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戦場の女神

「旗色が怪しい」

 本陣のクリスがつぶやいた。

「そうですね。最初の頃の勢いを感じられません。敵の混乱が治まってきたのでしょう」

 ハルトも落ち着いて答える。

「うむ。私も討って出よう。ハルト殿は殿軍の準備を進めてくれ!!!」

 クリスはそう言って部隊を整えると、五千の兵とともに討って出た。


そんな中、カントとワーズが戦場で対峙していた。

「我こそはルース自治軍団長、カント!!貴殿は帝国軍第三軍団長ワーズとお見受けする!!お相手願おう!!!」

 カントはそういうや否や、剣を振りかざしてワーズに斬りかかった。

「小僧が!!生意気な!!十年早いわっ!!!!」

 カントの振り出した剣にワーズが剣を叩きつける。カントの腕に激しい痺れが走った。

「む?小僧、手負いか?!!なめおって!!!」

 カントの負傷に気付いたワーズは、容赦なく剣を振る。カントはワーズの勢いに防戦一方となった。なんとか剣を合わせるも、カントの腕に激しい痛みが走り続ける。そして十合目――。

「ぐっ、ぐはぁっっっ!!!!」

 カントはそう叫ぶと、激しく顔を歪めた。その肩からは血が流れ出していた。

「傷口が開いたようだな!手負いで私に挑んだのが運の尽きだ!」

 ワーズはそう叫び、剣をカントの腹部に突き刺した。激しい戦場の中、その周囲だけ沈黙が襲った。カントは落馬し、地面に倒れ込んだまま動かない。

「敵将カント、討ち取ったぁ―――っっ!!!」

 ワーズの言葉に、帝国軍は一気に士気を高めた。対する連邦軍は大将の一人を失い、大混乱。とてもカイン一人では収拾がつかなくなっていた。混乱の中も、帝国軍は容赦なく連邦軍を襲う。一人、また一人と連邦兵が討たれる。カインは周囲で連邦の同胞たちが倒れていくのを見ながら、自身自分に群がる帝国兵をなぎ倒すことしかできない。カインの中に悔しさと焦りが湧き始め、連邦軍の敗色が濃厚となりつつあった。

そのとき――。

戦場に白馬の女性騎士が現れた。クリスである――。敗色ムードの連邦軍の中、クリス率いるわずか五千の部隊だけは士気高らかに戦場を駆け巡った。クリスの活躍に徐々に兵たちも士気を取り戻しつつも、敗色ムードを吹き消すことはできない。そう感じたクリスは――。

「立ち上がれっ!!!!ルミニエクの勇士たちよっ!!!!!ここで犬死するのが貴公らの宿命かっっ!!!!」

 右手に高らかと剣を掲げ、クリスは張り裂けんばかりの声を上げた。この瞬間、戦場に静寂が訪れた。敵も味方も、息をのんでこの若き英雄に目を見張った。

「国を守りたくないのかっ!家族を守りたくないのかっ!私は守りたい!!守りたいのなら立ち上がれ!!剣を取れ!!!」

 クリスの第二声とともに地響きが轟いた。クリスに喚起され、奮い立った連邦兵たちが喊声(かんせい)をあげているのだ。先ほどまで弱気になっていた兵まで、目の色を変えて敵に斬りかかった。ここに来てクリスの一言が完全に戦場の流れを変えた。

「ふむ。私は彼女のことを過小評価していたようだ…。まさに、救国の英雄やもしれん!」

 カインもこの一幕でクリスを見る目を変えた。もちろん、この逆転劇を見ていたのは味方ばかりではない。帝国のワーズとアリシアもそうだ。

「たった一人の少女が流れを変えた…か。しかし、目標はセシル自治領!アリシア殿、ここは任せた!!私は一万の部隊とともに迂回してセシル自治領を目指す!」

 そう叫ぶと、ワーズは一万の部隊とともに方向を変えた。アリシアはこの動きが察知されないよう、自軍でワーズの部隊を隠す。戦場はもはやクリスの活躍により連邦軍の勝利が見えてきた。しかし、ワーズの部隊がセシル自治領に迫る。

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