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4-3 作戦開始!

「そういえば、私1つ気になってたんだけど……。」

「ん?どうかしたか?」

 (かえで)はそこで何かを疑問に思ったのか、腕を組み、首を傾げていた。


「え…だって、ここって学校と随分離れてるよね?それなのに学校の近くのコンビニや、そうじゃない別の場所でも怪しい動きがあったじゃん?それってただのデコイだったのかなって…。」

 そう言われ俺も少し思索する。

 確かに俺達が今いる場所を(メイン)に襲撃するのなら、ここを調べるだけで十分だ。他の場所まで把握する必要は全くない。

 しかし実際には、ここと離れた場所まで何かしらの事件が起きていた。俺はその事を踏まえて話す。


「恐らく…ここ以外にも目的の場所があるんだろう。あっても1つか2つ。そんなに人を分散させられないだろうからな。それでも目的地を絞れない以上、軍の連中も広範囲の施設をカバーするのも大変だろうな。それも奴らの狙いだと、俺は思うけどな。」

「え?それってまずくない?」

「そうだな…少しまずいかもな。ここがデコイ…っていう可能性もゼロじゃない。だけどそうだとしても、小さな襲撃は必ず起きる。軍の連中を動揺、撹乱させる為にな。

 まぁ、それは他の場所でも言えるけどな。」

 俺は研究所のある方向を向き、目を細めながら見つめつつそう答える。

 そう、この襲撃は相手の戦力の全容がまだ俺達は分かっていない。意外にも小規模で俺達が参戦する間もなく終わるかもしれないし、ここらへん一帯が焦土と化す大事件に発展する可能性もあった。

 しかし、俺はここが主に襲撃場所となり、1番の被害が出ると予想していた。そしてそれにはいくつかの理由があった。それを楓に説明する。


「俺はここがメインの襲撃場所になると考えてる。まず、ここ以外よりも重要な施設が近辺にないからだ。

 国家が主導で運営する、俺達が通う学校もまぁまぁ重要だが、国家機密や異能の研究データなどが詰まった情報の塊であるこの施設に勝る場所はない。

 更に、相手は暗部の連中だ。金目にはあまり興味がないはずだ。奴らが何を企んでいるのかは分からないが、金目よりもデータのほうに確実に重点を置いているはず…。」

 俺は楓にそう説明し、もう一度確認をとる。


「陽動事件…それが行われた場所はそこまで重要な施設はなかったよな?」

「うん、確かそうだったはずだけど…。強いていうなら学校くらいかな?でも学校を襲う理由は、人質の確保と、多重プロテクトに守られた情報くらいだけだと思うけど…。」

 楓は右手の人差し指を顎に当てながらそう言った。


「人質の確保なら、他の場所でも可能だな…いち学生を人質にしても少し交渉力が弱いな。あと情報の件だが…奴らに知られてすらいない可能性もある。

 それにあそこを襲撃しても番人がいるからな…。とびっきり強力なのがな。」

「それって…東條(とうじょう)先生の事?」

「あぁ。あの人は現役を引退してもう7年になるが、全く衰えていない。今日その事を身をもって確認したからな。」

「え、それって大丈夫だったの?」

 楓は俺にそんな一言を掛けつつ、心配そうにこちらを見てきた。


「あぁ、全力で殴られそうになったけど、大丈夫だったよ…。」

「え、それって大丈夫って言えるの?」

「…言えないかもな…。」

 俺は目を逸らして明後日の方を向く。楓はジト目になりながら、呆れたようにため息を吐く。


「それとあともう1つ。今回私達って一般人なわけだけど、そこんとこ大丈夫なの?」

「あぁ、あのくそじじいに許可?みたいなものは貰ってる。でも事情を知らない奴が大半だから、基本的には隠密で行く。それに軍の動きに支障を出さないように動くのが1番だ。」

