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12話 積極的に王女へ

 王宮へ戻ってから、ルミは積極的に王女として暮らそうと決心した。


 三度の食事は、エリオから指摘されたことを、忍ばせたメモに取りつつ摂った。

 そのメモを見ながら、予習・復習もし、ステラナに間違いがないか、教えてもらうようにもなった。


 また、時間があれば書庫へ行き、国内外のことを勉強し始めた。

 部屋には借りてきた地図や本が、机にも、ベッドにも増えていく。


 メイクルームにも本を持ち込むと、ステラナは目を丸くした。


「こんな時くらいゆっくりしたら?」

 髪を(くし)()かしながら、呆れたような声で言った。

「ウルフ様の時のように、いつ来客が来ても良いようにしておきたいの。トンチンカンな発言をして、お相手の気を悪くしたら国の評判に繋がってしまうわ」


「本人はそんなこと微塵も気にしてなかったけど?」

 ステラナがボソッと呟いた。早口だったので、ルミには聞き取りづらかった。

「今なんて?」

「あ、うんん。気にしないで、読んで?」

 本を置いたルミに、ステラナは本を勧め、メイクを始めた。一頁めくるごとにどんどん顔が派手に変わっていく。


「痛感するわ。結局ステラナがいないと、私は王女にはなれないのよね。本当にステラナのヘアメイクは凄いわ」

「ありがとう。私は毎朝ルミをメイクできて、幸せよ」

「私も幸せ。ウフフッ」


「あ! そうそう!」

 ステラナは、ポンと手を叩いた。

「何?」

「ウルフ様の誕生日パーティーではフォークダンスを踊るのが恒例なのよ」

「フォークダンス?」

「うん。殿下も昨年踊ってたから、ルミも踊ってみる?」

「いいの! 踊ってみたいわ!」

「教えるわ。支度が終わったら踊りましょう!」




「イチ、ニイ、サン……」

 ゴンッ!

「アハハッ、ごめん」

「頭が当たったわね、アハハッ」

 ルミとステラナは手を取り合い、部屋でフォークダンスの練習をした。


 コンコン。

「楽しそうだな、何してる?」

 エリオが顔を出した。

「フォークダンスを教えてたんです」

「踊るのか? ルミ」

 エリオがルミを心配そうに見た。

「ええ、そのつもり」


「もしパーティーでダンスに誘われても、その時は断れと言わなかったか?」

「殿下が踊れるなら、踊れるようにしておきたいの」

 ルミは胸を張って答えた。

「そうか、最近頑張ってるみたいだが、無理はしないように」

「ええ」

「では、朝食に向かおうか」


 エリオの後を追い、ルミはダイニングルームへ向かった。最近のエリオは外出する頻度が多くなり、あまり会わなくなった。ルミがエリオと会うのは、こうして一日三回。食事の時だけだ。


「食事のマナーはもう大丈夫そうだな」

「ええ、ひと通りは覚えたわ」

「これからは、食事もステラナが付き添うことにしよう」

「え?」

「明日から私は、王宮にいないことが増えそうなんだ」

「……そう」

 寂しいという言葉が喉元まで出かかっていたが、ルミはグッと我慢した。




「ねえ、ステラナ、エリオが最近よく行っている倉庫には、何があるの?」


 ティータイムの時間。

 コーヒーを飲んでいたルミは、庭を歩いていくエリオを見かけ、ステラナに聞いてみた。


「ああ、あそこにはジュリエッタ殿下が旅行で買ってきたお土産がたくさん置いてあるのよ」

「お土産?」

「うん。それはそれはたくさん買って帰ってくるのよ。買い物依存症だっていう人もいるくらいよ。私の想像だけど、エリオ様はジュリエッタ殿下が今まで行った国はどこなのか、まだ行ってない国はどこなのか、お土産を見ながらリストを作るんじゃないかしら?」

「リストを?」

「うん。ジュリエッタ殿下が向かった国はどこなのか、密かに聞き回ってるみたいだし。可能性のある国に、早く帰るように伝令を向かわせるんじゃないかしら」



 そうか、エリオは私を解放するために頑張ってくれているんだ。王女が見つかるのは時間の問題かもしれない。

 そうなったらエリオと会うことも、ステラナと会うこともなくなる。それは寂しいな、とルミは思い、また庭を見つめた。


お読みいただきありがとうございます!

次回は誕生日プレゼント探し、です。

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