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素晴らしい学校生活を送りたくて!異能で友達って増えます?  作者: てりぃ
第7章 異能強化に励みましょう!
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7-7 近接戦闘は難しい?①

 俺は土下座の体勢からスッと立ち上がり、とぼとぼと併設されたパイプ椅子に向かって歩く。俺が椅子に座って俯いていると誰かが小走りで近づいて来て、俺の前に立つ。俺はそこで顔を上げて、それが誰なのかを確認する。

 するとそこにいたのは春雨(はるさめ)さんだった。手には少し砕けたガラス玉を乗せており、その可愛らしい表情は普段よりも暗く、笑顔はなかった。


新海(しんかい)君、さっきは少し言い過ぎました。ごめんなさい!」

 春雨さんは頭を勢いよく下げ、そう謝ってきた。


「え?ど、どうしたの急に?」

 俺は確かに変態と言われて傷つきはしたが、別に謝って欲しい訳ではなかった。なので俺はそこで少し戸惑いを見せていた。


「いえ、やっぱり少し冷静になると言い過ぎたと思って…。それで…悪い事をしたので謝ろうと…。」

「あ、いや、別に気にしてないから大丈夫だよ。ありがとう謝ってくれて。やっぱり春雨さんは優しいね。」

「い、いえ、そんな事はないですよ?さっきも意地悪言っちゃいましたし。」

「それも…そうだね、確かに意地悪言われたかな。」

「えっ、酷いです!」

 俺が少し意地悪する様な事を言い、苦笑いを浮かべると、春雨さんも釣られる様にそんな事を言いつつも普段の太陽の様な眩しい笑顔が戻っていた。

 春雨さんは笑顔が似合う子なので、出来ればずっと笑っていて欲しい。

(てか、わざわざ謝ってくれるとは、なんていい子なんだ…。笑顔も可愛いし、マジ天使。)

 俺はそんな事を思いつつ、春雨さんの手の上の物を見詰めながら話す。


「春雨さん。それ、上手くいったみたいだね?何か掴めた?」

「え、いや、何も掴めなかった…です。…でも異能で疲れたのは初めてだったので少し不思議な感覚です。」

 春雨さんは少し残念にしながらも、初めての感覚に戸惑っている様だった。


「そうか、まぁ1日で掴めるものじゃないから、コツコツやっていこう。」

「そうですね!新海君となら頑張れる気がします。」

「はは、それは良かった。とりあえず疲れたと思うから休憩しっかりとってね。」

「はい!」

 そう、春雨さんも異能を使い消耗している。神無月さん程ではなかったが、春雨さんも十分汗をかいており、汗が滴り服が濡れていた。少しだけむっちりとした綺麗な太ももから汗がすぅーっと伝うのを見て、俺は思わず息を呑む。

 そんな視線を俺が春雨さんに向けていると、その視線に気づいたのか、春雨さんは目を細めてこちらをじっと見詰めていた。


「新海君…視線がえっちぃです…。…2人っきりの時ならいいですけど、今はダメです…。」

「え?そ、それって…。」

 俺はそんな事を言われて思わず胸が高鳴る。そこで簡単に期待してしまうのが、チョロイところなんだろう。


「嘘でーす!引っかかりました?」

 春雨さんは満面の笑みで俺にそう言ってきた。

 俺はそこで素直に答える。


「引っかかりました……。」

「ふっふっふー。私一回こうゆうのやってみたかったんですよね!…これは友達だから、出来る事です…。」

 春雨さんは高らかに言い放った後は、目を伏せて、語気を弱める。どうやら春雨さんは俺を馬鹿にしたかった訳ではなく、そういったやりとりに憧れてやってみただけのようだ。

 俺はそんな彼女の笑顔を見れるのなら、いくらでも引っかかってあげてもいいような気さえした……。


―――――――――――――――――――――――――――


 そんなやりとりから、45分程経過したのを確認して、俺は神無月(かんなづき)さんに近寄る。

 すると神無月さんは椅子に腰掛けて読書をしていた。猫の刺繍が入ったブックカバーをしており何の本を読んでいるかまでは分からなかったが、今はそんな事はいいだろう。

 俺から見る限り汗は止まり、呼吸も安定しており、完全にリラックス出来ていて、ある程度まではしっかりと回復したみたいだ。

 するとどうやら神無月さんは練習を開始する事を悟ったのか、本に栞を挟んで本を閉じてから顔を上げる。


「もう、時間かしら?」

「あぁ。体力もしっかり回復出来ただろ?それで体も少し冷えてるだろうし、最初は動的ストレッチをしよう。」

「そうね…。」

 神無月さんはそう言ってパイプ椅子から立ち上がる。体が冷え切ってしまわないように着ていたと思われる白のパーカーを脱いで、俺と一緒に動的ストレッチを始める。

 俺はその間に説明をしてしまう。


「まず、前半は神無月さんがどれくらい心得があるのか知る為に俺は防御と回避に徹するから、好きなように攻めて欲しい。その間に俺から指示を出していくから出来るだけ修正していって欲しい。

 後半は進捗具合によって、俺からも攻撃に転じるから、頑張ってついてきて欲しい。無理な要求は出来るだけしないつもりでいるから、とりあえず基礎の部分の感覚を少しでもいいから掴んで欲しい。」

「分かったわ。」

 そして俺は春雨さんの方に顔を向けて話す。


「えーと、春雨さんは俺を見ていて欲しい。春雨さんにまず覚えて欲しいのは自身の身を守る事だから、俺の動きをよく見て頭の中で自分を作り出して、動かすんだ。出来なかったらじっくり観察するだけでもいいから、よく見ててね。」

