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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ただいま 一

作者: 觜崎 純
掲載日:2026/02/19

「ただいま!」

緩やかな坂すらキツく感じるとある夏の猛暑の日。

私は父方の祖父母の住む田舎へと帰っていた。山は青々と生命力を発揮し、川は優しく包むような音で流れ、照りつける太陽すら心地よく感じるそんな不思議な場所だった。

家からそう遠くはないところにあったが、周りの景色の違いに私は旅行気分で帰省を楽しんでいた。

「ただいま。」

父がそういって玄関を開ける。私も、ただいまと言い家の中に入っていく。

「おかえり、暑かっただろう。奥の部屋冷やしてあるよ。」

玄関に顔を出した祖母はそう言って台所へと歩いていった。

祖母は私たちが帰ってくると必ず何か甘いものを出してくれる。

「今日は何かな?」

そんなことを言いながら冷房の効いた部屋でテレビを見ていた。

そこには、夏の食べ物特集が映っており。私の大好きなかき氷のお店が紹介されていた。

「かき氷食べたい。」

私は思ったことをなんでも口にする、そう言う性格だった。

祖母が、私に向かってこう言った。

「ごめんな。今年は何もないでな、近くの駄菓子屋のかき氷でも食べてきな。」

僕は外で畑仕事をしている祖父を呼び一緒にかき氷を買いに行った。

10分ほど歩いて着く距離だったが、祖父と歩くと色んなことを教えてもらい30分ほどかけてやっと着いた。

私は苺味。祖父は抹茶味を買って家に帰った。

家に帰ると母と父はテレビを見ていた。

「今からひと雨来るみたいだな。」

父がそう言っていた。

雨が降る前に外に行こう。私はそう思い、父に出て行くことを告げ蝉取りに向かった。

いつもの蝉取りスポットに着くと見知らぬ女の子を見つけた。

「どこの子?」

私はその子にそう効いた。

彼女は驚いた顔でこう答えた。

「私ははじめ。一と書いてはじめ。」

私ははじめと一緒に蝉取りをした。

私は蝉取りには自信があり、はじめの前で格好をつけようとしたが、はじめは驚くほどに上手だった。

教えてもらいたかったが、変なプライドが邪魔をして教えてが言えなかった。ただ悔しかった。

他にも虫取り以外に、かけっこやかくれんぼ、はじめとは初めて会ったとは思えないぐらい仲良く遊んだ。

外も暗くなって来た。雲も分厚く太陽も雲に遮られた。

「そろそろ帰らなきゃ。」

私はそうはじめに言い帰ろうとした。

「待って!」

はじめはそう言って私を止めた。

「怒られるから帰らなきゃ。」

私はそう言った。

「まだ遊びたい。」

彼女は私にそう言って、私をまた引き止めた。

私は彼女に明日もここに来ること、だから明日は、家とかここの街を教えてよと彼女に伝えた。

どこか寂しそうで暗い顔をする彼女を横目に僕は走って家に帰った。

雨も強くなり、家までもうちょっと。そんな時だった。

運悪く足を滑らせ川の土手から滑って、高さのある川岸に落ちてしまったのだ。

「痛い!」

半ズボンの私の足は足に引っ掛けており、血が大量に出ていた。

私はパニックになった。

「声が出ない、痛くて動けない、どうしよう。」

雨は強さを増し、川の水はどんどんと増加していく。

流石に遅い帰りをおかしいと感じた大人達が探して走っていた。

「どこだ!どこにいるんだ!」

声は聞こえるが返す声が出ない。

私の周りは、背の高い草が生えており私をすっぽり高くしている。

川の水の勢いは増すばかり。あと10分もすれば川辺は水で見えなくなり、私も流されてしまうだろう。

私は小さいながらに死を覚悟した。

数時間前までは楽しく元気に過ごしていたはずの帰省が、今は私の運命を左右している。

「大丈夫!?」

そんな声が聞こえた。私はそっちを向いた。

はじめだった。

「助けて!死んじゃう!」

なぜか声が出た。パニックになっていた私の心は、はじめにあって少し冷静さを取り戻したのだと思う。

はじめは走っていった。

はじめが走ってすぐ母と父がやって来た。

「すぐ助けるからな!すぐいくからな!」

私は助けられた。

すぐに救急車に乗って病院に搬送された。

目が覚めると病院のベッドの上だった。足には大袈裟なまでの包帯が巻かれていた。

隣では父と母、祖父母が皆私を見て安堵していた。

「助けてくれた女の子見た!?あの子は大丈夫なの!?」

私は夢中でみんなに聞いた。

「女の子?そんな子見てないわ。」

母がそう言う。父も祖父母も見ていないと言う。

「あなたの声が聞こえたから走ったらあなたがいたの。」

私は確かに見た。はじめが走って行く姿を、見つけてくれたことを、私は全て見ていた。

何事も無かったかのように、私は祖父母の家に帰った。

強いて言うならば足に大量の包帯が巻いてあることぐらいだ。

夜になっても、何か落ち着かずソワソワしていたら祖母が、「スイカでも食べて少しお話でもするかい?」

そう言ってくれた。

私は祖母と一緒に台所で今日の事を全て話した。

「はじめちゃん。」

祖母はそう言うと昔のことを話してくれた。

祖母が私と同じぐらいの歳の時はじめという女の子の友達がいたらしい。その子は好奇心旺盛で、何にも臆さず虫も怖がらない男勝りな女の子だったそうだ。

だがある日、その子は川に落ち亡くなってしまったそうだ。

その日もいきなり降る雨で、はじめは帰ると言って帰ったそうだ。祖母は雨宿りして雨が上がったから帰ったほうがいいと、すぐ上がる雨だからとそう言って引き止めたらしいが、はじめは帰ってしまった。

祖母がそのことを知ったのは次の日の朝だったらしい。

祖母は、そのことを今も深く悔やんでいた。

でも今回はじめは私を救ってくれた。

「はじめちゃんに感謝しても仕切れない。」

と言って私を抱きしめた。

今までにないほど強く私を抱きしめた。涙を啜る音を聞くと私も泣いてしまった。

だってあまりにも悲しすぎるから。

次の日、私は祖母とはじめのお墓に手を合わせに行った。

古くヒビが入った墓石を私は一生懸命掃除した。

「ありがとう」

はじめの声がした。

間違いなくはじめの声だったがそこに姿はない。

昨日一緒に遊んだあのはじめが、私を助けてくれたあのはじめがもういないことが私は信じられなかった。

月日は流れ私も大人になった。

あれから何年経っただろうか。足の傷は残っている。

祖母は少し前に、人生を全うした。

私は命を助けてもらったあの日に毎年お墓に手を合わす。

祖母の墓石ははじめの横に作ってもらった。

祖母の墓を綺麗にした後に、はじめの墓に手を合わす。

「ただいま はじめ






作品を読んでいただきありがとうございます。

下手くそながらに書かせていただきました。

ありきたりな内容かもしれませんが、優しく読んでいただいたら幸いです。

皆さんも毎日何があるかわかりません。気をつけて人生楽しんでいきましょう。   觜崎 純


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