アイラとリリィの復活(前編)
地下鉄の静まり返ったホームに、淡い光が差し込む。
誰もいないはずの場所に、かすかな影と懐かしい声が蘇る――。
この章では、アイラの登場とリリィの復活を描きます
。
地下鉄ホームに淡い光が差し込む。
静まり返った構内。倒れた自販機、粉化した広告、誰もいないホームに靴音だけが響く。
明日香は立ち止まり、息を整えた。
「……誰もいない」
達也は手首のクロノスエコーを確認しながら、
「とりあえず安全を確認しよう。足元気を付けて」と声をかけた。
やがて、ホームの奥に淡く輝く影が現れる。銀色の髪が光を受けてふわりと揺れる。
少女は明日香たちに気づくと、にっこり笑った。
「やぁっと来たべかぁ! あ〜もう、待ちくたびれたんだべ!」
少女は明日香が瞬きをする間に、数メートルの距離を一気に詰めた。
明日香「わっ!」
しかし、少女は通り過ぎた。
「わわっ、わわわぁー止まんないべぇー!!」
ずべしゃぁっ!!
盛大に転ぶ。瓦礫に突っ込む――静寂。
「えっ、えっ? だ…大丈夫?」
明日香が心配して尋ねると、少女はスクリと立ち上がり、何事もなかったかのように伸びをした。
「よし、今日も調子がいいべさな」「床も異常無しだべ」「あー、いい天気だべなぁ…」
小声でつぶやく。
「おっかしいべ、瞬発力Xに脚力Yでシュミュレーション待ってる間に何回もしたべ…明日香ちゃんの前にスチャって登場するはずだったべ」
「衝撃吸収係数α、予定通りだべ……床へのダメージさはゼロ。うん、計算どおりだべ……あれ?でも見た目の印象は失敗に見えるだ…」
「うーん、見た目の印象を改善するには……にっこり笑顔、OKだす」
にっこり笑顔で、少女は再び明日香に向き直る。
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「やだぁ、明日香ちゃんでねぇか、覚えてねぇべか? 私だよ、アイラだべ!
ほら、波川博士の助手の、明日香ちゃんがまだヨチヨチしてた頃からお世話してたんだべ!
オムツも変えたし、おねしょのシーツも洗ったべ」
明日香「アイラお姉ちゃんっ!!」(顔を真っ赤にして抗議)
ははっ、冗談だべさ。まったく、反応が昔と変わらねぇべ
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明日香「そ、それよりクロノスリリィがおかしくなってね、リリィが出てこれなくなっちゃったのよ」
リリィが出れなくなっただか?
明日香「そう、少しは反応するんだけど…」
ちょっと、見てみべ
その瞬間、アイラの表情が一瞬、真顔に変わる。
空気がピンと張りつめ、周囲の光が冷たく映る。
瞳の色が変わり、青色の光が走る。
「……モード切替、助手モード、起動しますべ」
指先が光を帯び、リリィの投影部分へ触れる。
光が明日香の手首を包み、かすかな熱が走る。
心臓の鼓動がリズムを刻むように、リリィの輪郭が形を取り戻していく。
やがて、クロノスリリィの青と黄の光が重なり――
ふわりと柔らかな声が響いた。
「……明日香? 達也? ……やっと、また会えたね!」
ホログラムの光の中から、リリィが現れた。
透明な羽根のようなエフェクトが舞い、涙を浮かべたような笑顔で。
その微笑みには、どこか懐かしい“母の温もり”が宿っていた。
「リリィっ!」明日香が思わず手を伸ばす。
「ごめんね……ずっと止まってて。でも、ずっと、見てたよ」
読んでくださった皆さまへ
第七章まで、明日香たちの物語を追いかけてくださり、本当にありがとうございます。
この章では、アイラという新しい存在が加わり、少しずつ世界が広がっていく様子を描きました。アンドロイドらしい無垢さと、少しずつ芽生える人間らしさ――その境目を、皆さんに感じていただけていたら嬉しいです。
物語はまだまだ続きますが、キャラクターたちと一緒に歩くような感覚で読んでもらえたらと思います。
そして、皆さんの心の中にも、小さな光や希望の花が咲きますように――そんな気持ちを込めて書いています。
最後に、今回挿絵として加えたアイラも、物語の中で少しでも皆さんの想像を広げる助けになれば幸いです。
これからも、明日香たちの時間の旅にお付き合いいただけたら、とても嬉しいです。
https://x.com/v9ACdPRbyn6909/status/1986066712383623247?t=wl_braj6b3fricIEgF_IPQ&s=19
らら太




