第25話 小さな令嬢たちと新しい可愛らしさ
侯爵家の庭。
午後のやわらかな光の中、フェリシアの妹たち――
エミリアとリリアは楽しそうに走り回っていた。
ふんわり広がるスカート。
裾にはたっぷりのフリル。
胸元には大きなリボン。
そして――
頭には、大きなリボンカチューシャ。
走るたびに、スカートがふわりと揺れる。
淡いピンクの布が、光を受けてやさしくきらめいた。
その様子を、庭の外から見ていた母親たちが思わず足を止める。
「まあ……可愛い!」
隣にいた小さな女の子も、ぱっと顔を上げた。
「お母さま、見て!」
母親は目を細める。
「本当に……素敵ね」
別の母親も、思わず声を漏らした。
「色がとてもきれい」
「春のお花みたい」
「フリルもたくさん……」
「こんなに可愛いドレス、初めて見たわ」
庭の中では、エミリアとリリアがくるりと回る。
くるり。
ふわり。
「見て見て!」
「ふわふわ!」
楽しそうな笑い声が広がる。
そのとき、一人の母親がふと気づいた。
「あら……頭も」
視線が集まる。
大きなリボンが、やわらかく揺れていた。
「ドレスとおそろいなのね」
「まあ……可愛い」
小さな女の子が、そっと母親の袖を引く。
「お母さま」
「わたしも、あれ着たい」
母親は少し驚いたように目を丸くしてから、やさしく笑った。
「そうね」
「きっと似合うわ」
庭の中では、フェリシアが妹たちを見守っている。
クラリスがそっと隣に立った。
「とても楽しそうですね」
「はい」
フェリシアは微笑んだ。
妹たちの笑顔を見るだけで、胸があたたかくなる。
「やっぱり、可愛い服っていいですね」
クラリスも静かに頷く。
「見ているだけで、嬉しくなります」
フェリシアは、もう一度庭を見渡した。
揺れるスカート。
ひらひらのフリル。
大きなリボン。
(よかった)
ただそれだけを思う。
庭の外では、母親たちの会話がまだ続いていた。
「あのドレス、どちらで……?」
「侯爵家のお嬢様が作られたそうよ」
「まあ……」
「お願いできるのかしら」
「うちの子にも着せてあげたいわ」
小さな女の子たちは、きらきらした目で庭を見つめている。
その日の夕方。
いくつかの貴族の家で、同じ話がささやかれた。
「今日ね、とても可愛いドレスを見たの」
「淡い色で、ふわふわで」
「リボンもついていて……」
「わたしも着たい!」
「ねえ、お願い!」
そんな声が、あちこちで上がる。
こうして――
フェリシアの作った可愛いドレスは、
ゆっくりと。
けれど確かに。
王都の中へ広がり始めていた。
可愛いと思う気持ちと一緒に。