「了解。って、言ってもあんたが1番心配。なんだかんだ言っておきながら、すぐ正義感に駆られて突っ走っちゃうんだから…。全く…合わせるこっちの身にもなってよね?」

「へいへい。」

 プンスカ怒っていた楓に、俺はそんな適当な返事を返し、腕時計で時刻を確認する。すると丁度19時5分を回った。

 そこで俺は少し大きめのエンジン音が聞こえた気がした。俺は直ぐ様身を乗り出し、下の道路を見つめる。楓も俺に駆け寄ってきて一緒に覗き込む形をとる。

 辺りはすっかり暗くなっていた事と、ライトを消しながら走行している事が加味され、見え辛いものになっていたが、5台の特殊装甲車が通っていくのが辛うじて見えた。


「来た。楓、準備しろ。」

「うん、私はもうバッチリ。」

 楓はそう言って真剣な眼差しで俺を見つめてくる。


「分かった。奴らが突撃して、中に入って行くのを確認してから突入するぞ。」

 そう告げた俺だったが、再びエンジン音が聞こえ、下を見る。するとそこには大型バスが4台程、研究所に向かって走っていくのを確認した。


「おいおいマジかよ、少し数が多いぞ…。ここまで武装した連中が多いと厄介だな。暗部の奴らめ、今回は力を入れてるな。」

 そんな事をぼやいていた俺だったが、楓の緊迫したような声で呼ばれて、直ぐにそちらを向く。


「隼人!もう既に火の手が上がってる!多分、東西南北、全方向からの同時作戦だよ!」

「何!?それなら俺達も今すぐ行こう。」

(まずいな…少し予想していたよりも相手の数が多い。さらに名前持ち(ネームド)がこれに紛れているとなると、厄介だ。早くしないと間に合わない可能性も出てきたな。)

 軍の連中は大丈夫かと奮闘するであろう彼らの身の心配をしつつ、俺達は行動を起こす。俺は先程使用したガラスの玉を再び取り出し、右手で握った。そして楓に左手を差し出して手を繋ぐ。楓は左手を俺の肩に乗せ、俺に抱きつくような形で密着する。それでも今の俺には至高のものを堪能している余裕はなかった。


「ここからじゃアンチエアシステムもあるか分からないし、下から撃たれる可能性もある、その際に急旋回するから振り落とされるなよ!」

「分かってる!これ少し恥ずかしいんだから早くして!」

「へいへい。」

 そして屋上から俺達は足を踏み出し、再び宙を舞った。約500m程先の建物を目指して、少しずつ降下しながら高速で空中を移動していた。


「楓、大丈夫か?」

「うん、このくらいなら平気。隼人(はやと)こそ、腕に負担はかかってるでしょ?私重たくないよね?」

「あぁ全然大丈夫だ。」

 そんなやりとりをしながら、俺は上空から視線を落とし、下の状況を確認する。どうやら既存の警備では太刀打ち出来ていないようだ。数が数なので、物量作戦のゴリ押しで突破されているようだった。

 そして一際爆発が大きく見える場所もあった。あれは恐らく名前持ち(ネームド)だろう。それに爆発を主に扱い戦う敵に俺は心当たりがあった。そんな事を思いつつ、俺達には特に問題は起きる事なく、研究所の屋上に到着した。


「よっと、流石にこの距離は腕が疲れるな…。」

「お疲れ様。疲れてるとこ悪いけど、まずいわね、これ。」

「何がだ?」

 俺は少し疑問に持ち、楓は既に下の方を見ながら話し掛けていたので、一緒に下を覗く。俺はその光景を視界に収めると、確かにまずい事がわかった。


「6人1組のチームか…。」

「うん、しかも統率がしっかり取れてる。さっきゴリ押し作戦してたから、ただの脳筋かと思ってたけど、予想外れたね。…前方に2人、後方に2人、その真ん中に1人が連絡役で、1人が司令塔。完璧に仕上げてきたわね。それが複数もいるなんて、いつからこんな計画企ててきたの?」

「さぁな。でも、1つだけわかった事もある。」

「何?」

 楓は振り返って俺の方を見てくる。俺は考えを整理して楓に説明する。


「こんなに用意周到な連中なのに、物資の流れを簡単に掴ませたり、警備態勢の把握の際に陽動として能無しを使うのは少し変だ。」

「と、言うと?」

 俺は一呼吸置き、口を開く。


「もしかしたら、研究所データなどの他に、目的がある可能性が見えてきた。…軍の連中を誘い込むとかな…。」

 楓は俺のその言葉を聞き、目を見開く。しかし直ぐに引き締まった表情に戻る。


「ここは迅速に、かつ慎重にいく必要があるね。」

「あぁ、そうだな。」

 そこで俺達は眼前の孤立した部隊を見ていた。するとそこで俺の携帯に着信を知らせる振動を感じとる。俺は友人からの着信は全て|知らせない様にOFFにしてきた。つまり俺の登録していない人物からのメッセージということになる。俺が連絡先を登録しておらず、俺の携帯にメッセージを送る奴なんて、限られている。

 俺はそこで直ぐに携帯を開き、メッセージにさっと目を通す。そしてそこには、驚くべき事が書いてあった。


「隼人、どうせ現場にもう到着しているんだろ?なら今すぐ突入し、1人でも多くの侵入者を抹殺しろ。こちらは襲撃箇所が多すぎて手があまり回らない状態だ。一応襲撃箇所はリストアップしておいた。優秀な分析官に感謝しろ。」

