終わる物語と始まる冒険
「これでトドメだぁぁぁぁぁ!!!!」
光を放ちながらテオドールの聖剣が魔王を両断した。
「ここで私を倒してもすぐに私は蘇るぞ」
身体が半分になり死に行く魔王は続けた。
「蘇った時にお前たちを探し出して真っ先に殺してやる!!」
そう言いながら魔王は黒い灰に変わった。
「…」
「どうした?」
テオドールにアレクが回復魔法を使いながら問いかける。
「最初は5人で始まった魔王討伐だったのに、この最終決戦で生き残っとのは お前と俺だけだと思うとどうしても勝利の喜びに浸ることが出来なくてな…」
5年の付き合いだがアレクがここまで悲しそうな顔をするテオドールを見たのは初めてだった。
アレクはテオドールを抱きしめ、涙を堪えながら、苦しい声で言う。
「それでも俺たちは勝ったんだ、絶対不可能だった魔王討伐を成し遂げることができたんだ。あいつらのためにも今は勝てたことを喜ぶんだ」
「そうだな…とりあえず街に帰って皆を弔おう。」
そう言うと2人の若い戦士は荒廃した魔族の土地から出て行った。
それから2年
「「金がない…圧倒的に足りない」」
財布のなかを覗きながら街で呟く青年が2人。
「平和になったのはいいけど、俺たちの仕事が無くなって今は1文無しって」
「仕方ねぇだろ! 魔王討伐の報酬は全部復興費用に寄付したし、回復魔法が得意な魔法使いと聖剣を手放した剣を振るうしか脳がない人見知りな剣士を誰が雇うんだよ!」
キレ気味に言うアレクの後ろから人影が近づく。
「にぃちゃん達金がねぇのか?」
振り向くとそこには2メートルはある黒光りした屈強な大男がいた。
「なんですか急に?」
「なんですかってさっき金がねぇっていう呟いてたじゃねぇか」
「たしかに言ってましたけどそれがなにか?」
「そんな怖い顔すんなって! 金は出せねぇが皿洗ってくれるなら飯ぐらい出すぞ!」
「アレク、ご飯くれるみたいだし行こうぜ」
アレクは少し迷いながらも、食事にもありつけるか怪しい金銭状態を考えながら答えた。
「そうだな、ええとー」
「シェフだ、みんなそう呼ぶ」
10分程歩くと大衆酒場の様な店に着いた。
そこには数名の…数名の?
「シェフ、店員みんなに耳と尻尾があるんですが」
「ハハハ!! この辺の国では珍しいだろ獣人! 仕事が見つからねぇみてぇだからここに置いてたら、増えちまったよ」
シェフはホールに響き渡る大きな笑い声を上げていると、「シェフー、その人たち誰〜?」と狐の耳を生やした小柄でやたら胸の大きい少女が近づいてきた。
シェフ曰く名はソフィアと言うらしく、数ヶ月前に僕達と同じく外で腹を空かしているところを拾われたらしい。僕達のことを軽く紹介すると奥からコックを1人呼んできた。
アレクと同じ人種なのだろうか、金髪で青い瞳をしている人間だった。
「こいつはダニーだ、仕事の前にお前らに飯を作ってくれることになった」
すると急に真面目な顔になって「こいつの飯はまじで美味いぞ」と言い残しどこかへ消えていった。
「2人とも苦手な食材はあるかな?」
ないと答えるとダニーはすぐに厨房へ戻って行った。
しばらくするとシェフと一緒に筋肉質な女性が僕達の席にやってきた。
「この人はジュリアさんだ、内の卸業者の1つでお前らのことを話したら人手が足りないからと紹介するように言われてな」
ジュリアさんは僕達を舐めるように見た後に。
「君たち体つきがいいね!今うちの会社の狩猟部門で人がいなくってね、良かったら働かないかい?獲物を捕まえる程収入が上がるから悪くない話だと思うよ」
「是非お願いします! 狩なら地龍でも狩れる自信があります!!」
思わずすぐに返事してしまった…
でもこの話は魔王討伐を成し遂げた僕達ならそこまで難しい話でもないはずだ。
「俺達2人ならいい仕事が出来ますよ」
「いいね、威勢のいい男は嫌いじゃないよ」
何故かウィンクされた。
「それじゃ明日の朝港に来な、道具は用意しておくから」
またウィンクされた。 あんまり嬉しくない。
「良かったじゃねぇか! とりあえず飯食ったら皿洗い頼むぜ」
2人が帰るとすぐに食事が出てきた
「おまたせ。これは白身魚のトマト煮込みだよ、僕のおすすめだ」
「いい香りだ、テオドール早く食おうぜ」
言われる前に僕はもう頬張っていた。美味しい。
白身魚と一緒にトマトとニンニクそして香辛料の味が口いっぱいに広がりそれと同時に食材のみずみずしさがよく分かる。
食べ終わると僕達はすぐに皿洗いをして店を出た。
「皿洗いつっても1日やると疲れるな」
「そうだな、でも明日から仕事があるから早めに寝ないとな」
「たしかになー」
「あの!」
「!?」
突然後ろから声を掛けられて思わずフリーズしてしまった
「急にごめんなさい…明日頑張ってとつ、伝えたくて」
そこには昼に会ったソフィアが立っていた。
「お、おう」
「ありがとう、ソフィアさんも明日頑張ってね」
「ありがとうございます、最近獣の動きが活発だから気をつけてくださいね」
そう伝えてソフィアは店の方向へ帰って行った。
「あの子全く気配がしなかったな」
「うん…」
「俺たちが気が付かないってなー、訛っちまったかな」
「そうかもね、明日は気を張って狩りに行こう」
アレクは返事をせず2人は帰路に着いた。
はじめましてMattです!
初めて小説の様な物を書いたので、文が読みにくかったり情景が入りにくいかもしれませんが、これから頑張っていきたいと思うのでよろしくお願いします!
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