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45話 全てが終わって

 男性陣が次々と料理を注文をし、テーブルが所狭しと埋まっていく。


「ルミ、きっとまだ胃腸が弱ってるわ。無理して食べない方が良いわよ」

 美味しそうな香りに負け、グラタンに手を伸ばしたルミを、母が制止した。

 牢獄に入っていた三ヶ月間、見ることさえできなかった料理の数々が目の前にある。グラタンだけでなくキッシュ、ミートボールやサラダ。見ているだけで(よだれ)が出そうだ。


「こんなに美味しそうな料理が並んでいるんだもの。少しぐらい良いでしょう?」

 ルミは甘えるように母を見た。

「まぁ、少しならね」

 母は肩をすくめた。


「ああ、ルミ。本当によかった!」

 ミートボールを口にした瞬間、隣に座っていたステラナが抱きついてきた。


「ありがとう、ステラナのおかげよ」

 ルミもステラナをギュッと抱きしめた。

「ステラナがあの場にノアさんとリリーさんを連れて来るとは思わなかったわ」

 ルミはその時の驚きを再現するように、目を丸くした。


「リック殿下のおかげなのよ。殿下は何ヶ国語も話せるの。だからノア先輩とリリー先輩を帰国させたいっていう我々の気持ちが通じたのよ」


 隣で話を聞いていたリックがニッコリと笑った。

「いやいや。ステラナさんがいなかったら僕はノアさんとリリーさんから詳しく話を聞くことさえできなかったので。あの時ドルザズでステラナさんに会えて本当に良かった」


 運ばれてきた料理を受け取りながら、エリオは頷いた。

「本当ですよ。私はあの時、ヘルゲさんに王女がどちらなのかを主張してもらおうと思っていたんです。でもノアとリリーが主張するのが一番説得力がある。本当に助かりました」


 父も母もウンウンと頷いた。ステラナとリックは目を合わせ、褒められたことに照れて笑った。


「あの……先程エリオさんから聞いて驚いたんですが……」

 リックはルミの顔を覗き込んで問いかけた。

「死刑にしてくれって、本当にルミさんから言ったんですか?」

 ルミはニッコリと笑った。

「はい。そうでもしないと本人が処刑場に来ないと思ったんです。死刑になると知ったら、ジュリエッタは絶対に見に来るっていう確信がありましたから」


「でも、だからって危険すぎるわ」

 ステラナは眉を下げた。父も母もウンウンと頷いた。


「私もルミからその提案をされた時、危険すぎると思ったよ」

 エリオも眉を下げた。

「でもやってくれたじゃない?」

 ルミはエリオにウインクした。

「他にアイディアが思いつかなかったから……。王宮にいる自警団に死刑を(そそのか)すのは至難の技だったんだぞ」

 エリオは頭を掻いた。ルミは謝罪の気持ちを込めて顔の前で手を合わせた。


「いやいや、君たち。ちょっと待ちなさい」

 ビールを美味しそうに飲んでいた父が、据わった目でジョッキを置いた。

「今回の一件、一番の功労者は我が妻、セレニアだ! なぜその話題が出ない?」

 父は隣に座っていた母の両肩を掴んだ。母は、恥ずかしそうに笑って父の頬に手を当てた。

「迫真の演技だっただろう。見てないのか?」


「確かに凄かったわ、ママ。思わず泣きそうになったもの」

 ルミは母を見つめた。

「本当に前王妃様だと信じた人もいてな。終わった後も、本当に前王妃様じゃないんですか? と聞きに来る奴もいたんだぞ」

 父は自分のことのように自慢げに鼻を膨らませた。


「前王妃様が双子だったことは公表されてませんからね。実際、娘である王女も知らなかった訳ですし」

 エリオが父に向かって言った。


「ジュリエッタはな、母親にベッタリだったんだ……」

 ウルフが料理をつつきながら、遠い目をして言った。

「母親が病気で伏せるようになった頃、ジュリエッタはまだ七歳だった。七歳の子が母親の死に目を見るのはあまりに酷だと言って、国王は見せなかったらしい。だから、ジュリエッタは本当に生きていたと勘違いしたんじゃないかな」


 ウルフのとても寂しそうな目を見て、ルミは俯いた。

「可哀想だったかしら……」

 エリオは言い聞かせるようにルミに語りかけた。

「気に病むことは無いよ。ルミはアイツらに罪をなすりつけられたんだぞ?」

 父も母もウンウンと頷いた。ステラナやリックも頷いている。

「……それもそうね」

 ルミは苦笑いした。


「ウルフ様、大丈夫ですか? その……王女が捕まって……」

 エリオは気まずそうにウルフに問いかけた。


「俺は……ここにいてはいけない存在だな。ずっとジュリエッタの居場所を知っていたんだ。誰かに教えるべきか、二人で国外へ逃げようか、ギリギリまで迷っていた……」

 賑やかな店内の中、ルミたちのテーブルだけがシンと静かになった。

「でも結果、ジュリエッタが捕まってホッとしている。悪いことをしたら罪を償う。これは当たり前のことだよな」

 ウルフは寂しそうに笑った。ルミは無理やり笑顔を作って頷いた。


「なあ、ルミ。こんなことを言うのは可笑しいかもしれないが……」

 ウルフがルミに問いかけた。


お読みいただきありがとうございます。

次回もその後のお話です。

間も無く終わりますので、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

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