魔貴族令嬢な私と魔王妃のあなた。
やっと続き書けました。
よろしくお願いいたします。
魔王妃様が来るなんて。
どんな魔王イルギス様ったら悪事を働いたのかしら?
まあ、お祝いにいかなければいけないわ。
「どうだった?」
お父様がオレンジの顔をさらにオレンジにしていった。
やっぱり心配なのね。
「喜んでいただけましたわ。」
私はケーキの入っていた籠を持ち上げて揺らした。
魔王妃ミゼル様ご即位のお祝いに特製ケーキを差し上げたらとってもよろこんでもらえた
人界の睦屋のケーキより美味しいといってくださってケーキ作り冥利につきると言うものだったわ。
睦屋は最高に美味しいプレミアムショートケーキがあるらしいわ。
今度魔王妃様と行こうかしら?
問題は魔王イルギス様があの方を独占してるところよね。
「ケーキ渡して雑談して終わりにしたのか?」
お父様がこの世の終わりのような顔をした。
あら、いけなかったかしら?
もっとエクセレントなケーキが良かった?
三段重ねに今度はいたしましょうか?
一番下はガトーショコラでその上に濃厚チーズケーキ…イチゴムースが一番上で…。
私が次のケーキの妄想、いえ構想を練っていたらお父様がなにか呟いているわ。
「どうしてこんなにうまくいかないんだ。」
ってなんですの?お父様?
「ヘウゼお母様なら同じ下級人型魔族ご出身ですもの、魔王妃様に何をお持ちすればお喜びになるかわかるはずですわ。」
私は屋敷の廊下を歩き出した。
ヘウゼお母様は弟で跡取りのヤヘツーサのお母様でお父様の魔族としてのすべてを次代に受け継がせるために嫁がれた方です。
私のお母様は正室で政略結婚?なのかしら?お母様とお父様仲がすごくよろしいのだけど?
「どうしてわかんないんだー!」
お父様が庭に向かって叫んで庭師を驚かせてるのが見えるわ?
だからもっと仲良くなってきますわ。
ミゼル様可愛いですもの。
あの柔らかい茶色のセミロングのくせ毛とエメラルドみたいな瞳…ああ、あんな可愛い妹がいたら毎日ケーキ焼いて着飾らせてお姉様ってよんでもらうのに。
魔王イルギス様が囲い込むのがわかりますけど日参しないと会えないなんてひどいですわ。
「アールセイル姫、なにそこで拳をふりあげてるんですか?」
ヘウゼお母様が困った顔をして後ろにたってたわ。
どうやらヘウゼお母様の部屋の扉の前でしてしまったみたいですわ!
「ヘウゼお母様、お聞きしたいことがございますの?」
ヘウゼお母様に向き直って小首をかしげた。
「お母様なんておこがましいです、私など日陰の身ですのに。」
ヘウゼお母様が慎ましやかに微笑んだ。
「お母様がヘウゼお母様もお母様っておっしゃってましたわ、私もそう思ってるっていつもいってるじゃありませんの。」
それにこれから教えていただきたい事もありますもの。
「もったいないですわ。」
つつましやかにヘウゼお母様が言って私を部屋に入れてくれましたわ。
今日も銀の空が綺麗ね…良い天気だわ…朝早いけどいきましょうか。
居間を覗くとお父さまがマーカイダシャーナルに目を通していたので声をかけたわ。
「お父さま、今度こそ頑張ってきますわ!」
お土産はばっちりですもの。
「こんどこそ頑張れよ。」
お父さまが顔をあげて何処か不安そうに言ったわ。
申し遅れましたわ。
私、橙の君の長女でアールセイル・橙・オーランジャスと申します。
趣味はケーキ作り、オレンジ色の髪の毛と金の目しか特徴がありませんの…下級人型魔族より胸がありすぎなので紛れ込めないのがつまらないですわ…下級人型魔族の集落行きたいのに魔力も大き過ぎですしね…。
広大な魔王宮の魔王イルギス様のおひざ元…本当にお膝の上に魔王妃ミゼル様はいらっしゃったわ。
濃厚なキスシーンを玉座で演じてるなんて…もう少し考えてあげないとミゼル様が可哀そうよ。
「イルギス様、いい加減になさってくださいませ。」
私はそういってイルギス様からミゼル様を魔力で浮かせて引き離した。
床におろしたミゼル様がふらっと倒れこみそうになったので魔力で支える。
「アールセイル!どういうつもりだ。」
イルギス様が威嚇した。
玉座からおりてミゼル様に寄ろうとしたのでシールドを貼る。
「ミゼル様、ケーキ作ってきましたの、いきましょうか。」
イルギス様と無視して私はそっとミゼル様の手をとった。
なんか怯えてますわ?
イルギス様によっぽどひどい目にあわされたのですわね。
「私…今日こそ惨殺されるんですか?」
ミゼル様が振るえながらいったわ。
ザンサツなんていう行事があったかしら?
