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私が着られなかったロリータ服を、異世界で広めます。  ―転生令嬢のドレス革命―  作者: 烏斗
第4章:新しい装い

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第21話 気づき

侯爵家の庭。


午後のやわらかな光が、白いテーブルを包んでいた。


その上に置かれているのは、一枚のスケッチ。


ふんわりと広がるスカート。

胸元の大きなリボン。

裾に重なるフリル。


さらに、小さなリボンがいくつも描き足されている。


「うーん……」


フェリシアは首をかしげた。


クラリスが紅茶をそっと置く。


「まだお考えですか?」


「はい」


フェリシアは少し困ったように笑った。


「可愛いとは思うんですけど……」


視線をスケッチへ落とす。


「もう少し、何かできそうな気がして」


クラリスも静かに覗き込む。


「十分に素敵だと思いますが」


「そうなんですけど」


フェリシアは小さく唸る。


“足りない”わけではない。


けれど――


“まだ先がある”ような気がしていた。


そのとき。


「お姉さまー!」


明るい声が庭に響く。


振り向くと、妹たちが駆けてきていた。


エミリアとリリア。


まだ幼い侯爵家の令嬢たち。


「何してるの?」

「ドレス?」


フェリシアは微笑む。


「ええ、少し考えごとを」


エミリアが身を乗り出す。


「見てもいい?」


「どうぞ」


次の瞬間。


「わあ……!」


ぱっと、表情が明るくなる。


「可愛い!」


リリアもすぐに頷いた。


「このドレス着たい!」


フェリシアは思わず瞬きをする。


「え?」


二人は夢中でスケッチを見つめている。


「このリボン、好き!」

「スカート、ふわふわしてる!」


言葉に迷いがない。


ただ、素直に“好き”を口にしている。


その様子を見て――


フェリシアの中で、何かが重なった。


スケッチと、妹たち。


ふんわりとした形。

やわらかな装飾。


(……似合う)


自然に、そう思えた。


「……あ」


小さく、声がこぼれる。


クラリスが振り向いた。


「どうかなさいましたか?」


フェリシアはゆっくりと言う。


「このドレス……」


スケッチに触れながら。


「子供にも、似合うかもしれません」


クラリスがわずかに目を見開く。


「子供、ですか?」


「はい」


フェリシアは頷いた。


「こういう“可愛い”って」


言葉を探しながら続ける。


「小さい子にも、きっと自然に似合うと思うんです」


エミリアがすぐに声を上げる。


「着たい!」


リリアも続く。


「お姉さま、作って!」


フェリシアは思わず笑った。


「まだ形にもなっていませんよ」


けれど――


もう一度スケッチを見る。


(でも、本当に似合いそう)


その確信は、先ほどよりもはっきりしていた。


フェリシアは鉛筆を手に取る。


「……それと」


新たに線を引く。


頭の位置。


そこに、細い帯。


そして――


大きなリボン。


クラリスが問いかける。


「それは?」


フェリシアは少しだけ照れながら答えた。


「頭につけるリボンです」


「ドレスとおそろいの」


エミリアの目が輝く。


「可愛い!」


リリアも頷く。


「それも欲しい!」


フェリシアはくすりと笑った。


「ふふ」


「やっぱり、そろっていた方が可愛いですよね」


ドレスだけではなく。


頭まで含めて、一つの装い。


その考えは、自然に形になっていた。


スケッチの上には――


ふんわりとしたドレス。

重なるフリル。

いくつものリボン。


そして、頭の大きなリボン。


フェリシアはそれを見つめる。


胸が、少しだけ高鳴った。


(……好き)


ただ、それだけの感覚。


けれど確かなもの。


クラリスが静かに言う。


「きっと、とても素敵になります」


フェリシアは嬉しそうに頷いた。


「作ってみます」


まだ名前はない。


けれど――


その“可愛い”は、少しだけ形を変えた。


大人だけのものではなく。


もっと自由で、やわらかく。


誰かの“好き”に、まっすぐ届く形へ。


その小さな気づきは。


やがて王都に、

新しい流れを生み出していく。


甘く。


やさしく。


そして、心を弾ませるような――


新しい可愛さとして。

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