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Chronos Lily ― クロノスリリィ 時空との戦い  作者: 猫田笑吉


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16/34

クロノスリリィ外伝 前編:「覚醒す!」

アンドロイドとして“存在”になったリリィ。

感情と力加減の練習を終え、ついに明日香との“初めての抱擁”に挑む。

しかし、母性モードは暴走寸前!?

アイラのツッコミ、加奈子博士のほほえみ

シリアス世界観のはずが、なぜか研究室はギャグ空間に。


本編後の温かくて笑えるスピンオフ。

クロノスを好きだった人にこそ読んでほしい、

“再会の後日談”です。


登場人物(前編)


リリィ

金髪のアンドロイド。元は加奈子博士が作った思考体。今回、アンドロイドとして新しい体を手に入れ、初めて世界を“体感”する。努力家で感情が力に直結しやすい。


アイラ

リリィと瓜二つの姿を持つAI。銀髪。加奈子博士の初期化により東北訛りが残る。リリィの特訓を優しくサポートする。


加奈子博士

リリィとアイラを作った科学者。落ち着いた物腰で、適切に指導しつつ、時折ギャグのようにリリィを制御する。

挿絵(By みてみん)


白い光が静かに満ちる研究室。

中央のカプセルの中で、ひとりの少女がゆっくりと瞼を開いた。


「……加奈子博士……?」


ガラス越しに立つ加奈子が、やさしく微笑む。

「おはよう、リリィ。――あなたの新しい体、うまく動くかしら?」


リリィは、ゆっくりと手を握った。

指先が動く。感触がある。息を吸い込むように胸が上下した。


「これが……“感じる”ってことなんですね。わたし……生きてるみたいです」


「ええ、あなたはもう、思考体じゃないわ。正式な“存在”よ。」


リリィは静かに立ち上がり、足元を確かめるように一歩ずつ歩く。

姿勢は慎重で、まるで初めて地面を踏む赤子のようだった。


そのとき、後ろから元気な声が響いた。


「おおっ、リリィ! 起きたんだべか!」


アイラが駆け寄り、リリィを勢いよく抱きしめる。

「わっ!? く、苦しいだす!」


「はっ! ご、ごめんだべ!」

慌てて離れたアイラの手には、ぐにゃりと曲がった鉄製のスパナが握られていた。


加奈子が苦笑しながら手をあげた。

「……まあ、次は力加減の特訓ね」



---


数時間後。

訓練室には、リリィの真剣な声とアイラの「だべ!」が響いていた。


「力を込めずに、でも優しく……って難しいですっ」

「ほれ、落ち着けリリィ。ほら、わだすを抱きしめてみるべさ。全力じゃなくて、こう、ふわっと!」


「ふわっと……こうですか?」


リリィが両腕をそっと回す。

だが――


「ぎゃっ! もうちょい軽くぅぅぅ!」

「ご、ごめんなさい!」


ふたりの周囲に、もはや何体目かわからない“特訓用ダミー”が粉々に転がっていた。

アイラはふらふらしながらも、笑顔で親指を立てた。

「でも、さっきよりだいぶマシだべ。リリィ、感情で力が変わるタイプだべな。」


「……感情、ですか」


リリィは少しだけ目を伏せた。

「じゃあ、次こそ……」


再び抱きしめる――今度は、やさしい。

温度を感じるように、そっと包み込む。


アイラが目をぱちくりさせた。

「……リリィ、それだべさ」


「本当? わたし、できたんですね……!」


リリィの表情がぱっと明るくなり、瞳に光が宿る。

まるで子どもが初めて歩けた瞬間のように、嬉しそうに笑った。


加奈子が満足そうにうなずきながら近づく。

「上出来よ、リリィ。――でも、今日はここまでにしておきましょう。

 “おしとやかモード”のままでね。」


リリィは小さく頷き、胸に手を当てた。

「はい、博士。わたし……次は、明日香に会いたいです」


加奈子は、ふっと微笑む。

「その日が来るのを、楽しみにしてるわ。」


研究室の窓から差し込む夕日が、

新しい体を得た少女の髪を金色に照らした。


完結後に書き上げた、リリィ覚醒直後の小さな外伝です。

肩の力を抜いて読んでもらえると嬉しいです。


明日は後編を投稿します!

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