


 いつも通りの口調と笑顔のユムだったが、何故かその時、空人は謎の違和感を感じた。

 いまのは何だったんだ・・・・・・? 確かにユムを見た瞬間だった気がしたが・・・・・・。

 再びユムは前に向き直り授業を聞き始めた。


 やっぱり、気のせいか・・・・・・。



――放課後、空人は彩花が通ってるであろう中学校の近くの公園にあるベンチに座っていた。

 丁度中学校の校門が見える位置にこのベンチがあったので、空人は学校から出た後ここに座り、昼間に食べることができなかった弁当を食べていた。こんな時間にこんなところで弁当を食べる人は中々いないだろう・・・・・・。

 

 そして、良く見るとこの学校は亜衣歌が通っている学校だった。2時間ほど前に授業を終えた生徒達がわらわらと出てきた時に亜衣歌に見られるんじゃないかと少し落ち着かないままベンチからその様子を見ていた。これじゃあ自分が不審者のようだ。

 

 では何故授業が終わってから2時間後に約束していたのかというと、彩花が生徒会に所属しているからだ。書記を担当しているらしく、今日は生徒会があるから2時間ほど遅くなるということを彩花から言われていたのだった。

 

 もうそろそろ出てくるころだな・・・・・・。

 昨日の夜に彩花と約束した時間が近づくにつれ、空人は少しばかり緊張を覚えていた。

 時間も時間だったので、空は薄っすらとオレンジ色に染まっていた。

 うまくやれるといいな・・・・・・。


 ――そして5分程だったところで、彩花と、おそらくは同じ生徒会である女の子が一緒に学校から出てくるのが確認できた。そしてその場で立ち止まって少しおしゃべりした後、その女の子と彩花は別々の方向に分かれて歩き出した。

 その時彩花がキョロキョロとあたりを見回していたのは、誰かにつけられているか心配してたわけではなく、ちゃんと空人が偵察に来ているかを心配したからだろう。

 そう言えば、連絡くらいちゃんととれるように昨日電話番号でも聞いておくべきだったな・・・・・・。

 いや、でも中学校はそもそも携帯なんて持って行けないんだったけか。こっそり持っていけばいいんだろうけど、彩花は生徒会に入るくらいだからそう言ったモラルはきちんと守るだろうな・・・・・・。


 彩花が歩き始めたので、そう言った雑念は捨て後をつける人がいないかを探すことに集中した。


 う~ん・・・・・・。

 後から同じ生徒会らしき人が7、8人程出てきたが、全員彩花とは逆方面に歩いていくのが見えたので、この中には彩花をつける人はいないだろうと、彩花を見失わないように空人も公園から出て歩き出した。

 空人は、彩花の後をつけている人物は彩花を知っているか知り合いである可能性が高いと考えていた。また、毎回学校帰りにつけられていることから、この中学校に通っている人である可能性も高いと判断した。そしてその人物は彩花がピアノの習い事から帰る時間まで知っていた。知り合いであることはまず間違いないだろう。


 空人は、なるべく彩花から離れ後をつける人物と鉢合わせすることがないように歩いていた。

 今のところ誰もつけているようなやつはいないな・・・・・・。というか俺がつけているけど・・・・・・。そもそも今日見つけることができなかったら毎日俺がストーカー行為をするのか・・・・・・。


 ――そんなことを考えていると彩花と空人の丁度間に、左の曲がり角から空人たちが歩いている方向に曲がってくる人が確認できた。


 ・・・・・・ん? あいつさっき・・・・・・!

 その人物は、先ほど学校から出てきた7,8人の中の一人だった。眼鏡をかけたスラっとした高身長のその男は、いかにも生徒会にいそうな雰囲気をまとっていた。

 さっき逆方向に歩いていったのにわざわざ急いで遠回りしてこっちに来た・・・・・・!? まさか、アイツが・・・・・・!!


 その時、彩花は何かを感じたのか、急に早歩きを始めた。そして、それに合わせるようにその男も歩く速度を速める。

 間違いねえ、アイツだ・・・・・・!!


 そう確信した空人は、その男に向かって走り出した。

 そして、その男の背中が近づく。


 「おい、お前!!」


 急に後ろから叫ばれたその男は驚いた様子で振り返った。


 「な、何ですかいきなり!?」


 「お前・・・・・・前の女の子をつけてたろ」


 「な、何を根拠にそんなことを? 僕はただ帰宅していただけですが?」


 男は焦りの表情を浮かべていた。苦しい言い訳にしか聞こえない。


 「とぼけるな。俺は見ていたんだよ、お前がわざわざ遠回りしてこっちに来るのをな」


 「なっ!? な、何故あなたはそんなことをしているのですか・・・・・・!!」


 「俺が彩花から頼まれていたからだよ」


 そう言うと、男は急に表情を変えて不気味な笑みを見せ、口を開いた。


 「フッフッフ・・・・・・。そうか・・・・・・、アンタが、アンタが彩花の・・・・・・!!!」


 そう言うと、その男はバックの中からナイフを取り出し、こちらに向けてきた。

 ・・・・・・!? こいつ・・・・・・!!


 「お、お前・・・・・・! 本気か・・・・・・!?」


 空人は震えた声でその場に硬直する。


 「アンタが・・・・・・、アンタがいなければ・・・・・・!!!」


 そう言いながら男はナイフを振りかざしてきた。

 刺される・・・・・・!!

 そう覚悟して空人は目を瞑った。


 グサッ!!っと刺さる音がしたが、痛みはない。何が起きたのかと空人が目を開けると――、


 「・・・・・・!?」


 そこには空人を庇うように両手を広げたかのんが立っていた。


 「空人・・・・・・さん・・・・・・」


 「おい・・・・・・! なんでだよ・・・・・・!! なんでかのんが・・・・・・!!」


 「空人さん一人じゃ・・・・・・心配だったん・・・・・・です・・・・・・」


 そして、鮮血に染められたかのんはその場にゆっくりと地面に倒れた。


 刺した男も手が震え怯えていた様子だった。


 「知らない人を・・・・・・! やってしまった・・・・・・!!」


 男はそう言って歩いて来た方向に逃走した。


 空人は”あの時”と全く同じようにかのんを抱える。丁度、心臓のあたりから出血が見られた。


 「何でまたかのんが・・・・・・!! どうして・・・・・・!!!」


 空人は涙を流してかのんを抱きしめた。


 ユムが、ユムがいつも通りならば、これは現実ということになる。現実世界でかのんが死んだならば、それはすなわち、本当の死を意味する。と、空人はそう思っていた・・・・・・が――



 ――空人は目を覚ました。

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