1-3 本格的な学校生活の始動
コンビニ強盗(笑)の1件から、俺は直ぐに寮への帰路についていた。やはり学校近辺なだけあり、同じ学校の生徒ともすれ違う事があったが、声を掛けるのは俺には難しい事だった。
(うん、明日また頑張ろう……。また明日、うん……。)
俺は結論を先送りにした後、寮のロビーに着きエレベーターに乗る。寮は学年別に分かれており、更に男女でも別れている。つまり6棟もあり、それが全て11階建てになっている。全寮制ならこれくらいが普通なのだろうか?と思いつつ、10階でエレベーターからおりて、自室の1003号室に入った。俺はすぐにベットに横になり、今後の学校生活の為に一旦思考を整理し、予定を立てることにした。
まず、第1目標は友達を作り平穏で素晴らしい学校生活を送る事だ。これには少し理由がある。今まで、俺は自由な時間は少ししかなかった。それに友達と呼べる人はいなかった…。そして俺は平穏とは程遠い者達の中生きていた。俺は嫌気がさし、逃げてきた臆病者というわけだ。ハァ…。
そして第2目標なんだが、自分で言うのも恥ずかしいが、か、か、彼女を作りたいと思っている。はい、そこの無理だと思った人、手を上げろ。
そう、俺は1度だけ恋をしたことがある。しかしそれも叶うことはなかった。まぁそんなわけだ。優先度は低いが俺もそんな甘酸っぱい青春を送りたいわけだ。そのためにはまず人と交流して、友達作りからだな。
(…そういえば、俺の隣の住人は流石に授業が始まったら起きてる…よな?今日の説明の時も寝てたしなぁ…。うぅ、なんか考えるだけ無駄な気がしてきた…。てか、何か大事な事を忘れてる気がする。)
俺は自分の頭の中で、はっきりと分からないモヤモヤしたものを感じていた。そして寝返りをうち、壁に頭をぶつけたことによる衝撃で俺は思いだした。
「あ、楓…謝りにいかなきゃ。」
―――――――――――――――――――――――――――
俺は楓の連絡先も部屋番号も知らなかったので、女子寮に行き、ロビーから楓に連絡してもらった。とりあえず夜ご飯を奢るという事で楓に許してもらったが、女の子がファミレスで満足するのはどうかと俺は思ったりしたが、楓の表情を見る限りとても嬉しそうに笑っているのでよしとしよう。うん。
(安上がりだなこいつ…。)
俺はそんな事を思いつつ、楓の顔を眺めていた。そんなこともあり、俺の入学初日は終わったのだった……。
―――――――――――――――――――――――――――
次の日の朝。俺は自身の部屋を出る前に、俺の胃は不調を訴えて続けていた。そうなぜなら、友達が出来るか不安でしかないからだ……。
(胃がキリキリなってるよ……。)
何故ここまで焦っているのかは俺自身すらよく分かっていなかったが、スタートダッシュが送れた今、センカンドチャンスも無駄には出来ない。そう心に決め、部屋を出たのであった……。
―――――――――――――――――――――――――――
教室に着くと既に8割ほどのクラスメイトが登校を完了し、席についていたり、雑談をしていた。
(やはりもうグループ分けは完了しているか。)
グループメンバーはぱっと見渡した感じだと、既に固定化されているようだった。昨日も言ったが俺には突撃する勇気はない。というわけで1人の奴に声を掛けようとする。そして俺は気づいた。
(あれ?俺の横の住人もう来てるし、起きてんじゃん、やったぜ!)
そこで俺は足早に自分の席に着き、声を掛けることにした。
「な、なぁ……。」
(あ、また、名前確認するの忘れてタァァァァ。学習しろよ俺!)
俺の隣の住人は、キョロキョロと周りを見渡して自身に指を指しながら、答えてくれた。
「僕?に、用かな?え?僕に声を掛けたんだよね?」
「あ、あぁ、そうだ。俺は新海隼人、よろしくな。 悪いんだが、名前…教えてくれないか?」
そして俺はそいつをよく見ると気がついたことがある。
(こいつ、寝癖と隈やべぇな。なんだ、顔は整ってるのに、残念イケメンタイプか…?)
そいつは先程まで読んでいた本を閉じ、机の上に置いて答えてくれた。
「いいよ、名前くらい。藤堂竜星だよ。よろしくね?新海…君でいいかな?隣だし僕も仲良くしていきたいよ。」
そう言って少しだけ微笑む。
「お、おう、よろしくな、てか、さっきまで読んでいた本ってなんの本だ?俺が知らないようなタイプの本だったんだが?」
「ん?あぁ、これはよくあるラノベだよ、ほら、主人公が死んぢゃって、スマホを異世界に持っていくけど、爆発するやつ。僕アニメやゲームとかが大好きなんだよね。いわゆる、オタクってやつ。」
藤堂は照れ臭そうにしながら本の表紙を見せて、説明してくれた。
「そ、そうなのか、面白そうだな……?」
(や、やべぇ、俺はそっち方面は全然知らないんだよ。ど、どうしよう、こうゆうやつと話したことないぞ、まずいまずいまずい…。)
「んー?まぁ、よくわから…あ、先生来た。じゃあまた後でだね。」
「お、おう…。」
こうして俺の友達作りはうまくいった?のであった……。
―――――――――――――――――――――――――――
今日は授業1日目ということもあり、全ての授業がオリエンテーションで構成されていた。担任があーだこうだ言っていたがもう既に半分ほど忘れた。大切な事はまた後で確認しよう。うん。
そこで1つわかったことがある。藤堂竜星、オメーはダメだ。結構いい奴だったから俺はとても嬉しかった。趣味は全然違ったがそれは何とでもなるし、俺が合わせればいいだけだった。しかし……。
(なんで全部の授業寝てるの?えぇ?こいつやばいよ。俺一気に不安になってきたよ。でも、俺まだこいつとしか話せないし、俺の一筋の希望なんだからしっかりしてくれよ!)
そんな俺の葛藤を誰も知る事はなくお昼になり、ほとんどのクラスメイトがご飯を食べる為に教室を出ていった。教室で弁当を食べている奴もいたが俺は食堂に行かねばならぬ。俺は藤堂を起こそうとして声を掛ける前に視線に気づく。
(神無月さんだ。今、目があった気がする。いや、今のは確実に目があったな。警戒されているか。)
そんなことを思いつつ、藤堂を揺すって起こすことにした。
「おい、藤堂、もう飯の時間だぞ?起きないのか?」
「んん…え?もうそんな時間?」
藤堂はそう言って未だ眠気に誘われて続けている目を擦りながら上体を起こす。
「あ、あぁ、お前寝過ぎだろ、結局朝から一回も起きなかったじゃん。」
「うーん、どうしても眠くって…あ、新海君もお昼は食堂?」
「あぁ、一緒にどうかなって思ってお前を待ってたんだ、結局起こすまで起きなかったけどな。」
「あはは、ごめん、じゃあ行こうよ、僕お腹空いたよ。」
「寝てただけなのにお腹は空くのな…。」
こうして俺達2人は、食堂に足を運ぶことにした……。