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41話 執行の時

前半ステラナ視点の話です。

 リックがステラナを取り囲んでいる男たちに何かを説明すると、彼らはすぐに去って行った。


「ドルザズの言葉が話せるんですね」

 ステラナは感心して言い、立ち上がった。

「子どもの頃に、世界中の言葉を覚えさせられましたから」

 リックはステラナに手を貸しながら、その時の苦労を滲ませる苦々しい顔をした。


「ステラナさんはどうしてここに?」

「ルミを助けるためです!」

 ステラナはキッパリと言い切った。


「やはり、そうですか。エリオさんから話は聞きました。僕もルミさんのことを助けたくてここまで来ました」

 熱意を込めたリックの鼻がぷくっと膨らんだ。


 ステラナは勢いよく、深く頭を下げた。

「お願いです! リック殿下、一緒に行動してください! 来たはいいけど言葉もわからないし、初めての外国はとても怖くて……」

 顔を上げたステラナは祈るように手を組み、リックを見つめた。


「ええ。僕でよければ。一緒にルミさんを助けましょう」

 差し出されたリックの手を、ステラナはスカートで汗をしっかり拭いてから握った。

 


 朝日が照りつける宿屋のロビーで、リックとステラナは待ち合わせをした。ノアとリリーから話を聞きに、監獄へ行くためだ。

 一時間ほど歩くと、古びた煉瓦造りの監獄へ辿り着いた。

 リックの物腰の柔らかさと丁寧な言葉遣いのおかげか、監獄の長は拍子抜けするほどあっさりと面会を許可してくれた。

 ノアはこのところずっと体調不良らしい。会えるのはリリーだけだと長は言った。


 リリーは面会室へやって来るなり、ステラナを見て目を潤ませた。

「ステラナ。助けて。帰りたい……」

「……今日は聞きたいことがあってきました。リリーさん、スレイダンで王女が捕まったことは知ってますか?」

「うん。聞いてる」

「実はそれは替え玉なんです。王女は今も逃げています」

「え? 本当に⁉︎」


 背後に立っていたリックが前に出て、優しく問いかけた。

「ドルザズで一体何があったんんですか? 我々に教えてください」



「……この国に入ってニ日目の夜のことよ。私たちの前を歩いていたジュリエッタ殿下が、急に男たちに羽交い締めにされ、襲われそうになったの……」

 リリーは思いつめた顔で話し始めた。ステラナとリックは目を丸くした。


「私たちは大声をあげ、急いで助けに行ったわ。幸い助けに来てくれる人がいて、殿下は無事だった。でも……ジュリエッタ殿下はそれはもう激怒して……」

 リリーは額に手を当てた。


「何としてもこの国に復讐をすると言って聞かなかったわ。危険だからもう帰りましょうと私たちが何度訴えても、何かを盗らずには帰りたくないと言い張って……」

 ステラナは眉をしかめた。


「それから二度と襲われないように男装をしたの。そして宝石店に入った。一番目立つ場所に飾ってあった指輪を、ジュリエッタ殿下は奪って逃げた。我々への合図は一切無かったわ……」

 リリーは顔を両手で覆って泣いた。

「ノア先輩が捕まって、殿下は一度振り返ったけど、何も見なかったように逃げて行った。そして私も捕まったの……」


「……そんなことがあったなんて」

 ステラナは泣いているリリーを見るのが辛く、目を背けた。

「ノアも私も一度も盗みなんて働いてないのよ! いつも見張りをしてただけなの!」

「事情はわかりました。リリーさん。僕たちに協力してくれませんか?」

「協力?」


 面会室を出たステラナはリックと目を合わせた。

「予定通り、行動しましょう」





     *        *        *        *        *


  



 スレイダン国王は大きく溜め息をついた。


 ドルザズの自警団が、半分は帰国したものの、まだ半分はスレイダンの王宮内に滞在し、食料を食い散らかして豪遊していたからだ。

 国王はいよいよこのままではいけないと、側近のロドリゲスを呼びつけ、自警団を玉座に呼び寄せるようお願いした。

「ロドリゲス、お前は通訳とワシの護衛を頼む」


 暫くして、自警団はぞろぞろと気だるそうに玉座へやって来た。


「処罰を決めず、延ばしていてすまなかった。ジュリエッタの処罰を決定するとしよう。彼女は……晒し刑に処する」


「晒し刑?」

 ロドリゲスは驚いたのか聞き返した。自警団の男たちは一斉に首を傾げ、分からないと肩をすくめた。


「樽の中から顔と足だけを出して、長い間広場に置かれる処罰だ。雨風にも民衆にもずっと顔だけが晒される。そういう恥辱刑だ」

 国王はロドリゲスに説明した。ロドリゲスは自警団にそのまま通訳した。話の途中から、彼らはニヤニヤし始め、終わる頃には大爆笑になった。


「民衆からは石を投げられたりもする。心理的苦痛を味わうだろう。スレイダンではかなり重い処罰なんだぞ」


 国王は眉間にシワを寄せ、必死に訴えた。

 ロドリゲスがその訴えを自警団に伝えると、ひとりが、大きな声で何やら訴え始めた。周りの連中も後ろでウンウンと頷いている。ロドリゲスは話に聞き入っていたが、次第に血相を変え、厳しい顔つきに変わった。


「どうした?」

「いや、それが……彼女を死刑にしろと……。さもなければ我々は帰国しないと言っています」

「なんだと? 窃盗で死刑なんて聞いたことがない!」

 国王は声を張り上げた。


「ドルザズでは何度も窃盗を犯した者は死刑となるそうです。盗った物の金額にもよるらしいのですが……ジュリエッタ王女が盗った物はかなりの高額だ、だから絶対死刑にして欲しいと言っています」


 国王は彼らを不信の目で見た。彼らは当たり前だというように、涼しい顔をしている。

 替え玉を死刑に? これは参った……。しかし、ルミが死んだらこの件はようやく終わりを迎える。そうなったらジュリエッタの安全は確保される。


 国王は重い口を開いた。

「仕方無い。死刑を受け入れよう」

お読み頂きありがとうございます!

次回は冒頭のシーンと繋がります。

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