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15-3 最終戦③

 俺達は恐ろしく強敵だった2人を、ガラスによって全身を完璧に封じ込めた。しかし、射程距離外と思われる15m程の距離を空けた場所でなお剣呑な空気感を漂わせて話し合いをしていた。


「おい新海(しんかい)、女だからって容赦する必要はねぇ。わざわざ楽な気絶の仕方を選択する必要なんてねぇんだよ。」

「だからといって気絶するまで殴り続けるのか?」

「そうだよ。俺はせっかちなんだ。さっさとケリをつけてぇ。それにちょっとばかし危険だが、1発で済む方法もある。」

 俺達はそんな風に口論?を先程から続けていた。立花(たちばな)浅間(あさま)が引き付けてくれたおかげで逃げる合間を与えずに確保出来たのは感謝しているのだが、同級生を気絶するまで殴るという行為を簡単に認めたくなかった。

 どうしてそうなったかというと、南部さんは俺との戦いで見せた技を隠そうともしなくなり、新たなガラスを遠距離から近づかせても、空気?がガラスを貫通して吹き飛ばしていくのだ。要するに南部さんが異能を使用する限り、スタンバトンという正規の手段で気絶させる手段が取れなくなっていた。

 そして現状、立花の見えざる手を使わないと意識を刈り取れない状況に陥ってしまい、俺達は足踏みをしていたのだ。


隼人(はやと)あたし達の負けよ。だから別に殴打くらいいいわよ。」

「あのな、口で負けを認めるなら、異能を使わないでくれ……。」

「それとこれは話は別よ。」

 南部(なんぶ)さんは先程から、ずっとこんな調子である。夏威(かい)が先程からずっと黙っているので、何かをされる前にケリをつけたいという点では、俺も立花と同意見だったのだが、やはり踏み切れない。そこが俺の甘さだった。

 そして立花が浅間に地面に永遠と抑えつけられているのも、可哀想に思えてきた。それに第三者が介入してくる前にも早くこの場から立ち去りたい。

 しかし残念な事に、ぐずぐずしていた俺達には災難が降りかかる。突如竜巻が巻き起こり、視界にノイズが走る。辛うじて目を開けれる風圧の中、瞬時に対応して見せたのが、浅間だった。俺は異能をまともに使える状況ではなかったので、動けない。それを一瞬で判断したのか、野生の勘なのかは分からなかったが。

 そしてどういった原理なのかは不明な異能を使用しながら手を振りかざすと、風は瞬く間に霧散する。勝也(かつや)とはまた違った種類(タイプ)の異能を、息をするかの様に使用する浅間を、素直に称賛すべきだろう。


「新海っ!さっさと決めろ!」

 一応俺の意思は汲み取ってくれるらしい。

 しかし俺達に先程の余裕は既に、ない。

 俺は迷わずに意識を奪う事を指示した。


「ハッ、さっさとそう判断すればいいんだよっ!」

 そう言って体勢を整えた立花は勢いよく手刀を繰り出す。素早く空を切る手刀。遮るものがないその振り抜きは、見えざる手によっていともたやすく南部さんの意識を刈り取る。少々どころか、かなり危険な荒技によって南部さんはガクリと首を前に倒して俯く。

 そして夏威に向けて手刀を放った直後、俺達の目前でゆらりと空間が歪み、猛烈な衝撃が場を震わせる。つんざく様な音を撒き散らし、烈風が肌を切り裂かんばかりとこちらに迫ってくる。

 そして夏威を拘束していたガラスに加え、周辺ビルの窓ガラスもろとも吹き飛ばされていた。

 しかしこちらに迫り来る衝撃波は圧倒的な速度で反応した浅間によって掻き消され、浅間の直線状にいた俺達にはダメージはなかった。


「なに?自爆?」

「いや、違う。攻撃の座標をずらされた。まだ、倒れてねぇ。」

 浅間の疑問に立花が爆心地を睨め付けながらそう答えた。

 そして直後、衝撃を一番間近で食らったと思わせる夏威はふらつく足取りで姿を現す。その後、力無く横たわる南部さんの無事を確認していた。ふと俺も、少し離れた箇所で横たわる(はやし)さんを見詰める。結局夏威の言葉に意識を奪われ、そこで感じた違和感は薄れていった。


「いやー、流石にほぼゼロ距離の風圧を受け流すのは俺でも至難の技だったよ。それに、圧縮に時間をかけた価値もあったみたいだしね?」

 そしてその直後、畳み掛ける様に雷鳴が轟く。いや、それは正しくない。それは自然現象の放電ではなく、人為的な発生によるもの。1人の少女が手に持つ2つのスタンバトンから放たれる電撃だ。

 そしてその電撃は圧倒的な速度で俺達を強襲する。1つの軌道しか描けない事を俺は知っていたので、ポケット中にあるガラス玉を直接制御させ、ドロリと溶かしたガラスを俺達の前に壁として滑り込ませる。

 そしてかなり厄介な相手も近くにいるはずなので、俺はそれを立花と浅間に通達する。


「立花、浅間!今の電撃使いのグループには重力で動けなくしてくる女の子がいる。その攻撃にも気を付けろ!」

 そんな俺の声に返答する間も無く、旋風が巻き起こる。そこで(たいら)先生による報告が開始される。

 しかしそんなスピーカーから発せられる事務的な声は風によって掻き消され、俺達の耳に届く事はない。

 もはや恒例となった浅間を先頭にした3人一直線の並びの俺達は、浅間の手によって旋風をいともたやすくいなした後、俺達3人は一斉に夏威に躍りかかる。別にそれを伝えた訳でもなかった。それでも3人の思考は一致していた。とりあえず先に夏威を倒してしまうという荒技的思考を。

