表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

神の竜

港を出発して1日目山の中を走っているとスモールゴブリンの群れに遭遇した。

「にんげんどこにいくの?」

「今から地龍を狩りに行くんだよ」

「ちりゅう!! あぶない、きをつけてね」

「ありがとう、良かったら旅の安全を願っていてね」

スモールゴブリンは祈りの言葉を読んでくれて僕達はまた出発した。

しばらく走っているとベリー系の甘い香り漂ってきた。

馬車を降りて香りの方へ向かうとそこには1輪の赤い花が咲いていた。

「催眠草か珍しいな。」

「地龍に使えるか試してみようぜ。」

たしかに催眠草が地龍の様な大型の獣に使えるか実験するのは悪くない。

ちなみに草や毒といった物は魔族には一切通用しなかった。

とりあえず1輪しか咲いていない催眠草を乾燥させながら走り、冒険の初日は終わった。


2日目は昼頃から妙なことに気がついた。

狼や鹿の足跡や鳥のいる形跡がないのだ。鳥までも居ないとすれば地龍というよりも毒が湧き出ている可能性がある。

少し時間は掛かるが山を降りて回ることにした。山を降りてすぐに潰れた家屋が並ぶ集落を見つけた。

「臭いな。」

「あぁ、襲撃が会ってから1週間ぐらいって所か生存者を探すぞ。」

その集落では明らかに地龍による襲撃を受けた痕跡があった。住人は上半身だけを食べられており数は17体、それ以外に人は見つからなかった。

「戻ったら国に報告しないとな。」

「上半身しか食べていない所と家屋を潰しているのを見ると人間の食べなれているな、テオドールこいつは討伐に変更するぞ。」

「次が出る前に始末しよう。」

運がいいことに地龍は足跡を消すほど賢くはなかったようだ、それとも人間相手なら絶対に負けない自信があるのかもしれない。


地龍の巣に着いたのは月が真上に差し掛かった頃だった。僕達は昨日手に入れた催眠草に火をつけ入口に置いた。普通の獣ならこれで十分だが。

「行くぞ。」

僕達は催眠草の煙を吸わないように布を巻き巣の奥へ向かった。

よく眠っているみたいだ。

「一撃でいく。」

剣に力をこめ他と同時に地龍が起きてしまった。

「貴様その剣は聖剣だな。なぜここに勇者がいる?」

「テオドールこいつ喋ってやがる! 地龍じゃねーぞ!」

「神竜か…やっかいだね」

「貴様は剣士でやつが魔術師か。2年前の情報と違うな。他は死んだか?」

徐々に茶色い鱗が金色を纏っていくと「神竜火玉(ドラゴンボール)」瞬間周囲が炎に囲まれる。

「イージス!!」アレクの防御魔法が発動し炎から2人を守るが、ピキっ、ピキっ 「やばい! テオドール魔法が破られる!」

聖剣に力を込める。まだ聖剣の能力はわからないが今は切りかかるしかない。

パリーン。音とともに防御魔法が破られる。それと同時に僕は踏み出した。「うおおおおおお!!!」光を放ちながら常人とは思えない速さ間合いを埋める。

「イージス 」

「なんだと!?」

「飛翔」言葉と共に竜の背中に金色の羽が生えると同時に重量感のある身体が浮き上がった。

「終わりにするには早いが私にも勇者を生かしておくことは脅威なのでね。」

「待て! 逃げる気か!」

硬い顔が一瞬笑ったように見えた。

「話を聞かなかったのかい? ここでお前たちを始末するのだよ。」

口の端から炎が漏れ出ているのが見える。「神よ弱き我々を護りたまえ、イージス!!」

魔法のドームに包まれると同時に竜の口から炎のビームが吐き出される。

防御魔法に弾かれた勢いでビームが岸壁に当たり岩が降ってくる。

「伏せろテオドール!」

その言葉を最後に意識を失った。


げほっ、げほっ。重たい瓦礫を押し上げると空にはもう太陽が登っていた。折れているだろう左腕を抑えながら叫ぶ「アレク…アレクッ!」居ない。どこに埋まっているんだアレク。

突然瓦礫が浮き出した「すまねぇな、ちょっと寝てたわ。」

「良かった…」おかしい、何かが足りない。

「アレク…お前…右腕が」

「最後の最後にイージスが破られちまってな。神に頼ってまで使ったのに情けねぇ。」

「血は大丈夫なのか?」

「神竜様の熱で無事止血したみたいだ、痛みも催眠草のおかげで感じないしな。」

結局、竜には一切効果が無かったみたいだけどな。と笑うアレクに肩を貸し僕達はゆっくりと馬車に戻った。


馬車は運良く無事だったため、簡単な治療をして街へ向かう。

翌日再びスモールゴブリンに出会った。

「おにいちゃんだいじょうぶ?まほうかけてあげるね」「ぼくもてつだう」

ゴブリンが魔法を使うなんて驚いたが、魔力が尽きて回復魔法が使えないアレクには大きな助けになる。

「ありがとうな、お礼にこれやるよ」

アレクは帰りにまた見つけた催眠草を渡すと、街まで急ぐ。


港に戻るとソフィアとリリアが待っていた。

あと、ジュリアも居た。

着くや否や僕達の状態を見たジュリアが医療班を手配してくれて街の病院に運ばれた。

「君は大丈夫そうだがお仲間が危ないね。あの子神々から魔力を借りたでしょ。」白髪の医者に治療されながら聞かれる。

「はい。」

「やっぱりね。その反動で生命エネルギーまで削っていてね。1ヶ月は寝たきりじゃないといくら勇者でも死んでしまうよ。」

「僕達は勇者じゃな」医者は僕の言葉を遮って続ける。

「医者には情報が回るから知っているのだよ、剣の勇者テオドール君」

そうか、なぜか安心した。

医者からは病院を出る許可を貰い、国の国防本部へ向かった。


アレクをあの様な状態まで追い込むとは、あの神竜は魔王に匹敵する力を持っているかもしれない。

国防本部では神竜のおおよその戦闘力や壊滅した集落のことを説明してから、聖剣の資料を見せてもらうように頼んだ。

その資料ではあの聖剣は「ムラマサ」という珍しい名前だった。能力は周囲の魔力を吸収し、使用者に回すというものらしい。つまり魔力のない僕でも魔法が使えるということだ。

「アレクは面会できないし、とりあえず病院戻って休むか。」



3話も読んでいただいてありがとうございます!!


評価とブックマーク良かったらお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