表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

Page.5 呪われし者

「あり・・・す」



少女は、その単語を呟いた。

そして俯き、ジャックの掌に、アルファベットを指でつづった。

『ALICE』

ジャックは満足げに頷くと、アリスに微笑みかける。


「そう、それが君の名前」

「・・・アリス」


うわごとのように彼女は自分の名前を何度か呟くと、コク、と小さく頷いた。

さっきとちがいすっかり大人しくなった彼女に、マナは首を傾げる。

先ほどの石墓に目を凝らすも、彫られた溝はは町の人によるものか、何か刃物のようなもので何度も傷つけられ、文字と認識するのも困難で、名前が書かれているとはとうてい思えないほどであった。

しかし面倒くさがりなのか、それとも何か根拠あってかの諦めか、マナはまぁいいかと立ちあがり、緑に縁取った白い足首まである半袖の上着の裾をはためかせた。


「ハナシ」


少女はジャックが切りだした話を早く、とこどもが菓子をねだるように、彼の目をじっと見つめ、袖を引っ張った。

ジャックはそれにすこし考え込むように口元に手をやった後、そこにあぐらをかいて、くしゃくしゃの黒髪を払う。

そして懐からボロボロの地図を広げて、それを覗きこみ、ある大陸に指差した。


「現在、俺たちは此処、南米大陸のレモンドにいる」


トントン、と音をたててそこをたたく。

少女はこくりと頷き、その赤で印づけられた地点をじっと見つめた。

他にも各地にマルがつけられていたり、その上にバツがつけられていたりと、なにか目的あっての印というのがわかる。

ジャックは一度彼女の機嫌を確かめるように上目にその警戒していない表情を見て、試すように言葉を並べた。


「気に障るようなら悪いが・・・此処は『魔女の元本拠』だろう」



アリスの肩が、びくりと揺れた。


オォォオオォォ・・・


暗かった闇が、より一層深まったのを感じ取ると、ジャックは小さく舌を打った。

突然辺りの空気がざわつき、風が、木々が、威嚇するように、雄叫びをあげるように大きな音をたてた。

地図が飛びゆくのを寸前で掴んだジャックは、まるでわかっていたように再びそこに座り込んだ。

マナも肌を打ちつけ乱れる髪を押さえ、平然とそこに立っている。


「それが、どうした」


一瞬にして、彼女の足を止めていた炎の輪が消し去られた。

わなわなと震える長い黒髪。怒りに満ちる少女の目に、怯えるどころか、彼らはにた、と口元を吊りあげた。



「いや、君がその『呪い』を受けた者だったか知りたくてね」



にこりと、ジャックは愉快そうに微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