 しかし夏威もそれをみすみす受け入れはしない。当然の様に逃げようとする。俺はなんとか射程距離外に逃げられる前にガラスを飛ばし、足止めを試みる。

 そして飛来するガラスを撃ち落とす事に時間をかけた夏威に浅間が追いつく。流れる様に浅間から右フックが繰り出され、その直前に空気弾を飛ばしていた夏威は迎撃する事なく距離をとる。3人相手には最適な判断を下した夏威の移動先を読んでいたかの様に立花の見えざる手による殴りが炸裂する。拳の振り抜きを見る限り、恐らくみぞおちへの右アッパーだった。

 そして夏威は悶え、辛そうにしながらも異能を使用しており、空気塊での横薙ぎ一閃。俺はなんとか形成が間に合ったガラスナイフを一振りする事で相殺。浅間と立花よりも2歩先に前に出て、体勢を崩す夏威の右肩に掌底打ちを叩き込む。夏威の体は反時計回りに軽く回転する事で左肩が俺に向けて突出する。

 そこで俺はすかさずスタンバトンでの一撃を左肩にお見舞いする。流水の様に素早い一撃に、夏威はなす術なく痙攣した後、膝から崩れ落ちる。そして夏威は悔しそうな顔を浮かべて、ドサリと音を立ててうつ伏せになった。

 そんな脅威が去った俺達にはまた脅威が襲い掛かる。

 姿を現したのは石川(いしかわ)を先頭にし、中条(なかじょう)さんに春雨(はるさめ)さんと三神(みかみ)だった。恐らく他のグループメンバーはやられてしまったのだろう。油断ならないメンバーが勢揃いしたところで更に珍客が4人。

 交差点の中心に立つ俺達は3方位を囲まれる形となる。北には竜星(りゅうせい)崎田(さきた)さん。西からは相変わらずおんぶの姿勢の(かえで)と、皆から奇怪な物を見るかの様な視線を向けられ、顔を真っ赤に染め上げる大崎(おおさき)さん。

 よくもまぁ、俺を含めて半数がEクラスなのは皮肉なものだと俺は思ってしまった。Eクラスは弱いから故、逃げ回る。生存率は高まるかもしれないが、最終的には戦力にならない。そんな学校側が予測していたであろう結果になっているが、ここに集まるEクラスの面々は中々歯応えのある奴の集まりだと思っていた。

 そこで久しぶりに平先生の報告が耳に入る。


「グループ13、全滅。残りグループ数4。」

 そんな事務報告を聞いた後、俺は小声でこの場から脱出する事を提案していた。そんな俺達に向けて放たれる極寒の冷気。いや、それは俺達だけでなく、この場にいる全員に向けて放たれていた。

 そして俺はその攻撃を受けて、直ぐに竜星の異能を連想した。3週間前程に見せた異能の片鱗から俺はそう考えたのだ。

 一瞬で鳥肌が物理的に立ち、正常な機能を失いそうになる。そんな重症に陥る前に俺達は上空へと避難を試みる。異能によって冷却され、交差点周辺の空気は凝縮されたのか、白い靄で覆われて俺達の視界を奪ってくる。

 その為、石川のグループではそれを振り払う様に旋風を巻き起こしていたようだが、俺達にはそれが出来ない。

 俺達はとりあえずそんな悪い視界と囲まれている状況から脱出する為に、ガラス板で空中を急激な上昇をしていた。そしてそんな俺達に追いつく影が1つ。圧倒的に人間離れした跳躍力で俺達と堂々以上の高度に達して、俺に向けて拳を放つ。俺は受け流す選択をしようとして構えた直後、既に浅間が俺との間に割って入っていた。

 その直後。

 浅間へと確実に拳を叩き込んだはずの楓の姿は、音もなく消えていた。

 何が起きたのか最初は分からなかったが、ビルの内部に音を立てて突っ込む楓を()が捉えており、現状を理解する。既に割れた窓に突っ込んでいったので、大したダメージはなかった様で直ぐに体勢を整えたのか、窓から身を乗り出してこちらを睨んでいた。


「おいあのピンクゴリラ、全然ピンピンしてっぞ。なんなら反撃のチャンスまで考えてやがる。」

「う、うん、そうみたいだね。それに僕の異能でもあれを受け止めるのは流石に一回が限界かな。」

 そう言って息も絶え絶えな浅間。ガクリと膝を突き、激しく肩を上下させていた。


「タカ、無理すんな。あれ程のエネルギーの吸収はかなり異能を酷使しただろ。」

「あれ?バレちゃった?咲夜(さくや)にはバレバレだなぁ。」

 そんな浅間のおとぼけ?は立花に鼻で笑われて一蹴される。


「吸収だけならまだしも、反射までしたらそうなるだろ。一旦休んどけ。」

 そんなやりとりを交わして浅間は軽く頷いて後、ガラス板の上で大の字になる。俺と立花のスペースが奪われて俺達は思わず眉を顰める。

 更に浅間の服がめくれあがり、へその部分まで見えていた。その可愛さ溢れる顔は目を閉じられ、静かに息を立てている。喋らなければ女の子に見間違えられても不思議ではない浅間は、綺麗な肌を晒しており、とても扇情的だった。

 俺はそこでなんとなくその姿を見てはいけない気がして、目を逸らしていた……。

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