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素晴らしい学校生活を送りたくて!異能で友達って増えます?  作者: てりぃ
第7章 異能強化に励みましょう!
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7-5 異能訓練③

新海(しんかい)君。これ、少しだけヒビが入りました!」

 春雨(はるさめ)さんは元気良くそう告げて、俺にガラス玉を乗せた手を差し出してきた。少しだけヒビが入っているガラス玉。どうやら物体干渉力は少しだけだがあるようだ。

 それを見て俺は異能制御の為にはとりあえず慣れさせる事を目標としているので、異能を続けて使用してもらう事にした。


「……春雨さん、今のずっと続けれるかな?」

「え?ずっとですか?」

「うん。今日の異能の使用限界ギリギリまで練習して欲しいんだ。あ、でも、倦怠感や吐き気、目眩とかの症状が少しでも出たら休んでいいから。出来そうかな?」

「えーと、とりあえずやってみます!」

 春雨さんはそう勢いよく返事をし、早速練習に取り組み始めた。

 そこで俺は春雨さんと神無月(かんなづき)さんの様子を交互に見ていた。時間にして約1時間程。

 そして先に限界が来たのは神無月さんだった。

 それは当然の結果だった。神無月さんの方が春雨さんより異能を酷使しているからだ。

 簡単に言うと、春雨さんはジョギングをしているのに対して、神無月さんは全力疾走をしているくらいの差が出る。この2つのどららが先に限界を迎えるのは言うまでもないだろう。神無月さんは俺の携帯を操作して、動画を止める。

 そして、疲れた様子でその場に座り込む。

 俺はそんな神無月さんに飲み物とタオルを持って近寄る。

 そこで神無月さんをよく見ると、大量に汗をかいていた。綺麗な首筋を流れる汗や、すらりと伸びた足から滴る汗。汗が染み込み、服が体に少し張り付いていた。ピンク色のTシャツだったため、透けて下着が見えているという事はなかったが、俺はそんな神無月さんから放たれる色香に惑わされそうになる。

 神無月さんは練習を頑張った結果こうなっている。そんな彼女相手に下心を見せるわけにはいかない。そう思い、俺は表情を固く繕う。


「お疲れ様。はい、これタオルと飲み物。」

「…ありがとう。意外と気が効くのね。」

 俺は神無月さんが持ってきていた水筒とタオルを渡す。神無月さんは左脚の膝を立てて、右足を伸ばしてリラックスしていた。神無月さんは、そのみずみずしい唇に水筒を口付けて水分補給をする。俺は思わず息を呑んでその姿をまじまじと見つめる。そんな俺の視線に神無月さんは当然気づき、黙って俺を見詰め返して来る。


「…何?そんなに見ないでくれるかしら?」

「え?…あ、あぁ。すまん。それで何か掴めた?」

「全然。」

 神無月さんはそう言って首を横に振る。


「そうか…。まぁ、でも何も掴めなくても異能を酷使する事を続けるのは体力が増えるから、いい事なんだがな。」

「そう。それであなた…この練習の意図をそろそろ話してくれないかしら?あと、途中でガラス玉を動かせなくなったりしたのだけれど、それはあなたの仕業よね?」

 目を細めて、「ゴゴゴ」と聞こえてきそうな圧を掛けてくる神無月さん。そういえば俺はまだ意図を話していなかった。

 そして、どうやらガラス玉の小細工もバレていたようだ。流石に何回も同じ事を繰り返すとバレる。俺はとりあえず神無月さんに練習の意図を説明する事にした。


「これは俺が昔やってた練習方法でもあるんだよ。俺は実際にこれで結果を出した。だから神無月さんにも試してみたんだ。

 これはそもそも複数同時に干渉力を鍛える事が出来るし、異能の事をしっかり制御しようとして、より集中が出来る。コツを掴めなくても体力の増加が見込めて、短時間で異能を吐き出すから、効率もいいんだ。

