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19話 ステラナの生活

「ねえ、ステラナ。ジュリエッタ王女と一緒にいる二人って、どういう人?」


 ベッド脇で、するするとリンゴを()いているステラナに、ルミは聞いてみた。


「リリー先輩とノア先輩のことかしら……」

 ステラナの横顔が、少し曇ったように見えた。


「うん。その二人よ」

「殿下が13歳の時から四年間、ずっとお側に付いている二人よ」

「一度も変わらず?」

「ええ……殿下とは、その、すごく仲が良いの」

 ステラナは言葉を選んでいるようだ。


「何をする時も三人はずっと一緒で、姉妹のように仲が良いの。私は殿下の下で働くようになって一年になるけど、一度も三人の会話には入れなかったわ。はい、どうぞ」

 ステラナは綺麗に剥いたリンゴを、ひと切れフォークに刺し、ルミに差し出した。


「旅行の計画を立てる時も、三人でコソコソとしてたわ。それはそれは楽しそうだった」

「それが一年も続いたのね」


「うん……でも、どうしてそんなことを聞くの?」

 ステラナもリンゴを食べながら聞いた。


「王女が早く見つかるためのヒントが欲しいの」 

「正直、こんなことは言いたくないんだけど……」

 いつもニコニコしているステラナが、珍しく険しい顔つきになった。


「私は殿下が戻ってこなければいいのにって思ってるわ。ルミが本当の王女だったらどんなにいいだろうって。この国のためにも、絶対その方がいいと思うわ……」

 我に返ったように、ステラナはいつもの笑顔になった。


「私がこう思ってるのは二人だけの内緒にしてね」

「うん」

「私のこういうところが殿下にも伝わっていたのかな。だから気に入ってもらえなかったのかもしれない」

 ステラナは寂しそうに笑った。


「そんなこと言わないで」

「一応ね、殿下に気に入ってもらおうと思って、私も努力したのよ。ヘアメイクを勉強したのはそのためなの」


「そう」

「でも、私はヘアメイクと雑用をするだけの人間。プライベートな話は一切してもらえなかったわ」

 ステラナは吐き捨てるように言った。




 翌日、すっかり元気になったルミは国王陛下に呼ばれ、玉座に赴いた。


 初めての玉座だ。

 二千人は入れそうな、だたっぴろい室内は窓がひとつもなく、薄暗い。

 数段高い位置で、過度に装飾された椅子に座った国王陛下は、険しい表情だ。


「リック王子との顔合わせだがな、本来なら本日、そなたがオルフェイム王国へ向かうことになっていたんだ」

 声色もなんだか冷たい。


「しかし、そなたの体調不良のせいで、一週間後に延期してもらうことになった」

「……申し訳ありません」


「一週間後、リック王子が、わざわざこちらへ赴いてくれるそうだ。くれぐれも失礼のないように。しっかりおもてなしして、気に入ってもらいなさい」

「はい、承知しました」


「だが、なるべく縁談がすぐにはまとまらないように引き延ばしてほしい」

「え?」

「ジュリエッタが戻るまで耐えてくれ」


 ルミは胸いっぱいに空気を吸い込んだ。

「あの!」

「なんだ?」

「私はもう、替え玉をやめたいと思っています。王女が戻られたら、すぐ家へ帰らせて頂けませんか?」


「いや」

 陛下は首を左右に振った。

「それはダメだ。もしジュリエッタが戻っても、リック王子にはそなたが会ってくれ」


「そんな! どうしてですか?」

「あのワガママ娘を、王子が気に入ってくれるとは思えん」

 陛下は肘をつき、顔を歪めた。


「いやしかし、実際に結婚されるのなら……」

「それはそなたが気にすることではない!」

 荒々しい語気に、ルミは小さくなった。


「それに、王子の前では無理にジュリエッタらしく振る舞わなくても良いからな?」

「王女らしく振る舞わなくていい?」


「ああ、せっかく初対面なんだ。表向きはジュリエッタとしてだが、そなたが自分の言葉で王子と話すんだ。その方が気に入ってもらえるだろう」

「……承知致しました」




 一週間後、日差しがやたら照りつける日に、リック王子は古びた馬車に乗ってやってきた。


 ギシギシと音を立てるキャビンから降りてきたのは、リック王子ただひとりだ。

 国王陛下、王妃陛下、王女に扮したルミ、国王の側近や使用人頭が揃って出迎えた割には、あまりにもあっけない登場だった。


 透き通るような白い肌とブロンドの髪。白いスーツを身にまとった、まさに王子と言った風貌だ。少年のようなあどけなさの残る優しい顔立ちで、スタイルも良く、数人だが色めき立つ使用人もいる。しかしその外見には似合わず、肩には力が入った様子で、目をキョロキョロとさせている。

 リックの姿を見てルミはまるで、雪山に取り残された子猫のようだと思った。


「は、初めまして! オルフェイム王国第五王子、リックです!」

 リックは今にも泣き出しそうに挨拶した。


「すみません、僕ひとりで。決して我が国がスレイダンの方々を軽んじているわけではないんです!」


 これは相手国に対して失礼というより、リックに対する扱いの悪さの表れだろう。他国へひとりで赴くなど、心細いだろうに。



お読みいただき有難うございます!

次回はリックとルミが散歩します。

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