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憧れの美少女に告白したら、男の娘としてお付き合いすることになりました。  作者: 暦海


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藤沢海月

「――ねえ、陽奈ような。最近、なんか変じゃない?」

「……へっ? あっ、いやそんな僕が変な人だなんてたいそう畏れ多――」

「……いや、褒めたつもりは全くなかったんだけど。あと、別に陽奈自身に言ったんじゃなくて……変って言ったのは、最近の陽奈の行動のこと。なんか、ホームルーム終わったらすぐ帰るし……あと、なんか付き合いも悪いし」

「……あ……えっと、それは……」



 ある放課後のこと。

 一年D組の教室にて、帰り支度を終え立ち上がろうとした寸前、ふと前方から声が響く。まあ、誰の声かは確認するまでもないけれど……ともあれ顔を上げると、長い黒髪を纏う端麗な少女が怪訝そうにじっと僕を見ていて。……それにしても、珍しく褒めてくれたかと思ったら、どうやらそういうわけでもないようで……まあ、僕だしね。


 ともあれ、彼女は藤沢ふじさわ海月みづき――同じ一年D組、そして小学校から中学、高校とずっと一緒のいわゆる幼馴染みの女の子で。



 さて、元来コミュ障でちょっとした雑談すらままならない僕が、クラスのみならず学年内でも人気の高い海月と話せるようになったきっかけだけど……まあ、ありきたりではあるけど趣味が合ったからで。


 小学三年生のある夏の放課後、図書館にて一人で本を読んでいた時にクラスメイトだった海月に話しかけられたのだけど……まあ、その本というのが少女漫画だったわけで。もちろん、後ろめたく感じることでは全くないのだけども……ただ、男の子が少女漫画を、というのは当時はとりわけ知られるのが恥ずかしくて。なので、話しかけられたこと自体にも驚きつつさっと――


『――静河せいかわくんも好きなの!? 私も大好きなんだ、その漫画!』


 漫画を隠そうとした寸前、ニコッと笑いそう口にする海月。パッと輝くその笑顔には、疑う余地もなく純粋な喜びだけが浮かんでいて。……うん、こう言っては失礼だけれど……こう、馬鹿にされたり気持ち悪がられたりするものかと……。だから、本当に驚いたし……大袈裟かもしれないけど、本当に涙が出るほど嬉しかったことを今でも鮮明に覚えていて。



 ……ただ、今は感慨に耽っている場合ではなく……うん、どうごまかしたものか。言わずもがな、上手い言い訳なんてまるで思いつく気がしない。……とは言え、このままずっと黙っているわけにもいかないので――



「……うーん、早いかな? 僕としては、以前まえとそんなに変わらないと思うんだけど。あと、付き合いが悪いのは……ほら、やっぱり二人の邪魔しちゃ悪いかなって」


 ひとまず、そう伝えてみる。……うん、そこまで不自然じゃないはず。確かにあの日以降、少しでも知乃ちの先輩をお待たせしないようなるべく早く教室を出てはいるけれども……でも、そもそも以前もそれなりに早かったかと。別に居残る理由もないので、ホームルームが終わったら普通に帰り支度をして普通に帰ってたわけだし。なので、前半こちらに関してはさほど問題もなく受け入れてくれると思うけれど――



「……邪魔しちゃ悪いって……そんなこと、全然思ってない。そもそも、それまでは普通に遊んでたじゃん、三人で一緒に。なのに、なんで今更……鷹斗たかとも心配してたんだよ? 最近、陽奈になにかあったのかって」


 すると、ややあってそう告げる海月。その表情や口調には、ありありと不服の色が滲んでいて……うん、やっぱり後半こっちは苦しかったかな。彼女の言うように、それまでは三人で一緒に遊んでたわけだし。


 ちなみに、鷹斗とは咲宮さきみや鷹斗くん。僕らと同じ令明れいめい高校一年生で、クラスはB組――そして、控え目に言っても超イケメンの男子生徒で。

 そして、中学三年の秋――去年の11月から付き合っているという、海月の恋人でもあって。そんな彼と海月の出会いは……うん、これは今はいいか。ともあれ、僕のことまで心配してくれるなんて外見だけじゃなく心までもがイケメンで――



「……ねえ、陽奈。なんで、そんな嬉しそうなの?」

「……へっ? あっ、いや……」


 ふと、そう問いかける海月。心做こころなしか、さっきまで以上に怪訝な表情かおで……うん、ごめんなさい。


 


 


 

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