第14話 ~彩花の悩み~
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その名前を聞かずとも空人は、かのんの妹だということを察せるくらい、彩花にかのん(ツンデレ化前)の雰囲気と似たものを感じた。
「もしかして空人さんって、お姉ちゃんをトラックから守ってくれた人ですか!?」
「いや、まあ・・・・・・、そう・・・・・・かな?」
自分でそうだと言うのは何か図々しさを感じたのであくまで謙虚にそう答えた。
すると、彩花が目を輝かせ、こちらに近づいて両手で空人の両手を覆うように握ってきた。
「本当にありがとうございました!! 空人さんはお姉ちゃんの命の恩人です!!」
「いやまあ、偶然助けられただけだよ、ははは」
「いえいえ、そんなことはありません!! あなたは救世主です!!」
いろいろ大げさに言われて苦笑いするしか無かった空人とは半面、かのんは彩花に握られている状態の手を見て目をばっちり開いて凝視していた。
「そ、そろそろ中に入りましょうか空人、ね!」
「あ、ちょっとお姉ちゃ~ん!」
と、かのんは無理やり彩花の腕を引っ張るようにリビングへと引き込んだ。
「え~と、おじゃましまーす・・・・・・」
「私はお茶を淹れてくるから、空人はそこのソファーに座ってて」
そうかのんに促されて空人はソファーに腰を掛けた。
彩花も空人に寄り添うように座ったが、それがかのんに見つかって無理やり引きはがされ、仕方なく空人とテーブルを挟んで反対側のソファーに座った。
「そう言えば親は?」
空人がふと疑問に思ったことを彩花の方を向いて口にすると、丁度お茶をお盆に載せキッチンから戻ってきたかのんから答えが返ってきた。
「お母さんは夜勤をしているの。お父さんは単身赴任だからこの時間はほぼ私と彩花の二人なのよ」
「へぇー・・・・・・」
大変なんだなと空人は思ったが、良く考えたら自分の親も海外へ飛んでいたことに気付いた。
「じゃあ、そろそろ空人に話を聞いてもらいましょう、彩花」
「うん、じゃあ空人さん、私の悩みを聞いてもらえますか」
「そのために来たから、聞かせておくれ」
そう言うと、彩花は若干俯き気に話を始めた。
――彩花が話した内容はほぼかのんから聞いていた内容と同じだった。
どうやら誰かの気配を感じ始めたのは、彩花が中学3年に上がってかららしい。追いかけられるようなことをした覚えも彩花には無かった。
「私、どうしたらいいんでしょうか・・・・・・」
空人は、不安げな表情を浮かべる彩花を見て黙っていられるわけがなかった。
こんな優しい女の子を追い回すなんてどこのどいつだ・・・・・・? 絶対に取っちめてやる・・・・・・!
空人は自分のことのように怒りを燃やした。
「彩花、安心しろ。俺が絶対にそいつを捕まえてやる!」
「本当ですか・・・・・・? ありがとうございます・・・・・・!」
「じゃあ、明日彩花が学校を出るころに――」
――空人がそう言いかけた瞬間、目が覚めた。
・・・・・・。そう言えば、夢だったな・・・・・・。
夢だということを忘れるくらいに、空人は燃やした怒りがまだ消えていなかった。
時計を見ると、だいだいいつも起きている時間より若干早いくらいだった。
起きるか・・・・・・。
――そして、いつも通り午後の授業を終えた後。
「空人くんっ、部室行こっか!」
「そうだな」
いつも通りの明るいユムと、部室へ向かう。
「明日はちゃんと教科書持ってこないとダメだよ~?」
「ああ、そう言えばそうだったな・・・・・・」
「ちょっと~? ちゃんと持ってきてねっ?」
ユムは微笑しながら軽くポンッと空人の肩を叩いた。
これは夢なんじゃないか、と思うくらいユムが可愛く見えたので、空人は少し心臓が高鳴った。
――ある・・・・・・な・・・・・・。
そこにはちゃんと部室のドアがあった。
夢じゃないし当たり前だよな。どうも夢が現実にならなきゃいいと考えてしまうな・・・・・・。
そう思いながらもドアを開けると、かのんが椅子に座って待っていた。
「あ、2人とも来ましたね」
「やっほー、かのんちゃんっ」
「待たせたな」
ツンデレ化したかのんを見た後にまた元のかのんを見て違和感を覚えた空人であったが、やはりこっちの方がしっくりくるなとかのんを見て腕を組み頷いていたところを本人に見られた。
「な、何ですかそんなに私の顔を見て・・・・・・?」
「いや、何でもないよ。ただ、いつも通りだなーと思って」
「な、何ですかそれ・・・・・・」
「空人くんはかのんちゃんが好きなんだよきっと~」
「「なっ!?」」
ユムは、”友達として好き” の意味合いで言ったつもりだったが、言い方が少し悪く2人は激反応した。
「な、何を言っているんだユム、誤解を招くだろ!」
「そ、そうですよ花崎さん! 何良いこと――、変なこと言ってるんですか!」
かのんが思い切り本音を言いかけた。
「あれ~? そんなつもりで言ったんじゃないんだけどな~・・・・・・」
ユムはユムで、何かおかしなことを言ってしまったのかと首をかしげた。
――長らくおしゃべりが弾んだ後、ユムと別れて空人とかのんはいつもの川沿いを歩いていた。
「な、なんか、自然に一緒に帰っちゃってますね・・・・・・」
「まあ、通り道同じだしこれが普通なんじゃないかな」
「そ、そうですね・・・・・・」
――しばらく沈黙が続いた後、かのんはあの件について、空人に相談してきた。
内容は夢と全く同じ、空人が既に2回ほど聞いていた内容だった。
「かのん、俺に任せろ」
――彩花の悩みを解決するために、夢と同様家におじゃますることになった空人は再びかのんに紹介されていた。
「もしかして空人さんって、お姉ちゃんをトラックから守ってくれた人ですか!?」
「ああ、まあそう言うことになるのかな・・・・・・」
「本当にありがとうございました!! 空人さんはお姉ちゃんの命の恩人です!!」
再び苦笑するしかなかった空人だったが、かのんは、彩花に空人が手を握られた状態を見てあたふたしていた。
「そ、そろそろ入りましょうか! はい! 入りましょう!」
謎のテンションのかのんが彩花を引っ張りリビングへ移動する。
――そして、再び彩花の悩みを聞き終わり、明日彩花が学校から帰る時間に、空人が後をつける人物がいないかどうか、偵察へ行くことになった。空人も学校はあるが、明日は彩花の方が授業が長いらしく絶好のチャンスだった。
そこで、かのんに声をかけられる。
「そう言えば空人さん、昨日シチュー作りすぎちゃったんですけど・・・・・・も、もし良ければ食べていきませんか・・・・・?」
シチューか・・・・・・、夢の中でもかのんが料理部で作っていたな・・・・・・。
こんなところで夢と類似しているとは思いもしなかったが、空人は食べて帰ることにした。
「美味い! かのんは料理が上手だな!」
「そ、そうですか・・・・・・? 照れちゃいます・・・・・・」
両手を頬に当て、顔を赤らめるかのんを見て彩花は何かを察したのか、ニヤニヤしながらかのんに耳打ちした。
「お姉ちゃんってもしかして空人さんのこと・・・・・・」
「あー! わー! 聞こえないー!!」
頬に当てられていた手が今度は両耳に当てられ、聞こえないふりをしたかのんに疑問を浮かべながらも、空人は明日のことを考えていた。
どこの誰だか知らないが、必ず捕まえてやる・・・・・・。