「は、はい!」

 そう言って俺達は動的ストレッチを終える。

 そして俺は神無月さんから10m程離れる。そこで俺は振り返り神無月さんを見据える。


「最初の構えは自分の動きやすい体勢で大丈夫だよ。防御の構えだと話は変わってくるけど、今は攻めだから、それはまた今度話すよ。」

 神無月さんは黙って頷き、重心を軽く下げるように腰を下げる。

 そして右足を後方に半歩ずらす。


「えーと、神無月さんの好きなタイミングでいいから…。」

 すると俺が言葉を言い切る前に神無月さんは全力のダッシュで距離を詰めてきた。俺は瞬時に意識を切り替えてその動きに対応する。俺も少しだけ腰を落とし、神無月さんの動きを把握しようとじっと見詰める。俺は両手を体の前に出して、攻撃に備える。

 すると最初に飛んできたのは首を狙った右フックだった。俺はそれを左に体をずらして、右手で神無月さんの腕に触れて軌道を逸らす。

 そこで神無月さんは立ち止まりもう一度右手での一撃を腹部に向けて放ってくる。俺はそれを左手で受け止めようとするが、神無月さんの攻撃に転じようとしている左手を見て、それをやめてもう一度左にずれながら、空を切る神無月さんの右手を捕まえようとする。

 そこで神無月さんは拳を繰り出した勢いのまま、俺の手から逃れようとして拳を左に振り切る。俺は体勢を崩したのかと思い距離を詰めようとするが、神無月さんはそのまま側転をする要領で俺から距離をとる。

 足を掴む事も考えたが、どのような動きがまだ可能なのか分からないので、リスキーな行動は避けた。

 そこで俺は指示を飛ばす。


「まず、大振りが多い。全ての一撃を重くしようとするから、攻撃が短調で直線的だ。軌道も読みやすく、対処が簡単にされてしまうぞ!それに顎を引く。出来るだけ相手から視線を切らない。側転のアイディアは良かったけど、その後の硬直も考えておけよ。」

 俺がそこまで言うと、神無月さんは黙って頷き、再び距離を詰めてくる。俺が言った事を瞬時に理解して修正してくる。こういった事が出来るのは神無月さんならではだろう。

(難しい注文でも、難なくこなしてきそうだ…。)

 俺はそんな事を思っている内に神無月さんはまず左ストレートを俺の目に目掛けて打ってくるが、俺は少し後退しながら右手で受け止めて払う。衝撃を弱めながら次の攻撃に備える。神無月さんは右手を俺の顎にアッパーするように放つが、これは視線と体捌きからフェイクと見抜く。

 そして俺はその手を左手で受け止める。案の定、力はあまり込められておらず簡単に受け止めて、その拳を握りしめて固定する。その間に神無月さんは俺の右側、つまり左手による大振りの一撃を俺の横顔に放っていた。神無月さん自身の体にギリギリまで隠してしなるように放った一撃は体格差があっても受け止める訳にはいかないので、俺は神無月さんの腕の長さを見極めて、上体をのけぞる形で間合いから逃れる。

 そして、勢い良く空を切る神無月さんの左手。

 しかしそこで攻撃は終わらない。そのまま神無月さんは回転をするようにして、左足を軸にして右足による回し蹴りを放ってきた。俺は神無月さんの右手を掴んでいるので引っ張られるように前に体重を持っていかれる。俺はそこで「おぉ」と思わず感嘆の声をあげる。足と手では間合いは違う。手を掴んでいる状態ではしゃがむか手を離す以外に回避手段はない。威力を限りなく殺す手段はあったが、今は手を掴んでいるという好機なので、それを利用する。俺は回転している逆の向きに少しだけ力を入れて手を引っ張る。つまり、神無月さんは今時計回りに回し蹴りをしているので、反時計回りに俺は力を加える。それで俺には蹴りは届かない。

 しかし、それならばと神無月さんは俺が引っ張る勢いを利用して反時計回りに回し蹴りを試みる。今度は右足を戻して、軸にして左足を軸にして蹴りを放とうとするが、俺はそこまで自由にさせるつもりはないので、俺の左足で神無月さんの右足を払う。

 そんな事をすれば神無月さんが地面についている足はなくなるので、一気に体勢を崩してしまう。俺はすかさず神無月さんの手を離して、地面に倒れる前に俺の左手を神無月さんの左脇下に滑り込ませて支える。

 そして衝撃を完全に俺が殺した事で、神無月さんの両足が難なく地面につき、自身で立ち上がる。

 そこで再び俺は指示を飛ばす。


「まず、指示を的確に修正してきたのはよかった。それと勢いをつけて蹴りに転じるのもよかった。だが、一度相手に掴まれて利用されてしまうのなら、ふりほどく事を優先しろ。

 それと、まだまだ単調だ。拳の握り方や、俺への視線、体勢から、フェイクだと直ぐに見分けがつく。

 一度の攻防で闘いを決める必要はない。焦ると直ぐに綻びが生じる。」

「…そうね。それにあなたの防御、回避手段は全てあまり力を必要としない方法で行われているのが分かるわ。私や春雨さんといった、女性でも技術さえあれば真似出来るような事でしかあなたは対処していない。あなたやっぱり戦闘技術だけは尊敬に値するわね。」

「そう?ありがとう。でも神無月さんも頑張らないと…いつまで経っても俺から攻撃には転じられないな。」

「そうね…。一回くらいはあなたに手を出させたいわね。」

 そう言って再び俺に接近してくる神無月さん。

 ずっと俺を殺す勢いで睨んできているので少し怖かったが、こんなやりとりを俺達は15分程繰り返した。

 その間、俺は一度も神無月さんに手を出す事はないまま、神無月さんの体力の限界を迎えることになった……。

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