9-2 憧れの部屋
俺は春雨さんと別れた後、直ぐに足を運んでいたので既に竜星の部屋の前に立っていた。腕時計をチラリと一度だけ見て、約束の5分前という事を確認する。
そこで俺はほんの少しだけ早いが、インターホンを押す事にした。竜星の準備がまだ出来ていないのなら中で待てばいいと思っている内に、「ガチャリ」と音を立てて扉が開けられる。
そしてそこには眠たそうに目を擦る竜星が立っていた。
「あ、隼人君。おはよう……。」
「おはよう……。」
俺はそこで短く挨拶を交わしてから、言葉を失う。
それは何故かと言われれば、明らかに竜星は今起きましたと言わんばかりの姿だったからだ。
髪は寝癖が無造作に飛び出し、目は眠たそうにしょぼしょぼとさせており、頭がまだぼーっとしているのか、目の焦点があまりあっていなかった。それに加えて欠伸を隠そうともしなかった。
何より服装が寝巻きのまま出てきたのか、Tシャツとショートパンツに身を包んでいた。
そしてそのショートパンツは前面にこんもりと立派なテントを張っており、俺は一度視線を向けてしまうが、直ぐにさっと目を逸らす。立派な矛を隠そうともしない態度に寧ろこっちが恥ずかしくなる。
すると竜星は10秒程経過してからやっと意識がはっきりとしてきたのか、ハッとした様子で部屋に慌てて入っていく。俺は呆れて思わず頭に手を当てつつも勝手に中に入らせてもらう。
部屋に上がると意外にも部屋は綺麗に整頓されていた。乱雑に床に落ちているものはなく、棚に全て収納されており、机の上も勉強道具が整理されて置かれていた。
キッチンもチラリと覗いてみるが洗い物も溜まっている様子はなかった。俺は竜星の意外な一面を知りつつも、洗面所で歯を磨いている竜星を確認してから、ずらりと並ぶ本棚とゲーム機器に、自然と吸い込まれる様に見入ってしまう。
本棚は一段約30冊程入る棚が5段。それが4セットあり、まさしく圧巻だった。俺は一般的な基準を知らないのでそれが多いのか少ないのかは判断出来ないのだが、値段を考慮すると多いほうなのだろうと結論づける。
棚の上には恐らく3Dプリンタによって精巧に作られたロボットのプラモデルに、露出が過度に多い水着姿の女の子のフィギュア。どれも体勢が際どく、お尻や胸を強調するようなポーズばかりだ。殆どが巨乳で竜星の好みがだだ漏れだったが、俺も巨乳好きなので興味津々に見詰めてしまう。
そこで俺は竜星は以前、「おっぱいは小さくてもいい」と言っていた事を思い出す。どうやら結局大きい方が好きらしい。
そして白を基調としているはずの壁はタペストリーによって半分ほど埋められており、可愛らしい女の子一色だった。
ゲーム機器の棚には5種類程の機器が置いてあり、PC機器周辺はデスクトップパソコンでモニターが3つ。椅子も通常の背もたれしかない椅子とは違い、アームレストなどがついており、とても座り心地が良さそうだった。
この空間はまさに竜星らしい部屋といったものを感じさせる。俺はこの部屋を見て、こういった自分の趣味全開の部屋に憧れを抱いていた。
そしてこれだけ魔改造するのにいくらかかったのか少し気になり、値段を想像しながらしげしげと部屋を見渡す俺に竜星が声を掛けてきた。
「隼人君ごめんね、思いっきり寝坊しちゃった。今から軽くご飯食べるから適当に座ってて。本棚の中身とか勝手に読んでてもいいから。」
「分かった。」
俺は短く返事をして竜星を見届ける。
そして寝癖直しを使ったのかある程度は綺麗になっていたが、ところどころ直っていないのが竜星らしいところだ。
そこで俺は本棚の前に立って、背表紙に表記されているタイトルに目を通してみる。
今日の目的としては主に本を買ってみようと思っていた。それは竜星がよく読んでいるラノベというものに興味が湧いたからだった。漫画やアニメ?というものも興奮しながら話してくれるのだが、俺が1番興味をそそられたのはラノベだった。他の2つに興味がないわけではないので、今後また買いたいと思う。
俺はそんな事もあり約600冊程ある本の背表紙に目を通しているのだ。
そして竜星との共通の話題が出来る事は俺も素直に嬉しい事だった。
そこで俺は何冊か本棚から手に取り、あらすじを読んでみる。どれも面白そうであり、読んでみたいと気持ちが溢れてくる。そんな衝動を抑える様に一旦手を止める。1冊目は自分で買った本を読んでみたいとなんとなく思ったからだ。特にいってこだわりでもないので無視してもよかったのだが、自然と俺はそうしていた。
俺は待ち時間を潰すべくフィギュアやタペストリーを眺めて目の保養に勤しんでいた。
(ん?パンツ…じゃなくて紺色の水着?)
そして、結局竜星の部屋を出発する事になったのは20分後になってしまった……。




