夜会にて- 2
「……はぁ〜、綺麗だなあ王女様。……って、セシル聞いてた?」
会場の一角にて王女の挨拶をうっとりと眺めていた青年は、柔らかな金髪を揺らし、隣の黒髪の青年のほうへと振り返った。
「……は? 挨拶も終わったことだし飯でも食おう、フェリス」
黒髪の青年は興味なさそうに答えると、色とりどりの料理が並ぶテーブルのほうへスタスタと歩き出した。
少し癖のある黒髪から覗く耳に、緋色のピアスが揺れている。胸には王国騎士団のバッジを付けていた。
「あっ、セシル待ってよ〜」
フェリスと呼ばれた金髪の青年は、慌てて黒髪の青年、セシルの後を追う。
フェリスが追いつく頃には、セシルは既にお目当ての前菜を皿に取り、口に運ぶところだった。
「もう、せっかく美人の王女様を間近で見られるチャンスなのに」
呆れながら言うフェリスの言葉を気にする様子もなく、セシルはマイペースに立食を楽しんでいる。
ちょうどそのとき、参加者に挨拶をしながら会場を移動していたオリーブ王女が二人の近くまで来ていた。
それに気がついたフェリスは、嬉しそうにセシルに耳打ちする。
「……ねえセシル、王女様こっちのほう来るよ!」
周りや王女本人への配慮から、フェリスは声を落としてセシルに話しかけていた。
しかし、セシルは特に気にかけることもなく平然と言ってのける。
「――何言ってんだフェリス。あんなの、一人じゃ何もできないお飾り人形だろ」
「…………!? セシル、何言って……!」