 ガラス玉を振動させたのは俺の能力で干渉して、制御権を奪う為に渡したんだ。神無月さんの干渉力を簡単に把握出来る様にね。」

「ガラス玉で制御権を奪う為って…あなたあの距離から制御してたの!?」

「あぁ、射程距離ギリギリくらいだけどな。」

 そこで神無月さんは少し驚いたように声を張り上げていた。

 そして、疑問に思った事があったのか神無月さんは俺に質問をしてくる。


「…新海君、あなたの異能は何なの?」

「これは教えられない。いや、教えない方がいい。そう判断した。神無月さんは対人戦闘も視野に入れているだろ?それなら少ない情報から相手の異能を予測して、対策を練るのも練習の1つだ。だから俺の異能を教えず、自分で考えて当ててみて欲しい。」

「分かったわ…。」

 神無月さんはそう言って立ち上がる。俺は最低でもあと30分は休ませるつもりでいたので、神無月さんを呼び止める。


「どうしたの?まだ休んでないと…。」

「いえ、もう十分よ。早く格闘戦術を教えてくれないかしら?私、剣術しかまともにやったことないわよ?」

 そう言って神無月さんは振り向いて俺から離れようとする。俺はそこで神無月さんの右手のひらを掴む。その瞬間、少しビクッと体を跳ねさせる神無月さん。


「ダメだ。最低30分は絶対に休んでもらう。今日は部活でトレーニングもしてるし、異能も酷使した。神無月さんは強がってるけど、足とか既に限界だろ?」

「そ、そんな事はないわ…。早くしないと時間がもったいないわ。」

 目を泳がせ、早口でそんな事を言う神無月さん。どうやら彼女は焦っているみたいだ。俺はそんな神無月さんの右手を俺の方に少しだけ力を入れて引っ張る。

 すると神無月さんは簡単に体勢を崩して、俺に正面からもたれかかる。俺は左手で神無月さんの手を掴んでいるので、右手を背中に回して神無月さんを支える。

 その瞬間、神無月さんから汗をかいているにもかかわらず甘酸っぱい、いい匂いがふわりと俺の鼻腔をくすぐる。そんな事に俺はドキドキしつつも喋りだす。


「ほ、ほらっ、こんなに簡単にバランスを崩す。足も千鳥足みたいだぞ?」

「う、うるさい!ほら、早く離して。」

 そうして抱き合う状態だった俺達だが、神無月さんが俺の体に手を当てて直ぐに距離をとる。神無月さんはうろたえ、その顔は少しだけ赤くなっていた。

 初めて見るそんな顔に俺も少し顔が熱くなる。

 そして、神無月さんは俺に背を向けて座る。両脚を立てて踵を揃え、両腕は両膝を抱え込むような形で座っていた。


「…なんか屈辱だわ。」

「な、なんでだよ。」

「…いいわ、ここは大人しく休んでおくわ。30分でしょ?」

「違う。50分は休んでもらう。」

 俺はそう言って、俺が持ってきていた小型のクーラーボックスの中身を取りに行く。これは昨日の深夜にかずさんが持ってきてくれたものだ。服の受け渡しのついでに貰ったのだが、今日使えると思い持ってきていたのだ。

(忙しい中ありがたいものだ。)

 俺はそんな事を思いつつ。神無月さんのところに戻る。神無月さんは顔だけをこちらに向けて話す。


「時間、増えてるじゃない。さっきは30分って…。」

「さっきはな、いざ神無月さんを引っ張ってみたらもっと休ませないとって分かったんだよ。ほれ、これでも飲んで体力回復しとけ。」

 俺はそう言ってエネルギー補給が簡単に出来るゼリー状の飲み物を神無月さんに手渡す。神無月さんは大人しくそれを受け取る。


「…ありがと。」

「ちゃんと休んでからだからな。そんな状態で練習しても意味がない。」

「わ、わかってるわよ!」

 そう言って神無月さんは蓋を外し、ちゅうちゅうと飲み物を飲んでいた。

 そんな俺達は気付いていなかった。1人の少女がこちらを鬼の形相で睨んでいた事に……。

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