 とのくそじじいからのメッセージだった。俺はとりあえず「貸し1つ」と送った。別に言われなくても対処するが、貸しを作っておくのは大切だ。特にあのじじいに関しては。俺は送られてきたリストに目を通しながら楓にも伝わる様に読み上げる。


未知物質(ダークマター)研究所に、未知物質(ダークマター)のバイオプラント、高度異能育成第一学校に、軍本部施設と、その周辺の支部だとっ?!?」

 俺は驚きのあまり、声を少しだけ張り上げてしまった。


「ちょ、隼人、しー!何大きい声出してるの?!バレちゃうでしょ!?」

 楓はそこで慌てて口の前に人差し指を立て、そう注意してきた。


「てか今言ったの、もしかして襲撃場所?」

「あぁそうだ…事態はかなりまずいことになってるみたいだ。早く取り掛かろう。」

「う、うん、わかった。」

 やたらと軍の対処が遅いと思っていたら、理由があったようだ。ポンコツになったと思ったがそうではないみたいで安心だ。とりあえず俺達に出来る事をするべく、先程見つけた部隊を始末する事にした。


「楓、何人いけそうだ?」

「気を引いてくれば2人、その後カバー出来るなら、4人。」

「分かった、俺が気を引く役をやろう。その後2人を()る。」

 そして俺達が目をつけた部隊は、既に3階にまで侵入してきていた。俺は壁にピッタリ張り付き、3階の窓から息を潜めながら覗いてみると、前方の2人はアサルトライフルのAK-47も持ち、後方の2人も同じくAK-47、連絡役は背中にAK-47を背負っており、司令塔はMAC10を手に持っていた。更に全員戦闘用の服で重装備であった。俺はどう突入するか考え、楓に伝える。


「まず俺が窓を割って気を引く。その後に俺の異能で強襲するから、背後から回って2人やってくれ。」

「わかった。ヘマしないでよね?」

 俺は黙ってうなずく。楓が俺から離れて定位置に着く。そして奴らが階段付近に近寄ったところで、俺が近くの窓ガラスを、ナイフを持った左手で、ナイフの柄を使い叩き割った。当然相手はそこの箇所に目線を飛ばして警戒する。そして俺は自身の異能を使い、割れた窓ガラス片を奴らに向けて飛ばした。どうやら少し被弾したらしく、悲鳴が漏れ出ていた。

 その瞬間に楓は身体強化(サイコブースト)を使い、奴らとの距離を一気に詰める。俺はそれに合わせるようにわざと大きな音を立てながら、一旦姿を表す。俺は直ぐに物陰に隠れて一度射線を切り、もう一度飛び出すように姿を表す。奴らは動揺したのか、司令塔以外は一瞬硬直していた。

 そしてその一瞬のさえあれば、この作戦は問題なく機能する。楓が俺から見て1番遠い2人をやってくれるからだ。司令塔のやつは俺の事を見ていたので、前方の仲間が常に射線に入るように接近した。そもそも俺との距離は3m程、一瞬で距離を詰め、前方の1人の銃を左手で掴み、後ろに押し込むようにして、トリガーを引かせず、右手のフォールディングナイフで、首元を撫でるように一閃。それと同時に楓が2人をやったらしく、勢いよく飛んでいく敵の姿が視界の端で捉えた。

 そして俺はすかさず殺した1人を肉壁にして、司令塔からの射線切りつつ、殺した奴の銃を利用し、隣の敵の胴体に向けて発砲し、10発程かけて撃ち殺した。

(そしてMAC10では完全な装備に身を包んだ大人を貫通させる事は出来ない。)

 俺はそう思いつつ、俺は司令塔の頭を狙い、射殺した。予定では楓が4人だったが、問題ないだろう。

 しかし統率はしっかり取れていたが、瞬間的な判断力はなかったみたいだ。そこで残りの連絡役はあまりの瞬間的な出来事に腰を抜かしていたので、連絡役の持っていた通信機を壊し、始末する事にした。その時に俺は、楓の被っていた帽子がない事に気づく。多分急接近した際に落としてしまったのだろう。

 そして楓が拳を振りかぶった時、連絡役はこう言い残した。


「そ、その髪は!!き、聞いた事があるぞっ!さ、最近、軍の名前持ち(ネームド)が軍を辞めたって。 た、確か名前は桃色悪魔(ピンクのあくま)!!」

 敵はそこまで言い、楓に心臓部を強打され、即死した……。

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