7-6 打ち砕かれた心
「ちょ、ちょっと…新海君!?なんで神無月さんとイチャイチャしてるの!?」
「は、はいぃぃ?」
俺は背後から唐突にそんな事を怒気を含まれた声で言われて驚いてしまった。
話し掛けてきたのは春雨さんだったが、どこをどう見たらそういった解釈になるのか少し気になったりしたが、とりあえず否定をしておく。
そうしないと神無月さんにまた殴られるから。
「いや、イチャイチャなんかしてないよ?神無月さんは確かに可愛いし、なんか見てるだけでも少し興奮するけど…ハッ…。」
俺はそこで咄嗟に口を両手で押さえる。
俺はなぜかそんな事を口走っていたので、とりあえず弁明しようと神無月さんをチラリと横目で見るが、耳を少し赤くしており、黙って俺に背を向けていた。
(聞こえなかったのか?と、とりあえず安心だ…。)
俺はそんな事を思いつつ、春雨さんにもバッチリ聞こえてしまっていた事と、神無月さんは耳がいい事を忘れていた俺は、まったく頭が回っていなかった。
「か、かわわわ…!こ、こここここ興奮!?」
春雨さんは早口でそんな事を言いつつ、上体を少しだけのけぞらせる。
「え、あ、いや、違うんだ!そう、今のは違うんだよ。ちょっと焦っちゃって変な事を口走っただけだから!?」
「えぇ!?今のはちょっと無理がないですか?完全に本音でしたよね!?」
(いや、春雨さんにそんな事を言われても…。昨日、酷い言い間違いをしているような?)
「というか、なんでそんなに春雨さんは怒ってるの?」
「な、なんでって…私が頑張っている時にイチャイチャされたら怒りますよ!」
「た、確かに!で、でも、イチャイチャなんかしてないから!というかそれさっきも言ったよね!?」
春雨さんはそこで少しだけ間をとり、手を口の前でもじもじさせて言った。
「だ、だって…神無月さんと新海君…さっき抱き合ってませんでした?」
「グフッ…。」
そこで神無月さんが噎せた。どうやら俺達の会話はしっかり聴いているらしい。
「ほ、ほらっ!神無月さんも思い当たる節があったから今噎せたんですよね!?」
「ち、違うわ…。あれはその…そう事故よ。」
神無月さんは立ち上がり、頬を少し紅潮させつつ、反論していた。神無月さんも少し焦っているのか、真顔を取り繕っているが、普段の冷静さはなかった。
「じゃ、じゃあなんでそんなに顔赤くしてるんですか?やっぱり嬉しかったんじゃないですか!?」
「ち、違うわ!こんな人でもあんな至近距離まで接近してきたら恥ずかしいのも当然よ!」
神無月さんは俺に指を指しながらそう言った。
(え、こんな人は酷くない?神無月さん…。なにかもっとマシな言い方はなかったの?)
「し、新海君はいい人です!こんな人って言わないであげてください!でも、私は新海君にも怒ってますからね!?」
「いいえ、春雨さんよく聴いて。新海君は普段優しいふりをしているけれど、本当は女の子大好き変態野郎なのよ?私はあまり本人に直接言ってないけど、よく私はじろじろと見詰められる事が多いわ。
本人はバレていないつもりなのだけれど、視線でバレてるとも知らずに、表情は一丁前に隠しているのよ?」
(え、ちょっと待て。普段じろじろ見てるのバレてるの!?まじかよ…。てか、神無月さん俺への評価低すぎじゃない?)
「た、確かに。私もよくじろじろ見られてた気がします…。今日着替えを覗かれた時だって、普通は直ぐに部屋を出ていけばいいのに、隅から隅までじっくり見られました…。
あれ?もしかして、新海君って変態野郎なんですか!?」
「えぇそうね。この人よくおっぱいを凝視しているわ。奈々華先輩とかね。とりあえず大きければいいみたいね。」
早口で口論を繰り返していたが、途中からは息がだんだんと合い始める2人。
そして神無月さんの一言で春雨さんはショックを受けたのか目を若干潤わせ、胸を手で覆い隠す様にしていた。
「ひぅっ…。し、新海君サイテーです。女の敵です…。私の胸がないからって、そこに視線が来てなかったのも、それが原因なんですね?」
「どうなの?」「どうなんですか?」
2人は同時にそう言って俺に詰め寄ってくる。
俺はそんな2人に詰め寄られて俺の頭はほぼ真っ白にる。なぜか知らない間に神無月さんも俺の敵に回っているが、とりあえず俺の頭に残った選択肢をとる事にした。
そう、土下座だ。とりあえず謝る事しか俺は思いつかなかったからだ。
俺は一瞬で土下座の体勢になり、頭を体育館の床に擦り付ける。五体投地は何度かした事があるが、恐らく完璧な姿勢だろう。
「すいませんでしたぁぁぁぁぁ!!2人ともめちゃくちゃ可愛くて、いっっっつも見てしまうんです!健全な男子高校生なら普通なんです!
神無月さんはその綺麗な漆黒の黒髪とか、制服のスカートやハーフパンツから伸びるスラっとした生足とか…もう見てしまうんです!その吸い込まれるような強い瞳とか、エッチな唇を見てたら興奮するんです!
春雨さんはおっぱいはないけど、十分女性の色気を持ってるし、髪もサラサラで撫でたくなるし、その整って可愛い顔で頑張ってる姿を見ると守ってあげたくなると言うか…もうとりあえず2人とも可愛くて仕方ないです!はい!
すいませんでしたぁぁぁぁ!!!」
俺はそこで洗いざらい本心をぶちまけた。俺はなぜそんな事を言ったのかは未だに分からないが、その時の俺は冷静ではなかった故に意味の分からない事を考えていたのだろう。
すると約20秒程流れる沈黙。
その間にも俺は土下座を続ける。そして…2人から言葉が淡々と放たれた。
「あの…褒められるのはとっても嬉しいんですけど…その…。」
「「新海君って、変態な(んだ)(の)ね…。」」
そう言い残して俺から遠ざかる2つの足音。俺は2人に言われた言葉にショックを受け、5分程、そのまま体勢から動く事が出来なかった……。




