荒れた土地
すぐに転移させられた理由がすぐにわかった、妖精はとても焦っていたんだと思う。
目の前に広がったのは、砂漠化一歩手前の土地だった。
僕はテイマーの端くれ。
だから、わかる。妖精の住む土地が、どれだけ自然豊かではないといけないかを。
彼らの力は、自然から来るものだと幸太郎は言っていた。
これは、妖精の住処というには酷すぎるのだ。
「ああ、こんなところに幼子は住んでおったのか。可哀想に。だから、あんなに弱体化しておったのだな」
幸太郎はまた力を分けてあげていた。
「ボクはあまり強くはないの、でも光魔法や転移とか貴重な力が使えるから、生命力が高くてまだ力が残っていた方なんですなの……」
……悲しそうにそう言う。
ああ、間に合わなくて力尽きてしまった子もいるんだね。
「幸太郎、僕の従魔にすることで存在が強まることはできますか?」
「……ここまで、荒れているとまずはお前の従魔にすることが延命につながるな。我は存在が強い故、異世界に来ればお前が我に影響を受け、光魔法と水魔法を使えるようになる。生命力もまた、影響を受けておるだろうから、高いだろう。開発を進めるのが一番だが、間に合わなければ意味はない。まずは全員と契約すべきだ」
だから、テイマーであることを喜んでいたんだね。
「……全員とは無理なんですなの。機能が停止した場所の妖精は、機能が再開するまで眠った状態にいるんですなの。だから、今起きてるのはボクだけなんですなの。ボクは危機を脱したから、まずは他の仲間を起こして欲しいんですなのっ! これをどうぞなの!」
ん? 携帯?
「リメイクフォンですなの! これは、妖精のお家を改造するための、管理者特典なのですっ! これに入っているリメイクポイントを使って、改造していくのですなの! 管理者様のイメージにある見た目にしてるから、使ってみてくださいなのっ」
妖精の言う通り、まんま携帯なので、躊躇いなく起動ボタンらしいものを押す。間違ってなかったみたいで、ちゃんと起動した。
「起動したらどうするんです?」
「まずは、ステータスを押してみてくださいなのっ」
言われた通り、押すとステータスが画面に映った。
桜 春
18歳
妖精召喚
妖精を呼んで戦うことができる
結界魔法
魔力を放つことで対象を守ることができる。
テイム
妖精以外の生き物と契約できる。妖精は契約しなくても、妖精のマスターは主人公であるため。
光魔法
回復魔法と攻撃魔法がある。
水魔法
回復魔法と攻撃魔法がある。
その他魔法 成長魔法(妖精のお家内限定)
植物を成長させることができる。
転移魔法 地球に戻るための魔法。
称号 管理者、フェアリーマスター
称号とは、世界に与えられた役割みたいなもの。
管理者 ある条件の土地を管理するもの
権限 リメイクフォンの使用
侵入者の拒否
「まず年齢、肉体的精神的に健康だった年齢まで戻されて、不老になるのが管理者の権限ですなの。管理者が変われば、妖精のお家の改造は初めからになるなの、同じ人が続けるのが望ましいから不老が権限についてるですなのっ。でも、大怪我をすれば生命に関わることもあるから無茶は禁物ですなのっ!」
不老かぁ……、妖精たちは生命力が尽きる以外に亡くなることはまずないだろうけど、人の死を見守る側に立ち続けるのは少ししんどいなぁ。
……例え、知り合いが少なくてもだ。
「大丈夫だ、我がずっとそばにおる。一人にはせぬよ」
僕の心うちを察して幸太郎が寄り添ってくれる。
「管理者様っ、ボクもいますなのっ! ボクたちが支えますなのっ!」
ぴょんぴょん跳ねて、妖精も主張してくる。姿がうさぎなので、とてもほんわかした。少し、寂しい気持ちが薄れた気がした。
「二人ともありがとうございます」
「はいですなの! 次に魔法を見てくださいなの! 幸太郎様から引き継いだのは水魔法と光魔法。管理者特典は結界魔法と妖精召喚ですなの! 次はリメイクポイントを見て欲しいですなの! ピンチを救ってくれた特例で、全ての妖精分のリメイクポイントが入っているはずですなのっ」
50000ポイントが入っていた。
どれくらい価値があるかはわからないけど、桁から困っていたかが伝わってきた。
「まずは管理者様のお家を建てましょうなの! ポイント交換を選んで欲しいですなの!」
僕は言われた通りのまま操作する。
小屋 2500 家具付き 色チェンジ 100
ログハウス 7000
レンガの家 10000
2階増築 30000
倉庫 7000
工房 50000
台所(小) 500
台所(中) 1000
台所(大) 2000
お風呂小 1000
お風呂中 2500
お風呂大 5000
洗面所小 1000
洗面所中 2500
洗面所大 5000
トイレ和式 1000
トイレ洋式 2500
冷蔵庫小 1000
冷蔵庫中 2500
冷蔵庫大 5000
家具カタログ(現金でも購入可)
畑(一畳) 500
種 50
肥料 100
農具一律 300
羊 1500
牛 1500
豚 1500
牧羊犬 1200
井戸 1500
温室1 10000
温室2 50000
温室3 100000
土地を広げる 10000.50000.100000 150000
月光島に転移範囲を広げる 100000
50000ポイントあっても、妖精のお家の発展は難しそうだ。
ましてや、幸太郎は除く妖精は、うさぎの妖精しかいない。となると、仮に妖精から感謝されることでポイントが入ってくるとすると、発展させることはなかなか難しいのではないだろうか。
「家はどれも家具がついてるんですよね?」
「はいなのっ! ポイントを使うことで、復活させたものに眠っている妖精たちに力を与えることができますなの! 例えば、家を買うと、家を管理している妖精が復活しますなの。小屋を買った後、ログハウスを買うと新しい妖精が増えるんじゃなくてその妖精の生命力がアップしますの!」
復活させることに集中しなくても、ポイントを使うことで、妖精の力は回復すると言うことか。
それでも、まずは多くの妖精に力を分けたい。
まずはログハウスに、ポイントを使う。残りは、43000ポイント。
「トイレと台所は整備しておいた方がいいですなの! ボットン便所は、僕には向かない……と前の管理者様が言っていたのでっ! 台所は、あるとポイントを集めやすいですなの!」
ボットン便所かぁ。僕も使ったことないから、変えておくか。
台所も、ポイントが集めやすいなら、開放してもいいかもしれない。狭いと使いづらいから、大きいサイズに変えよう。
残り、38500。
「よし、土地を広げよう」
ポイントがたくさんあるうちに、一段階広げておきたい。
あとは、台所がポイント回収ができると言うことは畑があったほうがいいかもしれない。5000ポイント分の畑に変える。
あとは畑に必要なクワ、ジョウロ、鎌、井戸にポイントを変える。合計2400。
1100ポイント分を肥料と種に変えた。
残りの10000ポイントは、次回にまわそう。
「……流石にトイレに妖精はいないですよね?」
「お風呂とトイレはプライベートな空間なので、清掃だけお家を管理する妖精が行っていますなのっ!」
あ、よかった。
四六時中、トイレに誰かいたら行きづらいなと心配だった。良かった、そうじゃないってわかって。
「良かったな、春。しかし、荒れているとは言え、空気が心地よい。土地が広がったことで、我も久々に体を動かせそうだ」
そう言い残して、どこかに消えていってしまったのだった。