日常と託されたもの
はじめまして、らら太です
この物語は「時間」と「想い」をめぐるファンタジーです。
いつも通りの朝から始まる“静かな崩壊”と、母から娘へ託された絆の物語を描きました。
少しずつ更新していくので、よかったら見守ってください☺️
薄く開いたカーテンの隙間から、朝の光が差し込む。
ダイニングには、焼き立てのパンの香ばしい匂いが漂い、味噌汁の湯気がふんわりと立ち上っていた。
朝の静けさに、柔らかな温かさが満ちていく。
隣の家からは、元気な子どもたちの笑い声。
窓辺では、サキがのんびりと日向ぼっこをしている。
無邪気な朝の光景の中で――外の景色には、いつもとは違う微かな異変が潜んでいた。
青空の下、細かい雨粒が海風に乗り、陽光を受けて虹色に揺らめく。
それは“朝の天気雨”。
静かな異変の予兆は、すでに始まっていた。
「ほら、明日香。冷めちゃうよ」
母・加奈子の声に、制服姿の明日香は頬をふくらませながら、パンを大きくかじる。
「んー、おいしい。お母さん、今日も仕事?」
「ええ、ちょっと立て込んでるけどね。でも……その前に、これを渡しておきたいの」
加奈子は引き出しから、小さな腕時計のような装置を取り出した。
銀色の本体に淡い青の光が宿り、心臓の鼓動のように静かに脈打つ。
「これ、あなたに預けるわ」
「時計?」
「いいえ、時計の形をしているけど、これは特別なものなの。あなたと私をつなぐものよ。」
「だからね。絶対外したらだめよ。……約束だから」
加奈子は微笑みを消し、真剣な瞳で明日香を見つめた。
その一瞬、明日香の胸が小さくざわつく。
けれど、母の笑顔に包まれて、やがて不安は薄れていく。
明日香は左手首を見つめ、小さく息を吸い込んだ。
「なんかカッコいいじゃん! うん、大切にする!」
元気いっぱいの声を残して、明日香は玄関へ駆けていく。
「じゃあ、いってきまぁ〜す!」
扉が閉まり、再び静けさが戻る。
加奈子はそっと天を仰ぎ、胸の奥で祈るように呟いた。
「……明日香。あなたの未来は、あなたの手で掴みなさい。
きっと――“時”に抗えるのは、あなたしかいない。」
その言葉が、雨音に溶けて消える。
だがその瞬間、世界のどこかで微かな“時の歪み”が生まれ始めていた。
そしてまだ誰も知らない――
彼女が“時間”と戦う運命を受け継ぐことを。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
この第一章では“何気ない日常”の裏で始まりつつある小さな異変を描きました。
次章では、いよいよ“粉化現象”が明日香の身近に迫ります――。
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