夜会にて- 3
フェリスは慌ててセシルの口を塞ごうとしたが、既に出てしまった言葉はどうしようもない。
ただ幸いにも、周りの人たちは会話を楽しむか王女に夢中かのどちらかで、会場の片隅にいる青年二人になど誰も興味はないようだ。
そうした様子を見て取り、フェリスはほっと胸を撫で下ろす。
一方のセシルはフェリスの気苦労など露知らず、前菜を食べ終えメインに取り掛かろうかと料理のテーブルのほうに目をやった。
――瞬間、彼は、ちょうどテーブルと彼との間あたりで参加者と話していたオリーブ王女と目が合った、……気がした。
(さっきの、聞こえてたか……?)
先程のセシルの発言は、王女に対する悪意があってのものではなかった。というより、無関心、彼女に特に興味がなかったのだ。
平和な国の王の一人娘であり、美しく誰からも愛され大切にされ、何不自由なく暮らしてきただろうという、王女というものに対する単純なイメージからの言葉だった。
とはいえ少々過ぎた表現だったかもしれない、と、セシルは心の中で一応の反省をした。
しかし、だからといって特に悪びれる様子もなく、彼は何の気なしに王女から視線を移そうとした。
……が、彼女が彼の視界から外れようとするその一瞬、オリーブ王女はセシルのほうを真っ直ぐ見て、――微笑んだ。




