夏休み
「――それでは、本日でいったんお別れですが、また元気な姿で会えることを楽しみにしています。皆さん、よい夏休みを」
「はーい!」
それから、一週間ほど経て。
一年D組の教室にて、壇上から優しく微笑みお話をなさる丸眼鏡の端整な男性。クラスのみならず学内でも人気と評判の、知的で優しい担任の先生で。
そして、先生のお言葉に教室の至るところから歓喜の声が上がる。……まあ、そうなるよね。正直、僕としては残念な気持ちもあるけども。
さて、本日の終業式――入学からおよそ三ヶ月、一学期を終え明日からは夏休みに……うん、なんだかあっという間だったなぁ。
「――いやー、一学期ももう終わりかぁ。なんかあっという間だったなぁ。特に、陽奈くんと付き合い始めてからは」
「そうですね、知乃先輩。先輩とお付き合いをしているなんて、今でもまだ夢ではないかと思っているくらいです」
「ふふっ、随分と長い夢だね」
それから、少し経過して。
いつもの通り、校舎から少し離れた住宅街にて合流する僕ら。……うん、本当にあっという間で。特に、知乃先輩とお付き合いを始めてからは……うん、ほんと夢みたい。そして、だとしたら永久に覚めないほしいと心から思う。
「ところで、陽奈くんはもう夏休みの予定とか決まってるの?」
「……そう、ですね。今のところ、勉強とバイトくらいでしょうか」
「……そっか、よかった。ご実家に帰る、とかだったら仕方ないなと思ったけど……うん、それなら夏休み中も会えるね」
「……へっ? ……あの、ひょっとしてですが……よもや、夏休みの間もこのわたくしめと会ってくださるのですか?」
「……いや、むしろなんで会わないと思ったの? 私の記憶が間違ってなければ、わりと前から恋人だったと思うんだけど、私達。あと、初めて聞いたんだけどその自称」
その後、のんびりと歩みを進めつつそんなやり取りを交わす僕ら。……なんと、夏休みの間もこのわたくしめと会ってくださるなんて……うん、やっぱり夏休みもいいよね。よし、宿題は早めに終わらせよう! ……ところで、それはそれとして――
「ん、どうかした? 陽奈くん」
すると、不意にそう尋ねる知乃先輩。……いや、不意にでもないか。僕がなにかを言いたそうにしてたから先輩の方から聞いてくれたんだろうし。
ただ……うん、言い出しづらい。でも、折角聞いてくれたのに言わないのも申し訳ないし……それに、やっぱり言いたい。なので――
「……その、知乃先輩……もし、よろしければなのですが――」




