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4-1 崩壊の音色

 寮の自室に到着していた俺は、食事を作り、既に夜ご飯を食べ終わっていた。今はお風呂を沸かしている間に俺はベットの上で横になり、携帯でバドミントンの事について調べていた。それは自分のあまりの下手さに、少しの焦りを覚えていたからだった。

 その事についてどうやら軽く調べてみると、フォームの乱れや振る際の力みが問題になる事が多いようだ。俺はこの事に関しては問題ないと思い、他の理由を探す。そうすると単純に経験不足などによる、球の軌道を予測出来ていなかったり、スピード感を掴めていないのが主な問題になっていると記事には書かれていた。

 バドミントンをやった事も見た事も数える程しかない俺には慣れる事は少し難しいが、原因は大体把握出来たので、あとは反復練習あるのみだ。そんな事を考えていると自然と口角が吊り上がっている事に気づき、俺の心の中で思っていた事に気づかされる。

(なるほど。よっぽど楽しかったんだな、バドミントンが…。)

 そんな事を思いつつ、お風呂が沸いた事を知らせてくれる電子音が鳴った。俺は体をゆっくりと起こし服を脱ぐ。そこでふと思い出したように、俺は藤堂(とうどう)にメッセージを送る。


「今日はあんまし眠れてなかったみたいだけど、今日はしっかり寝ておけよ?おやすみ。」

 俺はそんなメッセージを送ったのだが、お風呂から上がった後も、寝る前にも確認したのだが、そのメッセージに既読がつく事はなかった……。


―――――――――――――――――――――――――――


 俺は今、普段通りに登校していた。少し藤堂の事が不安だったのだが、早く寝てしまった可能性を考え、あまり重要視してはいなかった。

 しかし、ある程度の心配はしていた。それは昨日の様子が少し変であった事からきていたのだが、その事は本人は上手く隠しているつもりだったようだが、俺は気づいていた。俺はその事に気付いていながらも踏み込む事が出来なかった。そんな俺は自分自身、恥ずかしいと思いつつ、後悔していた。そして俺は制服の内ポケットにいれていた携帯が振動し、着信が届いたのを感じとった。

 徐に携帯を取り出すと、それは藤堂からのメッセージだった。俺はそのメッセージに目を通すと、目を見開き、一気に心拍数が上がるのを感じる。「ドッドッドッ」と早いリズムで高鳴る鼓動。俺は少し胸が苦しくなり、思わず右手で胸を抑え込む。特別暑い訳ではないのに、汗がじわじわと溢れてくる。

(俺はまた逆戻りしてしまうのか?……嫌だっ!そんなのはもう嫌だっ!俺はもう逃げないって決めたのだから!)

 俺は一度深呼吸をし、呼吸を整える。いつの間にか荒くなっていた呼吸も、直ぐに正常に戻った。俺は恐ろしい速さで冷静になっていく事に内心舌打ちをする。そして俺はとりあえず(かえで)に連絡を取る。

(あいつとの約束だしな。)

 そんな楓と藤堂の顔を脳裏によぎらせながら、俺は普段通りに歩き始めた……。


―――――――――――――――――――――――――――


 4限目の終了を告げるチャイムが鳴った。藤堂がいない学校はなぜか少しだけ長く感じた。そこで俺は席を立つ。あまり気分が優れていなかった為、誰にも話し掛けられる前に教室を出ようと思ったからだ。

 そして後方から中条(なかじょう)さんの俺を呼び止める声が聞こえてくる。俺はその声を無視するかのように教室を出た。すると教室を出て直ぐの廊下で、壁に寄りかかるようにして東條(とうじょう)(あい)が目を閉じて佇んでいた。

 そこでゆっくりと目を開き、俺を目線で射抜いてくる。麗しい唇から言葉が繰り出される。


新海(しんかい)、少しお前に用がある。付いて来い。」

 俺の返事を待つ事なくスタスタと歩いていく東條に、とりあえず俺は黙って付いて行く事にした。俺は誰とも話す気分ではなかったのだが、俺の直感がGOサインを出していたので、結局それに従う事にしたのだ。

 そして着いたのは学校の屋上。人気(ひとけ)の全くない場所だ。誰かが来ても直ぐに分かるので、配慮さえしておけばある意味適当な場所と言えるだろう。そこで東條は一定の距離を歩み進むと立ち止まり、くるりと振り返ってきた。


