Page.6 首
「呪いがなんだっていうの」
アリスは、そう呟いて、ゆらりと立ちあがった。
ジャックはそれを静かに見上げる。
黒髪が、荒々しく風によって絡み合いながらなびいた。
未だに座りこむジャックに、冷たい視線が向けられる。
「話はもう終わり?」
「いや、まだだ」
ふと、ジャックが微笑んだ。
いつの間にか、放られた大鎌が彼女の手に戻っていた。
「一緒に旅をしないか」
にっこりと、無邪気な笑みが向けられた。
しかしアリスは、それに考える動作すらも見せず、そのまま、鎌を大きく宙に振りあげた。
「・・・残念だ」
ザンッ
赤が、飛び散る。
乾いた地面が、それを欲するように吸いこんでいく。
闇に映えるオレンジ色の頭が、ごろり、とそこに転がった。
「次は、貴方」
ギラリと、憎悪に呑まれた目が、ジャックを睨みつけた。
ふ、と息を吐いた彼は立ち上がり、その切り別れた頭と体を指差した。
首を傾げかけたアリスは、一瞬息を呑んで、その頭を見つめ、振りあげていた鎌を止めた。
何か黒い靄が、その首から流れだしていたのだ。
「なに、」
微かに震えた声に、アリスは驚いて、喉元を押さえた。
こんなに自信のない声が洩れたことに、驚いたのだ。
ジャックも微かに瞳を開いたが、ニヤ、と口角を吊りあげた。
「改めて紹介しよう。俺の相棒、マナだ」
ごろん
月明かりに、その目がらん、と輝いた。
「よろしくでス☆」
断末魔が、墓場で響き渡った。
そこから、アリスの記憶は途絶えた。