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29話 2回目のプロポーズと過去

 リックの見送りを終えたジュリエッタ王女は、苛立った顔で部屋へ入って来た。

「このドレスは暑かったわ。ステラナ、水を頂戴」

 ルミはソファーに座った王女に水を持って行った。目の前に出されたグラスを見て、王女はルミを睨んだ。


「私はステラナに頼んだんだけど?」

「ステラナは王妃様の侍女となりました。人手不足だったようです」

「なっ! 王妃様に話したの?」

 王女は目を見開いた。

「いいえ。エリオに相談したら、すぐに手配してくれました」


「エリオに告げ口したのね。サイテーだわ」

「告げ口されて困るようなことをした、殿下が悪いのです」

「はあ⁉︎」

 王女はルミからグラスを奪い取ろうしたが、ルミは手を挙げて守った。

「ウルフ様が応接室でお待ちです。ご案内いたします」

 ルミが冷静に言うと、王女は悔しそうに奥歯を噛み締めた。



 応接室の扉を開けると、ウルフは嬉しそうにニカッと笑い、「よっ!」と手を挙げた。

 王女は憮然とした顔でソファに腰掛けた。


「久しぶりだな、ジュリエッタ。凄くないか? 俺は一眼で替え玉だと分かったんだぜ?」

「ウルフなら当然でしょう」

 王女は自分の爪を見て応えた。


「俺以外に替え玉を見抜いたやつはいたか?」

 ウルフは王女の後ろに立つ、ルミに聞いた。


「いえ、まだ1人も」

 ルミは首を左右に振った。

「ほら見ろ」

 ウルフはドヤ顔で、王女に向き直った。

 王女はまるで聞いていないように、今度は自分の髪の毛を触り「何しに来たの?」と聞いた。


「なあ、俺の誕生日パーティーで何があったか、ジュリエッタには言ったのか?」

 ウルフはまたルミを見た。


「いいえ、詳しくは」

 ルミはまた首を左右に振った。

「そうか、そうなんだな」

 ウルフは姿勢を正し、コホンと咳払いした。


「ジュリエッタ、俺と結婚しないか?」


 あの練習はなんだったのだろうか。こんな場所で良かったのだろうか。私は退席したほうが良かったのではないだろうか。あまりにあっけなく、あっさりとしたプロポーズに、ルミは狼狽(うろた)えた。


「お断りするわ」

 王女は髪を触ったまま、キッパリと答えた。

「私はこの国が嫌いなの。早く出たいのよ。オルフェイムへ嫁ぐわ」


 ウルフは何とか王女と目を合わせようと、顔を覗き込んだ。

「小さい頃、何度も約束しただろう? 大きくなったら結婚しようと」

「言ったけど、今の私はあの頃の私とは違うのよ」

 王女は腕を組んで、そっぽを向いた。

「ウルフの家は嫌いよ。暗くてまるで幽霊屋敷だもの」


 一瞬(ひる)んだようなウルフは、再び太い眉をキリッと吊り上げた。

「じゃあ俺のことは?」


 王女はそっぽを向いたまま答えた。

「……嫌いよ。……世界で一番嫌い。この女も嫌い。全部嫌い。何もかも嫌い!」


 立ち上がり、(わめ)き散らした後、

「付いてこないでよね!」とルミに言い、王女は応接室を出て行った。ルミはどうしたら良いか悩んだ。王女の顔はとても辛そうだった。王女を今ひとりにして大丈夫だろうか。でも、ウルフ様もすごく落ち込んでいるだろう。


「キミらが従姉妹だってことは、ジュリエッタに話したのか?」

 しばらくの沈黙を破り、ウルフはドアノブを掴もうとしているルミに聞いた。

「いいえ。そんな暇は無かったので。それに……」


「それに?」

「話したところで何も変わりませんから」

 ルミはそう言って頭を下げ、応接室を出て行った。




 ウルフがプロポーズした日から、王女はオルフェイムへ向かう日を指折り数えて暮らすようになった。

 ルミは王女から暴力こそ受けないものの、毎日罵声を浴びせられ、神経をすり減らしていた。



「ヘルゲという行商人を呼んでくれる? 新しいドレスが欲しいの」

 ある日、王女はルミに言った。


「あの行商人は不当な値段で物を売りつけてきます。他の方を当たりましょう」

 ルミは首を左右に振った。

「嫌よ。顔馴染みのヘルゲが良いわ」

「なりません」


「はあ? なんなの? 今度アンタの実家に火でもつけてやるんだから!」

 王女にそう言われたルミは、一瞬平手打ちを食らわせてやろうかと本気で思った。しかし、逆に王女からの平手打ちを食らいそうになった。慌てて止めたのは、エリオだった。


「それならショッピングへ出かけませんか」

 エリオは王女の腕を掴んだまま、必死に笑顔を作って提案した。


「国内にも良い商店街があるんです」

 以前ステラナと共に行った、商店街のことだろうか、とルミは思った。


「ふーん……。暇だし、行ってみようかしら」

 王女は掴まれた腕を激しく振り解いて答えた。

お読み頂きありがとうございます!

次回はショッピングのお話です。

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