窮地?
(……どう、思われますか? 知乃先輩)
(……うん、大丈夫だと思うけど……もうちょっと、様子を見た方がいいかも)
(……本当に、申し訳ないです)
(……ううん、仕方ないよ。私も、ここまで来たら大丈夫かなと思ってたし)
それから、ほどなくして。
茂みに身を潜めつつ、声を潜めそんなやり取りを交わす僕ら。傍から見れば怪しいことこの上ないけど、今は仕方がない。
さて、そんな怪しい僕らの視線の先には、賑わう人達の中でもひときわ目立つ一組の美男美女――僕の親友である海月と、彼女の恋人である鷹斗くんの二人で。……うん、油断した。学校からわりと距離のあるこの辺りなら大丈夫かと思ったけど……うん、本当に申し訳ないです。
(……ところで、知乃先輩もご存知だったんですね、あの二人のこと)
(……うーん、ご存知ってほどじゃないけど……それでも、陽奈くんの友達っていうのは知ってたかな。一緒にいるとこ見たことあるし)
(……なるほど)
その後も、茂みの裏で身と声を潜めつつ会話を交わす僕ら。時折、チラチラと視線を感じるけど今は気にしている場合じゃない。とにかく、今はあの二人にバレないことが何よりで――
(……どうかした? 陽奈くん)
(……あっ、いえ……)
すると、ふとそう尋ねる知乃先輩。僕の様子に異変を感じたからだろうけど……いや、何と言いますか……その、今更なのかもしれないけど……こう、二人の雰囲気がどうにも――
「――あれ、もしかして知乃?」
「「……っ!!」」
刹那、思考が切れる。パッと振り返ると、そこには驚いたお表情で僕らを眺める一組の男女のお姿があって。
「……き、奇遇だね明里! ……と、そちらの人はもしかして……」
「……えへへっ、そうなの! ほら、この前言ってたあたしの彼氏! この人、この辺に住んでるから今日一緒にお祭りに来たの」
「始めまして、宮下勇斗です。美帆とは友人の紹介で知り合いました。美帆がいつもお世話になってます」
「あっ、はい、私は三朝知乃です! 始めまして、宮下さん! それから……うん、改めておめでと、明里」
「うん、ありがと知乃!」
その後、和やかに会話を交わすお三方。知乃先輩も少し焦りつつも、幸せそうな様子のご友人に温かな微笑を浮かべていて……うん、素敵だなぁこういうの。
……ところで、この流れだと流石に僕も自己紹介をすべきだよね? ただ、どうにもどこで口を挟めばよいのか分か――
「……ところで、君は知乃の友達?」
「……う、うん……」
すると、ほどなくじっと僕を見つめそう問いかける明里さん。……マズい、男だとバレ――
「――めっちゃ可愛いじゃん! 類は友を呼ぶってやっぱりほんとだったんだね!」
「……へっ? ……あ、ありがとうございます……」
そんな不安の最中、さっと僕の手を取り笑顔で褒めてくださる明里さん。……うん、どうやらどうにかごまかせたみたいで……ふぅ、助かった。
……ただ、それにしても……うん、よもやそんなにも褒めてくださるとは……あと、隣からの視線がちょっと怖い。




