表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
素晴らしい学校生活を送りたくて!異能で友達って増えます?  作者: てりぃ
第7章 異能強化に励みましょう!
49/216

7-3 異能訓練①

 俺は2人を待たせるのも悪いと思い、なるべく早く着替える事にする。今日はもともと着替えを2着持ってきていたので、部活で着なかった方のTシャツとハーフパンツに身を包む。そこで俺はロッカーを閉めて更衣室を出る。

 俺は足早に体育館のメインホールに向かい、2人に声を掛けようとして、俺の視界に春雨(はるさめ)さんが入った瞬間に、先程の光景をフラッシュバックする様に思い出し、足がピタリと硬直する様に止まる。

 それは春雨さんも同じだったようで、俺より数瞬遅れて固まっていた。

 俺はそこでずっと立ち止まる訳にはいかないので、足を踏み出す。春雨さんは俯いてしまい表情は分からないが、耳が紅潮しており、今にも頭から湯気が立ち込めてきそうな程だった。

 そこで俺は神無月(かんなづき)さんに話し掛けられる。


「…早くしてくれないかしら?」

「え?あ、あぁ、すまん。」

 俺はそんな一言で冷静になる事が出来た。春雨さんも遊びに来ている訳ではないので、少し赤らめた顔を上げ、俺を見てくる。

 俺は意識しない様に雑念を頭の片隅に追いやり、ゴクリと息を呑んだ後に話を始める。


「ま、まず、神無月さんの異能についてなんだけど…空間干渉力が低いのはまずい。神無月さんの異能は応用力がとても高い部類のはずだ。長所を自ら捨てるのはもったいないから、そこを重点的に伸ばしていこう。

 春雨さんは異能の制御がメインになってくるから、いろいろと試して行きたいかな。だから時間がかかるんだけど…とりあえず先に神無月さんを見ていていいかな?」

 俺はそう春雨さんに訊くと、春雨さんは肯定する様に黙って頷く。俺はそれを見て春雨さんに俺の左手を差し出す。


「えーと、待ってる間はとりあえず異能の制御練習をしてて…。」

 俺は以前、驚く程簡単に手を繋いでいたのだが、今は違う。春雨さんを女の子として意識してしまい、彼女の目を見て話す事は、今は出来そうになかった。

 そして春雨さんは少し戸惑いつつも俺の手を両手で包み込むように握ってくる。

 春雨さんの手はほんのり温かく、プニプニしてとても柔らかい。俺はそんな雑念を振り払うように意識を切り替える。

 そろそろ本題を進めないと神無月さんに殺されそうだ。いや冗談抜きで。


「えーと、神無月さんの異能…訊いてもいいかな?」

「…えぇ、これは仕方のない事だから。私の異能は振動(バイブレーション)。把握している限りだと、振動している物体の制御や、静止している物体を少しだけ振動させる事が出来るわ。これは物体の干渉であって、原子レベルまでの細かな操作は出来ないわ。極める事が出来たら、動かす事も可能かもね。」

「なるほど…。俺の予想してた異能で大体あってたな。射程距離はどれくらいなの?」

 そこまで言って無表情だった神無月さんの眉が顰められる。あまり自信がないのか、珍しく語気を弱めていた。


「…そうね、物体干渉力は私の手のひらから1m程といったところかしら。空間干渉力は10cm程ね。人体干渉力に関しては…ほぼゼロだと思うわ…。」

「そうか、人体干渉力が高かったら近距離の肉弾戦に持ち込めるんだけど…、まぁ仕方ないね。これから高めていくしかないよ。」

「そうね…。干渉力に関しては地道に上げていくしかないけど、私近距離戦闘のスキルも上げていきたいの。あなた、得意でしょ?毎週異能が尽きたら付き合ってくれないかしら?」

 神無月さんはどうやら異能以外の事も俺から教わりたいと思っていたらしい。俺はその事について少し悩む様子を見せるが、神無月さんの現時点の異能を使う戦闘スタイルからすると、近接戦闘スキルの向上も必須と考え、それを了承する事にした。


