第4回ー2
そんな結奈の姿に、響紀はさらに胸が締め付けられた。今しがた自分が口にした言葉の無責任さに辟易しながら、けれど本当に会えた時には、必ず引き摺ってでも結奈の所まで連れてこようと思ったのだった。
結奈は小さくため息を吐くと、「さて」と両腕を高く伸ばして胸を逸らし、大きく伸びを一つしてから、
「じゃぁ、行こっか」
「行くって、どこに」
響紀が首を傾げると、結奈は口元に笑みを浮かべたままで、
「何をしたらいいのか解らないけど、こんなところでいつまでも悩み続けてたって仕方がないでしょ? とにかく動かないと、何かを始めないと。そうじゃないと、いつまでたっても先には進めないでしょ?」
「それは、お前、そうだけど」
けれど、響紀にはそれ以上何も言えなかった。
実際、響紀にはこれから何をどうしたらいいのか解らないのだ。どうすれば家族を助けられるのか、どうすればあの喪服の女を止められるのか。何一つわからないのだ。それをここでうだうだ悩み続けていたって、確かに仕方のないことだった。
ならば、少しでも歩き出そう。動き出そう。それが俺にできる、唯一の事なんだ。
響紀は一つ頷くと、じっと結奈の方に視線を向けて、力強く、
「行こう」
結奈はそんな響紀の肩を、満足そうに、ぽんと叩いた。