「ケーキ、お好きだってきいたのですけど。」
私はケーキの箱を見せた。
「好きです…。」
ミゼル様がすこしだけ笑ったわ。
ああ…可愛い…これぞ下級人型魔族の美人さんよね。
「おい、ミゼルをかえせ!」
イルギス様が暴れてるのでにげられないようにシールドを強化した。
こう見えてもシールドと魔力はイルギス様に勝るとも劣らないと言われてますわ…。
攻撃の方は少しだけイルギス様にまけますけどね。
「ねぇ、あなたお茶の準備してちょうだい。」
静かに控えてた侍従に命じる。
「は、はい。」
侍従ははじかれたようにその場を去った。
固まってただけなのね。
中庭の東屋にお茶の準備をさせたわ。
綺麗な銀の空だもの。
「空が銀なんですね…もう冬なんだ…。」
ミゼル様が中庭の東屋で呟いた。
「あら?しばらく前から銀ですわよ。」
魔界は季節によって空の色が違うのよね…。
「赤い空は見たんです…殺されるかもとおもいながら…。」
ミゼル様がほっと溜息をつきながらミルクティーをのんだ。
寒いのかしら?ミニのチャイナドレスだものね。
ショールを虚空から取り出して肩にかける。
「ありがとうございます。」
ミゼル様が可愛く微笑んだ。
ああ、可愛いわ…それにしても…。
「赤い空?」
まさか秋からでてないということかしら。
「ミゼル様、イルギス様とは…。」
私がいいかけるとミゼル様は明らかに怯えたわ。
何て言うこと!どういう扱いしてますの?
ミゼル様をよくみるとイルギス様の魔力が信じられないくらい濃厚に絡み付いてるのがわかりますわ。
あの鬼畜!どんなことをしてますの?
「アールセイル!ミゼルを返せ!」
イルギス様がいつもの余裕をかなぐり捨てて廊下の向こうからやって来ましたわ。
「私お聞きしたいことがございますわ、ミゼル様をどのように扱ってるかとか…。」
私は魔力を練りながら冷ややかに聞いたわ。
「大事に抱え込んでどこが悪い!オレの女だ!」
いつもの優雅さをかなぐりすててイルギス様が叫びましたわ。
ついでに攻撃がきたのでシールドで受けましたわ。
「イルギス様のは監禁ですわ!ミゼル様はおあずかり致します。」
私は転移の魔法をミゼル様と自分にかけた。
「ゆるさ…」
遠くでイルギス様の声と姿が消えて我が家の庭園に帰ってまいりましたわ。
庭園ではお父さまが哀愁ただよわせて庭師の邪魔をしてましたわ。
「ただいま、お父さま、ミゼル様ですわ。」
私はニコニコ言いましたわ。
「おお、ついに確保したか、さすが我が娘すぐに!」
お父さまがいいかけたので言葉を継ぎましたわ。
「はい!最上のおもてなしをさせていただきますわ!まずお洋服を着替えましょう。」
ミゼル様ふるえてるものね、寒いんじゃないかしら?
「え?暗殺されるんじゃ…。」
ミゼル様が驚いた顔をされたわ。
あんさつ?そんな食べ物あったかしら?人間界のたべもの?
「おもてなしですものゆっくりなさってくださいね。」
私はやさしくミゼル様の手を持って廊下に導いた。
「おい…まさか本気でおもてなしか?」
おとうさまが聞いた。
あら?もっと豪華なおもてなしのほうがいいのかしら。
「もっと豪華なおもてなしをいたしますわ!」
私がほほえむとお父さまは庭園の方を向き直った。
「何で…何で…何でわかってくれないんだぁぁぁ!!」
お父さまが叫んだ。
庭師たちが耳を押さえた。
ウサギ獣人ですものね。
「だからエクセレントなおもてなししますって。」
私はうきうきしながら言った。
ミゼル様は振るえてらっしゃるわ…すぐに温かいものをきせてあげないとね。
そうしたら人界に美味しいケーキをたべに行きましょうか?
イルギス様が来る前に参りましょうね。
本当に可愛いわ…こんな妹、産んでくれないかしら?ヘウゼお母様。
それからしばらくしてイルギス様がすごい勢いでやってきてミゼル様をさらっていくまで私はミゼル様を堪能した…でもなんですぐ振るえるのかしら?
我が家はさむいのかしら?
「暖房付け直さないとかしらね。」
私は炎の魔人のカタログをみながら呟いた。
「いっそそれで…。」
一緒にソファーでくつろいでたお父さまがなんかいった。
わかってますわ!
「最上の防御安全機能がついた炎の魔人にいたしますわ、ミゼル様が安全に温まれるように。」
だから安心して下さいね、お父さま。
お父さまは静かにたって庭に出ましたわ。
「なんで、なんで、なんで、なんで、なんでわかってくれないんだ!」
お父さまが絶叫して庭師たちが耳を押さえましたわ。
だ、か、ら最上で豪華絢爛安全安心のおもてなしをミゼル様にいたしますわ!
安心して下さいませ。
読んでいただきありがとうございます。