[第一部]1話
何から最初にまちがえたのだろうか。
「おい。珈琲いれろ。」
「バ会長ー。そんなの自分でいれなよ〜。この俺様会長~。」
「「そーだっそーだっ!」」
「…。」
「…(はぁ)わかりました。私がいれますよ。」
「…おう。」
桜庭丘学園に入学して早一年が経ったいま、私こと伊集院和紗は生徒会副会長に任命された。
入学する前に自分が黒獅子という事をバレぬように腰あたりまで伸ばしていた髪をうなじ辺りで切り、少し目付きの悪い目を隠すために黒縁眼鏡をかけ、真面目な見た目に合うように常に笑顔で、一人称が「私」の超真面目くんを自己流に演出したつもりだった。
こんな真面目野郎に誰も興味はもたないだろうとおもい、かなりがっつり真面目を演じていた。
な の に。
桜庭丘学園伝統、抱きたい/抱かれたいランキングに何故かランクインしてしまったのだ。
それは必然的に生徒会入りを意味する。
けれど学園で3位にもはいる頭脳だったために、ランキングインせずとももしかしたら入るはめになっていたかもしれない。
正直言うと生徒会、めんどくさい。
クソ俺様な会長のためにむらしたコーヒーをコップに注ぎいれ、他の役員には紅茶を注ぎ入れて、そしておぼんに全て乗せてそれぞれの机に静かに置く。
「…。」
おいこら。礼ぐらいいわんかいバ会長。
「「ねーねーかずちゃん!お砂糖ちょーだい!」」
おいこらこのクソ双子。自分でいれろ!
と言いたいのをぐっと堪え、
「わかりました。少々おまちになってて下さいね」
笑顔で対応する。
たしか砂糖は自分のデスクの上に予備であったはずだけど…あれ?切らしてる…あ。この前使い切ってしまったんだった。
生徒会に備えつけられている給湯室ならあるか
「ちょっと給湯室にあるかもなんで取ってきますね」
「「はぁい!」」
ピッ カチャン
役員専用のカードキーで給湯室を開ける
「あちゃー。これ湿気ってる…。」
早くつかいきったほうがいいか。
適当につかみ取りしてまた生徒会室にもどる。
「すいません、砂糖がすこし湿気ってて。できれば早く使い切りたいのでみなさん使って下さると嬉しいのですが…」
「え!それはたいへんじゃーん!じゃおれもつかお〜かな!」
「「かずちゃん!たくさん砂糖あるのー?ぼくたち3本つかうー!」」
「…2つ。」
「おれはいい。」
「あ、はい。会長はいつもブラックですよね。」
「ああ。」
け。すかしてやがって。
「あ。伊集院。」
「はい?」
「お前あした理事長んとこいけよ。」
「はい。…って、え?私がですか?」
思わずききかえしたが会長は目線を窓に向けており、もう話を終えたかのように知らんぷりんだ。
あー、おれまちがえすぎたよ、こんにゃろ。