Page.1 原点
「ある日突然、魔女が人々を殺してしまったんだってさ」
それは、何十年も、何百年も昔のこと。
今はもう、こどもに、孫に、そのまた子に受け継がれている、
“昔話”になってしまった、本当のお話。
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「時間は真昼間だっていうのに、なんでこんなに暗いんだ」
真っ暗な闇が空に広がる、午後1時。
青年は投げやりに言葉を放ると、手元に光るランタンを揺らした。
青色に光っていたその火は、次第に赤色に変ってゆく。
『だからぁ、ここに“例のコ”がいるからデショ』
さっきも言いましたよネ、とどこから聞こえてくるのか、その元気な弾むような少女の声に、
青年は舌打ちをして、眉間にしわを寄せる。
「怪奇か」
『・・・さっきも言いましたヨ、それ』
そうだっけか、と呆れるような声にすっぱりと返すと、
青年は顔を隠すフードをたくしあげ、空に寂しく浮かぶ三日月を見上げた。
ここの町に来て、もう4日が経つというのに、彼らはこの町で、朝を迎えたことはない。
この町はずっと、四六時中“夜”なのだ。
『テか、ご主人早く見つけましょうよ。ヒマでス』
「できたらやってるわボケナス」
『ナスじゃないです!この眼鏡っ!』
「主に向かってそんなこと言っていいのか?あ?」
『申し訳ありませんでしタ!!!』
傍から見れば明らかに頭のイかれた奴だと思うが、
実際、その不気味な陣を彫られたランタンから、少女の声は聴こえている。
ご主人、と呼ばれた青年こと、ランタンの主、「ジャック」は、
そのランタンから聴こえる声の主「マナ」と共に、ある目的の為、フラッチェ・・・
いや、「ソーサリス・シティー(魔女の街)」へと来ていた。
そう、
この物語の、原点へ。