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アグリジェント戦記  作者: 黒いたぬき
帝国解放編
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解放に向けて

 フロスト平原で勝利を飾ったエイミーは晴れて帝国騎士団長の座を勝ち取り、その権力を以て大号令を発した。


『帝国騎士団に所属する全ての騎士は帝都に参集せよ。反撃の時である』


 帝国騎士団長エイミー=ベンフォードと帝国第二皇女ディアーナ=ハウゼンの連名で帝国各地に伝えられたその号令によって、各地に展開していた騎士たちは一斉に帝都へ移動を開始。

 その間、エイミーはアレンたちに帝都周辺の王国軍を掃討するよう指示を出しており、彼は五大貴族の二人と共に西へ東へと奔走して帝都周辺の王国軍を掃討したのである。



「色々と解放すべき場所はありますが、やはり早期に南部を解放するためには要衝バイロイトを次の目的地にするべきでしょう」


 皇妃テレージアの私室で今後の目標について話し合うエイミーたちは、帝国地図を眺めながら意見を交し合っており様々な目的地が候補に上がった。

 そんな飛び交う意見を口を挟まず静かに聞いていたエイミーは口を開くとそう告げた。

 帝都から南部に向かう為のルートは三つ存在しており、その中でも王国軍が多く展開し、さらには先のフロスト平原で敗れた王国軍の本隊が逃げ込んだ場所がその城塞都市バイロイトだったのだが、彼女の言葉を聞いた誰もが表情を曇らせた。


「城塞都市バイロイトを解放するには高い火力を誇る砲台からの苛烈な攻撃を潜り抜け、強固で高い城壁を越えて内部へ突入する必要があります。通常の攻城戦では落とすのに二ヶ月以上は掛かるでしょう」


 誰もがエイミーに対して意見を躊躇う中、率先してテレージアがバイロイト攻略の危険性を説いた。


「バイロイトに備えられている砲台は確かに危険ですね。正確な数は分かりますか?」


「八十門でその内の約半数以上が即時稼働出来るはずです。とはいえ城壁の関係上、一平面に展開出来るのは三十門が限界でしょう」


 ――それでも脅威としては十分な数ですが――


 最後にそう付け足したテレージアに対して、エイミーは思考を加速させて考えを巡らせる。

 通常の攻城戦では時間が掛かる上に被害も多く出るのは一目瞭然であり、だからといって強大な殲滅魔法で城壁を破壊するというわけにもいかない。そこに住まう者たちは王国の民では無く帝国の民なのだ。

 故に攻略する方法はただ一つ。内部から城門を開いて突入するしかないのである。


「どの様な脅威であろうとも、ここを解放しなければ南部の解放など夢のまた夢です。よって帝国騎士団の本隊は城塞都市バイロイトを次の目的地に定めます。その間、帝都に参集した騎士たちはアウレール殿とウォルター殿の指揮下に組み込み、西部と東部から南部に向かって帝国各地を解放してもらいます。三軍の合流地点はデトモルト子爵領の最南端。その後、一気に王国軍を帝国領内から駆逐します」


 次の目標を定めたエイミーはそのまま皇帝ヘルムフリートに謁見して今後の方針を説明を行い、行動許可をもらうとアレンたち本隊と合流するため、その日の内にアルテミス・アテナ騎士隊と参集して来た騎士たちを率いて帝都を出発したのであった。 

 そんな彼女たちに対して帝都に住まう民衆たちは、前回とは違って挙って期待を込めた声援を送ったのであった。


「留守の間に何かあった?」


 約一万の軍勢を率いて王国軍の掃討を行っていた騎士たちと合流したエイミーの質問に、アレンは起こった出来事を簡潔に報告した。


「散発的な王国軍の攻撃がありましたが全て撃退に成功。帝都周辺に王国軍はもはや存在しません。それらの戦闘で功績を上げた者たちはこちらに記してあります」


戦いで功績を上げた者たちを纏めた資料を手渡されたエイミーは、笑顔を浮かべるとアレンに告げた。


「新たに参集した騎士たちとアルテミス・アテナ騎士隊に引継ぎを終えたら、全員に三日間の休息を与える。帝都から持ってきた酒と食料は自由に使って構わない。大いに羽目を外しなさい」


 エイミーたちは帝都に帰還した際、宮殿で大層なご馳走を振る舞われた。

 だからこそ帰還せずに戦い続けていた彼らの為に戦場ではお目に掛かれないような品物を持ってきたのである。


「我々の戦いはまだ長い。その力を次の戦で最大限発揮出来るよう、今はゆっくりと休みなさい」


 次の目標を南部に通じる要衝バイロイトに定めたエイミーは、その戦いが死力を尽くしたものになることを知っている。何せバイロイトには強大な砲台が築かれているのだから。

 故にそのバイロイトを解放するためには多くの騎士の力が必要であり、結果として犠牲が出るのは当然のことであった。


「……ゆっくり休むよう、各騎士たちに告げておきます。ご配慮に感謝致します」


 エイミーの表情から次の戦いが過酷なものになることを察したアレンは、感謝の意を述べると部下たちの下へと去って行った。


「バイロイト……王国軍が防備を固めていたら時間が掛かるわね」


 アレンの背中を眺めながら小さく呟いたエイミーは、どれだけ味方の被害を少なく出来るか思考を巡らせながら平原を歩く騎士たちにその瞳を向けた。

 参集してきた騎士たちの期待が高いことは自身も知っており、故に無様な戦いは出来ないのである。


「情報を集めるしかないか」


 バイロイトに展開している王国軍の詳細な情報を得るのを優先する事に決めたエイミーは、必要な物を探す為に王国軍から接収した装備品が集められている天幕へと歩みを進めた。

 今の王国軍相手なら成功するという確かな確信を胸に抱きながら。

 そしてそれから三日後、エイミーたちはフロスト平原を出発してバイロイトへと進軍を開始したのであった。


 一方のダリウスも、エイミーたちが次の目標を城塞都市バイロイトに定めたと知ると全軍に対して進軍を告げた。


「エイミー=ベンフォードよりも早く城塞都市バイロイトを落とす」


 フロスト平原での失態を早急に回復するため、南部へ到る要衝をエイミーより先に落とすと決めたダリウスの命令によって帝都に集結した帝国軍八万は、エイミーたちから遅れること四日後にアルスト平原を出発したのであった。


「このままでは何もかもが水の泡だ」


 ベンフォード家に大きく差を開けられたと焦るダリウスはエイミーという存在を敵視していたが、当の本人である彼女は彼を相手にすらしていなかった。

 エイミーは権力に執着するような人間では無く、正直言ってしまえば騎士団長という地位にも固執してはいない。ただ騎士団長という地位にいた方が対王国戦を戦いやすいから望んだだけであり、戦争が終わった後まで騎士団長の座に居座り続けるつもりも無かった。

 しかしそんな彼女の思惑を知らないダリウスは焦りから冷静な思考が出来ずにおり、故に再び大失態を犯すのであった。






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