表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/50

34話 陥れられた替え玉

 男は国王から革靴を受け取った。そして一方を横にいた男に渡して、ルミの目の前で調べ始めた。振ったり、匂いを嗅いだりしている。ひとりが靴底を()がし、裏返して揺らした。


 するとその中から、コロンと何かが落ちて来た。とても小さいものだった。

 自警団の男たちは一斉にオオーッと雄叫びをあげた。まさにこれだ、とでも言いたそうにそれを掲げて飛び跳ね、喜び合っている。


 ルミが目を凝らしてよく見ると、それはオレンジ色の宝石が乗った指輪だった。


「ああ、参ったな。ジュリエッタよ。もう言い逃れは出来まい」

 国王は額に手を当て、残念そうに肩を落とした。

「二度と万引きなどするんじゃないぞ」



「私ではありません!」

 ルミは国王を睨みつけて叫んだ。

「 陛下、私は王女ではありません! ジュリエッタ王女はどこですか?」


 国王は踵を返し、部屋を出ようと歩き出した。

「陛下! 国民を身代わりにする気ですか?」


 ルミの精一杯の訴えも虚しく、扉は閉められた。しゃがみ込んだルミを男たちは無理やり立たせ、連行しようとした。その時、別の男たちに捕らえられたエリオがクローゼットからやってきた。連行されるルミを見て、エリオは叫んだ。


「ルミ! 彼女はルミだ。ルミ・クラメールだ!」

 勢いよく身体を振り、男たちの腕を振りほどく。

「ジュリエッタ王女じゃない!」



 ルミの元へ駆け、ロープを外そうと必死になった。


「エリオ……」

 ルミの瞳は涙でいっぱいになった。エリオは男たちに殴られ、倒され、床に押さえつけられた。

「エリオ!」

 ルミは男たちの手によって、そのまま牢獄へと連れて行かれた。





 *    *    *    *    *





 国王がそのことに気づいたのは、行商人ヘルゲからの進言だった。


 一年前、建国祭で羽織るマントを新調しようと、国王はヘルゲを呼んだ。

 衣装部屋であれが良いか、これが良いかと選んでいると、急にヘルゲが近くへ寄ってきた。


「国王様、お話があります。人払いを」


 ヘルゲが命を狙うとは考えにくい。国王は従者を下がらせ、側近のロドリゲスだけを部屋に残した。

 ヘルゲはとても言いにくそうに、目をパチパチさせながらゆっくり口を開いた。


「いつもドレスやらジュエリーやら、多く買ってくださる姫様ですが……」

「何かと思えばジュリエッタの話か?」


「ええ。それが……去年の秋頃のことです。姫様が初めて()()()()はできるのかと聞いてきたのです」

「買い取り……?」


「私ができますよとお答えすると、姫様は引き出しの奥から小さな袋を出してきました。そこに入ってたのは、小さなイヤリングでした」


 ヘルゲは当時のジュリエッタを再現するように、袋からイヤリングを出す仕草をした。


「査定してみると、とても高価なものでした。いつも買ってくださるお礼も兼ねて、私は高額でそれを買い取らせてもらいました」

「それが、どうしたというのだ?」


「それが……あまり見かけない細工が施されていたので、販売先を調べてみたんです。そしたら、最近盗難に遭っていた品だったことが分かりました」

「何⁉︎」


「姫様が盗みをするわけがないと、私は調べるのをやめました。たまたま同じ品を買ったのだと」

 ヘルゲは国王の目を見て、またすぐ逸らした。

「ですが先日、また姫様から買い取りを依頼されたんです。次はネックレスと指輪でした。今度もまた、どちらも盗品であることが分かりました」



「……このことは誰かに話したのか?」

「いえ誰にも。国王様が初めてです」

「では、誰にも話すな。秘密にしてくれ。その代わり、ヘルゲが売る品を倍以上の値段で買おう」



 国王はその夜、ジュリエッタを玉座へ呼び寄せ、追求した。



「たまたまだったのよ、お父様! 私は悪くないの!」

 ジュリエッタは国王の膝に(すが)りつき、訴えるように言った。


「旅行先の宝石店でね、リリーやノアと、あれも可愛い、これも綺麗よと色々試着していたの」

 ジュリエッタは指で輪を作り、耳タブを摘んだ。


「そしたら、指輪の方も気になって。付けていた事を忘れて。指輪だけを買って店を出てしまったの」

 国王は白髪交じりの眉を八の字に下げた。


「宿に戻ってから気づいたわ。イヤリングは買ってないって。ノアとリリーに言ったら、髪で隠れてて気づかなかったって」

 ジュリエッタは立ち上がって叫んだ。


「私は悪くないでしよう? 気づかないの店の人が悪いでしょう?」


「いいや。店に戻って謝罪するべきだ。ジュリエッタ。忘れていたお前が悪い」

 ジュリエッタは顔を歪め、唇を噛み締めた。


「それに、どうしてヘルゲに売ったんだ?」


 ジュリエッタはまた国王の膝に(すが)りついた。

「だって気持ち悪いでしょう? 見る度に、嫌な気持ちになるもの。お金に変わったらそんな気持ちはまったく無くなったわ」

 ジュリエッタは恍惚とした表情だ。


「いっそ、私は自分でお金を稼いだのだと気分が良いくらいよ」


お読み頂きありがとうございます!

次回は国王とルミの心情をあげます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