2-7 これはデートですか?いいえ、違います①
俺は中条さんと2人っきりで寮への帰路へ着いて別れた後、自室に着いてから晩ご飯の準備をしていた。俺は料理に関しては多少の心得はあるつもりだった。他人に自信を持って振る舞える程ではないが、レシピさえあればどれも上手に作れる自信はあった。
(今度は中条さんに料理の話でもしてみようかな?…楓はからっきしだしなぁ。)
俺は料理が滅法苦手な幼馴染みの顔を頭にチラつかせつつ、料理に勤しむ。料理と言っても、簡単に出来てしまう手抜きチャーハンを作り終えた俺は、皿に盛り付け机の上に置き、椅子に座ろうとしたところで、ベットの上に置いてあった携帯が少し動いている事に気づき、それを手にとった。そして、徐に携帯を開く。
そこには神無月さんからのメッセージが届いていた。
「ちょっと何勝手に帰ってるの?私勝手に帰っていいなんて言った覚えはないわよ?あなた目を離すと直ぐ逃げるわね。決闘の日時、明日までには決めてくれないかしら?」
俺はそんな文面を見るだけで神無月さんが怒っている事は直ぐに分かった。
(げ。か、神無月さん怒ってるよ…。まぁ神無月さんの事をほったらかしにしちゃったしなぁ。悪いのは俺か。)
俺はそう思いつつも、言い訳をしてみる事にした。
「いやだって、ずっと見ていろとも言われなかったし、帰っていいかなって思ったんだよ。」
「あなたがそんな事を言うなら私にも考えがあるわ。最悪再来週までは待ってあげようかと思っていたけれど…明後日。明後日の日曜日にするわ。拒否する事も出来るけどそんな事したらわかってるよね?」
(なんか脅迫まがいのことを言われた気がするが…どうしようか…。)
俺は文面からと、返信の速度からも分かる神無月さんのかなり大きい怒りをうやむやにしようと、そのメッセージを打ち込もうとして、一度逡巡した。
(待てよ、もう引き延ばす意味もないか…。)
俺はずっと付き纏われる+誤解され続ける事と、一度決闘する事を冷静に天秤にかけた。
数瞬悩み…。
「分かった。明後日の日曜日だな。時間は10時、場所は学校の決闘場(異能訓練用体育館)でいいよな?」
「えぇ構わないわ。あなたちゃんと来るんでしょうね?」
「大丈夫だ心配するな。」
「あなたにそう言われても不安しかないわ。」
「いやなんでだよ。」
そうメッセージを送り、携帯をベットに放る。そして机の上のチャーハンに視線を戻す。
(冷める前に食べてしまわないとな…。)
そしてまだ冷めていなかったチャーハンを平らげた俺は洗い物をすませて、お風呂の準備をしていた。お風呂のお湯が溜まるまではする事がなかったので、無意味に携帯を開いて眺めていた。そこでちょうど一件の新たな着信があった。中条さんからだ。多分明日の事についてだろう。
「ごめん新海君、私から連絡するって言ったのに遅くなっちゃって。まだ起きてるよね?」
「うんまだ起きてるよ。どうしたの何かあった?」
「うん。明日はお昼からにしようと思うんだけど、そういえばお昼の事を聞いてなかったと思って。その事を確認しようと思ったんだ。」
「なるほどね。それなら俺が行きたい店あるんだけど、そこにしない?」
「え?どんなお店なの?」
「大通りから路地に入って地下にある小洒落たカフェがあるんだけど、1人じゃ入りずらくて。でも中条さんが一緒なら大丈夫かなって…どうかな?」
「そうなんだ!うん、いいよ♪新海君のオススメのお店だね!期待してるね♪」
(すまん神無月さん!あなたから教えてもらった店は俺が見つけたみたいになっちゃった。でもこれくらい、いいよね?)
「なら明日は12時に俺が女子の寮のロビーで待ってるよ。」
「うん、わかったよ!」
そう書き残して中条さんは「楽しみだね!」という可愛らしいスタンプを送ってきた。俺は実に彼女らしいと思い、メッセージアプリを閉じた。
(最初の言い出しでまさか明日行けなくなったとかの断りのメッセージかと思って少し焦ったなぁ。)
その時ちょうどお風呂が沸いたので、タイミングが良かった。俺は服を脱ぎ、そこでふと右側のこめかみの上あたりに付けている青いヘアピンに触れる。
(……さて、風呂入って寝るか…。)
そうして俺はヘアピンを外し、浴室に向かった……。




