13話 プレゼントの買い物
ウルフの誕生日パーティーまで10日に迫ったある日、行商人を呼んでプレゼントを選ぶことになった。
しかし、ブレスレットを手にしたルミは思わず「チッ」と、舌打ちしてしまった。
こんなものが10万? あり得ない。
品揃えの悪さ、金額の高さに、ルミは怒りが抑えきれなかった。
「今日は欲しいものは無いわ。お帰りください」
鬼の形相になりそうなのを必死に堪え、帰ってもらった。
王族だからっていくらでも金を出すと思ってるんだわ、馬鹿にしてる。
今までこの王宮内にあった様々なドレスやアクセサリーを売ってきた行商人らしい。
しかしそれらは全部、ぼったくられていたに違いない。あの行商人の私腹を肥やすことに、王族が今までどれだけ加担してきたのだろう。
ルミのはらわたが煮えくり返っていると、エリオがノックをして入ってきた。
「買い物をしなかったそうだな」
「ええ、取引先の人がどんな人なのか、どういうルートで商品を手に入れているのか、もっときちんと調べた方がいいわ」
どうしても眉間にシワが寄ってしまう。
「なぜだ?」
「街の市場で売られているのと、全く同じものだったの。でもそれを10倍の値段で売ってきたわ」
「いやでも、わざわざ足を運んで売りに来たんだ。多少の上乗せがあっても」
「多少どころじゃないわ!」
ルミは拳を握りしめた。
「前々から思っていたけど、 王宮は金銭感覚が狂ってるわ。もっと一つ一つの金額にシビアにならないと、こうして騙されてしまうのよ!」
「そうか……」
ルミが大きな声を出したからか、エリオはしょんぼりと肩を落とした。
「ルミ、プレゼントはどうする?」
ステラナが聞いてきた。
「あと一週間しかないわよ」
「今から街へ買い物に行くことはできない?」
ルミはエリオに聞いてみた。
「良い品を売っている商店街があるの」
「いや、突然王女が買い物に来たら、街の人々の混乱を招きかねない」
「そう……」
「あ、それなら!」
ステラナが、ポンと手を打った。
「ルミを私の同僚ということにして出かけるのはどう?」
ルミはステラナから、予備のメイド服を借り、メイド姿になった。
王女の替え玉になるには、目、鼻、口をなるべく大きく派手になるようにメイクするのだが、今日はなるべく小さく見えるように、頬もやつれたように影をつけた。ステラナいわく、疲れたメイドという設定らしい。
「これで絶対にジュリエッタ殿下には見えないわ」
「完璧ね」
二人が出かけようとしたところ、やはり二人だけでは心配ということで、エリオも買い物についてきた。
「ルミとショッピングできるなんて夢みたいだわ」
商店街に入ると、ステラナはルミに腕を絡ませ、跳ねるように歩いた。
「プレゼント……何がいいかしら」
この世界ではネットもスマホもない。「幼馴染 異性 誕生日プレゼント」というように検索できないのよね。ルミは思わず溜め息をついた。
「あ! あのシナモンロール美味しそう!」
突然ステラナは、ルミの腕を引っ張った。
「待て!」
エリオは連れて行かれそうなルミの手を取った。
「我々は食べ物を買いに来たんじゃない」
エリオが首を左右に振ってステラナを睨む。咄嗟に手を掴まれたルミは、まるで火がついたように頬が熱くなった。
「……すみません、プレゼント探し……ですよね」
ステラナが歩き出すと、エリオの手は離れた。
しばらく行くと、ステラナはエリオから距離を取って、こっそり耳打ちした。
「ルミ、私、お邪魔じゃない? 用事あるって言って帰ろうか?」
「え! なんで? どうして?」
「だってルミ、エリオ様のこと……」
「全然! 何ともない。何とも思ってないよ!」
ルミは全力で首を左右に振った。
「本当に?」
「本当に! お願い、帰らないで! 一緒にプレゼント選ぼう!」
その後は三人であれがいいこれがいいと話し合い、散々歩き回り、結局ウルフが好きそうな赤い品物を買って、商店街を後にした。
「ん! このシナモンロール美味しいわ」
「ね!」
「こんなに美味しいものが、あんなに安く買えるんだな」
帰り際、これくらいはいいだろうと、シナモンロールを一つずつ買って食べた。
エリオは甘いものが案外好きらしく、とっても嬉しそうにシナモンロールを頬張った。最近のエリオは見かける度に険しい顔をしていた。だから満足そうな顔を見られて、ルミは胸がいっぱいになった。
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次回は縁談話と誕生日パーティーの話になります。




