クロノスリリィ外伝 『母と3人の娘たち』 【第1章・第1話『17歳の朝』】
第一章 明日香17歳始まります(☆▽☆)
朝の光がカーテンの隙間からすべり込み、ダイニングを柔らかく照らしていた。
トーストの焼ける香ばしい匂いと、味噌汁の湯気が混ざり合い、
なんとも言えない“波川家の朝の匂い”が広がっている。
テーブルには、加奈子の几帳面さがそのまま出た朝食が並んでいた。
――トースト、味噌汁、サラダ、ヨーグルト。
和と洋の境界を超えた、明日香の定番メニュー。
椅子の下では、猫のサキが尻尾をふわふわ揺らしながら
「にゃあ……(パンの匂いする)」
とでも言いたげに明日香の足元にまとわりついてくる。
明日香は欠伸をしながら座り、
ちぎったトーストの端をサキに見せては、
明日香「……だーめ。これはあたしの」
と、寝起き特有のぼんやりボイスで軽く説教。
サキは「ちぇっ」みたいな顔で丸くなる。
味噌汁をひと口すすって、
明日香はようやく目が完全に覚めてきた。
加奈子「今日、放課後はどうするの?」
明日香「達也と図書室でレポートやるから、ちょっと遅くなるー」
何気ない会話。
平和な朝。
いつもの日常――
……のはずだった。
テレビのニュースが、
“近郊での老朽化建物の突然の倒壊”
“原因不明の電波障害”
そんな言葉を静かに流していた。
けれど明日香はまだ気にしない。
この時点では、
それが世界のひずみの“前兆”だなんて、
誰も思っていなかったから。




