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36話 エリオの面会

前半エリオの視点です。

 エリオは誰もいなくなった廊下で目を覚ました。強く殴られたせいで気絶していたようだ。

 そこへステラナがやって来てエリオに駆け寄った。


「エリオ様、大丈夫ですか?」

「あ……ああ。大丈夫だ」

 ゆっくり体を起こすエリオを、ステラナは支えながら辺りを見回した。

「ルミは? ルミはどこですか?」


「ルミは……自警団に捕まってしまった」

 エリオは床を見つめたまま、歯を食いしばって言った。


「国王陛下がルミのことを、ジュリエッタと呼んだんだ。だから捕まった」

「そんな……ルミに罪をなすりつけたんですね。最低だわ」

「ああ、私もそう思う」

「殿下が……いえ、ジュリエッタが捕まらないといけないのに。許せない」

 ステラナはワナワナと両手を握りしめた。


「何としてもルミを助けよう」

 エリオはステラナの目を真っ直ぐ見つめて言った。ステラナは強く頷いた。




 それからエリオとステラナは、王宮の使用人たちに今回捕まったのは王女ではなく替え玉だと言い回った。

「解放運動に協力してください。牢獄にいるのは別人なんです」


 だが、どんなに説明しても首を縦に振る者はひとりも現れない。

「どうして聞く耳を持ってくれないんだ?」

 エリオはある日、(たま)らず年老いた使用人に聞いてみた。


「だって、貴方たちは殿下の直属の従者でしょう? 現実を受け入れられないんだ。信じたくない気持ちはわかるよ」

 肩をポンポンと叩かれ、使用人は去って行った。ルミが完璧にジュリエッタを演じていたのが(あだ)になった。誰にも信じてもらえないとは……。

 エリオは廊下を歩きながら考えた。国王は自室に(こも)って一歩も出ないらしい。ルミを助けるにはどうしたらいいんだ……。


「エリオ様!」 

 ステラナが廊下の向こうから走ってやって来た。

「信じてくださる方はまだ現れません。でも、思い出したんです。大切な人を」

 ステラナはエリオの前で止まり、希望に満ちた目で言った。


「大切な人? 誰だ?」

「ルミが替え玉だと知る人物がひとりいるじゃないですか」

「あ、そうか! ウルフ様だ!」




 エリオはユーリに乗り、ウルフが住むフェルセン家へ急いだ。もう夏だというのにフェルセン家は相変わらず薄暗く、肌寒さを感じる。


 エリオが玄関の戸をコンコンと叩くと、若いメイドがひとり出てきた。


「私は王宮に勤める執事エリオです」

「どういったご用件でしょうか?」


「ウルフ様に用があって参りました。呼んで頂けませんか? お話ししたいことがあるんです」

「それが、あの。実は……」


 メイドは言いにくそうに口を開いた。

「三日ほど前にお出かけになられてから、戻られてないのです。行方も分かっていません」


 エリオは眉間に深くシワを作った。

「何ですって?」

 三日前というと、応接室で我々に噂話を話してくれた日だ。


「わざわざ来て頂いたのに申し訳ありません」

 メイドは深くお辞儀をした。

「いえ、教えてくださりありがとうございます」


 エリオも深く礼をして、フェルセン家を後にした。

 ウルフ様はどこへ行ったのだろう?

 あれからすぐ王女を探しに出かけたのだろうか? 王女にプロポーズしたウルフ様のことだ。王女と一緒に逃亡したということも考えられる。


 彼の観察眼や情報網は心強い。お力を借りられればと思ったが、そうはいかなかったか……。

 エリオは悔しさを飲み込んでユーリに鞭を打ち、王宮へ戻った。





     *       *       *       *       *


 



 牢の中のルミは、寝て起きてを繰り替えすだけの日々を過ごしていた。

 「今日の食事だ」と神官がパンと水を置いていく。新しいそれらが来ることで、日付が変わったのだと言う事が辛うじてわかる。


 父や母は元気にしているだろうか、畑は順調だろうか。始めの数日はそれらを心配して過ごすこともあったが、今はもう考える気力はない。


 自業自得だ。自分は牢獄に入って当然の人間だと受け入れてからは、楽になった。

 もうこのままここで死んでしまいたい。そう思っていてもお腹が空いてくる。我慢できずにパンを(むさぼ)ると、自分は相変わらず浅ましい人間だと自己嫌悪に陥り、涙が止まらなくなった。



「……ミ? ルミ?」


 懐かしい声が聞こえ、ルミは目を開けた。鉄格子の前にいたのはエリオだった。

 嬉しい気持ちと、恥ずかしい気持ちと、情けない気持ちと、色々な感情が溢れてまた涙が止まらなくなった。


「ルミ、もっと……近くへ」

 エリオも泣いているのか、声を詰まらせながら言った。

 ルミは首を横に振った。貴方に声をかけてもらえるような人間ではない。


「こんな寒くて不衛生な場所にずっといたのか……。本当にすまない。私の力不足だ……」

 格子を握り締めて訴えるエリオに、ルミはまた首を横に振った。

「でも私が必ずルミを助ける。ルミの無実を証明してみせるから、それまで耐えてくれ」


「いいの。そんなことしなくて。私はここにいて当然の人間なの」

 ルミは振り絞って声を出した。

「いや、そんな訳が無い」

「いいえ。当然なの……私もやったことがあるのよ、窃盗を」


 ルミは泣きながら過去のことを話し始めた。

お読みいただき、ありがとうございます。

次回はルミの過去の話になります。

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