「分かった。でも、最初は神無月さんも素手で戦って欲しい。ある程度までいったら、剣を持っていいから。」

「それはどれくらいかしら?」

「うーん…そうだなぁ…。最低半年くらい、かな?」

 そこで俺の話を聞いた神無月さんの表情が曇る。

 しかし、神無月さんは直ぐに気持ちを切り替えたのか、コクリと黙って頷く。頭の回転が早く、直ぐに冷静な判断が出来る所は神無月さんのいいところだ。

 俺はそう評価し、神無月さんに指示を出す。


「神無月さん、別に剣じゃなくても振動させる事が出来るよね?」

「えぇ、可能だわ。構造をある程度把握出来ていて、多重構造になっていないものなら。」

「分かった。」

 俺はそう言われて、俺の右ポケットから直径約5cmのガラス玉取り出して、それを神無月さんに渡す。

 神無月さんは俺から渡されたガラス玉を不思議そうにまじましと見ていた。恐らく「なぜガラス玉?」と、そんな事を思っているのだろう。とりあえず俺は意図を話さず、指示だけする。


「このガラス玉を振動させながら、音を制御してもらう。」

 俺はそこで神無月さんに対し、ハードルの高い事を要求した。当然それを聞いた神無月さんからは否定的な声が上がる。


「は?そんなの無理に決まってるじゃない?どうゆう事か説明してくれる?」

 そう、今の神無月さんには到底不可能な事を俺は指示した。

 それでもこれには訳があった。

 異能は開発マニュアルの様なそれに沿って練習を行うだけで、強度が上がるみたいなものは存在しない。異能は種類が同じなものがあっても、感じ方や、扱い方は個人個人で千差万別。

 しかし、ある一点のみは全ての異能使いに対して共通して言える事がある。それは、扱い方を熟知してしまえば、そこからは習熟が早いと言う事。

 そう、要するに慣れる事だ。誰しもどんな事も最初は慣れておらず上手く出来るなんて事は決してない。これは異能にも当てはまる事なので、感覚を掴んで慣れさえすればどうとでもなるのだ。

 そして異能は複数同時に使用し、一気に集中するほうが感覚が得られやすい。それは俺が実際そうだったからだ。俺の場合は物体干渉力と人体干渉力を同時に鍛える事で感覚を掴んだ。それが神無月さんにも当てはまる保証はないが、とりあえず試してみない事には始まらない。

 そこで神無月さんは俺をじっと見詰めて、説明を待っているようだ。俺は少し意地悪をすると決めており、この練習の意図を話すのは少し後にするつもりだった。なので神無月さんには悪いがそのまま練習してもらう事にする。


「まぁまぁ、とりあえず騙されたと思ってやってみて。」

 神無月さんは依然俺を疑惑の目で凝視しつつも、ガラス玉を振動させ始めた。俺は携帯を開いて昨日ダウンロードしておいた、3時間程音が出続ける動画を再生し、神無月さんに渡す。

 そして神無月さんの手のひらの上で微細に動くガラス玉。なぜガラス玉を振動させているのかも意味はあったのだが、それについても話す事はなく1人で練習させる。

 俺はそこで意識を神無月さんから春雨さんに向ける。春雨さんは俺と神無月さんが話している間はしっかりと異能を制御出来ていたらしく、一度も暴走する事はなかった。

 そして俺は春雨さんの方を見ると、春雨さんは耳をほんのり赤めながら俯いていた。俺はそんな春雨さんに声を掛ける。


「春雨さん、とりあえず神無月さんの邪魔にならない様に、少し離れたいんだけど…。」

「ひゃひゃい!わ、わ、わかりました!」

(噛んだ…。)

 前々から思っていたのだが、春雨さんは焦ったりすると早口になり、よく噛む。俺はその事を口に出す事はなかったが、春雨さんの手を引いて神無月さんから距離を取る様に少しだけ離れる。

 そこで俺は一度春雨さんの手を離して、話を始める。


「えーと、春雨さんはとりあえず異能で出来る事を把握しておきたいんだ。でもその前に1つ確認しておきたい事があるんだ。」

 そう、俺は1つ不安視していた事がある。春雨さんの異能は既に干渉力が高く、自在に使いこなせるようになると、本人の努力次第では名前持ち(ネームド)に慣れる程のポテンシャルはある。

 なので、春雨さんの事が暗部の連中に知れ渡っていたら少しまずい事になるのだ。なので俺はその対策として、春雨さんにも格闘戦術や、異能を使った自衛術を身につけて欲しかった。

 しかし、春雨さんはもしかすると人を傷つける事は出来ないかもしれない。過去のトラウマを引きずり、他人に対して異能で攻撃するなんて、以ての外だ。

 なので、俺は春雨さんの意思を尊重するべく、それについて訊いてみる事にしたのだった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