「今日の19時頃から、恐らく未知物質(ダークマター)研究所で暗部組織によってテロが行われる。」

 俺は表情1つ変える事なく、とりあえず黙って相手の話を聞く事にした。


「なんだ、あんまり驚かないんだな。お前の事だから…そうだな、無闇に嗅ぎ回って首を突っ込もうとしているのだと思っていたのだが…違ったか?」

 不敵な笑みから放たれる言葉の後半部分を俺は無視して質問に答える。


「そうですね。テロが起きる事は大体予想はついてましたけど、今日という事は知りませんでしたね。」

「…そうか、まぁあくまでも推測だ。確証はない。」

「でもなぜそんな事を俺に?」

 そこで東條は一度黙り、俺の目をしっかりと捉えて言い放ってきた。確信めいた表情で。


「もう一度言うが…どうせ首を突っ込むつもりなんだろう?しかも2人で。それなら少しアドバイスをしてやろうと思ってな?可愛い私の教え子にな。」

 全ての言動で戦いが起きている、と今の言葉で俺はそう判断し、警戒度を一段階上げた。少し遊び心が混じっているのも東條らしいとこではあったが。


「どうゆう事ですか?」

「ほう…そこで知らない振りとはな、これは鎌かけでもなんでもない。私は確信があって今そう話した。その意味がわかるか?」

 俺はそこで2つ程思いあたる節があった。そして、その浅はかな行動を思い出している間に、東條は説明をしてきた。


「まず、金宮(かなみや)(かえで)のクラック技術…誰が教えたと思っている?」

「……軍の人間だな。」

 俺は表情を変える事なく質問に答える。東條も当然の様に表情を変える事はない。


「そうだ、つまり軍の手法を用いて介入してくるとなると…そのやり方では軍の人間にはとっては簡単に足取りがついてしまう。海外サーバーを2つ経由ではまだ足りない。恐らく金宮楓自身が考えて、勝手に行動したといったところか…そうだろう?お前はそんな不用意な事をしそうにない上に、したいとも思ってなさそうだ。

 これは忠告兼アドバイスだ。年上からのありがたい言葉は素直に受け取っておくものだぞ?」

 俺はそこまで黙って聞いていた。そしてそれは俺の予想の内の1つにヒットしていたわけだが…恐らく口にする事がないだけで、既にもう1つのほうも当たっているだろう。そうじゃないとあそこまで確信を持てないはずだ。俺はやられてばかりでは意味がないので、ここで逆に質問をする事にした。


「なら、なぜクラック対策として強固な多重プロテクトがしてあったんだ?あれだと大事な事を隠していますと言っているようなもんだ。もちろん大事な情報にロックをかけるのは当然だが、あそこまで必要か?」

「それには答えれないな。そもそもあの中身を見て、お前に何が出来る、新海(しんかい)隼人(はやと)?私はお前に期待している。私を超えてくれると。

 呑気にそんなくだらない事をしていないで、さっさと軍に戻ったらどうだ?私から推薦しておこう。」

「そんな必要は無い。俺はもう戻る気なんてさらさらない。」

「それなのに今、関係ない事件に首を突っ込もうとしている。お前の言っている事としている事は矛盾しているぞ?…お前の行動理念は何で出来ている?」

 俺はそこまで言われて自分の中での矛盾に気づく。いや、気づいていたが、気づいていないフリをしていたという方が正しい。俺はある人物を思い出し、拳を強く握り、ハッとした表情を引き締め直す。


「ほう、素晴らしいな…そこで新たに決意を固めるか。」

 東條はとても嬉しそうに高笑いをした。芝居がかった動きで両掌を見せながら大きく手を広げる。


「ちなみに、先の決闘も拝見させてもらったぞ?いち教師としては見過ごせない程過激だったが、まぁ目を瞑るとしよう。しかしあそこまでの戦闘は称賛に値する。異能を使う事なく完封勝利。相手の異能を大体まで把握し、攻めの姿勢は慎重かつ大胆。」

 そして東條は一旦そこで区切り、俺に顔を近づけ、囁くようにそう告げてきた。


「本当に学生などといったものになっているのが惜しいなぁ?表の世界は闇の住人には似合わんぞ?」

「それはあなたもじゃないですか?元2等総長、東條愛さん。通称破壊神(クラッシャー)。あなたは名前持ち(ネームド)になる程の実力者だ。そして、今はいち教師として、この学校の秘密を隠している。俺はあなたがそんな事をする必要はないと思います。」

「…大事な事を隠しているのは…お互い様だろう?」

 東條は一度表情を歪めるが、直ぐに切り替えて俺を見透かすように不敵に笑みを見せてきた。俺はそれに対して殺意のこもった眼差しで睨んでみせた。


「おぉ、怖い怖い。流石の私でもお前を抑え込むのは苦労しそうだ。」

「別にやりあう気はないですから安心してください。」

「そんな目で睨まれながら言われても、全く説得力がないぞ?私は別に一向に構わんのだがなぁ。」

 そう言われながら、俺はもう話す事はないと判断し、東條に背を向けた。

 その時。

 俺は直感で身の危機を感じ、その場から直ぐ様離れる。俺は数歩程、勢いよく前に出て振り返った。そこで見たのは俺が先程までいた場所に、固められた拳が勢い良く振り下ろされている場面だった。東條はゆらりと体を立て直す。そして眼差しはギラリと獲物を見据える様な…狩る側の強者たる目を向けてくる。


「フフッ…。背後を簡単にとらせるなと忠告するつもりだったのだが…その必要もないみたいだな。いや、すまない、私もついお前の目を見ていたら昂ってしまったようだ。…それでも、次はないぞ?」

 東條はそう言い残し、先に屋上から去っていった。表情は笑っていたが、目が全く笑っておらず、背後に闘神を幻視させるのは恐ろしいところだった。

 そこで俺は大量の冷や汗を掻いていた事に気づく。そして俺は全身から発せられる危険信号を、抑え込むかの様にして、落ち着かせる。

(これが元とはいえ、2等総長の実力の片鱗か…。)

 俺はそんな事を思いつつ、普段より遅くなったが食堂に向かう事にした……。


―――――――――――――――――――――――――――


 1人で昼食を食べつつ、楓から届いた連絡を携帯を開いて確認する。


「わかった。集合場所と時間は?」

 その短い連絡に対して、短い返答を返す。


「17時20分に倉田駅だ。」

 そうメッセージを送る。すると2分程で、返信が来た。


「了解。」

 俺はそんなメッセージを確認し、カレーを食べ進める。そして昼食を終えた俺は教室に戻る事にした……。

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